No.488968

超次元ゲイムネプテューヌ 3dis Creators_017

病み上がりついでにキャラが立つってなんだろうって思いました。
ミヤから来た新キャラ挿入命令で総数がとんでもないことになって描き分けられるかが激しく不安です。
動かすとキャラかぶっちゃいます以前に、そのキャラってなんだろうと。   ロージュ

ネプテューヌVのTRUEエンドが見れたので今後のDLCキャラを含めウチらとしてのVに対するアプローチが決定いたしました。

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2012-09-26 23:52:17 投稿 / 全11ページ    総閲覧数:824   閲覧ユーザー数:794

 

 

 

 

 

 

 

第2章 ニュー・フレンズ

 

 

 

 

 

C017:猿の目、鷹の目

 

 

 

 

 

 

○ルウィー・キノコタウン・国道・朝

 

    バトルアックスを構えたWH(ホワイトハート)を笑顔でなめ下ろすピエロの男。

 

ピエロの男「おや。この状況を見て誤解なさってしまうのはいたしかたないですが、我々がしたことは正当防衛です。どうかご理解を」

WH(ホワイトハート)「ごちゃごちゃうるせえ!!」

 

    そう言ってバトルアックス高くあげ勢いをつけ、兜金(かぶとがね)が光った直後その柄頭(つかがしら)を雪面に思い切り突き刺す。

 

ガヤNPC達「おぉっ!?」

ネプギア、日本一「わぁっ!?」

サーカス団全員「ぶおぉっ!?」

 

    すると軽い地震が起き、ブラン以外のその場にいた全員がたち転ぶか身をかがめる。

    サーカス団に対しては更に強い重力を上乗せする。

    その様子は土下座でもしているかのよう。

    カラフルでアフロなジャグラーがこの状況の中口を洩らす。

 

ジャグラー「あ、頭が上がらねぇ……俺の……チャームポイントがぁ……ッ!」

WH「その素敵なもじゃもじゃのことか?」

 

    WHの傍に如何にも引っ張ったら愉快なことが起こりそうな”ひも”が垂れさがってくる。

 

WH「っくぅ……」

 

    ひもを引っ張ろうとした瞬間、よろめいて身体に歪むようなノイズを走らせる。

    その直後、女神の変身が勝手に解けてしまう。

    同時に、サーカス団達に上乗せされていた重力も解ける。

 

ネプギア「ブランさんっ!」

ブラン「しまっ……!」

 

    引き損ねたひもをすぐさま掴んで引きなおす。

    すると、サーカス団が寝そべっている付近の地面の所々に装置が開く様に穴があく。

 

ピエロの男「フォウッ!?」

 

    しかし動けるようになったサーカス団は全員紙一重で穴から離れ、立ち上がる。

 

ブラン「このっ!」

 

    再度ひもを引っ張ると、今度は何もない雪面からスプリングが飛び出す。

    乗ると大ジャンプができそうだがサーカス団はまたもや紙一重でこれをよける。

    先ほどとは違い余裕そうに。

 

ブラン「チッ!」

日本一「まだよっ!」

ネプギア「っ!」

ブラン「おい二人とも!」

 

    ブランが呼びかける間もなく、ネプギアと日本一、構えてサーカス団へと向かって走る。

 

ネプギア、日本一「はあああああっ!」

 

    それを見たピエロの男、傍に垂れさがったひもを引っ張る。

    その直後。

 

日本一「ブッ──」

ネプギア「うぐぅっ──」

 

    両者、見えない壁に激突し、下品な表情を壁につけてNPC達に晒す。

 

ガヤNPC達「ははははははははははっ!」

ブラン「コケにしやがってぇっ!!」

 

    ブラン、怒りの形相でハンマーを両手にサーカス団へと駆けていく。

 

ブラン「どおおりゃあああっ!!!」

 

    飛び上がりながらハンマーを振りかぶり、ピエロの男に狙いを定める。

    しかし……。

 

ブラン「ぶほぉっ!?」

 

    振り下ろして叩きつけようとした瞬間、踏ん張ろうとした足元には落とし穴。

    着地ができる角度はとうに通り過ぎ、そのまま倒れ込むように雪に顔をうずめる。

    見事に落とし穴にはまってハンマーも穴のすぐ前でぐったりと倒れる。

    ピエロの男はというと、ひもを引いた瞬間他の団員達と共に急激に後ずさっていた。

 

ガヤNPC達「はははははははははっっ!!!」

ピエロの男「それでは皆様、本日はお騒がせいたしました」

ガヤNPC達「(拍手喝さい)」

 

    サーカス団がその場を去ろうとした途端にヤジ達は快く道を開ける。

    そのままヤジ達に拍手と歓声で見送られる。

 

ブラン「待ちやがれっ……畜生ッ!!」

 

    穴から這い上がってきたブランの大声で途端に歓声は静まり、ヤジ達もその場を立ち去っていく。

    立ち上がるブランの側へ被害にあったNPC達を気遣いながら歩くネプギアと日本一。

    ブラン、恨めしそうに去り歩くヤジだったNPC達を見つめる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブラン「くっそッ! あいつ等グルか? 証拠ありゃまとめてブチ込んでやるってのに……」

 

    目線からNPCを外した後、上を向いて大きく息を吸い、下に向けて大きく吐くと同時に肩の力を抜く。

 

ブラン「すぅーっ……はぁー……」

日本一「くっそぉー足速いなぁ……もう見えないわ」

ブラン「……ごめん二人とも、迷惑かけたわ」

ネプギア「いえ、本来なら、これはわたしの責任です」

 

    振り向いてネプギア達を見る。

 

ブラン「どういうこと?」

 

    日本一もネプギアの方を向く。

 

ネプギア「さっきの人たち、以前わたしとコンパさんとアイエフさんで捕まえたんです。でも一人……と一匹取り逃がしちゃって……」

『アイエフよー、危ないゲハネタ言いまくるわよー、アイエフよー、バグを取ろうかしらねー、アイエフよー、パロディーじゃ終わらせないわよー』

 

    面倒くさそうに声を洩らしている着ボイスに気付いてNギアを取り出すネプギア。

    その合間に被害にあったNPC達を向こうへ追いやるブラン。

 

日本一「やる気のないアイエフ……」

ブラン「まさか全員の着ボイスがあったり……」

 

    ネプギア、LとRボタンを同時押しして画面を投影させる。

    画面にはアイエフ、何故かぐずっているような様子。

 

ネプギアの声「ネプギアです。どうしました?」

アイエフ『もこちゃんと……もこちゃんとはぐれたぁ……』

 

    ブランと日本一、画面が見えるように詰め寄る。

 

ブラン「また携帯落としたのか……」

アイエフの声「ううん、こわれたぁ」

ブラン「Ach so(アハ ゾゥ)(あっそう)...」

ネプギア「何があったんですか……?」

 

    投影画面中のアイエフ、伝う涙を手でぬぐいながら。

 

アイエフ「じつは……」

 

 

 

○アイエフの回想・朝

 

餃子屋の声「バーニング一匹狼! マイネームイーズッ餃子屋あああああっ!!!」

 

    傾斜9度の下り坂、そこを歩く女性アナウンサーと浮かんでアナウンサーを追っている撮影器具達に、『餃子テンガロン』と書かれた屋台を引いている餃子屋と明らかにカメラを意識している主婦のNPC達。

