No.504710

IS 白い翼/可能性の獣

さん

行き詰ったのでとりあえず上下で分けることにしました。
ISが出てくるまでプロローグで通そうと思います。

そして更新遅くなってしまいすみません。
コメント待ってます

2012-11-05 14:20:48 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2357   閲覧ユーザー数:2254

 

プロローグⅣ 姉妹丼と親たち[上]

 

 

竜胆が退院して2ヵ月が過ぎ、12月。

この2ヶ月は竜胆にとってとても刺激的な時期でもあった。

 

竜胆は桐谷家に養子として迎え入れられ名前も桐谷竜胆と改め新しい生活を始まった。

 

あいさつに行った家のひとつで布仏家では更識姉妹の幼馴染の布仏虚、布仏本音と出会い、本音から「りにー」と外人っぽいあだ名をつけられた。

その理由は「自分より年上のお兄ちゃんで~名前の頭文字をとってりにーだよ~」

と間延びした口調で説明され、特に断る理由もないので了承した。

 

更識家にあいさつに付いて行くと屋敷の中で『貴様かぁぁぁぁぁぁあああ!!』と大声を上げて竜胆に向かって走ってくる30代くらいの男性にとび蹴りをかます更識楯無。とび蹴りがきまり気を失っている男性を引きずりながら『ごめんね♡』と可愛らしくウィンクして去って行ったが竜胆は星治の背に隠れて震えていた。

星治はその姿を見て苦笑いを浮かべていた。

 

桐谷家では侍女やメイドのお迎えを受たり、ほかの家にあいさつに行っても侍女やメイドがいるので記憶がない竜胆はどこの家で侍女はいるという間違った常識があったのは竜胆の秘密のひとつである。

 

もちろん学校にも通っているが記憶を失ってからの竜胆は感情があまり動くことがなくよく言えば静かな子供、悪く言えば無愛想であったため友達が出来ずにいた。

そのため竜胆の友達と言えるのは更識、布仏姉妹しかいなかった。

 

日付は12月24日クリスマス・イヴ。桐谷家には竜胆と更識、布仏姉妹が集まっていた。

ここにいる全員の親たちはどうしても外せない仕事があると言う事で取り敢えず桐谷家に集合していた。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「桐谷家の家宅捜索をします!!」

「お~!」

「「「・・・・」」」

 

夜9時、桐谷家のリビングで拳を突き上げている結の掛け声に本音ただ一人が結と同じように拳を突き上げ元気よく返事を返して竜胆、簪、虚は何とも言えない表情で二人を見ていた。

竜胆がなんの脈略のない発言をした結に質問をした。

 

「なあ、結なんで急にそんなこと言い出したんだ?」

「なんでって・・・暇なんだもん!」

「・・・お姉ちゃん」

「ちょ、簪ちゃんお姉ちゃんをそんな目で見ないでよ」

「そうだよー、かんちゃん。暇なのは本当なんだし仕方がないんだよー」

「そうだけど・・・」

 

すでに桐谷家にあるトランプ、人生ゲームなどをやり終えてやることがなくなってしまったのだ。

 

「お嬢様そんなこと言わずにもう寝ましょう?」

「あら虚はもうおねんねの時間なの?まぁ先に寝ててもいいけど、朝起きて顔に落書きされてても一切責任は取らないわよ?」

「・・・わかりました。付き合います」

「分かってくれて嬉しいわ」

「・・・結はだんだん当主に似てきたな」

「褒めてくれてありがとう、竜胆」

「簪、こいつを止めてくれ・・・」

「無理、かな」

「だよな、結せめて明日にしないか?」

「ん~じゃあ、今から下見して明日捜索するっというとこで!」

「下見って・・・何度も来てるだろ?」

「さぁ!行くわよ!」

「お~!」

「無視か・・・」

「え~っと、頑張って?」

「簪そこは言い切ってほしかったな」

 

こうして桐谷家の家宅捜索の下見が11時過ぎまで行われた。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

