No.369080

『孟徳外史考』 真・恋姫無双 三人の天の御使い外伝 

雷起さん

外伝 孟徳外史考(もうとくがいしこう)をお送り致します。



ご意見、ご指摘、ご感想、さらに「私の物は私の物。一刀の物は私の物♪」などのご要望が有りましたら是非コメント下さいませ。

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2012-01-27 19:11:40 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:4441   閲覧ユーザー数:3647

外伝 孟徳外史考

 

 

「これから話すことを絶対に他人には話さないと誓ってもらえるかしら。」

 私、曹孟徳がこう切り出すと、目の前の蓮華、桃香、そして二橋の四人は驚いた表情で私を見た。

「それは・・・・・・誓う前にどういった内容の話なのか教えて貰えるのかしら、華琳?」

 蓮華の反応は当然でしょう。そう切り返して来るのを期待して言ったのだから。

「一刀たちに関することよ。」

「一刀たちの?」

「ご主人さまたちの?」

「ええ、これは私だけ(・・ )が一刀たちから聞いている話で、誰に話していいかを私の判断で決めていいと承諾も得ているわ。」

 相変わらず卑怯な言い方だと自分でも思う。一刀たちの秘密を私が独占していると聞けばこの子達なら絶対に聞き出そうとするのが分かっていて言っているのだから。

「そういう事なら・・・・・・誓うわ。」

「わ、私も誓います!」

 ほらね。

「大喬と小喬はどう?」

「「はい!誓います!!」」

 ふふ、そんなに真剣になって、本当可愛い子達ね・・・・・・。

「ねえ華琳さん、ここでそんな秘密の話をして大丈夫なんですか?」

「ここは罠を幾つも仕掛けてあって、こちらでその罠が動かないようにしない限り、入口の衛兵すら入って来れないから大丈夫よ。」

 四人とも驚いているわね。最もこの場所はこんな話をするために造った訳ではないのだけど・・・・・今回は全てを包み隠さず話すのに丁度良かったから使ったにすぎないのだから。

 

「私が一刀たちから聞いた話というのはこの世の有りよう・・・・・一刀たちは私達が住むこの世を外史と呼んでいるということ。」

「外史?でも天の国とこの大陸の違いの話なら一刀から聞いているわよ。今更そのような話・・・・・」

「私達がみんな男の人になってるとか不思議な道具とかの話ですか?それなら私も聞いてますよ。」

「そうね。でもこれはこの話をする上での基本なので覚えてちょうだい。」

「「外史・・・ですか。」」

 二喬が噛み締めるように繰り返すのを確認して、私は話を続ける。

「外史と呼ばれるこの大陸( ・・・・・・)が複数在ると言ったら信じられる?」

 四人の顔を見渡すけど全員私が言った言葉の意味を把握してないのは明らかね。

「例えて言うなら『合わせ鏡』のような物。大喬と小喬は合わせ鏡をしたことがあるかしら?」

 鏡は貴重品でとても高価なものだ。王である私達が持っているのは当然だが、鏡を二つ用意しなければ合わせ鏡は出来ないので余ほど裕福でなければ無理な話。

「はい、あります。」

「鏡のずっと奥のほうまで同じ物が映っていてとても不思議な感じでした。」

 上目遣いで答える二人を愛おしく思いながら口を開く。

「外史はその映っている物が少しずつ違っている。こういう想像をしてもらえるかしら?合わせ鏡に自分を映してみると、それぞれ着ている服が違う自分が何人も映っているのを。」

 私は四人が想像を終えるまで静に見守った。

「・・・・・云わんとしている事は解ったけど・・・・・何かその・・・・」

「なんかちょっと怖くなっちゃいますね・・・・・」

「「・・・・鏡の世界・・・」」

「ここまでがこれから始める話の準備なのだから、ちゃんと付いて来てちょうだい。」

 

 

 