    餃子屋主人は知る人ぞ知る某テンガロンハットを被ったロボット軍曹の声で雄叫びをあげ、それをうるさがる主婦。

 

主婦「ちょっとアンタうるさいよ! ギョーザ宣伝しな! アンタの宣伝なんか聞きたかないよ!」

餃子屋「ガッデェェェェェムッ! だがしかし! そうはいかない!」

 

    小言を始めた二人を見てマイクを構える女性アナウンサー。

 

餃子屋の声「俺の餃子には熱くビッグな! 魂……」

アナウンサー「今私の、すぐ先に噂の餃子屋があるということですので、さっそくうかがってみたいと思います」

 

    すると、奥から携帯電話を片手でいじりながら、モコが乗った台車をキックスクーターのように蹴って爆走するアイエフが現れる。

    少し先にある餃子屋の屋台に接近する女性アナウンサーに向かう。

 

アナウンサー「すみません失礼いたひでぶっ!?」

モコ「もっこ!?」

 

    女性アナウンサー、台車の先、キャスター部分に足を引っ掛けて勢いよく転ぶ。

 

アイエフ「え? おおぉぉおぉおぉおぉおおおっ!?」

 

    キャスター一つを蹴られて傾く台車に足を取られて回転してしまうアイエフ。

    モコ、台車から転がり落ちてしまい、アナウンサーの上に乗っかりながら坂道を転がり落ちる。

 

モコ「のぎゃああああぁ~~~~~!」

 

    アナウンサーもモコを追いかけるかのように転がっていく。

 

アイエフ「とっとっとっとっと!? うわああああぁぁぁぁああああっ!!」

主婦「だから近所迷惑で有名なんだよ! ほらあっちでテレビあべしッ!」

餃子屋「ぐわーしッ!」

 

    バランスが取れずそのまま台車と共に屋台に突っ込むアイエフ。

    主婦を巻き込んで激突し勢い余って台車から手を離して坂道を転がってしまう。

    その際に携帯が手から離れてコンクリートの道路に叩きつけられる。

    屋台は斜めになり、主婦は崩れ落ちるように倒れて坂を転がり始め、餃子屋主人は屋台を真っ直ぐ立てなおそうと踏ん張るあまり屋台の鉄棒にぶら下がっているような状態になってしまう。

 

餃子屋「まだまだ、だぁーーーーーーっ!!」

 

    そのまま前へと進む力には踏ん張れず、些細な抵抗として小刻みに足を動かすが前進を許してしまう。

 

餃子屋「ファイッ、トおおおおおっ!」

 

    一方でモコがT字路の塀に辿りつきぶつかる。

 

モコ「ふぎゃ!」

 

    そしてアナウンサーも緩やかに辿りつき、最後にアイエフが思いきり塀にぶつかる。

 

アイエフ「はごっ!? いったあ~~~~~っ」

 

    一方の餃子屋主人、最後の抵抗。

 

餃子屋「手抜きか!? バカにすぐはぁッ!!」

 

    結局鉄棒から手を離してしまい地面にたたきつけられる。

 

餃子屋「ぐああああぁぁぁあああっ!!」

 

    そして屋台に轢かれ、片輪だけ餃子屋主人に乗った関係で屋台も片輪走行の末、アイエフが落とした携帯の上に倒れブレーキがかかる。

    携帯からばきっと言う音。

 

アイエフ「あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!」

 

    大きく口を開けて悲鳴をあげるアイエフ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○ルウィー・キノコタウン・国道・朝

 

 

ブラン「前方不注意……こ れ は ひ ど い」

 

    日本一、わなわなと感情を抑えきれず今にも沸騰しそうな様子で。

 

日本一「それは事故っていうの! 大惨事っていうの!」

ネプギア「今はあんまり大声出さないであげて……アイエフさん、どこに行ったかの見当は付きますか?」

アイエフの声「ううん。いつの間にかいなくなってた……」

ネプギア「じゃあ近くで迷子になってるかも……探しておきますから先に教会に帰っててくださいね」

 

    Nギアの通信を切り、ホーム画面に戻る。

    日本一、頭を垂れて。

 

日本一「はぁ……助けを呼ぶ声がしてそうなのに」

ネプギア「それは、コンパさん達に任せましょう?」

ブラン「ところで二人とも、どうしてルウィーに? 呼びつけた覚えはないけれど」

日本一「ユニから連絡があったんです。テロが起きてるって」

ブラン「テロってほどじゃなかった気がするけど……まぁいいわ。それじゃあ……」

 

    ネプギア、ブランの腕を掴んで引きとめる。

 

ネプギア「あ、そうだブランさん」

ブラン「なに?」

ネプギア「ちょっと、耳を貸してくれませんか?」

ブラン「……いいけど」

 

    ブラン、ネプギアに右耳を近づける。

 

    *      *      *

 

    顔のない雪だるまがちょこんと立っている。

 

ブランの声「なるへそ。ミナにも伝えておく。帰ってきたらロムとラムにも」

 

    *      *      *

 

    ブラン、被害にあったNPC達を誘導しつつ今にも去ろうとしている所。

    その余所で座り込んでいる日本一、手のひらサイズの顔のない雪だるまの頭に手の部分と同じ木の枝をさし込み頭をとげとげにする。

    ネプギア、やや前に乗り出すような姿勢で。

 

ネプギア「二人とも、クエストですか?」

 

    ブラン、再度止まって振り返り。

 

ブラン「いいえ。おばあちゃんに会いに行くと言っていたわ」

 

    ネプギア、姿勢を戻す。

 

ネプギア「おばあちゃん?」

 

    日本一、この後雪だるまをいじろうにいじれず、どうしようかと座ったまま考える。

 

ブラン「私にも教えてくれない。”赤ずきん”のようになってなければいいけど」

ネプギア「大丈夫ですよ。あれでも二人は」

ブラン「その”おばあちゃん”とやらの方が」

 

    ネプギア、何とも言えず苦笑い。

 

ネプギア「あぁ……」

 

    ブラン、その後何も言わずに踵を返して被害にあったNPC達と共にその場を去る。

    ネプギア、ブランの背中に向けて控え目に手を振る。

    日本一、迷った挙句とにかく枝を突き刺して全身をとげとげにしてしまう。

    なかなか(物理的に)痛そうな見た目。

    ネプギア、振り返るとその雪だるまが目に留まる。

    しゃがみ込んでまじまじと見ながら軽く雪だるまをつついてみる。

 

ネプギア「……なんですかこれ?」

 

    枝が痛かったのかすぐつついた手を離す。

 

日本一「見ての通り! 雪だるま!」

ネプギア「凶暴過ぎですよぉ。こんなとげとげになっちゃって」

日本一「モンスターに当てるのよこれ」

ネプギア「確かに当たったら痛いですけど……雪だるまなんですからもうちょっと可愛くしてあげても」

 

    日本一、勢いよく立ちあがり、炎を巻き上げ燃え上がってみせる。

 

日本一「雪だるまも強くなければ生きていけないのよ!」

ネプギア「はぁ……」

 

