No.443499

超次元ゲイムネプテューヌmk2 Reborn 第十九話 推測

これにて序章は終了です。

次回より、カタストロフィ編へ突入します!

バトルが多めになると思いますので、お楽しみに!!

2012-06-30 00:45:35 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1229   閲覧ユーザー数:1161

 

現在魔界

 

日が完全に昇り、悪魔の活動が最も鈍る早朝、ターミナルビル50回の一室には時だましの香が青白い炎を灯していた。

部屋に灯る炎は部屋中に夜の香りをばら撒き、その空間の時を錯覚させた。

その中に氷室とマグナスは向かい合って立ち尽くしていた。

 

氷室「危険因子は排除しました。何か問題でも?」

 

ポケットに両手を突っ込んだまま氷室は感情の無い白い声で尋ねた。

氷室の言葉にマグナスの眼光は鋭さを増し、一層に激しく氷室を睨みつけた。

だがそれに一向に動じず、凛とした態度を貫く氷室にマグナスは口を開いた。

 

マグナス「危険因子の排除には問題は無い。問題は何故、おぬしが奴を生かしたのかだ。」

 

 

 

 

   ◆◆◆

 

 

 

 

現在プラネテューヌ

 

プラネテューヌ中央病院。

 

病院のとある一室には昨日の夜中から1人の患者が入室していた。

数々の入院患者が廊下を行き来している中、慌ただしい足音がその入院患者の部屋の手前の廊下に響いていた。

 

ネプテューヌ「あいちゃん!!」

ネプギア「アイエフさん!! 大丈夫なんですか!?」

 

静寂に包まれている病棟を2つの声と扉を押し開く音が切り裂いた。

息を弾ませながら目の前のベッドを見つめる二人の目には2人の人影があった。

 

コンパ「ねぷねぷ! ギアちゃん!」

アイエフ「……うるさいわねー。ここ病院よ。もう少し静かに出来ないわけ?」

 

2人の言葉にアイエフとコンパは正反対の口調で返した。

コンパは病室のベッドの隣で椅子に腰掛ていた。

一方のアイエフはベッドに横たわっており、頭には2重ほど包帯が巻かれていた。

 

ネプテューヌ「あいちゃん……良かったぁ~。」

ネプギア「コンパさんからアイエフさんが怪我をしたって聞いて、元気そうで良かったです。」

 

アイエフの声を聞くと同時に2人は安堵のため息を漏らした。

2人の言葉に反応してアイエフの頬は嬉しさからか恥ずかしさからか赤みを増した。

その後少し間をおいてコンパが口を開いた。

 

コンパ「頭を打ってること以外には特に目立った怪我は無かったです。ただ、頭の皮膚を切っていて出血が酷かったですから今輸血をしているところです。」

 

コンパの視線の先のアイエフの腕には輸血パックと注射針が繋がれていた。

2人はアイエフの傍に駆け寄ると近くに置いてあった椅子に腰掛けた。

その様子を見ながらコンパは席の近くにあるペットボトルからお茶をコップに注ぎ、2人に手渡した。

 

ネプギア「ありがとうございます。コンパさん。」

コンパ「どういたしましてです。」

ネプテューヌ「ねえねえ、あいちゃんが怪我をしてたのってコンパが見つけたの?」

 

コップの中のお茶を手の中に持ったまま、ネプテューヌはコンパに尋ねた。

コンパの返事はすぐにあった。

 

コンパ「はいです。昨日町を歩いてたら大きな音が聞こえたんです。そっちの方へ行ってみたら、そこにあいちゃんが倒れてたです。」

 

コンパの言葉を2人は頷きながら聞いていた。

ベッドに横たわっているアイエフは半分つまらなそうに腕を頭の下で組んでいた。

ネプギアはコップの中のお茶を軽くのどに通した後、アイエフに向けて口を開いた。

 

ネプギア「そういえば、アイエフさんはどうしてそんな怪我をしたんですか?」

 

ネプギアの問いかけにアイエフは顔を青ざめた。

しばらく無言のままうつむいた後、頭をぐしゃぐしゃと掻きながら呟くように答えた。

 

アイエフ「その……全然記憶に無いの……そもそもなんであんなとこに居たのかさえ………まるっきり…。」

 

額に手を押し当てながらアイエフは視線を下に落としたままだった。

アイエフの目からは恐怖の色が見えた。

あれだけの体験をしておきながらそのことを全く覚えていない自分。

自分自身に起きている異常な感覚に半ば気が狂いそうになっていた。

 

コンパ「きっと頭を打ったときに軽い記憶障害が起こったですよ。そのうちに全部思い出すです。」

アイエフ「そう……だといいんだけどね……。」

 

