第五部 帝立北郷学園
【紫一刀turn】
「白蓮、昨日戻ってきたばかりの処申し訳ないけど、一つ仕事を頼まれてくれないか?」
壁一面の窓を背後にして黒檀の大きな机に着いた俺は、両肘を付いて口元を隠す『ゲンドウ座り』で話し始めた。
俺の左右には赤と緑が同じポーズで座り、俺の後ろに紫苑、赤の後ろに祭さん、緑の後ろに桔梗が立っている。その理由を彼女達に知られれば地獄が待っているのだろうが、敢えてここは様式美に拘りたい。
「なあ華琳、私がいない間に何が有ったんだ?」
「まあ色々有ったけど、アレはいつものお遊びらしいから我慢して付き合ってあげて頂戴。」
はっはっは。聞こえているぞ二人とも・・・・・・・・お願いだから指差すのはマヂヤメテ。
革張りのソファーに座っている白蓮が眉間にしわを寄せジト目で俺たち見てるし。
「仕事を頼まれるのは別に構わないけど・・・・・一体何をするんだ?」
「君には教師をしてもらいたい。」
「声まで作ってきたよ!頼むから普通に話してくれ・・・・・・・・って、ええええぇぇっ!?私が教師っ!?」
ソファーに座った白蓮はキョロキョロと辺を見回している。
今この部屋には華琳や紫苑達以外にも、冥琳、朱里、雛里、詠、星、そして大喬と小喬が同席している。
部屋の内装は観葉植物の鉢植えや本棚を配置、俺たちのイメージにある「学園長室」を再現していた。
机の上にはちゃんと『学園長』と書かれた木のフダも置いてある。
「教師だったらそっちの四人や華琳の方が適任だろう!なんで私が・・・・・」
「待たれい白蓮殿!今の『四人』の中に私は含まれておらぬようですが?」
「当たり前だろ!お前が教師だったら生徒が可哀相すぎるだろうが!!」
「なんと!折角私が主に白蓮殿を推薦したというのにこの仕打ちとは・・・」
「えぇ?せ、星・・・・・推薦って・・・」
「これで少しは白蓮殿のキャラ立ちの切っ掛けになればと思っておりましたものを・・・」
「す、すまん星・・・・・私は」
「そうすれば厄介な絡み酒に付き合わされなくて済むと」
「どうせそうだろうよっ!!」
白蓮と星の漫才が終わったようなので話を続けよう。
「で、白蓮。今の華琳を含めた五人も教師をやってもらう事になってる。白蓮にもその中に入って貰いたいんだけど、どうかな?」
さすがにあのポーズが疲れてきたので普通に話すことにした。
「そ、それって・・・・・・私がこの面子と一緒って(北郷はそこまで私を評価してくれていたのかぁ)」
なんか・・・・・・白蓮が急にニヤニヤし始めたけど・・・・・・?
「あの・・・・・・白蓮?」
「やるっ!いや、やらせてくれ北郷!!必ずお前の期待に答えてみせるっ!!」
白蓮は跳ねるように立ち上がって拳を握り、俺たちに燃える瞳で宣言した。
「そ、そう?・・・・・あ、ありがとう白蓮。」
何だか白蓮が今にも踊りだしそうなくらい喜んでるよ・・・・・もしかして教師に憧れてたのかな?
「それで白蓮、事の経緯なんだけど・・・・・」
「うんうん♪」
「そこにいる大喬と小喬、二人とは昨日自己紹介したよね。」
「ああ♪」
「その二人を俺と華琳で試してみたら軍師としての才が有ることが分かってさ。」
「へえ、二人ともすごいじゃないか!華琳が認めるくらいだなんて♪」
「「あ、ありがとうございます。白蓮様。」」
「そこにいる軍師の四人にも勉強を見てもらう事になってね。」
「この国の頭脳集団が教師だなんて贅沢だぞ♪」
「そこにシャオも一緒に勉強することになって。」
「あはは、小蓮も災難だな♪」
「ついでに俺たちや桃香も治世や軍略を勉強し直す事にしたんだ。」
「へえ、いいじゃないか♪」
「それに華琳が季衣と流琉の勉強も見てあげたいって話になって。」
「うんう・・・・・・ん?」
「それじゃあついでに鈴々に蒲公英、璃々ちゃんに美羽、それに昨日白蓮と一緒に都に入った美以たちもって・・・・・・・白蓮?汗かいてるけどこの部屋暑いかな?」
「・・・・・い、いや・・・だいじょうぶ・・・・・・・・・・つづけてくれ・・・・」
「で、白蓮にはこの子達の勉強を見て貰いたいんだ。」
「・・・・・・どうせそんなオチだと思ったよ・・・・・・でも、まだこの面子なら・・・」
「春蘭が都に戻ったら春蘭も」
「絶対にお断りだっ!!!」
【白蓮turn】
結局引き受ける事にしたけど・・・・・・。
それに教える面子が季衣、流琉、鈴々、蒲公英、璃々、美羽、美以、ミケ、トラ、シャムだって?