    日本一がまとう炎で雪が急速に解けていく。

    ネプギア、ただ燃え上がる日本一を冷めた目で見上げる。

 

がすとの声「燃え盛っちゃってる所申し訳ないですけど」

 

    少し張り上がった声に気付いて日本一を巻き上げる炎は消え、ネプギアはすっと立ち上がる。

    声の方を向いてみると、そこにはがすとの姿。

 

ネプギア「がすとちゃん!」

 

    可愛げのある足音を立てながらぴょこぴょこと帽子の耳を揺らしてネプギア達の元へとくるがすと。

    右手をあげてごあいさつ。

 

がすと「おいっす、ですの。丁度いいところにいてくれたですの」

日本一「丁度いいって?」

 

    そのまま右手を下ろす。

 

がすと「一緒にリーンボックスまでついてきてほしいですの。安全のために」

ネプギア「いいけど、なにかあるの?」

がすと「これを見るですの」

 

    がすと、細長いバー形状の機械を取り出し、クッキングラップを使うように機械の近くで手を握り、これを引っ張る。

    すると機械と手の間にスクリーンが広がり、WEBブラウザーが表示された。

    ブラウザーにはラステイションのみんつぶ広場が映っており、画面に更新されていく呟きのほとんどが「リーンボックスから情報が途絶えた」という旨のもの。

    「クラックを受けている」という呟きもちらほら。

    がすとが裏からタブをタッチすると画面が切り替わり、大型掲示板の『あのリーンボックスで美女達にハーレム食らって帰れんくなったわ』スレが映る。

    ここにも「クラックを受けた」と騒いでいる書き込みが周囲にうざがられてスルーされつつもある。

    三番目のタブをタッチすると、ページが見つかりませんのメッセージが表示される。

 

がすと「がすとが投資しているベンチャー企業がリーンボックスにあるですけど、さっきっからこんな感じですの。心配で様子を見に行きたいですの。あ、最後のはVeable(ベーブル)ですの」

ネプギア「てことはあっちでWEBが見れないの?」

がすと「恐らくは。直接目で見るしか事態を知るすべがないですの」

 

    日本一、それを聞いて作ったとげとげ雪だるまを思い切り遠くへ蹴飛ばす。

 

日本一「おりゃあーーー!!」

ネプギア、がすと「おおっ!?」

 

    驚いて日本一を見る二人。

    ブラウザを表示していたスクリーンがその瞬間消えた。

 

ネプギア「あーっ! 雪だるまー!!」

がすと「雪だるま?」

 

    そして蹴った足を痛そうにさする日本一。

 

日本一「いたたた……」

ネプギア「あぁ……雪ちゃん可哀そうに……」

がすと「名前ですの?」

 

    気合十分にがすとへ顔を向きなおす。

 

日本一「そうときまれば、リーンボックスへ急ぎましょ!」

 

    すると日本一の頭上に突如雪が、屋根瓦や木に積もった状態から重みで落ちるように落ちてきた。

 

日本一「もべらっ!?」

 

    思わず声をあげ首を曲げる日本一。

    ネプギア、空を見上げて振ってきているものは何もないことを確認し、愕然とする。

 

ネプギア「えぇっ!? なんで!?」

がすと「きっと仇打ちですの。解かされたり蹴飛ばされた仲間の」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○リーンボックス・第3階層・セラギアフィールド・兵士村通り・午前

 

    ガラスのような材質で出来た地面(反射はしない)の上に立ち並ぶ箱型建造物。

    皆、鉄工場をイメージしたような重圧感ただようデコレーションを施されている。

    その壁には『We are Gears of Box』と書かれた歯車が描かれたピクチャーが張り巡らされており、ここ一帯だけはどことなくラステイションの街並みを思い出させる。

    淡々と話し始めるがすと。

 

がすと「この前アトリエで雑用している妖精さん達が蒸発しちゃったですの」

 

    がすとの発言に一瞬激しく引いた反応を見せるネプギアと日本一。

 

ネプギア、日本一「蒸発!?」

 

    がすと、一度止まって二人を向いて弁解。

 

がすと「あぁ、家出したって意味で、消えてなくなっちゃったわけじゃないですの」

 

    ネプギア、日本一、引いたことで開いた距離を戻してまた三人そろって歩きだす。

 

日本一「なんだよかった……」

ネプギア「妖精って聞いたからそういう生体だとてっきり」

がすと「生物なんだから何もしないで消えてなくなったりはしないですの」

ネプギア「でも、なんで家出しちゃったんだろう……」

日本一「仕事の成果が感じられないとか? ほら、がすとのアトリエって遊び行く時大体散らかってるでしょ? 掃除してもがすとがそれ以上に散らかすからとか」

がすと「なんか調合すれば必ずそうなるですの」

日本一「いや自分で掃除しなよ……」

がすと「それが妖精さんの仕事ですの。これでも募集掛ければいっぱいくるですの。でも定員は3人、期限付き契約ですの」

ネプギア「人数増やせば部屋もきれいになるのに」

日本一「もうちょっと増やしたっていいじゃん」

がすと「さっき言ったように投資もしているのに、そんなに報酬払う余裕なんてないですの」

 

    ネプギア、日本一、再度止まり首を垂れて大きくため息。

 

ネプギア、日本一「あぁ、就職難……」

 

    がすと、正面に何かを見つけ、二人をよびつけ指をさす。

 

がすと「二人とも、ちょっとあれを」

 

    顔だけをあげる二人。

 

ネプギア、日本一「ん?」

 

 

○同・陸兵訓練場直前

 

    通りを抜けると急に吹き抜けになり、そこに子供だらけの人だかり。

    紅と黄が品よく混じった髪の少女がオルガンで弾く童謡に合わせて歌いながら、3列に広がってお遊戯している、さながら移動幼稚園(もしくは保育園)のよう。

 

子供達「はっぱがとんだー♪ くるんっ♪ くるんっ♪ かぜふきとんだー♪ ひゅーっ♪ ひゅーっ♪」

 

    大きく手を広げながらくるんの言葉と共に回り、ひゅーの言葉と共に体重を左右にずらし反対の足をあげる。

 

子供達「おそらへとんだー♪ ふわーっ♪ ふわーっ♪ 大きな木が見えたー♪」

 

    元気よく飛び跳ねた後、より一層大きく手を広げてえばるように胸を張り、両手を腰に当てる。

    ネプギア、日本一、がすと、呆然とその様を見ている。

 

がすと「確かここ兵隊の訓練場だったような……」

ネプギア「兵隊さんはいないみたいだけど……」

子供達の声「はっぱがとんだー♪ くるんっ♪ くるんっ♪ とつぜんとんだー♪ ひゅーっ♪ ひゅーっ♪」

日本一「いいの? 子供達があんなとこでお遊戯してて」

子供達の声「えだからとんだー♪ ぴゅーんっ♪ ぴゅーんっ♪ もすこしいたかったー♪」

がすと「がすとに聞かないでほしいですの」

 

    尚も手を広げくるくると回り続ける子供達。

 

子供達「はっぱがとんだー♪ くるんっ♪ くるんっ♪」

 

    子供達の奥にはロムとラムの姿が見え、子供達と一緒に手を広げて回っている。

 

ラム、ロム、子供達「かあさんみえたー♪ くるんっ♪ くるんっ♪ とおさんみえたー♪ くるんっ♪ くるんっ♪」

 