コンパのフォローにアイエフはため息交じりの声で返した。

言葉を聞き終わると同時にアイエフは後ろに体重を掛け、ベッドに再び倒れこんだ。

 

アイエフ「そういえばあんた達、女神様達と仲直りは出来た?」

 

視線だけを2人に向けながらアイエフが唐突に口を開いた。

とっさに2人は視線をアイエフからそらした。

2人の持つ紙コップは静かに震えていた。

2人の行動からアイエフもコンパも結果がどうだったか容易に想像がついた。

だが2人の口から発せられた言葉はアイエフとコンパの予想の半分を裏切った。

 

ネプテューヌ「今はまだ……でも、こっちの思いは、はっきり言えたから。」

ネプギア「今は無理でも、皆が認めてくれるまで待とうって、お姉ちゃんと決めたんです。」

 

視線を2人に戻してネプテューヌとネプギアは堂々と言い切った。

アイエフもコンパも2人の言葉には多少、驚きの表情を見せていた。

 

アイエフ「意外ね……。もっと落ち込んでるかと思ったのに。」

ネプギア「いーすんさんのおかげです。」

コンパ「でも、どうするですか? 明日は……。」

 

コンパの言葉に合わせて部屋に重い空気が流れ始めた。

しばらくの静寂が病室を支配した。

やがて先ほどから首をひねっていたネプテューヌがその静寂を切り裂いた。

 

ネプテューヌ「カタ、カタス……? カタストロイ?」

ネプギア「カタストロフィだよ、お姉ちゃん…。」

 

ネプテューヌの言葉にネプギアがフォローした。

そんなことで考え込んでたのか、と深くため息をつきながらアイエフは呆れた表情を見せた。

 

アイエフ「まあ、ネプ子のバカ発言は置いといて、明日はどうするの?」

ネプテューヌ「むー!! 真剣に考えてたのに!!」

 

ネプテューヌの愚痴をさらりと受け流してアイエフは二人に尋ねた。

ネプギアとコンパはしばらく宙を眺めながら考え込んだ後、声を上げた。

 

ネプギア「何が起こるかはわかりませんけど……とりあえず、覚悟はしておきます。」

コンパ「何かあったらすぐに動けるようにしておかないとです。」

 

言いながら2人はアイエフの方をじっと見つめた。

顎に手を当てながら考え込んでいるアイエフの表情はいつもより数段真剣だった。

そんな中、コップのお茶を一気に飲み干してネプテューヌが声を張り上げた。

 

ネプテューヌ「何が起きたって私達4人が力を合わせれば大丈夫大丈夫!!」

 

陽気な声を上げながらネプテューヌは3人に向けてピースサインを出した。

コンパとネプギアはそれに表情を明るめながら見ていたが、それとは反対の行動を見せる者が1人。

アイエフは額に手を当てながらうな垂れ、大きなため息を1つ吐いた。

 

アイエフ(本当にこれで大丈夫なのかしら……先が思いやられるわ……はぁ…。)

 

心の中でもアイエフはため息をつき、目線を2人から天井へと戻した。

 

 

 

 

   ◆◆◆

 

 

 

 

先日の回想

 

 

―――バン

 

 

氷室の撃った弾丸は、アイエフの頭の少し左の壁に穴を開けていた。

空の薬莢が落ちる音と同時に、氷室は両手の銃と日本刀を消し、代わりにスーツの懐から小さな筒型のランプを取り出した。

氷室がそれを軽く一振りすると、中にオレンジ色の炎が灯り、やがて炎は揺らめきながら静かに消えていった。

それが記憶操作完了の合図だった。

その後レオンからの通信が入り、通話が終わると、氷室は遠くから聞こえてくる足跡を耳にして咄嗟に地面を蹴って近くの建物の屋根に飛び移った。

氷室は屋根の上から、アイエフが運ばれていくのを見送り、静かに建物の屋根を伝ってその場から離れていった。

 

 

回想終了

 

 

 

 

   ◆◆◆

 

 

 

 

 

氷室「接触したアイエフと言う名の少女は比較的高めの戦闘能力を有していました。奴らにカタストロフィを生き抜いてもらうためにはそいつの存在が後にこちらの利にもなると思いました。幸い、その少女は頭を打って気絶していたので、ライから借りていた記憶の灯を使って記憶を消し、後に壁に弾丸を打ち込んだ時の発砲音に気付いて誰かが運んでいきました。」

 

淡々と氷室は昨夜の状況をマグナスに伝えた。

だがマグナスの表情が緩むことは無く、むしろ軽蔑の目で氷室を睨み続けた。

 

マグナス「危険因子はあくまでこちらを特定するための可能性、と申すか。お主、遂に血迷ったか。自ら人間の側に着くなど、やはり人間の血を引く裏切り者と言うわけか。」

 