まともに話聴きそうなのって流琉と璃々しかいないじゃ無いかぁ!
美以たち四人は成都からこっちに来るまでの旅で結構なついてくれたから、やり易くはなってるか?
美羽は麗羽相手にするよりはまだマシか。
アレ?意外といけるんじゃないか?
そうなってくると問題は季衣と鈴々のケンカと蒲公英のイタズラか・・・・・。
季衣と鈴々は流琉に協力してもらって抑えるしかないか。
蒲公英は・・・・・この面子の学級長にしてみるか?部隊を率いてる時は結構真面目にやってるみたいだし・・・でも、下手すりゃイタズラ集団を作り上げる事になんないか?・・・・う~ん、一か八かの賭けになりそうだけど・・・・・・試してみるか。
「白蓮お待たせ。こっちの打ち合わせが終わったから教室に移動しようと思うんだけど、何か質問とかある?」
緑北郷が話しかけてくれたので考えるのを中断した。
この北郷が私と一番付き合いが長いけど、赤北郷や紫北郷と話しててもこの北郷と話してるのと変わりなく会話してるよな、私。
ていうか、話してるうちにどの北郷と話してるって意識が無くなっていくんだよなぁ。
「いや、特に無いかな。今日はとりあえず様子見だし、教えるのも文字の読み書きと算術だろ。盧植先生の所で学級長や補佐をしたことが有るからなんとかなるさ。」
「盧植先生って桃香と一緒に通ってた私塾の先生だよね?」
「あ、覚えててくれたんだ。」
「桃香からも聞いてるよ、白蓮は秀才だったって。」
「桃香は盧植先生から期待されてたもんなぁ、本当に一国の王になったし・・・・・それに比べて私は普通普通言われて・・・・・・・・」
「そんな卑下するなって、白蓮。俺たちは白蓮の事頼りにしてるんだから。」
「・・・・・・ホントに?」
「ああ、本当だって!」
「・・・・えへ・・・えへ、えへへへ♪」
ダメだ~ニヤケが止まんないよぅ♪
「・・・・・・・白蓮?」
みんなで連れ立って隣の部屋に移動してるんだけど。
ここって城の中で曹魏用の区画だよなぁ?
華琳はこんな教室まで城を建てる時から考えてたのか。
扉を開けて部屋の中に入ると、聞かされていたちびっこ共と更に亞莎と七乃が居た。
「待たせたわね、みんな座ったままで結構よ・・・あら、亞莎も来たのね。」
この勉強会の主催者の華琳がまずは仕切る事になってたっけ。
「は、はい!蓮華様に薦められまして!ご、ご迷惑ではないでしょうか?」
あはは、亞莎ガチガチになってるよ。
「そんなことないわよ。向上心が有るのは良いことだわ。しっかり励みなさい。」
「はい!華琳様、冥琳様、臥龍先生、鳳雛先生、詠さん、よろしくお願いします!」
「はわわ!わ、私たちのことも真名で呼んでくださいぃ!!」
「あわわ!お、お願いしますぅ。」
「よろしくね、亞莎。・・・・・今度ねねも呼んだ方がいいかなぁ・・・」
詠も気苦労が絶えないみたいだなぁ。
「体力の方は健康管理の意味で強制したけど、こちらは自由参加でいいでしょ。来たくなったら来るように言っておきなさい。」
「ありがとう華琳♪」
「では、改めて。みんなおはよう。今日からこの教室で勉強を始めるけど、この集まりは帝国で運営する私塾のようなもの。公立で私塾と言うのもおかしいので・・・・・
『帝立北郷学園』と名付けます。」
なんか仰々しくなってきたぞ?