    ネプギア、ロムとラムの姿に気付く。

 

ネプギア「あれ……ロムちゃんにラムちゃん?」

ラム、ロム、子供達の声「ぼくがみえないのー♪」

ネプギア「どうしてこんなところに……?」

 

    曲がここで終わる。

 

がすと「同年代の(ニーズ)狙いですの?」

日本一「なるほど、布教かー。女神らしくなってきたねぇ……おねーさんうれしいっ!」

 

    ラムが子供達に集合をかける。

    ロムも続いて控え目に号令をかける。

 

ラム「お友達のみんなー! 集まんなさ~いっ!」

ロム「あつまれ~っ」

子供達「わーーーーっ!」

 

    ロムとラムの号令で広がっていた子供達が一斉に一か所に集まっていく。

 

モコ「お……ほぇ……」

 

    楽しそうに走っていく子供達をネプギア達から見て左端の方で戸惑いと迷いの目で見ながら、その場にとどまってしゅんとなってしまうモコ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ネプギア「あーっ!! モコちゃん!!」

日本一、がすと「えぇっ!?」

 

    モコを見つけて突然指をさして叫ぶネプギアに驚く二人。

    モコもネプギアの存在に気付くが、なぜかしおらしくなり俯く。

 

モコ「あ! ぎあちゃん……」

 

    ネプギアの声を聞いてネプギア達に気付き嬉しそうに声をかけるロムとラム。

 

ラム「ん?」

ロム「あ、ネプギアちゃん……!」

ラム「ネプギア!」

???「おや、知り合いかえ?」

 

    口調に見合わない幼さと上品さを兼ね備えた声が聞こえて来ると、先ほどオルガンを弾いていた少女がドレスのような黄緑色のワンピースをなびかせてロムとラムの側に来る。

 

ロム「うん。おんなじ女神のともだち……」

子供達「わぁっ」

子供B「めがみさまー?」

 

    ロム、慣れたような笑顔を少女に向ける。

    ラムも同様に輝かせているような視線を少女に送る。

    気になって、ネプギア、日本一、がすと、子供達の集まりに割って入ってくる。

    三人、子供達から手厚い歓迎を受ける。

 

子供A「めがみさまだー!」

子供C「めがみさまー」

 

    子供達に笑顔を向けるネプギア。

 

子供E「がすとちゃんひさしぶりー」

がすと「おひさしですの」

 

    子供に向けて手を振るがすと。

 

子供D「ぺたんこヒーローだー!」

日本一「むおぅっ!? グサッとくるぅ……」

 

    ぺたんこよばわりに胸を痛める日本一。

    ラム、少女の腕を掴んで指をさして三人を紹介する。

 

ラム「おばあちゃん、この子がネプギアで」

ネプギア、日本一、がすと「おばあちゃん!?」

 

    三人、ラムが言う少女の呼び名に耳を疑い思わず大声を出してしまう。

    突然の大声に目を回しながら耳をふさぐ少女。

 

???「あぁ~みみがぁ~」

ネプギア「あぁ、ごめんなさい……」

ラム「ダメよ大声出しちゃ……で、こっちが日本一に、がすとちゃん!」

 

    すぐに体勢を立て直した少女、ネプギア達に一礼して笑顔を向ける。

 

???「おやまぁこんにちは。ロムちゃんとラムちゃんのお友達かい?」

ネプギア「えぇ、まぁ……あなたは?」

がすと「お初にお目にかかるですの」

日本一「どうもー」

???「あたしゃユーアです~。どうぞよろしくねぇ~」

 

    ネプギア、ユーアの喋り方を聞いて納得した様子。

 

ネプギア「はい……よろしくお願いします……なるほど、だから”おばあちゃん”なんですね……」

ユーア「はい……?」

ネプギア「いえいえ! なんでもありません!」

ユーア「よかったら一緒にお歌うたっていかないかい?」

ネプギア「あぁ……いや、その……」

 

    ユーア、まだ遠くの方にいるモコに顔を向けて。

    モコ、そわそわして落ち着きがない様子。

 

ユーアの声「ほぉら、モコちゃん、こっち来なさいな~!」

モコ「ほぎょっ!? うぇ……」

 

    ユーアに呼ばれて身体をびくんと揺らし、重い足取りでネプギア達に混ざりに行く。

    ロム、やってきたモコを心配そうな顔で見つめ。

    ラムや子供達はキョトンとした顔で見つめ、ユーアは遠くから見守るような目で見ている。

    ネプギア達も疑問をその表情に秘める。

 

ロム「どうしたのモコちゃん……?」

 

    モコ、鼻をすすりながら間を開けた後、不安げに口を開く。

    現在、完全にロムとラム以外目に入っていない。

 

モコ「あのね……」

ロム「うん……」

モコ「わたし……わたしほんとうに……みんなの”おともだち”なのかな……?」

 

    ラム、けげんな顔で首をかしげて。

 

ラム「どーゆーことよ?」

 

    モコ、言葉にしていく度にずるずると引きずられるように声に涙が混じっていく。

 

モコ「だって……だってさいきん、なんにもこーかんしてないし」

 

    ロムもその小首をかしげる。

 

ロム「こーかん……?」

ネプギア「あぁ、えっとね……モコちゃん、物々交換ショップやってて──」

 

    ネプギア、補足を入れようとするもモコが気にせず話を続ける。

 

モコ「ともだちになろうって話しかけても、うざいきもいってぷいって行っちゃうし……ともだちアタックしたら、ぶたれたり投げ飛ばされたりするし……」

 

    ラム、ロム、お互い向き合って顔を見つめる。

 

ラム「ロムちゃん、わかる?」

 

    ロム、静かに首を横に振る。

    モコ、その間にすすり声をあげたかと思うと。

 

モコ「ひん……ふうえええぇぇぇぇぇぇぇぇ~」

ラム「えええぇぇっ!?」

ロム「ふぇ……!」

 

    泣き声を洩らすモコに戸惑う二人。

 

モコ「うええぇぇぇぇぇぇぇ~、この前もワレチューちゃんたちにお店ぼぉぼぉにされっちゃったしぃ……」

ロム「ひどい……!」

ラム「え? わかるのロムちゃん……?」

 

    何かを感じ取ったロムに戸惑うラム。

    ネプギアがまたも話を補足する。

 

ネプギア「その店がワレチュー達に放火されてなくなっちゃったの」

がすとの声「悲惨ですの……」

ラム「なにそれ、ひどい!」

モコ「さっきもあいちゃんとおじさんたちがこわいかおでけんかしちゃってうわああぁぁぁぁぁぁぁっ~」

ラム「ネプギアぁ! この子一体どんだけ悲しいことあったのよぉ!」

ネプギア「えーっと、えーっと……」

ユーア「どうしたんだい? ほら……」

モコ「うわあああぁぁぁ……うぇ……う?」

 

    おもむろにユーアが大泣きしているモコを包み込むと、モコは次第に泣きやんでいった。

    こうしてみるとこの二人の身長差がそれほどないことがわかる。

    このやりとりに飽きてきたのか子供達の約半数が追いかけっこをして遊び始める。

 

