つぐみちside
〈―――〉
俺は、ジュエルシード気配がして目が覚めた。服を着替えながら隣で寝ているみつるを見た。
みつるにはあんなこと言ったがこれでよかったのだろうか……本心では一緒に手伝いたいと思っているんじゃないのか。もしかして、みつるがそれを言う前に俺がそれへの道を閉ざしてしまったんじゃないだろうか。
……いや、いくら魔力を持っていたとしても俺となのはの二人でも回収に手間取るほどの代物だ。みつるが手伝うとして、もし何らかで大怪我でもしたらそれはみつるが手伝うのを止めなかった俺の責任だ。それは、俺の友達を守るという決意に反する。
俺は。着替えを済ませたが、玄関へ出るためにはなのは達がいる部屋を通らなければならない。もしかしたらなのはは、今着替えているかもしれないので小さい声でなのはを呼んだ。
「なのは起きているか?」
「うん。あ、もう着替えは済んでいるから入ってきても良いよ」
なのはからそう言われたので俺は部屋に入った。部屋の中では、アリサ、すずか、美由紀さんがぐっすりと寝てなのははユーノを肩に乗せて布団の上に立っていた。
《じゃあ、行こうかなのは》
《うん……またあの子が来るのかなぁ》
あの子……あの黒服の少女のことか。ジュエルシードを探していたし、その可能性は大きい。
《実は、もうユーノ君には言ってあるんだけど、昼にアリサちゃんが言っていた女の人。あの子の関係者みたいなんだ……》
《それで、仲間が増えたから止めるのか》
少しキツイ言い方だが相手に仲間が増えて、怖気づいては困る。
《ううん。ジュエルシード集め、今はわたしの意思でやっていることだから最後までやり遂げる》《そうか、なら大丈夫だな》
《二人とも》
《ごめんユーノ君。話し込んじゃった》
俺達は玄関を出て途中でバリアジャケットに着替えた。
気配が強い方へ走っていくと大きな光が見えた。いそいでその光が見えた場所まで行くとこの前の黒服の少女がジュエルシードを手にしていた。
「あら、あら、あら子供は良い子でって言わなかったけ、それもお友達を連れて」
犬耳が生えた赤色の髪で18歳ぐらいの女性が言った。
「ジュエルシードをどうするつもりだ!それは危険なものなんだ!」
「さあ~ねぇ答える理由が見つからないねぇ」
ユーノの質問に女性ははぐらかした。
「それにあたしは親切に言ったはずだよ。良い子でないとガブッっていくよって」
その言葉が終わると女性は赤毛の大きな犬、いや狼というのが正しい。そうオレンジ色の毛の狼に変身した。
「あいつあの子の使い魔だ」
ユーノが指摘した。爺さんから魔法の知識を教われたが実物を見るのは初めてだ。
狼の使い魔は、俺達二人と一匹に飛び掛ってきたが、ユーノがバリアを張って俺達を守った。
「二人ともあの子をお願い!僕はこの人を」
ユーノが言葉を切り、魔方陣が現われユーノと使い魔が消えた。
おそらくユーノは転移魔法を発生させ、あの使い魔と共に転移したのだろう。
「強制転移魔法、良い使い魔を持っている」
「ユーノ君は使い魔じゃない。大切な友達だよ」
そういえばなのははユーノが人間であること知っているのか?