竜胆は記憶をなくしてから2度目の夢を見た。

そこで見たのは下見のとき鍵がかかっていた星治の部屋の前から始まり、鍵が掛かってるはずのドアを開き中に入るとそこには本棚には綺麗に並べられた大量の本と大きな机があった。

そこから一冊の本が目に入った。おもむろにその本を開くと中にはDVDが入っており題名は『ドキドキ❤姉妹丼』というタイトルだった。

そして夢は少しずつ確実に覚めていく

 

 

翌日、クリスマス当日である。

全員で朝食をとり着替えを済ませ、リビングに集合していた。

 

「ではこれから桐谷家の家宅捜索を始めましょう!」

「お~!」

「お姉ちゃん、本当にやるの?」

「そうですよ。昼前には私のお父さん、お母さんが帰って来ますからそれまで待ってましょうよ?」

「まったく、本音はこんなにやる気なのになんでお姉ちゃんの虚はやる気出せないの?姉妹なのに本当にそういう所は似てないわね」

「それはわたしとお姉ちゃんも同じだと思う」

「・・・あ」

「ん?どうしたの竜胆?」

「いや、そういえば夢で姉妹何とかって言うものを星治の部屋で見たなって」

「なんとかって何?」

「どっかで見たことある漢字だけど読めなかった」

「へぇ、どんな漢字?」

「こんな形してた」

 

近くにあったペンと紙を使って竜胆が描いた漢字は「丼」

これにいち早く気付いたのはこの中で最年長の虚だった。

 

「これは親子丼の「丼」ですね」

「じゃあ、俺が夢で見たのは「姉妹丼」ってこと?」

「名前からして、親子丼の仲間かしら?」

「そんな料理聞いたことないよ?」

「いや~、私たちが知らないだけで本当に在ったりして~」

「でもどんな料理なんだろ?」

「よし!では予定を変更して姉妹丼の正体を探るわよ!」

 

こうして桐谷家の家宅捜索から姉妹丼の正体を暴くこという恐ろしい目的に変わってしまった。

まず近くにいた侍女たちに聞いてみると

 

「お、お嬢様たちにはまだ早いです!」

「それは・・・その・・・1対多数、です」

「それはピ――――を姉妹でピ――の体勢とピ――の体勢で行うもので、他にもピ―――」

 

殆どの侍女たちは怒ったり、恥かしがったり、一部の侍女は難しそうな言葉を連発したり全く意味が分からないでいた。

厨房で一番偉いお登勢さんに聞いてみると事になった

 

「スイマセーン、お登勢さん居ませんか?」

「ん?なんだい、更識と布仏のお嬢たちに鈴坊じゃないかい。私になんか用かい?」

「お登勢サン、姉妹丼って知ってる?」

「・・・鈴坊、はぁその歳でとは恐れ入るよ」

 

お登勢からニヤニヤしながら褒められた。

 

「お登勢さんは姉妹丼はどんなのか知ってるの?」

「まあ知ってるちゃあ知ってるかね」

「おいしいの?」

「鈴坊、あんたがそれ言うと冗談にならないからやめときな」

「え、なんで?」

「それよりもなんで急にそんなこと聞きに来たんだい?」

「竜胆君が夢で桐谷叔父様の部屋で見たらしくて名前からして料理かとおもって」

「それで私に聞きに来たってわけかい」

「うん」

 

表情は変わってないがお登勢は非常に困っていた。

いつもなら困っているのなら手を差し伸べ、自分がわかる範囲なら教える。

もちろん説明しろと言われれば出来るだろ。

しかしその相手は穢れを知らない純粋無垢な少年少女たち。

お登勢が考えに考え抜き、そして決めた。

 

「それは・・・」

「「それは?」」

 

結と本音は興味津々で目を輝かせている。

お登勢が出した結論は

 

「私の口からは言えないね」

 

丸投げである。

 

「「え~~?」」

 

そして興味津々だった二人からは大ブーイングを受けるがお登勢は二人のブーイング受ける方がまだましという結論に至った。

 