ユーア「そんなことしなくたって、ここにいる子はみーーーんな、あんたの友達だよ?」

 

    モコ、ユーアの身体に顔をうずめながら。

 

モコ「ともだち……」

ユーア「そう」

 

    一転して砂地が広がる訓練場内部で、追われる側に負う側がタックルしてひとしきり転げ回った後、土埃だらけの顔を見て笑い合う男子グループ。

 

モコの声「ほんとに……?」

ユーアの声「ほんとに」

 

    女子グループが訓練場の奥で何かを見つけたらしく、その場所へと走っていく。

 

モコの声「ほんとのほんとに?」

 

    ユーア、モコの肩を持って、ゆっくりとモコの目と自分の目を合わせるように持っていく。

 

ユーア「ほんとのほんと。だから、仲良くしてあげるんだよ?」

モコ「うぅ……う……」

 

    モコ、目に涙がジワリと浮かんでくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

    次の瞬間、両手を左右にぐんと広げ。

 

モコ「ともだちーーーーーーーっ!!」

子供達「おぉっ!?」

ユーア「みみぃ~」

 

    ユーア、突然の大声に耳をふさいでよろける。

    周囲にいる子供達、大声に一歩後ずさる。

    ユーアを受け止めるロムとラム。

 

ロム「大声だめ……」

 

    とロムが言ってもモコの耳には届かず、走りまわり始める。

 

モコ「ともだちーーーーっ!! とーーもーーだーーちーーーーーっ!!」

 

    感動の雄叫びをあげながら激しく転がる。

 

モコ「ともだちーーーーーっ!!」

 

    転がるモコに指をさしてユーアの方に顔を向ける子供AとC。

 

子供A「ねーうるさーい」

子供C「うるさーい」

 

    尚も微笑みを崩さないユーア。

 

ユーア「よっぽど嬉しかったのかしらねぇ」

 

    転がりながら地面に手をついて起き上り更にそこからきりもみ2回転した後着地する。

 

モコ「ともだちーっ!」

 

    と言いながら自身の赤いフォンギアを取り出し前にかざす。

 

モコ「ともだちーっ!!」

 

    と言いながら『着信』と書かれたアイコンをポーズを取ってタッチする。

    追い駆けまわっている男子も奥へと駆ける女子も皆スローになる。

    フォンギアからアーマーが飛び出し、モコの周りに格子状のフィールド、格子状のフィールドのマス目にボクセルが打たれていき形をなしていく。

    アーマーはモコの周りを一周した後上半身に着れるような形になり、モコと言うよりモコの周りに打たれたボクセルに急接近。

    次の瞬間、突風が巻き起こり、子供達の髪が風で容赦なく荒れていく。

 

子供達「わーーーーっ!!」

 

    腕で目や顔を防ぐ者もいれば、他の子供を盾にしたりする者もいる。

    ユーアとロムとラム、両隣にいる子供と密着して吹き飛ばされないように目をつむって耐えているつもり。

    風が止み、ZH(ジーンハート)が両手を高く掲げる。

 

ZH(ジーンハート)「とぉぉもぉぉだぁぁちいいいぃぃぃぃーーーーーーーーーっ!!!」

 

    目を開けるユーア、ロム、ラム達。

 

ラム「も~なんなのよぉ~……うわあっ!? モコが、でっかくなっちゃった!?」

ロム「変身してる……っ!」

ユーア「うぅぅ……」

 

    一方のネプギア、日本一、がすと。

    ネプギアはスカートを押さえて呆然。

    日本一はあいた口と目が塞がらない。

    がすとは目を白黒させたまま口が縦にあいたままふさがらない。

 

がすと「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ……」

日本一「変身……しちゃってる?」

ネプギア「紛れもなく……」

日本一「マジで!?」

 

    一転して興味引かれている表情に変わった日本一を余所に、ZHは天を突いた手を胸元に戻し、顔は天を仰いだまま握り拳を震わせる。

 

ZH「ともだちぃぃぃぃぃぃ……っ!!」

がすとの声「もういいですの」

ラムの声「普通あそこまで喜ぶ?」

ユーアの声「ほぉぉぉぉ……」

 

    ユーアの声に我を取り戻し、染みているような表情を解くZH。

 

ZH「ん?」

 

    ZHの元をなめるようにして近づいていくユーア。

    足先から頭まで一通り眺めた後。

 

ユーア「モコちゃんもお電話もっとるのかえ?」

 

    ZH、真顔で小首をかしげる。

 

ZH「お電話?」

ユーア「赤い四角のお電話持ってたでしょ?」

ZH「……あぁ!」

 

    フォンギアのことだと理解し、理解したことを露骨に示す動きをした後、笑顔を見せてうなずいてみせる。

 

ZH「えぇ! これは我が一族の宝です!」

 

    子供達が背景になじんで好きに遊び始めている。

    ロム、ラム、いつの間にか来てユーアの服を引っ張りながら。

 

ラム「ねーねー、お電話って何? おばあちゃん」

 

    そう聞かれてユーア、自分の懐からその『お電話』を出してみせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ユーア「これがお電話だよ」

ZH「おぉ……私のと同じものだ! あ、でも色が違う……」

 

    ユーアが取り出したのは、灰色をしている以外はモコ(今はZH)の持つそれと同じようなフォンギア。

    ZH、自分の手に取ってわくわくした表情で操作し始める。

    ネプギア達も追いついてこれを目にする、いやZHが動かしているので一生懸命目で追っている。

 

ネプギア「これ……フォンギア!」

 

    ZH、操作感覚を確かめるように実に楽しそうに無駄に着信アイコンのタッチと画面のフリックを繰り返している。

 

日本一「なにそれ?」

がすと「売れるんですの?」

ユーア「う~ん売ることは出来ないねぇ、これあたしのじゃないかんねぇ」

 

    そのまま灰色のフォンギアを掲げて。

 

ZH「よし着信だ!」

 

    日本一、身を乗り出して。

 

日本一「更にパワーアップするの!?」

 

    ZH、ポーズを取って着信アイコンをタッチ。

    しかしエラーを返されるだけで何も起こらない。

 

ZH「……あれ、できない」

 

    日本一、冷めてどっと力が抜けるように。

 

日本一「なんだ……」

ネプギア「もう自分のでしてるからじゃないかな?」

 

    ZH、ぽかんとネプギアを見つめた後納得したように合点する。

 

ZH「……それもそうですね」

がすと「それどちら様の奴ですの?」

 

    ユーア、困った顔で首をひねる。

 

ユーア「さぁ……いつだったかあたしのがいつの間にかなくなっててねぇ、代わりにこれが置いてあったんだよ。あたしのは黄色だったんだけどね? 代わりにこれが置いてあったんだよ。あたしのじゃないんだよねぇ、あたしのいつだったか忘れたけどどこに行ったのか、何でか知らないけどこれが代わりに置いて」

 

    ネプギア、少々うんざりしているのを悟られないようにソフトにユーアの喋りを止めに入る。

 

ネプギア「今その代わりに置いてあったそれを使ってるんですね。わかりました」

 

    日本一、ZHを見やりながら輝かしい目で質問する。

 

日本一「ねぇねぇ! 同じもの持ってるってことは、あなたも変身できるってこと!?」

 