「さて、まずはあなた達、強制参加組の方からね。」
華琳がちびっこ共の方に声を掛けたけど・・・・・・あれぇ?なんかみんなおとなしいなぁ。
「あなた達はそれぞれ学力がちがうから全員で同じ勉強をするわけではないけど、こうして集まって勉強をすれば一人でするよりは身が入るでしょう。」
そりゃ蒲公英と美以に同じ事やらせる訳にはいかないもんな。
蒲公英のヤツはあれで結構勉強してるんだよなぁ。
翠っていう反面教師がいる所為か。
「それから事前に伝えてある通り、もし騒いで勉強の邪魔をしたり逃げ出した場合・・・・・昼食抜きっ!!」
全員がビクッと背筋を伸ばして冷や汗流してるよ・・・・・なるほど、大人しかったのはそういう事か。
でも、それだけじゃ最初からここに来なさそうなのが・・・・・。
「だけど、大人しく勉強を頑張った子にはご褒美として、私が作った天の国のお菓子を食べさせてあげましょう♪」
・・・・・・・正に飴と鞭って訳か。
「それでは、あなた達を教える先生だけど、白蓮が引き受けてくれたわ。」
「え?白蓮お姉ちゃんが先生なのか?」
「あら?鈴々は白蓮が先生じゃ不満?」
う・・・・・。
「そうじゃないけど・・・・・春巻きと流琉が華琳お姉ちゃんから勉強を教わってるって聞いてたからてっきり・・・・・」
あぁ、そうか。私はさっき教師役を引き受けたばっかりだから、鈴々が知らなくて当然だよな。
「それはごめんなさいね。私も公務と大喬小喬への教鞭でなかなかこちらまで見てあげられそうにないのよ。それに星と桃香の話ではあなた達に教えるのは白蓮の方が私よりも上手に出来そうよ。」
えぇ!星と桃香はそこまで私を推してくれてたのか?
なんだよ星の奴、私にはあんな事言っておきながら・・・・・。
よぉし!俄然やる気が出てきたぞ!!
「鈴々!私が華琳より上手に教えるってのはさすがに言い過ぎだと思うけど、普通に読み書きと算術を教えるんなら充分自信はあるぞ♪それに鈴々、お前は命令書や書簡を兵士に読んでもらってただろ?そういうのを自分で読める様にはしてやるよ。」
「ちょっと待って下さい!華琳さんならともかく、美羽お嬢様の教師に白蓮さんなんて納得いきませんっ!お嬢様が普通の人になってしまったらどうしてくれるんですかっ!!」
な、七乃!?
えらい剣幕の声に北郷たちや他の連中も慌てて集まって来る。
「ど、どうしたんだ、一体?」
慌てた緑北郷が、腕を胸の前で組んで妙に態度のデカイ七乃に問いかけた。
「どうしたじゃありませんよっ!大事な美羽お嬢様を預けるのに白蓮さんじゃ全っ然物足りません!交代を要求しますっ!!」
「歯に衣着せないわねぇ、七乃・・・・・・」
「「「お前はモンスターペアレントか?」」」
もんすたあ・・・・・?また天の国の言葉か?