「……で、どうするの」黒服の少女が聞いてきた。
「話し合いで何とかできるってことない?」
「私はジュエルシードを集めなければならない。そしてあなた達も同じ目的なら私達はそれをかけて戦う敵同士になる」
「そんなこと勝手に決めるなよ……互いの理由がなにか知らないくせに勝手に決めるな!」
「つ、つぐみち君それはちょっと言い過ぎかと……」
たしかに言い過ぎかもしれない、だが目的も知らないで勝手に決めるのはおかしい。
「たとえ話してもきっと……何も変わらない!」
黒服の少女が素早く俺達の後ろへと回りこみ襲い掛かってきたが、俺は横の森へなのはは空へと飛びかわした。
「賭けて!それぞれのジュエルシードを一つずつ」
今のなのはではあいつと戦っても負ける。早く応援に行かないと…
空へ飛ぼうとした瞬間、「お前の相手は俺だあぁ!」大声が飛び、声のした方へ振り向くと、銀色の剣が俺に向かって振り下ろされる。俺は、鎌状態のウィンザーの刃でその剣を受け止めた。あのまま静かに俺に襲い掛かればやれたものをわざわざ大声を出して居場所を明らかにするなんてどんな奴だと相手の顔を見ると…見覚えのある顔だった。
「「とし(つぐ)!!何でここに!」」としが同時に同じことを口走った。
「それはこっちの台詞だ!何でお前があいつと……」
つぐの持っている剣と交差したまま話した。
「わりぃな、けど俺、フェイトと約束したんだ!」
としが剣を引き、距離をとった。フェイト?あの黒服の少女のことか。
「約束?何の約束だ?」
「それは、言えねぇ。つか、何でお前がジュエルシードを集めているんだ?」
「ジュエルシードは、ユーノが見つけた物で危険な物だ。俺は、それを回収する手伝いをしている。なあ、あの子…フェイトに手を引いてくれって頼めないか?」
「それはできねえな。それに俺は、お前と話をしにきたんじゃねぇ。フェイトにお前の相手をするように頼まれてんだよぉ!!」
〈Rasanz Schlag〉
としの剣から群青色の光が放たれた。
〈Protection.〉すぐさまバリアを発生させ無傷で済んだが、威力が強く手が痺れいる。
〈良いのですか?ご友人のようですが……〉
「いいんだよ。あいつは俺としょっちゅう敵対しやがるから、それにつぐはそんな柔な野郎じゃねえし」
としがあいつのデバイスと話しているが、敵対しやがるって敵対する原因の8割方はお前の所以だろ。だが、あいつが気を逸らしている間すでに俺の魔力弾は発射の準備ができていた。
〈Breeze radiat〉俺は、黄緑色の魔力弾6発をとしに向けて放った。
「ちょ、待て!?うわあぁぁ!」
爆煙が上がったが6発ともとしに当たったようだ。
「あっぶねー。俺を殺す気か!」
としの声が別のところからしたので見回すと、太い木の枝にとしがいた。目立った損傷が見当たらなく、木の枝へと飛んで回避したようだ。
「先に攻撃してきたのはお前の方だろうが」
「うるせぇ。さて、本気出すかぁ!!」
としが枝から飛び降りてきた瞬間、物凄い速さで俺に接近してきた。
1mほど手前のところでとしが右、左、右、左、と左右に切り掛かってきた。俺は、それを防ごうとしたが鎌では剣を防ぐのに不向きであるのに加え、としの切り返しが早く何度か当たったが加減していたのか、両肩から血が少し流れただけで大事には至らなかった。
俺は、距離を置いてウィンザーの武器を槍へと変更した。
〈Lancer mood.Change.〉
「へぇ~お前のデバイス形変えられるんだ」
〈なかなか面白い機能ですね〉
「これでお前を倒し、何が目的か話を聞いてもらうぞ」
〈Penetrating spear stand by.〉
ぺナトリーティングスピアを発生させ一気に勝負を決める体勢をとった。
「そうはいかねぇ!」
〈Sand Stoβ〉
としがまた高速で接近して剣を振り下ろしたがウィンザーと交差し、互いの魔法が発動しその威力に押され二人とも後ろへと引きずった。
「へへ、やるなつぐ。ならもう一度「としみつ…君?」え?」
としがなのはの声に反応して空を見上げた。
なのはは空にいて驚きを隠せない表情でとしを見ていた。
「はっ、よそ見するな!」
俺が、なのはに警告を発したがもう遅く、フェイトの攻撃が入り、首の皮すれすれのところでフェイトは攻撃を止めた。
〈Put out.〉
レイジングハートが今まで獲得したジュエルシードのひとつを出した。
「主人思いの良い子なんだね」
フェイトはレイジングハートが出したジュエルシードを手にし、地上へと降りた。
この戦いは負けだ……
「……待って!」
なのはがフェイトを呼び止めた。
「できることならもう私たちの前に現れないで。今度はもう止められないかもしれない」
「前に会ったときに聞けなかったけど。名前、あなたの名前を教えて」
俺は、としから名前を知ったが、なのははまだ彼女の名前を知らなかったようだ。
「フェイト。フェイト・テスタロッサ」
「あ、あのわたしは――」
なのはが自分の名前を言う前にフェイトは飛び去って行った。
としを再び見たがとしの姿は無かった。俺は、なのはに近づいた。
「なのは……」
「なんで……なんで、としみつ君があの子と……」
たしかにとしがフェイトと組んでいるは気になる。あいつが話してくれるか分からないが、きちんと話し合って聞いてみるしかない。
第12話「思いがけない出会い」 完
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12話目です。
新作…今月中に投稿できるかな……