    ZH、灰色のフォンギアを一瞬見た後、ユーアの手元に返しつつ。

 

ZH「それではユーアちゃんも?」

ユーア「さぁ、それは分からないねぇ。なにしろあたしのじゃないかんねぇ、あたしのどこ行っちゃったんだろうか、いつの間に──」

 

    ネプギア、またユーアが話をリピートしそうだと感じ取り、こちらから話題を振って制する。

 

ネプギア「あの! ということは、ユーアさんも女神なんですか?」

 

    ラム、ネプギアの言葉にユーアを見て反応する。

 

ラム「そうなの!? おばあちゃんもモコも女神なの!?」

ユーア「んーそもそもあたしその女神っていうのがよくわかんないんだよねぇ」

ZH「私もです!」

がすと「さわやか笑顔で言いよるですの……」

ネプギア「それじゃあ、国……とまではいかなくても、あの子供達くらいの数を養ってたりしますか?」

 

    首をひねったままのユーアに説明を続けるネプギア。

    ZHも首をかしげる。

 

ZH「?」

ネプギア「女神っていうのは国を作ってそこにいるプログラム達に居場所とかゲームとかを与えたり、プログラム達の目的の達成を助けたりするんです。ユーアさんはそういったことをしているのでしょうか? どうして、みんなで集まって歌ったりお遊戯したりしているんですか?」

 

 

ベールの声「わたくし達にも、お聞かせ願えますかしら?」

 

 

    声が聞こえ、話をしている全員が声の方を向くと、街並みが見える方角からベールと箱崎チカが並んで悠然と歩いてくる。

    ただ、子供達は気に留める様子はなく、ベールの前を無視して通り過ぎ、

 

チカ「いたっ……!」

 

    チカにぶつかったまま通り過ぎる子供もいる。

    そのことで一瞬倒れかけるチカ、ぶつかってきて通り過ぎた子供を一瞬睨みつける。

 

ZH「そなたは?」

 

    と、ネプギアに問いかける。

    ベール、自信に満ちた表情を一同に向ける。

 

ネプギアの声「ベールさん……」

ベール「ごきげんようネプギア。興味深い話を聞きに来ましたわ」

ラム「こんにちはベールさん」

ロム「こんにちは……」

 

    ロムとラムに合わせて素直にあいさつするZH。

 

ZH「こんにちは!」

ベール「ごきげんよう。随分と元気がよろしいですのね」

ZH「もう元気です!」

ベール「もう?」

 

    ユーア、全く態度を変えずに応対する。

 

ユーア「おやまぁ、今日はお客さんが多いねぇ」

ベール「ここリーンボックスと言う国の女神、ベールと申しますわ。ここはあなたの国ですの? ミス・ユーア」

ユーア「そうだよ。こうやって子供達とみんなでいろんな所に行って、いろんな景色を見ながらお歌うたったり、遊んだりして大事なことを自分で学んでいく。それが『モーバル』なの」

ベール「まぁ……そんな運用の仕方もありましたの?」

ネプギア「国って言っていいんですか、それ……?」

 

    ずずいとチカが顔をネプギアの前に近づける。

 

チカ「お黙り。今はお姉様が話しているのですことよ?」

ネプギア「すみません……」

 

    ネプギア、チカの圧力に委縮してしまう。

    ZH、それを無視するかのようにベール近づき、二の腕をつかむ。

 

 

 

 

 

 

 

 

ZH「友達になりましょうベールちゃん!!」

 

    ベール、目を白黒させぽかんと口を開ける。

 

ベール「……はい?」

 

    チカ、一瞬あっけにとられたがすぐさまZHの手をベールから引きはがす。

 

チカ「なにをおっしゃっていますの!? お姉様に気安くそのようなことを!」

 

    ZH、あくまで、今度はチカをまっすぐに見つめながら。

 

ZH「わたしはもう迷わない!! そなたも、友達になりましょう!!」

チカ「もののついでみたいに言わないで下さる!?」

 

    あくまで真っ直ぐに思いを伝えるZH、「ベールお姉様はあなたでは到底手の届かない高貴なお方……」などとZHの発言を全力で却下するチカ。(会話内容はアドリブ)

    その余所でネプギア、日本一、がすとが口を動かす。

 

ネプギア「チカさん、いつになく荒れてますね……」

 

    日本一、ZHを指さしネプギアの方を向きながら。

 

日本一「モコって、変身しても地はあのままなんだね……」

ネプギア「へ? モコちゃんとは初対面じゃなかったんですか?」

がすと「この前番組でパスタ食べにいった間柄ですの」

ネプギア「パスタ……?」

 

    チカ、言い合いに疲れ、ベールに助けを求める。しかし……

 

チカ「お姉様~! 何とか言ってくださいまし! ……お姉様?」

 

    ベール、目を白黒させているまま反応なし。

 

チカ「お姉様!」

ベール「……はっ! わたくしとしたことが、突然すぎるラブコールに混乱してしまいましたわ!!」

ZH「ラブコールとはなんです──だぁっ!?」

チカ「お忘れくださいなお姉様!」

 

    チカ、ZHを手で押しやりながら制する。

 

ベール「チカ、わたくしどこまで話しました!?」

チカ「あのユーアと言うものにここに来た用件を伝えようとした所ですわ!」

ベール「用件……えーと緊急掲示板の情報でコメント主の元に行って……うん、OK」

 

    ロム、ラム、子供達と共にしゃがんで待っていた様子。

    立ちあがって。

 

ラム「もーいーいー? 空気になってなくても」

 

    ラムもロムも若干不機嫌な様子。

    ベール、軽く咳ばらいをし、ユーアに向けて話を仕切りなおす。

 

ベール「こほん。さて、まだあなたに聞きたいことはありますけれど、一つ言わなければならないことが。この奥はリーンボックスの軍事演習のために使う場所で、わたくし達の兵が来るとこちらも、貴方がたもとても困ってしまいますの。ですから、皆さんで遊ぶ場所を移していただけないでしょうか?」

 

    不満そうな表情のラム。

 

ラム「えぇー?」

 

    納得した面持ちのユーア。

 

ユーア「あー、そうなの……それじゃあ仕方ないねぇ」

 

    ラム、ロム、目線をユーアに向ける。

 

ベール「よかったら、わたくし達がぴったりな場所をご紹介いたしますわ」

ユーア「ありがとねぇ。お言葉に甘えさせていただくわ」

ラム「まぁ、おばあちゃんがいうなら……」

 

    ユーア、ベールに言われて子供達を声と手振りで集める。

 

ユーア「お~いみんなぁ~。そろそろ次の場所行くよぉ~、おいでぇ~」

ラム「しゅーごー!」

ロム「あつまってー」

子供達「はーい!」

 

    子供たちの威勢のいい返事が聞こえ、ユーザの方へ集合していく中、ユーアはベールの方に向き直る。

 

ユーア「それにしても、どうしてここがわかったんだい?」

ベール「情報国家の名はだてじゃありませんのよ? 例え情報の流通が止まろうとも」

 

    ネプギア、日本一、がすと、ここへ来た目的を思いだして硬直する。

 

ネプギア、日本一、がすと「あ……」

 

    チカ、三人に遠慮なく疑念を向ける。

 