皮肉の混じった口調でマグナスは言い放った。

その言葉に氷室は今まで見せなかった凄まじい憎悪の目でマグナスを睨みつけた。

右手の拳はポケットの中で硬く握られ、ズボンの上からでも確認できるほどだった。

 

氷室「心外だな。俺は向こう側に着いたことなんて一度も無い。俺は俺の立場から常に物事を見ているんでな。」

 

今までの見せかけの敬語はどこかに消えていた。

あくまで口調は冷静さを保とうと努力はしていたが、明らかに強めの口調だった。

嫌悪感を大量に含んだその言葉に、マグナスが反応しないわけが無かった。

 

マグナス「もうよい。明日に備えるがいい。」

 

これ以上の話は無駄、その意味がこめられた言葉だった。

その時、マグナスはある言葉を耳にしたような気がして、ふと眉をひそめた。

それは確かに、目の前に居る氷室がぼそりと呟いた言葉だった。

そのまま氷室は身を翻し、階段の方へと歩みを進め、部屋から完全に姿を消した。

 

 

 

部屋に1人残されたマグナスの脳裏には氷室の呟きがあった。

 

あの方(・・・)から聞かされた言葉。

思い出すたびに全ての貴族がその言葉にこめられた真の意味を模索する一言。

それを何故氷室が?

 

 

 

―――所詮、全てはかりそめの客にすぎぬのだ。

 

 

 

 

 

   ◆◆◆

 

 

 

 

 

50階から30階まで下りる途中の階段。

響き渡る音は靴が階段を叩く音だけだった。

無言のまま氷室は視線を下に落として歩いていた。

僅かに数段、下りた辺りで突如、男の声が上がった。

 

レオン「遅かったじゃねえか。」

 

声の主のレオンは腕を組んだまま、階段の横の壁にもたれ掛かっていた。

レオンの姿を見るなり、氷室は先ほどまでの表情を少し緩めた。

 

氷室「何してんだ? こんなとこで。」

レオン「お前とマグナスの会話の盗み聞きだ。」

 

氷室の問いにレオンはあっさりと答えた。

話は戻りながら、と氷室が言うと、レオンと氷室は並列になって階段を下り始めた。

3階ほど下りたあたりでレオンは声を上げ始めた。

 

レオン「何でお前、あの女殺さなかったんだ?」

氷室「盗み聞きしてたなら分かるだろ。今殺すのは惜しいと思ったからだ。」

 

レオンの問いに氷室は即答した。

だが氷室の目線はあくまで下を向いていた。

 

レオン「本当に……それだけか?」

氷室「………それだけだ。」

 

視線を下に落としたまま呟くように氷室は答えた。

レオンは軽くため息をつくと両手をポケットに入れて再び声を上げた。

 

レオン「お前が戦う理由(わけ)はやっぱり……あの時の……。」

氷室「……全部がそうとは言えねぇけど……それもあるな。」

 

言い終わると同時に氷室は天井に目線を移した。

否、天井を見ると言うよりはそのさらに上の虚空を眺めた。

 

氷室「レオン、お前の戦う理由は何だ?」

 

氷室の言葉にレオンは目を瞑った。

そのままレオンはポケットから右手を出すとその手で拳を作り、目を見開いてその拳をじっと見つめた。

 

レオン「……俺はただ、誰の物とも知れねぇ骨の燃えカスに…強くなるって誓っただけだ……。」

 

レオンもまた、氷室と同様に呟くように答えた。

しばらく2人は無言のままひたすら階段を下り続けた。

かと思うとレオンは何の前触れも無く、喋り始めた。

 

レオン「話は変わるけどよ、カタストロフィって結局何が起こると思ってる?」

 

突然のレオンの問いかけに氷室はふと上を見上げて考え込んだ。

しばらくの無言の後、静かに氷室の口は開いた。

 

氷室「多分、お前の考えてることと一致すると思うぞ。」

 

氷室の言葉にレオンは軽く鼻で笑った。

そして、目線を氷室から階段に向けて話し始めた。

 

レオン「女神同士の殺し合い……か。」

氷室「その可能性が高いだろうな。実際、あの事件の後女神達は軽い対立関係にあると聞く。何時緊張の糸が切れてもおかしくない。」

 

暗めの口調で氷室は言葉をかぶせた。

レオンは再び視線を前に向けると、少し大きめのため息をついた。

 

レオン「もし、本当にそうなったら……?」

氷室「……一箇所に集まったところで皆殺しにすればいい。」

 

氷室の言葉にレオンは『だよな。』と返した。

ポケットにしまい込んでいた右手を口に当ててあくびをしながら、氷室とレオンは階段を下り続け、姿をその先へとくらました。

 

 

 

 

―――カタストロフィまであと1日

 


 
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