No.457254 魔法少女リリカルなのは~生まれ墜ちるは悪魔の子~ 二十七話2012-07-22 07:30:07 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:2309 閲覧ユーザー数:2212 |
「あう~……体が~……」
私、高町なのはは平凡な小学三年生…でしたが、最近は違います。
もうずっと前にひょんなことから魔法少女になってしまいました!!
そこから私は色んな体験をしたり、悲しい事件とも向き合いました……
だけど、そこで知り合った人と友達になりました!
フェイトちゃん、クロノくん、ユーノくんにエイミィさんとリンディさんはとてもいい人たちでした。
でも、その中でも一番印象に残っているのが、今日の朝に私と特訓をしていた男の子です。
「カリフくんってばやりすぎだよ~……」
今、私はベッドの中で筋肉痛で苦しんでいます。
前もってカリフくんと連絡して特訓の成果としてディバインシューターの練習を見てもらったのですが……
『まあ……こんなもんか』
こんなことを言われて思わずムッとしました。
だって、小さな弾を作ってそれを操作して空き缶に100回当てることはとても難しいんだよ~……悔しくなった私は
『じゃあカリフくんもできるの!?』
今でもこう口走ったことを後悔しています……
カリフくんは小さな弾を10個以上も出して、それぞれを操作して20個の空き缶を別の弾で弾いて、別の弾で任意の方向へ弾くといった、まるでサッカーのパスのような……生きているように見えるほど高度なコントロールを顔色一つ変えずにしていました。しかも、少し力を入れると空き缶が木端微塵に……
威力までもが私の上だったのです……私って一体……
『気にしないでください。彼のような真似をできる魔導師はメモリー上いません』
レイジングハートはそう励ましてくれたけど……
そして、一番大変だったのがこの後でした。
『おめ体力無いな。圧倒的に』
そう言って急遽スロージョギングから始まったのですが、時々全力で走ってはまたスロー、そしてまた全力で走るといった特殊な走り方でした。
ですが、これを公園2周くらいで私の足と体力がそこで尽きてしまいました……
朝早く、この後の学校のこともあったのでこのまま帰ろうと思ったのですが……動きませんでした。
この時のカリフくんの表情……今でも思い出したくは無いです……
それでも足をマッサージしてくれたり、アドバイス、私に必要な練習法をまた後日に纏めてくれるらしいです。フェイトちゃんとは連絡を取り合ってしっているのですが、カリフくんの指摘はとても分かりやすくて効果的らしいです。
さらには動けない私を家まで運んでくれたこともあるので、カリフくんを周りの人は色々と言うのですが、私はとても優しいと思います。
だけど、どこか天然な所もあります。私をお姫様抱っこで運ぼうとしたり……
本人曰く、あの抱き方なら怪我している場所を刺激しないし、すぐに抱いている人を投げ飛ばしてすぐに戦えるから、らしいです。
とても恥ずかしかったので肩を貸してもらうだけにしました……
それでも嬉しかった気持ちはありました。
やっぱりカリフくんは優しかったです。
いつか、フェイトちゃんと一緒にアリサちゃんとすずかちゃんに紹介しよう……
「焼き餃子ウマー」
「ふふ……そんなに慌てなくてもご飯もおかずもたっくさんあるで♪」
「アムアム……」
こちら、八神家でお世話になっているカリフはご飯を片手にはやての手作り料理を物凄いスピードで口の中に詰めていく。
「今日もバイト御苦労さんや。たんとお食べ」
「美味い……」
「ふふ……仕事帰りのお父さんと料理を作るお母さん……まるで夫婦やな」
「え? 誰が?」
「なんでもあらへんよ♪」
こんなやりとりではやては充分と幸せだった。