チカ「あ……って、まさかあなた方、ベンチャー企業の様子を見に行きたいですのー、リーンボックスへ急ぎましょ、もべらっ!(各キャラのものまねをチープながらにしつつ) なんて言っておいて、忘れていたんじゃありませんわよね?」

 

    ネプギアを一番大きく映してがすと、ロムとラム(何故か二人も)、日本一、ユーアと順番に小さくなり全員が映るような構図で全員カメラの少し斜めを遠い目で見つめながら一斉に。

    この際、子供Eが見切れて出ている。

 

ネプギア、日本一、がすと、ロム、ラム「しまった……!」

子供E「しまったじゃねーよ(棒)」

ユーア「んー?」

ZH「なにがでしょう?」

 

    よくわからず、首をかしげるZHとユーア。

    目線を解き、再びチカ達の方を向く一同。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日本一「ていうか、何で会話の内容そこまで……」

チカ「ま、あなた方なんか最初から期待していませんでしたけど」

 

    むくれる日本一。

 

日本一「むぅー……」

 

    チカ、徐々に抑えてきたイライラを煮込みたてながら。

 

チカ「そんな取るに足らないことよりもアタクシが腹立たしいっていうのは……」

 

    そして身体に回転をかけながらびしっと指をさす。

 

チカ「ケイブ!! あなた、なにしに出かけたというんですの!?」

ZH「ケイブ?」

 

    子供達もだいぶ集まってきた頃、全員の目線がチカの指先の向こう側へと行く。

    映した目線の先では、ガラスのような地面の上に展開された立方体の箱の形をした床が敷かれており、はみ出さんばかりのぬいぐるみが山になっている。

    その床の中心で、ケイブがクッションに出来るほどのサイズのリラ~ックスしまくっているようなクマのぬいぐるみ(通称:『グテックマ』)を少し潰れるほど抱きかかえて、ぬいぐるみの山の中で座っている。

    顔もぬいぐるみにうずめている。

 

ZHの声「おぉ、あんな所に!」

日本一の声「いつのまに……」

がすとの声「あそこだけぬいぐるみのバーゲンセールですの」

ネプギアの声「あぁ! またモコちゃんが!」

 

    ZHがぬいぐるみの山の中のケイブに向かって走っていっている。

 

がすとの声「しかし何故にですの?」

ユーアの声「たま~にお話が苦手でね、ぬいぐるみのお友達を作る子がでてくるの」

ベールの声「これは少し……投げやりな気もしますわ」

 

    ぬいぐるみに顔をうずめて全くこちらに気付いていない様子のケイブに話しかける。

 

ZH「ケイブちゃんと言うのですか?」

 

    モコの声が聞こえ、ぬいぐるみからはっと顔を離し、すぐさまZHの方へ顔だけ向き直るケイブ。

    驚いていた表情が急速に解けて無に返っていく。

 

ケイブ「あなたは……?」

ZH「私はモコ! あなたと友達になる者です!」

ケイブ「ともだち……?」

ZH「ええ! 私はゲイムギョウ界の者たち全員と友──おぉっ!?」

チカ「おどきなさい! ケイブ、アタクシの言いたいことは分かりますわよね?」

 

    ZHを無理やり手でどかし、眉間にしわを寄せておかんむりな様でじっとケイブを見るチカ。

 

ケイブ「……チカ?」

チカ「チカ? じゃあありません!」

 

    ぬいぐるみを抱きかかえたまま立ちあがって臨戦態勢に入りかけるケイブ。

 

ケイブ「まさかまた偽物……」

チカ「そうじゃなくて!!」

 

    落ち着いて肩の力を抜いて、ぬいぐるみを抱いたままチカの話を聞く。

    なまじ長身なためシュールに映る。

 

ケイブ「そう……ごめんなさい。迂闊だったわ……」

チカ「あなた……アタクシから何と言われて外に出ましたの?」

ケイブ「……」

 

    ケイブ、しばらくチカから目線を外して考えた後、思いだしたかのようにまた目線をチカの方へ戻し。

 

ケイブ「国民達に伝言板を運べと……」

チカ「それがなんでぬいぐるみと戯れているの!? あなたがそんなだから、マジェコンヌの宣伝隊にまんまと侵入されて逃げられましたのよ!? まぁあまり成果は上がらなかったようだけど」

ZH「なんのお話で──」

チカ「お黙り」

ZH「何故?」

チカ「いいから!」

    

    激情中のチカに恐る恐る近づいて事態を聞きだすネプギア。

    その後にがすと、日本一とついてくる。

 

ネプギア「あの、チカさん……リーンボックスで一体何が起こっているのでしょうか?」

 

    チカ、一呼吸置いてネプギアの問いに答える。

 

チカ「はぁ……つい先ほど、マジェコンヌが新型マジェコンのポジティブキャンペーンをしにリーンボックスを回っていましたのよ。ラステイションで最後だなどとぬかしていましたわ。その前から何者かからクラックを受けて情報が全部止まって、今復旧と犯人の捜査中ですの」

 

    がすと、茶々を入れるように。

 

がすと「喋り方被ってるですの」

チカ「被ってない!!」

 

    迫力にたじろぐZHを除く三人。

 

チカ「……とにかく、早く対処をしないとまたシェアが減っていきますわ」

がすと「NINJAクラウドっていう企業は今どうなっているですの?」

チカ「自分の足でお調べなさい」

 

    そう言って、ケイブの腕を引っ張り無理やり連れて行く。

 

チカ「ケイブは教会で待機! あとでこってりお説教して差し上げますわ」

ZH「あの、どこへ……」

 

    ベール、ユーアとロムとラムと子供達に号令をかける。

 

ベール「それでは出発しますわよー!」

ロム、ラム、子供達「はーい!」

 

    ZH、首をかしげながらベール達についていこうとするが。

 

ネプギア「モコちゃん、こっちおいで。ユーアさん達とはここでバイバイして教会帰ろう?」

ZH「え? 何故です?」

ネプギア「これ以上勝手に遠くへ行っちゃったらみんな心配しちゃうよ」

ZH「はい……」

 

    ネプギア達の所へと戻っていく。

    チカ、呼び出し音が鳴ったのに気付く。

 

チカ「あら? 復旧いたしたのかしら?」

 

    停止してケイブから手を離し、自分の正面の空間を手でなで、その後自分の耳に指をあてる。

    撫でられた空間からコンソールが開き、オフィスを背景に女性社員が映し出される。

 

チカ「はい、こちらリーンボックス教会ですわ」

 

    チカ、どうやらイヤホン越しに聞いているよう。

 

チカ「え!?」

 

    驚きの表情を見せる。

    一方で移動をし始めているベールやユーア達。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロム、ラム、子供達「どーおしておーなかーはへーるのかな♪」

 

    そこに慌ててチカがやってくる。

 

チカ「お姉様! お姉様!!」

 

    歌が止まり一旦停止する一同。

 

ベール「どうしましたのそんなに慌てて」

チカ「ゲのマのズから先ほど『夜明けの逆ハーレム伝説 超限定生産版』がよ~~やくっ! 入荷されましたわ!」

ベール「なんですって!? こうしてはいられませんわ! すぐに取りに行きましょ!」

ラム「えぇっ!? ちょっとわたしたちはー!?」

 

