No.440546

超次元ゲイムネプテューヌmk2 Reborn 第十八話 排除


前回フラグが立ってしまったアイエフ。

さて、どうなったのか!? 続きをどうぞ。

2012-06-22 22:25:11 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1506   閲覧ユーザー数:1456

 

現在プラネテューヌ

 

アイエフ「はあっ…はっ……っ、何なのよあいつら!」

 

息を弾ませながらアイエフは闇に染まった裏路地をただひたすらに駆けていた。

決して後ろを振り返ることもなく、ひたすら前を見続けて。

考えることを止め、ひたすらに足のみを動かし続けた。

本能のみがアイエフに告げていた。

足を止めたその瞬間、自分は終わる。

後ろから迫り来るそれら(・・・)に跡形もなく喰らい尽くされて―――。

 

 

遡ること数十分前―――

 

アイエフは情報収集を終えて帰路に着こうとしていた。

両手のコートをポケットに入れたまま、退屈そうにうす暗くなった道を歩いていた。

 

アイエフ(今日も成果なし……か。)

 

天を仰いで軽くため息を吐きながら、アイエフは心の中で呟いた。

アイエフはイストワールの依頼で、ネプテューヌが接触した金髪の男とここ数日に自他国で多発している謎の死亡事件の数々の情報収集を行っていた。

だが正直なところ大した情報は集まっていなかった。

不安と焦りが募るほどに、入ってくる情報の量は少なくなっていった。

 

アイエフ(諜報部員が聞いて呆れるわね……はぁ。)

 

自分の無力さに呆れると同時にアイエフの目線は徐々に下に落ちていった。

やがて太陽は完全に地の底に隠れ、辺りが完全な闇に包まれ始めた。

次々と灯っていく道沿いの街灯の光の中でアイエフはふと足を止めた。

 

アイエフ(……??? 今、この路地の中から……銃声?)

 

アイエフの向かって右手にある細い路地の中から聞こえた音。

それは一般人からしてみればとても銃声とはかけ離れた物だった。

だがアイエフは薄っすらと疑念を抱いた。

その音はサイレンサーを装着した拳銃特有の軽い音に酷似していたからであった。

諜報部員だからこそ分かり得るその微妙な音にアイエフの足取りはいつの間にか釣られていた。

人一人がやっと通れる細さの裏路地を進んでいくにつれ、その音は更に大きく、多くなっていった。

大分、裏路地の道が広くなってきた時、アイエフの目の前には交差する道が広がっていた。

 

アイエフ(一体、何g『うわああぁぁぁぁああああ!!! やめろ!! くっ来るな!!!』 !!!)

 

突如としてアイエフの左前の通路から、男がサイレンサー付きハンドガンを乱射しながら奇声を上げて飛び出してきた。

風貌から犯罪組織のメンバーと確認できたアイエフはとっさに身構えた。

だが男はすぐ横にいるアイエフには目もくれず、銃口の先のみを怯えた目つきで見つめていた。

辺りに空の薬莢が落ちる音の5回目が響き渡った瞬間、男の目線の先から飛び込んできた黒い影が男を包み込んだ。

 

男「うああああああああぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……っが………ぎぃ………かぁ………。」

 

断末魔の叫びを上げながら、男は仰向けに倒れこみ、手足をもがかせ、その声が途切れると同時に絶命した。

男を包み込んだ黒い影は依然として男を包み込んだままだった。

否、男に喰らいついたままだった。

男の体に着いた8匹のコウモリは男が絶命してもなお、その血を吸い、肉を貪り続けた。

 

アイエフ「ぁ…ああ……ぁ…。」

 

あまりにも非現実的なその状況をアイエフは比類のない恐怖に囚われながら、ただただ呆然と見つめていた。

そして我に返ったその瞬間、コウモリたちはすっかり肉がこそげ落ち、欠落した内臓がむき出しになった男の死体から飛び上がり、アイエフの方に赤黒く光る眼球を向けた。

 

―――逃げろ!!!

 

本能が告げるままに、アイエフは後ろを振り向き、全速力で裏路地を駆けた。

 

 

 

そして冒頭部分につながる。

 

未だに続く死の鬼ごっこ。

いくつ角を曲がったのか見当もつかない。

だが依然としてコウモリはアイエフの後を追うように飛び回る。

コウモリとの距離の手がかりは羽音と鳴き声のみ。

後ろを向いて距離を確認しようと足を緩めたその瞬間、終わりが来る。

今のアイエフに出来ることはとにかく裏路地を逃げ続け、大通りを避けて被害の拡大を防ぐことだった。

走り続けて十数分、さすがにアイエフの脚力にも陰りが出てきていた。

 

アイエフ(やばい……だんだん足が……!!!!)