「なんで教えてくれないの?」

「そ~だよ~。知ってるなら教えてよ~」

「もうすぐあんた達の親が帰ってくるからそん時にでも聞きな」

「「・・・は~い」」

 

未だに不満が残る二人は渋々了承した。

そして

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

更識家にて

 

防音、盗聴対策がされている部屋で丸い机を囲むように男女5人が無言で座っている。

物々しい空気が支配する中一人の女性が口を開けた。

 

「帰っていい?」

 

物々しい空気がもの凄い勢いで崩壊した。

呆れ顔で声の主である楯無に星治が一応注意する。

 

「いやぁ、当主これから大事な話をするというのに何言ってるんですか?」

「だって~今日はクリスマス・イヴよ?娘たちと過ごしたいじゃない」

「そうだ!楯無の言うという通りだ!こうしてる間にもあの坊主がうちの娘たちにあんな事やこんな事してたらと考えるだけで・・・俺を早く解放しろぉ――!!」

「ん~、でも京哉の旦那。今何もせずにお開きにすると年末お嬢たちと過ごせませんよ?」

「星治の言う通りですよ、旦那様。少し落ち着いたらどうです?私達の娘達もいます、それに間違いが起こる年齢でもありませんし」

「そうだぞ、京哉騒ぎ過ぎだ。早く解放されたいのなら静かにするのが賢明だ」

 

半ば発狂状態に陥っているのは更識京哉。楯無の夫でありトップクラスの親バカだ。

それを星治と布仏家の大黒柱布仏悠、その妻である布仏美咲が正論で宥める。

 

「そうかもしれんが・・・悠、お前は娘たちが心配じゃないのか?」

「娘たちは竜胆君を信用している。俺が竜胆君を信用する理由には十分だ。お前は自分の娘たちを信用していないのか?」

「しているに決まっているだろ!」

「なら騒ぐな」

「あの~、そろそろ報告を始めたいんですけど?」

 

過熱しそうな男2人の論争に星治が引き気味に発言した。

 

「確かにこんなところで時間無駄にしたくないしね」

「いやぁ、当主の最初の発言がなければもう少しスムーズに進んでましたよ」

「そうですね。当主様はいつもいらぬ茶々を入れる」

「細かいことはいいのよ。じゃあ星治、報告お願いできる?」

 

楯無の一言で全員の表情が、纏う空気が変わる。

 

「わかりました、では報告させてもらいます。まず――――」

 

説明を始める星治は最初からこの空気でやればいいのに、と内心ため息をつきそれと同時にここにいる面々を頼もしくし思うのだった。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

カーディアス・ビストはある人物と話すためにある部屋に来ている。

その部屋には生活感は皆無で部屋の中心に物々しいベットが一つ置いてあるだけの異質な部屋だ。

そのベットで眠っているのは白髪で白い髭を伸ばした老人。

ビスト財団創始者にして急成長させたサイアム・ビストその人だ。

閉じられていた目がゆっくりと開きカーディアスを捉えた。

 

「・・・カーディアスか何の用だ」

「一応報告をしておこうかと思いまして」

「ふむ、報告とは?」

「ラプラスの箱の一部を部外者に渡すつもりです」

 

カーディアスの言葉にサイアムは目を細めた。

 

「おぬし、自分が何を言っているのか理解しているのか」

「えぇ、それがどういう意味かも理解したうえであなたに話しているのですよ」

「何故そのようなリスクを背負う。それだけの価値があることなのか?」

「あると断言しましょう」

「・・・・」

「それに入れ物よりも中身の方が重要だと私は考えます」

「・・・今のビスト財団当主はお前だ。お前の好きにすればいい」

「ありがとうございます。では」

 

そういうとカーディアスは部屋から出て行った。

 

「なにを考えているか分からないのは親譲りか」

 

サイアム・ビストは溜息にも似た独り言を呟くとまた深い眠りについた。

 

 

 

 

 
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