「一刀たちは私たちに出会う前に違う外史に居たと言っていたわ。」

 私が言った言葉の意味を未だ把握しきれて無いのだろう、反応が薄い。

「それを裏付けられる出来事が幾つかあるの。例えば恋、あの子がこちらに降った時の事を愛紗からきいているけど・・・緑一刀を見た途端に戦いを放棄して抱きついたそうね。たぶんあの子はその時、他の外史での一刀の記憶が蘇えったのでしょう。」

「ちょっと待って華琳!」

 ようやく蓮華はこの意味が解ってきたみたいね。

「一刀は私と初めて会った時この大陸のことをほとんど理解していなかった!姉さまや冥琳に教えられてなんとかやっていけている様にしか見えなかったわ!そんな・・・・一刀が嘘を吐いていたなんて・・・・・思えない・・・・」

「ええ、その当時の赤一刀ならそれは嘘でも芝居でもないわ。」

「華琳さん・・・・それはご主人さまも・・・・・」

「同じよ。因みに紫一刀もそうだったわ。右も左も分からず、放って置けば野垂れ死に確実だったわね。二人とも覚えてないかしら?一刀たち三人が初めて出会ったときの事。」

「忘れるはずありません!あの日は私たちも初めて会った日じゃないですか!あの時の同盟が無かったら今この国は無いんですから!!」

「でもあの時は結局一刀たちにも分からないって・・・・・いえ、そういえばあの日から一刀は変わったわ!」

 やはり蓮華にも思い当たる節があるのね。

「貂蝉に出会ったのがその時だったそうよ。私もあの時から一刀が色々と率先して行動するようになったから不思議に思っていたのよ。月達を助け出すと言い出した時も霞やねねから話を聞いただけとは思えない行動力だったわ。・・・・・ところで蓮華、あなたが初めて一刀に出会った時どう思ったかしら?」

「え?・・・・・その・・・胡散臭いやつだと・・・・」

「私も似たようなものだった。」

「私は素敵な人だと思いましたよっ!!」

 桃香の無邪気な発言にこれから言わなければならない事を思うと胸が締め付けられる。

「大喬、小喬、あなた達は初めて一刀たちを見たとき・・・・・以前に出会っているような気がしたと言っていたわね。」

「「は、はい!」」

「一刀はあなた達に天の国で出会ったと言っていたけど、それは他の外史で出会っていたという事だったのよ。」

「「・・・・・・・・・」」

「でもね、これだけは分かってあげてちょうだい。外史の話は無闇にできないし、あの時にそんな話をされても理解できなかったでしょう?」

「は、はい、そうですね・・・・・大丈夫です!」

「あたしとお姉ちゃんの事を心配してくださっていたのはよくわかってますから。」

「・・・・・あなた達は何か特別なのかも知れないわ。一刀たちを見て既視感を覚えたのはあなた達だけのようだし。恋はあんな子だから更に特別だけどね。」

 私が少し冗談交じりに言うと場の空気が少しだけ軽くなった。

しかし次の話でこの四人の受ける衝撃を考えると、この話をすると決めたことを後悔しそうになる。

 でも・・・・・私は言わなければならない。

 それが一刀たちの為だから。

「一刀たちの記憶にある外史の事で更に言わなければいけない事があるわ・・・・・かなり衝撃的な話だから心して聞いてちょうだい。」

 そう前置きをした私の顔を四人とも緊張して見つめる。

「まず蓮華、あなたと私は一刀の率いる軍との戦に敗れてその軍門に下っている。そして雪蓮の事だけど・・・彼女は一刀と出会う前に死んでいるわ。」

「・・・・・そんな・・・」

「さらに冥琳は・・・・・あなたの居なくなった呉を乗っ取り、その後に北郷軍との戦に敗れ、燃え落ちる城の中で自害したそうよ。」

「・・・冥琳が?・・・・」

「それから桃香。」

「は、はい!」

「あなたは・・・・・・・・。」

 曹孟徳ともあろうものが何故ここで躊躇う!私はいつの間にこんなに弱くなった!