カリフと暮らし始めて結構経つ。
その際に彼のことが段々と分かってきた。
まずはすごく食べること。
この前はグ○ッチェのピザ食べ放題に行った時は唖然とさせられた。ピザを延々とおかわりし続けてお店のピザを食べ尽くしたり、ドリンクを全て飲み干して店員を泣かしたくらいだ。
今では彼のバイト代の一部で賄っている。
そして、彼は異常なまでに体のスペックが高い。
朝早くに起きてなにやらパンチとか蹴りやらがすっごい音出すし、遠出の時も私をお姫様抱っこしてビルからビルを跳び移ったり、新幹線を足で追い越したりした。
色々と突っ込みたいところはあるけど、それよりもあんなに堂々とできて自由に色んな所に行ける足が羨ましいとも思った。
そして……
『はやてちゃん。お誕生日おめでとう。私は病院で来れないけどまた後日お祝いします』
「あ、石田先生からや……留守電忘れてたわ~……」
「……」
「あ、今のは石田先生ゆうて私の主治医……」
「お前……誕生日か?」
「え、うん……一応明日だけど……」
「……食後のデザートだな」
そう言って立ち上がり、カリフくんはリビングの出口前にまで来るといきなり消えてしまった。
「え!! ちょっと待ってや!!」
すぐに玄関に出ると、もうドアが開けられて、靴も消えておった。
そう、カリフくんは何かとこういうイベントを楽しむ。
多分、食べ物が絡むとそうなるんやけどな
でも、私には“衣食住の借り”と言って優しくしてくれる。
カリフくんは約束とかを大事にしてくれる。どんな約束も守ってくれる。
本当に優しい子やな~
「ただいま」
「速っ! てかそれウェディングケーキみたいやん!」
ただ、誰にもできないことを平然とやってのけてしまう……痺れもしないし、憧れもしない……むしろ突っ込むべきだと思っている。
「さあ、ローソクを消せ。そして食うぞ」
「いや、届かへんて……」
でも、今が一番幸せです。
この日、更なる変化が起こると誰も思っていなかった……
色々と急な誕生日も終え、二人は床に付くこととなった二人は廊下で挨拶する。
「明日が誕生日の本番で焼き肉に行って二次会で焼き肉に行くぞ。英気を養っておけ」
「二次会って……あ、でも石田先生にも言っておかんと駄目やし……」
今日も刺激的なことが起きて充実した一日だった。
そんな毎日をはやては大事にしていた。
「なあ、そろそろ一緒に寝えへん?」
「くどい。オレは一人で寝るのが好きなんだ。それに今のオレはボディガードだからリビングで寝る」
「いけずぅ……もうちょっと羽目外してもバチはあたらへんで?」
「自分で言ったことにそんな軽い気持ちで約束した覚えはないんでね」
「はぁ……それなら私の傍で寝てもええんやないの?」
「……その内考えておく」
いつも守られているということが良く実感させられる。
「もう分かったわ。風邪ひかんようにな」
「いらん心配だな」
「あはは…じゃあおやすみな」
「すみー」
カリフは欠伸をしながら階段を降りていくのを見送る。
それを見届けてはやては自室に入ってベッドに入った。
今日もいい日だったと物思いながら心地よい眠りに就く。
騒がしくも充実した一日が終えた。
―――午前0時
それは起こった。
突如としてはやての本棚の本が光り出す。
本には血管に似た筋が浮かび、まるで生きてるかのように脈動を続ける。
それにつれて光の輝きも増し、遂にはやてが目を覚ます。
「え……え?」
本に巻かれている鎖を砕きながらはやての前へと浮かんで近付いてきた。
「ぅ……」
はやては独りでに浮かんで勢い良くページが開かれていく本に恐怖して後ずさるも壁に阻まれる。
『闇の書、起動します』
機械のような無機質な声と共に闇の書と呼ばれる本が強烈な光を放ち、はやてを飲み込んだ。
光が治まると、そこに“いた”
いるはずもない四人の人影が跪いていた。