    ベール、チカと共に慌ててその場を立ち去りながらラム達に平謝り。

 

ベール「ごめんなさい皆さま! わたくし急用ができてしまって、場所はユーアさんに言いましたからー!」

ネプギア、日本一、がすと「オイッ!」

 

    ネプギア、日本一、がすと、一斉に突っ込みの型。

    ZH、自分の手を見た後自分も見よう見まねでやってみる。

 

ZH「おい……」

 

    チカ、あまり速く走れない様子でベールを追いかける。

 

チカ「お待ちになって! お姉様あああああっ!!」

 

    姿と共に二人の声も遠くなっていく。

 

ZH「……」

ネプギア「……」

日本一「……」

がすと「……」

ユーア「ほー……」

ロム「……」

ラム「……」

子供達「……」

 

    取り残された全員がその場で静止。

    しばらくして、がすとが沈黙を破る。

 

がすと「それじゃあがすとは自分の用事を済ませるのでこれにて」

ZH「お帰りですか?」

がすと「その通りですの。ばいばいですの」

ネプギア「うん。じゃあね」

日本一「ばいばーい!」

ユーア、ロム、ラム、子供達「ばいばーい!」

 

    がすと、ぴょこぴょこと音を立てながらその場を去る。

 

ネプギア「……それじゃあ、わたし達も帰りましょうか」

日本一「そうだね」

ケイブ「ええ。さようなら」

ユーア、ロム、ラム、子供達「さようならー!」

 

    ネプギア、ZH、日本一もケイブ達に見送られてその場を離れていく。

    その後でユーア、首をひねって。

 

ユーア「それにしても何だったんだろうねぇマジェコンヌていうのは。あたしらみたいにいろんな所いってるのかねぇ?」

ラム「マジェコンヌは悪者よ!」

ユーア「それじゃあ、ラステイションに行って何をするつもりなんだろうねぇ?」

 

    ネプギア、日本一、何かに気付いて静止。

 

ネプギア、日本一「あ……」

ZH「はい?」

 

    そしてネプギア、日本一、ロム、ラム、ケイブ、そして更にその場から居なくなったがすと、ベール、チカまでもが何故か戻ってきて、先ほどと同じように全員が入る構図で遠い目をし。

 

ネプギア、日本一、がすと、ロム、ラム、ベール、チカ、ケイブ「忘れてた……!」

子供E「ばかかおめーら、はやくいけよ(棒)」

チカ「あなたも早くお行きっ」

ケイブ「ていうか、何故三人とも戻ってきているの?」

ベール「秘密」

がすと「ですの」

ZH「??」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○ラステイション・クラチェストリート・昼

 

    味のある機械に囲まれている通り。

    ネプギア、日本一、ケイブ、そして変身を解いたモコが「人類では攻略不可能と言われた弾幕を攻略した人物が出たという話題」で雑談をしながら歩いていく。(アドリブ)

    もうすぐ広場にさしかかる所で話が変わる。

 

モコ「ねーねー、ケイブちゃんきょーかいにもどるんじゃなかったのー?」

ケイブ「せめてマジェコンヌの方は私で責任を取りたいの」

ネプギア「命令は破らない方が……」

日本一「それにしては、随分とゆっくり歩いちゃってるねアタシ達」

ケイブ「気負い過ぎるのもよくないわ。それに最後にラステイションを狙った辺り、向こうにも考えがあると見れるわ。焦ってもピチュるのが落ちね」

モコ「ぴちゅるー?」

ネプギア「あれ? でもそうなるとプラネテューヌが襲われてないのはなんでだろう……」

モコ「なんでだろー」

日本一「これ以上落とすと可哀そうだからじゃない?」

ネプギア「あんまり笑えないですけど、それもそうですね」

ネプギア、日本一「ははははははは!」

 

 

BH(ブラックハート)の声「なぁーにがはっはっはーよこのスカポンタン!!」

ネプギア「え……?」

 

 

    笑っている所、ノワールの声がして、よく正面を見てみると、広場でBH(ブラックハート)が例のサーカス団のリーダーと思わしきピエロの男を踏み倒して立っている。

    見た所、サーカス団はBHと横でしゃがみ込んで”の”の字をひたすら書いているBS(ブラックシスター)によって懲らしめられた模様。

 

BS(ブラックシスター)「どーせ適当にぶらぶらしてからくること分かっていたのに、アタシってほんとバカ……いやマジで、なんで日本一(あいつ)に言っちゃったのよ……」

 

    ネプギア達、光景を見て唖然。

 

ネプギア「あれぇー……?」

モコ「ほぇ?」

ケイブ「……」

日本一「……え? 終わって……ます?」

 

    BH、かなりご立腹の様子で、足蹴にしているピエロの男をもう一度力強く踏みつけながら。

 

BH「終わったわよ再逮捕!! 今!! 遅すぎるのよ何もかも!!」

ピエロの男「あおっ!? ……Noooooo……」

 

    ピエロの男から足を離してずかずかとネプギアの方に歩み寄る。

 

BH「ね~~ぷ~~ぎ~~あ~~~?」

ネプギア「は、はいっ!?」

 

    ネプギアの腕をつかみ、突然のことで足が追いつかないのも気にせずにそのまま引きずるようにしてネプギアをどこかへつれていくBH。

 

BH「ちょっと来なさい!! 第一女神みんな呼びつけてやるんだから!!」

ネプギア「あ、あ、あ、あの! お姉ちゃんは今ちょっと──」

BH「プラネテューヌはアンタでいいわ!!」

ネプギア「ええぇぇぇぇぇぇ……」

 

    モコ、日本一、ケイブ、BHに引きずられていくネプギアを見送る。

 

日本一「い、いってらっしゃ~い……」

モコ「どこいくのー?」

ケイブ「さぁ……」

 

    隅の方で、まだ”の”の字を書いているBS。

 

BS「魂まで黒く濁りそう……」

 

 

 

○同・上空・昼

 

    基本的に低身の工場が並ぶ光景だが、ある一帯だけ長い電波塔やビルが存在している。

    相変わらず全体的に少しだけ薄黒い空気に包まれている。

 

 

 

○同・某ビル屋上・昼

 

    黒と灰色の混じったage嬢盛り髪サイドポニーヘアスタイルにメンズから取ってきた服装の原宿系ギャルの印象が付きまとう少女が通話しながら寝転がっている。

 

少女「……あ、アヤぱん? うん乙~……うん、終わったー。意外とちょろかったしね、ラステイション」

 

    少女の手にあるそれは、黄色のフォンギア。

 

少女「なんか肩スカっつーか、え!? そんだけ!? みたいな」

 

    寝返りを打って横になる。

 

少女「だってさだってさ、向こうさ、セキュリティをシステムに丸投げしときゃいいとか思ってんだよ? ありえなくない? うん」

 

    口元には不敵な笑み。

 

少女「あ、それとい~お知らせぇ~。リーンボックス? だっけ? からねぇ、釣れそう。うん。ぜってー大漁。ふふふっ、まじで~? 損はさせんぞよ。うん。じゃね」

 

    フォンギアのスクリーンを親指でタッチし、通話を切る。

 

少女「おいっ……しょっと……」

 

    けだるそうに起き上り、座った姿勢でラステイションの濁った街並みを見つめている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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