「・・・・・・・・・あなたは一刀と出会えなかった。生きているか死んでいるかさえ分からない・・・・」

 

「え・・・・・・・・」

 

 蓮華も二喬も何も言わない。

 言える訳がない!

 

 桃香の気持ちを考えれば・・・・・。

 

 それでも私は桃香の顔を黙って見つめる。

 それがこの話を始めた私の責任だから。

 みるみる目に涙を溜め子供の様に泣き始める桃香・・・・・・。

「なっぅく・・・・・・・なんでぇ・・・・・なんでそんなこと、うぅ、言うんですかぁ・・・」

 

「一刀の為よっ!!」

 

 私は声を張り上げていた。

 桃香の泣き顔を見てしまったせいで私も自分の感情を抑えることが出来なくなっている。

「一刀がこの話を私にしたとき!一刀は泣いたわ!何度もごめん、ごめんと繰り返しながら!大声で泣いていたのよっ!間に合わなかったのは一刀の責任じゃない!出会えなかったのは一刀の責任じゃない!そう思ったわ!でも違うのよ!一刀はこう言ったわ!」

 

「守れなくてごめんってっ!!」

 

 

 

 あの時のことは鮮明に思い出せる。

 

 初めは普通に話していた・・・・・次第に涙声になり・・・唐突に声を上げて泣き始めた。

 

『・・・・うぅあぁ、ごめん、しぇれん、ごめん、めいりん、うぅ、ごめん、とうかぁ、ごめん、あいしゃ、ぅく、ごめんれんふぁ、みんなぁ、みんなごめん、ぐ、お、おれが、おれがもっと・・・・おれがあっ!!・・・・・・ちくしょうっ!なんでだよっ!なんでみんなをまもれねえんだよっ!!なにがたりねぇんだよっ!なんでみんなをしなせちまうんだよっ!!!・・・・・うぅ、おれのせいなのか?おれがいるから・・・・みんなが・・・』

『・・・・一刀・・・』

『かりん・・・・・かりん!ごめん、おまえをまもれなかった、ごめん、おれがもっとつよけりゃ、もっと、もっとおれがぁ!!』

『落ち着きなさい一刀!私はここに居るわっ!みんなも!誰も死んでない!』

 私は叫んだ。一刀の頭を抱きしめて。涙を流し鼻水と涎で汚れた一刀の頭を。

 抱きしめながら叫んだ!

 それでも一刀は『ごめん』を繰り返し、多くの人に謝りながら私の胸の中で眠りに落ちていった。

 

 朝、目を覚ました一刀は泣いた事を覚えていなかった・・・・・。

 

「私は眠る一刀を見ながらその言葉の意味を考えた。そしてある仮説に至ったの。」

 桃香は目を腫らしているが泣き止んでいた。蓮華と二喬も次の私の話を黙って待っている。

「一刀はもっと数多くの外史を見て来ているでは?今思い出せるのがその外史なだけで様々な事を経験して来ているのでは?そうでなければどうして(・・・・ )出会えなかったはずの桃香に『守れ無かった』と謝るの!?桃香以外にもその外史で出会えなかった子の名前も有った。私の知らない名前も言っていた。もしかしたら大喬と小喬のように未だ野に埋もれている子がいるのかも知れない。」

 私はまたみんなの反応を確認して更に続ける。

「この外史の・・・私たちにとって一刀が三人居るのは当然で、その日常を受け入れている・・・・・けど他の外史では・・・・一刀は一人で外史に現れるという話よ。私の保護した一刀はこの外史に現れたとき盗賊に襲われ星に助けられた。もし星がその場にいなければ確実に命を落としていたでしょう・・・・・でもきっとそういう外史も存在したに違いないわ。そして・・・・・私が一刀をこの手で殺す外史、一刀が私を殺す外史も・・・・・」