「そこまで言うって事は美羽の学力に自信があるという事かしら?」
うっわ~、華琳のヤツの冷ややかな目・・・・・・。
そりゃ虎牢関の時を思い出せば、とてもじゃないが美羽の学力が良いなんて思えないよ。
「当たり前です!この私が教えてたんですよ!読み書きなんて出来て当然、孫子だって全部覚えていらっしゃいますっ!!」
ええっ!?美羽が孫子を!?って当の美羽はガタガタブルブル言ってるけど・・・・・・。
「ふむ、そういえば普通に書簡等は読んでいたし、書状なんかもこちらに書いて寄越していたな。」
「ぴぃ!」
あ、更に怯えた。
「あら、そうなの冥琳?」
「あぁ・・・・・だが孫子の話は・・・」
「ぴぃ!」
あ、また。
「さっきからどうしたんだ、美羽?」
痛々しいんで思わず声をかけてやると
「・・・・・そ、そんさく・・・」
「は?雪蓮?」
「ぴいいぃぃぃぃぃぃっ!!」
「あぁ♡怯えるお嬢様ってとっても可愛い♡」
「・・・・・・・・・・・・・・・美羽、雪蓮はここにいないぞ。」
「・・・・・で、でもしゅうゆと・・・こうがいと・・・そんしょうこうと・・・りょもうがおるのじゃ・・・・・・その内そんさくも・・・・・・」
私が冥琳の顔を見ると首を横に振った。
「大丈夫、雪蓮はここにこないってさ♪」
「・・・・・ホントかの?」
「ああ♪」
美羽を安心させるため、出来るだけ優しい笑顔になるよう努めて頷いてあげる。
「・・・・・わ、わかったのじゃ・・・・・」
「さて、落ち着いたみたいだから試させて貰うわよ。」
うっわ、華琳のヤツ、容赦ないなぁ。
「ほえ?」
当の美羽は良く分かってないみたいだし・・・・・。
「孫子第四篇の一、言えるかしら?」
「孫子第四篇軍形篇ノ一。孫子曰ク、昔ノ善ク戦ウ者ハ、先ズ勝ツベカラザルヲシテ、以ッテ敵ノ勝ツベキヲ待ツ。勝ツベカラザルハ己ニ在ルモ、勝ツベキハ敵ニ在リ。故ニ善ク戦ウ者ハ、善ク勝ツベカラザルヲナスモ、敵ヲシテ必ズ勝ツベカラシムルコト能ワズ。故ニ曰ク、勝ハ知ルベクシテ、ナスベカラズ、ト。」
『ええええええええええええええええええええええええええっ!?』
私だけじゃない。この場にいる七乃と美以たち以外の全員が声を上げて驚いた。
「そ、それでは第四篇の五は?」
「孫子第四篇軍形篇ノ五。兵法ハ一ニ曰ク
おいおいおいおいおいおいおいおい!
どうなってるんだよ?
「・・・・・では、その意味は?」
華琳の目が美羽に興味を持ち始めてる・・・・・・。
「・・・意味?今のはなにか意味があるのかや?妾は七乃が覚える必要があるというから覚えたのじゃ。」
「「「七乃おおおおおおおおおおっ!!」」」
すかさず北郷三人が全力ツッコミで七乃に迫る。
「え~、意味を教えちゃったら面白くないじゃないですかぁ。」
「・・・・・・・・・そんなどうしようもない理由で・・・・・」
「ねえねえ、今のって戦力に一対五百ぐらい開きがあれば誰だって勝てるって意味でしょ。」
「蒲公英!お前も孫子は覚えてるのか!?」
私が驚いて詰め寄ると苦笑いで答える。
「さすがに美羽みたいに全文を暗記してはいないけど、意味なら大体覚えてるよ。」
「あら、面白いわね。では蒲公英、意味をもう少し詳しくいえる?」
「え?ええと・・・戦の勝敗の要素とは先ず地形。地形によって国の広さが決まって、その広さによって採れるものが決まって、採れるものの量で人口が決まって、人口に多い少ないで戦力の強弱が決まって、戦力の強弱によって戦の勝敗が決まる。戦力差が、例えば一鎰の岩に五百分の一の重さの一銖の小石がぶつかってもビクともしないように、大きいほうは勝てるし、小さい方は必ず負ける。勝つ側は堰止めた水を深い谷底に落とすみたいに一気に攻め立てることになる。これが戦の態勢を整えるってこと・・・・・だよね。」
「えぇ♪素晴らしい答えよ。では、先に美羽に言わせた方はどう?これは意訳でいいわよ。」
「それはあれだよね、絶対負けないようにするのは守りの固め方で出来るけど、相手の戦力も分からない内から必勝の軍隊を作れとか言われてもそんなの無理!ってことだよね。」