ポニーテールの凛とした大人の女性、清楚な金髪の女性、鍛え抜かれた体と犬の尻尾と耳を持ち合わせる男性、そして三つ編みの女の子がいた。
「“闇の書”の起動。確認しました」
「我等、闇の書の蒐集を行い、主を護る守護騎士でございます」
「夜天の主の下に集いし雲」
「ヴォルケンリッター……何なりと命令を」
最後に女の子がしめて全員がしばらく跪いていた。
「……?」
だが、何の反応もない少女に三つ編みの女の子が焦れてはやての元へと向かう。
そして、じっと見つめ……
(ねえ、ちょっとちょっと)
女の子が皆に念話を送るが、それを金髪女性が諌める。
(ヴィータちゃん。静かに)
(でもさぁ……)
(黙っていろ。主の前で無礼は許されん)
ヴィータと呼ばれる少女は女性二人組に諌められるが、淡々と事実を述べた。
(無礼ってかさぁコイツ…気絶してるように見えるんだけど……)
「えぇ!?」
ヴィータの一言に金髪女性は念話ではなく口に出して驚いてしまった。
突然の出来事に理解量が追いつかなくなったはやての失神にその場の全員が
うろたえた。
「あぁ…どうしようシグナム……どうすれば……」
「守護騎士ともあろう者が慌てるなシャマル。とりあえずこの世界の医療機関に連れていくのが賢明だろう。ザフィーラ、悪いが主を」
「承知した」
ヴィータも皆の所へ戻った所で金髪の女性シャマル、男性のザフィ-ラへポニーテールのシグナムが指示を出してはやてに背を向けていた。
そんな時だった。
「やれやれ……まさかここまで侵入されるたあなぁ……」
「「「「!!」」」」
自分たちの知らない声が聞こえ、シグナムたちが振り返る。
すると、ベッドの上で腰を降ろしてはやてを見つめる少年・カリフがいた。
「な、なんだテメー!!」
ヴィータはカリフに瞬時に展開した鎚型のデバイスを突きつける。
シグナムはカリフの突然の出現に警戒心を露わにして剣型のデバイスを構える。
「貴様!! どこから入ってきた!?」
「はぁ? そりゃこっちの台詞だ。こっちは礼儀に従ってドアから入ってきたに決まってんだろ」
「ドアだと……?」
普通の大人なら間違いなく失神する闘気をぶつけられても平然と答えるカリフの言葉にシグナムは後方のドアを見ると、確かにドアは開いていた。
だが、これでシグナムたちの警戒心は一気に上がった。
(我等に気付かれずに入ってきたというのか!?)
まさか、暗殺の心得がるのか!?…と思っていると、同じことを思ったのかザフィーラもシャマルも臨戦態勢をとる。
そんな彼女たちに臆することもなく、カリフは再度問いかける。
「もう一度聞く、貴様等はどうやってここまで来た? ここが人様の家だと知っての狼藉か?」
カリフからの覇気に当てられてシグナムたちの不信感が一気に爆発した。
「貴様に答えることなどない!!」
何の前触れも無く剣を振ってきたシグナムの一撃を屈んで難なく避ける。
そこで待っていたのはヴィータの鉄槌が待っていた。
「喰らえぇ!!」
これも難なくジャンプで避け、囲まれてないことを確認するとカリフは部屋の窓ガラスを破って外へと出た。
「逃がすか!!」
「追うぞ!」
ザフィーラの一言に全員が窓から外へと飛び出す。
そのまま屋根へと飛び移っていくカリフを追いかける。
「くそ!! ちょこまかと逃げんじゃねぇ!!」
「シャマル!! 手ごろな場所を見つけ次第結界で張れ!」
「分かったわ!」
そのまま互いに数十分の追いかけっこが続いた。
だが、それもカリフが廃工場跡の広い空地に辿り着いた時に終わる。
夜空や周りの風景が灰色に染まり、街中を動いていた気の集まりが消えた。
「……結界か」
そう呟くと後方で四つの人影が着地したのを感じた。
「もう逃げられませんよ?」
「さあ、貴様が何者か吐いてもらおう……場合によっては……!」