 少し暑いくらいのこの場所で、目の前の四人は青ざめて震えている。たぶん自分が一刀を殺める処を想像したのでしょう。

「長々と話してきたけど、結論を言わせて貰うと・・・・・私は他の外史の自分が何をしているかなど興味が無いわ。私にとっては今この場に居る事が全て。だけど一刀にとっては、荒野に数多く転がる小石の一つに過ぎない外史かもしれない・・・・・でも・・・いつか次の外史へ旅立つ一刀に、この外史での思い出を胸に、糧にして闘って行けるように!私はこの小石を光り輝く宝石に変えてみせるっ!それがこの曹孟徳の決意よっ!!」

 桃香が先程とは違う涙を溜めている。蓮華も、大喬も、小喬も、みな私の気持ちが伝わったのを確信した。

「・・・ねぇ華琳・・・あなたは一刀たちにどうしてあげるつもりなの?」

「特に何もしない・・・いえ、この言い方は語弊があるわね・・・今している事、国を守り民を守り豊かにしていくわ。少し一刀たちに甘くなるかもしれないけど・・・今日のあの馬鹿騒ぎを見たでしょう。みんなで笑って、怒られたり揶揄されたり、そんな平和な日常こそが一刀たちの望む物。・・・でもそうね、私たちで少し我侭をを言って困らせるのも面白そうではない?」

 私の冗談に四人がくすりと笑う。

 だけど桃香が顔を曇らせぽつりと呟いた。

「でも・・・・・ご主人さまが旅立つ日・・・・・そんな事考えたく無い・・・」

「私はね桃香、一刀たちに老衰以外でこの外史から出て行くことを許すつもりは・・・・いえ、絶対に許しはしないわっ!」

 私が胸を張って宣言すると桃香に笑顔が戻った。

 蓮華も笑って拳を握り私を見つめる。

「そうよね華琳。一刀が三人居たからこそ私たちは同盟を結び、この国を作る事を決意したのだもの。勝手に出て行くなんて絶対に許さないわ!」

「私も頑張ります!ご主人さまに少しでも素敵な思い出を作ってあげますっ!!」

「あたしたちも、一刀さまの力に成れるようがんばりますっ!」

「わたしと小喬ちゃんにできることがあれば申し付けてくださいっ!」

 みんなの決意が伝わってくる・・・・・・話して良かった・・・この子たちなら一刀の前でも自然に振舞えるだろう。

 本当なら全員に話してあげたい・・・・・でも、この話を聞いた後で一刀に対してぎこちなくなったり、不自然な態度を取るようになっては意味が無い。

 一刀が望むのは明くまでも普通に笑っていられる日常なのだから・・・。

 

 

「最後にひとつ・・・・・一刀が泣いたあの時、気が付いた事があるの・・・・・あれだけ泣き(わめ )いていながら決して『逃げたい』とは言わなかった。この事を心に刻んでおいてちょうだい。」

 

 私はこの時の蓮華、桃香、大喬、小喬の微笑みながら頷くその姿を一生忘れることはないだろう。

 

 

 

 

外伝 孟徳外史考        了

 

 

 

あとがき

 

 

雷起です。

間違いなく雷起です。

別に変なものを拾って食べた訳でもなく

熱もありません。

 

たまにはこんなのも書きたくなるのです。

 

 

当初のコンセプトは

「きれいなジャイアン風な華琳様」

はたして成功しているのでしょうか?

 

 

本当なら貂蝉と卑弥呼の

説明もしなければならないのですが

話の流れがくどくなるのと

後日に改めて華琳が説明するようにしても

問題ないと判断し割愛しました。

 

ヴィジュアル的にもくどいですしねw

 

 

一刀が『マブラヴオルタの白銀武』みたいになってますが

『一刀の強さ』が少しでも表現できればと・・・

できてないかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回の華琳達が「何時」「何処で」会話しているのか説明していないのは仕様です。

「何時」を説明すると「何処」に居るかが分かってしまうので。

作中それを匂わす表現をしておりますので分かった方もいらっしゃると思いますが、どうでしょう?

因みに入口からこの部屋までの罠には桂花によって『北郷返し』と名付けられております。

どんな部屋でどんな姿なのかは皆様の妄想力が頼りです。

 

あ、天井から滴が・・・・。

 

 


 
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