こりゃ美羽と蒲公英が二人揃って丁度良いかんじだなぁ。
「すごいな蒲公英。勉強してるのは知ってたけど、そんなに勉強してるとは思わなかったよ。」
「えへへ♪実はイタズラ用の罠を仕掛けるのに参考にしてる内に覚えたんだよねぇ♪」
「・・・・・・・・・・まあ、それは確かに極小規模の戦略ではあるけど・・・・・」
孫武もまさかイタズラの参考書に使われるとは思わなかっただろうなぁ。
【緑一刀turn】
たんぽぽと美羽の意外な実力の発覚に、教師組が集まって話し合う。
たんぽぽには意外と言っちゃ失礼か。
普段焔耶の事を『脳筋』呼ばわりするだけの根拠が在ったってことだな。
本当に意外なのは美羽だな。
まさか孫子を
ただ、諳んじている時の美羽の目が虚ろなのが気に掛かるけど・・・・・。
「みんな待たせたわね。若干の修正を加えて班分けをすることにしたわ。」
華琳がこの部屋にいる全員を集めて説明を始めた。
「まず、璃々、美以、ミケ、トラ、シャムの五名を幼年組とします。」
当の五人は俺たちが話し合っている間紫苑達と遊んでいたのだが、今はお昼寝モードに入っていた。
璃々ちゃん以外の四人が騒ぎ出すよりはましということで、そのまま放置されている。
「基本的には予定通り白蓮に見てもらうけど、紫苑、桔梗、祭も手伝って頂戴。」
「なにぃ!?」
「何じゃとぉ!?」
華琳の発言に対して、聞かされていない桔梗と祭さんが慌ててる。
紫苑は予測していたらしく、いつもの様にニコニコしてるけど。
「そうですね。白蓮ちゃん一人でこの人数を相手するのは大変でしょうし、わたくしもそろそろ璃々に読み書きと弓の手ほどきをしてあげようと考えていた処ですから。」
「璃々ちゃんにもう弓を教えるの!?」
「えぇ、わたくしもこのくらいの時から始めていましたから、早いということはございませんよ、ご主人様♪」
紫苑の腕を考えればそれぐらいの英才教育は納得できるか。
将来璃々ちゃんも紫苑みたいなスーパースナイパーになるんだろうなぁ。
「そうか!ならばわしも弓の方を教えよう♪読み書きを教えるよりはわしに合っているしな。」
桔梗が乗り気になってくれたな。
後は祭さんだけど・・・・・。
「う~ん・・・・・」
「祭殿、何を躊躇っておいでなのです?どうせ時間が空けば酒を呑んでいるのですから構わないでしょう。」
冥琳きっつ!
「まさか酒を呑む時間が惜しいからやりたくないと?」
「誰もそんな事言うておらんじゃろう!・・・・・その・・・恐いんじゃよ・・・・・・」
は?恐い??
「あ、前に祭さんが子供に囲まれた時言ってた、アレか!」
「「何だ赤?どういう事だ?」」
「祭さんは子供に触れると怪我をさせてしまいそうで恐いって言ってた事があってさ。」
「なんだ、そのような事を気にしておったのか。」
桔梗は普段から璃々ちゃんと接してるから気にならないんだろうな。
「そうね、さっき見ていたけど五人に懐かれていたし、壊れ物を扱うみたいに接していたわね。そういう気配りができるからお願いするのだけれど?」
ホント、よく見てるね、華琳は。
「あっはっは!華琳殿、そんな気配りなぞこのチビどもには不要ですぞ♪南蛮の四人は元より、璃々とてこの紫苑の娘。ちょっとやそっとでは壊れはせんて♪」
「・・・桔梗。それはどういう意味かしら?」
「ほうれ、普段は菩薩のような顔をしているが、中身はこの様に鬼女よ♪市井の子供の相手よりは楽だろう。」
「もう、桔梗ったら・・・・・祭さん、わたくしからもお願いします。手の空いている時で構わないのでお願いできませんか?」
「「祭様なら大丈夫ですよ。」」
紫苑への援軍に思わぬ所から声が上がった。
「大喬、小喬・・・・・」
「わたしたちが小さい頃、よく遊んでくださったじゃないですか♪」
「祭様が家に遊びに来てくださるの、楽しみだったんですよ、あたしたち♪」
大喬と小喬に後押しされて、ついに祭さんも折れたようだった。
「・・・・・そうじゃな。では儂も弓と・・・後、料理でも教えてやるとするか♪」