シャマルのザフィーラの一言に四人が臨戦態勢に入ると、カリフは騎士たちの方へ振り向く。
その反応に騎士たちも警戒度を上げる。
だが、この後のカリフの行動に誰もが目を見開いた。
「……近くに寄れ」
カリフはその場に座り、騎士たちに説く。
そのあまりにも無防備な姿に全員が固唾を飲んで見守ると、カリフが若干イラついた口調で再度説いてきた。
「本来なら貴様等を不法侵入者としてブチ殺してもオレは一向に構わんのだが……今は眠くてそんな気分じゃねえ……事情さえ話してくれりゃあ考慮しよう」
そんな一言に騎士たちは若干戸惑う。
「貴様等の目的、素性を話すならオレも真実を話して終わりだ……明日にでも話し合っていけばいい」
素性も知らない者同士にとってはとても破格の条件……むしろ相手が無防備なところを見る限り本気なのだろう……
「そうか……それなら……」
シグナムがそう言ってカリフを見つめていた時だった。
「……!」
カリフの周りが影で暗くなり、上を向いた時には既に遅かった。
「ブッ潰れろぉぉぉぉ!!」
眠気からか集中力の切らしていたカリフに巨大化したヴィータのデバイスがカリフを潰した。
爆弾並の轟音と大量の土埃を上げて地面を陥没させた。
カリフがいたであろう場所を騎士たちが無表情に見つめる。
「こんなやり方は不本意だが、貴様は危険すぎる……すまないが今ここで眠ってもらう」
「へっ! 余裕ぶりやがって……バーカ」
シグナムに続いてヴィータが心底馬鹿にしたような口調で毒づく。
ザフィーラもシャマルもこの行動に賛成はしている様子だったのか何事も無く話を進める。
「それじゃあ速く戻りましょう」
「あぁ、主の身が心配だ」
「へいへい」
皆が帰るのを見てヴィータも帰ろうと自分のデバイスを元に戻そうと掴んだ時、不意に聞こえてきた。
―――上等だよゴラァ……
「え?」
どこからか、だけどハッキリと聞こえた声に辺りを見回していた時……
「こ、これは……」
ヴィータの足元が光り……
「うわあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「! ヴィータちゃん!?」
光が爆ぜて地面もろともヴィータが爆発に巻き込まれて吹っ飛ぶ。
騎士たちの近くまで飛ばされて転げる彼女に騎士たちが駆け寄って介抱する。
「大丈夫か!?」
「い、いってぇ~……」
ザフィーラの問い、ヴィータに深刻なダメージが無いと分かって安心するのも束の間、シグナムが辺りに気を配る。
「一体なにが……」
その時、近くから声が聞こえた。
「たくよぉ……人がせっかく平和的に、穏便に済ませようと思ったのによぉ……」
「「「「!!」」」」
地の底から這い上がってくるような声に全員が戦慄する。
やがて、陥没した地面から巨大な鉄槌を指に喰い込ませて片手で“掴む”影が出てきた。
「下手に出てりゃあ調子付きやがって……おかげで眠気が覚めたぜぇ?」
鳥肌が出て冷や汗が全身から噴き出してくる。
「オレの施しを無にしやがったなぁ……もうめんどくせ……」
鉄槌を放り投げて地響きを起こす。
カリフは汚れたシャツを無造作に破り捨てて上半身裸になる。
「いい風だぁ……」
そして、天空を仰ぐ……
「あ……ぁ……」
「……っ!」
「ぐっ……!」
「な、なんなんだよ……お前……」
暗闇の中で光るカリフの目を見たシャマルたちは逃げたくても逃げられない衝動に体を震わせる。
カリフの双眼がシグナムたちを捉えた。
「死ぬには……いい日だ」
鬼の形相、瞬間に躍動を始めるカリフの筋肉、骨を鳴らす拳、血の滾り、本能の奔走、抑えるのを止めた衝動
この一言が、シグナムたちにとっては死刑執行の合図だと本能で感じた。
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騎士・ヴォルケンリッター