 

角を曲がったアイエフの目に最悪の光景が飛び込んできた。

四方を壁で囲まれた通路にもはや逃げ道は存在しなかった。

 

―――行き止まり

 

アイエフが今、もっとも考えたくない状況だった。

だが考えるよりも先に体は動いていた。

その時、初めてアイエフは後ろを振り返り、身構えた。

 

アイエフ(こうなったら……もう応戦するしかない!)

 

アイエフはぶかぶかのコートの裾からカタールを取り出し、視線を目の前へ固定した。

角の向こうから聞こえる羽音と鳴き声が大きくなるにつれ、アイエフのカタールを握る力と心臓の鼓動も強まっていった。

しばらくして角の先から小さな黒い影が2匹、地面から1mほど離れた所からアイエフ目掛けて飛び掛った。

 

アイエフ「はあっ!」

 

風を切る音と共に左下からカタールが弧を描くように振るわれた。

ザンッ、と音を立てて弧の軌道上にいた2匹のコウモリは2つに割れ、地面に落ちた。

だがそうしている間にも、残りのコウモリはアイエフとの距離を縮めていた。

そのことにアイエフが気付いたとき、既にコウモリはアイエフを取り囲むように浮遊していた。

 

アイエフ「ッ、天魔流星斬!!」

 

声と共にアイエフのカタールは縦横無尽に軌道を描いた。

アイエフの周りを取り囲んでいたコウモリはなす術もなくカタールに引き裂かれ、羽を散らした。

そして最後の一閃と共に、目の前の最後のコウモリも羽を無くし、地面に落ちていった。

 

アイエフ「はあっ……ふうっ…。」

 

安堵のため息を漏らし、アイエフは肩の力を抜いた。

だが呆然と前を眺めていたアイエフの視界に新たな影が映った。

薄暗い路地の真ん中、アイエフの位置から8mほど先の金髪の男がアイエフをじっと見つめていた。

 

アイエフ(? 誰かしら……、!!!)

 

目の前に向けるアイエフの目は一気に疑念から警戒へと変わった。

男の右手には先ほどまでは握られていなかった日本刀がしっかりと握られていた。

 

アイエフ(あれが……もしかしてネプ子の言ってた氷室って奴!?)

 

アイエフは再びカタールを強く握り締め、身構えた。

対する氷室は日本刀を右手に持ったまま、一歩一歩アイエフに近づいていった。

 

アイエフ(そっちがその気なら……。)「はああっ!!」

 

声を上げ、アイエフは地面を蹴って一気に氷室へと突っ込んだ。

すぐにその距離は縮まり、あと2mほどで接触という時―――

 

 

氷室はアイエフのすぐ横にすれ違った。

 

 

ドガッ!!

 

 

アイエフ「がはっ!!!」

 

アイエフの体は宙を舞い、鈍い音を立てて後ろの壁に激突した。

理由は単純明快だった。

すれ違いざまに氷室の左拳がアイエフの腹を殴りつけたためだった。

後ろの壁から土煙が上がる中、氷室はアイエフに静かに歩み寄った。

 

アイエフ「あ……ううっ……。」

 

悲痛な声を上げるアイエフの目の前を氷室は冷たく見下ろした。

既にアイエフの意識は朦朧としており、体に一切の力も入らなかった。

氷室の左手には先ほどまでには無かったハンドガンが握られており、その銃口はアイエフの頭に突きつけられていた。

その瞬間、アイエフは自分の最後を悟った。

氷室の左手の人差し指に徐々に力が入り―――

 

アイエフ「…ネプ、子……。」

 

 

―――バン

 

 

無慈悲に銃声は鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

   ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

氷室「何だ?」

 

スーツの懐から取り出した無線機を耳に当てながら、氷室は無感情に声を上げた。

 

レオン「こっちは全然見つからねえが、そっちはどうだ?」

 

ノイズ交じりの太い声は静かな裏路地に響き渡った。

しばらく間をおいて氷室は視線を落としながら口を開いた。

 

氷室「こっちはもう……終わった。」

 

氷室の目線の先には―――

 

氷室「危険因子は排除した。」

 

 

 

 

 

血溜りの上に力無く頭を俯かせているアイエフの姿があった。

 

 


 
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