ちょ、ちょっと、紫苑と桔梗と祭さんに鍛えられたらとんでもない弓のニュータイプ部隊が出来上がるんじゃないの?「そこぅ!」とか言って・・・・・。
「これに秋蘭が加わったら弓の特殊精鋭訓練部隊になちゃうな。」
「おいおい、紫。いくら何でも秋蘭は忙しいから無理だろう。」
「秋蘭か・・・・・なあ、紫、緑。今気が付いたんだが、やっぱり弓をやるとおっぱいが大きくなるのかな?」
「・・・・・そういえば・・・」
「大胸筋を鍛えると大きくなるって話が有ったおわっ!!」
「それは本当ですかっ!?ご主人様っ!!」
いつの間にか朱里を始め、貧乳組に取り囲まれていた。
「い、いや・・・・・弓をやっただけで大きくなるわけじゃ無いと思うぞ・・・・・胸の筋肉を鍛えるのは要素の一つだとは思うけど・・・・・」
弓をやるだけで胸が大きくなるんだったら全国の弓道部とアーチェリー部は巨乳の巣窟になってなかったらおかしいもんな。
当然そんなことは無いだろうし。
「い、今はそれより組み分けの続き!ほら!華琳!!」
「え?えぇ、そうね・・・・・一刀、後で詳しく教えなさいよ・・・・・」
やっぱり華琳も大きくしたいのかなぁ?
「では次に季衣、流琉、鈴々。あなたたちは初等組とします。白蓮にはこちらを重点的に教えてもらうわ。まずは読み書きを覚えさせて頂戴。」
「華琳お姉ちゃん、鈴々たちは料理の勉強はないの?」
鈴々の魂胆は見え見えだけど、それでも口にするところが鈴々らしい。
「鈴々、料理の勉強は自分で作れるようになる為の勉強で、食べるだけじゃダメなんだぞ。」
「そうだぞチビッ子!お前に料理が作れるのかぁ?」
季衣が俺の尻馬に乗っかって鈴々を攻撃しはじめた。
これはまずい展開になるかと思ったが意外に鈴々が冷静だった。
「作れないから勉強するのだ。自分の食べたい物を食べたい時に食べたいだけ作れたら、お小遣いの心配もしなくてすむのだ。」
ほほう、鈴々も考えたな。
この間愛紗に食べ物屋の請求書の事で怒られてたもんな。
鈴々の答えが華琳の何かを刺激したらしく、少し考えてる。
「そうね、本人がやりたいと言っているのを止める理由はないわね。幸いこの場でも料理の教師役をできそうなのが揃っているし、一人基礎からやり直させたいのもいるしね。」
そう言った華琳の視線の先にいるのは・・・・・・・桃香だった。
俺としては出来れば愛紗もそこに加えたいなぁ。
前の外史ではちゃんと『食べ物』を作れるようになったのに、この外史じゃ未だに『殺人シェフ』なんだもん・・・・・。
「では次に蒲公英と美羽、それから小蓮もこちらに加えて中等組とします。」
これはまた異色の組み合わせだな。
特にシャオと美羽って大丈夫なのか?
「美羽。これからはシャオのことちゃんと真名で呼んでよね♪」
「う、うむ・・・・・わかったのじゃ・・・しゃおれん。」
おお!シャオの方から歩み寄って!しかもかなり友好的じゃないか!
美羽もちゃんと真名で呼んでるし。
美羽の口から七乃と麗羽以外の真名を聞いたの初めてじゃないか?
「偉いぞシャオ♪」
「えへへ、過去の事を水に流すって言ったの一刀たちだしね。妻としては実践してみせないとね♪それに・・・・・」
「それに?」
「華琳や冥琳の授業を受けなくて済んだかと思うと嬉しくって♪」
「あら、誰もそんな事言ってないわよ。」
「えーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?」
シャオが涙目で抗議の声を上げた。
「白蓮の授業を私達が補佐する形にするわ。七乃もこれなら文句はないでしょう?」
「そうですねぇ・・・・・・いっその事私も教師の一員に・・・」
「それは駄目よ!七乃には別の仕事を用意するから、そちらをキチンとこなす様に。働かざる者食うべからず。この城から放り出されたくなかったら、しっかり励みなさい」
「そ、そんなぁ~・・・・・一刀さ~ん・・・なんとかしてくださいよぅ・・・」
七乃が目をウルウルさせて俺たちを見るけど・・・・・今回はさすがに無理!
美羽と七乃を離さない事にはどうにもならない。という判断で下された決定だ。
それに離れているのは七乃が朝仕事に出掛けて、帰って来る夕方までの話だ。
勤め人の家庭なら極一般的な生活だろう?
「一体どうしたのじゃ?七乃。」
「お、お嬢様ぁ・・・それが・・・」
「美羽ちゃん♪」
「美羽♪」
七乃が美羽に泣きつく前に、大喬と小喬が美羽との間を遮った。
「美羽ちゃんは一刀さまのいるこのお城でこれからも暮らしたいよね。」
「うむ、当然なのじゃ。」
「それじゃあ美羽は一刀さまの為にお仕事しないとダメなんだよ!」
「う、うむ・・・・・しごとをしないとポイっとされてしまうのじゃな・・・・・」
「でも、美羽ちゃんはまだお仕事ができないからできるようになるために、お勉強をしなくちゃいけないの。」
「おぉ!それで妾はここに呼ばれたのじゃな!」
何で呼ばれたのか知らなかったのか・・・・・きっと七乃がワザと教えなかったんだろけど。
「これからしばらくはお勉強するのが美羽の仕事だよ。」
「わかったのじゃ♪」
「美羽が一刀さまたちのお役に立てるようになるまでは、七乃が美羽の分も仕事をしてくれるそうだよ♪」
「なんと!七乃、妾もはよう主様のお役に立てるよう勉強をするで、それまでしばしの辛抱じゃ!七乃と一緒にしごとができるようがんばるので待っておるのじゃ!」
やる気いっぱいの美羽の姿に七乃は驚き戸惑ってる。
だけど、さすがの七乃もそんな美羽の決意を否定する事は出来ない様だった。
「分かりましたお嬢様。それではその日が来るのを楽しみに仕事に励みますね♪」
「うむ、くるしゅうない♪」
七乃は美羽から離れて俺たちの方へやってくる。
「大喬ちゃんと小喬ちゃんにやられちゃいましたねぇ。一刀さんがけしかけたんですか?」
「違うよ。大喬と小喬は自分達で考えて行動してくれたんだ。この場で美羽が七乃の次に話を聞くのが自分達だって解ってるからだろ。」
「・・・・・ふ~ん、自分の事に関しては相変わらず鈍感なんですねぇ。一刀さんたちは。」
「は?どういう事?」
「まあ、そんな事よりもお嬢様ですけど・・・・・」
あっさり流しましたよ!この人!
「お嬢様が仕事で役に立つ日って、本当にくるんですかねぇ?」
「七乃がそれを言うのかよ!」
「では最後に、大喬、小喬、一刀たち、桃香、亞莎。あなたたちは高等組ね。授業は一刀たちと桃香に帝王学を教えていくのを本筋として、大喬、小喬、亞莎には王への補佐を教えていくわ。」
「「「はい!頑張りますっ!!」」」
大喬、小喬、亞莎の三人が元気良く返事をする。
対して俺たちと桃香は少々引つりながら頷くのが精一杯だった。
改めてこの教師陣から教えられるのかと思うと・・・・・・スパルタンな日々が続くんだろうなぁ・・・・・。
「それでは軽く授業を行なって見ましょう。暫くはこの『北郷学園』の運用試験も兼ねるから、改善点はどんどん直して行くわよ。」
あとがき
『二喬伝』の大喬と小喬に勉強をさせる話から
ついに学園モノ(?)に発展。
果たして白蓮は教師としてキャラ立ちできるのか?
冥琳にスーツを着せた方が『女教師』っぽいですけどねw
美羽の学力
第一部改訂版で竹簡を読むシーンを入れてしまった為
この外史では読み書きが出来る様になりましたw
孫子を諳んじているシーンは
一刀が気にしている通り『自動詠唱』状態です。
七乃はどんな『教え方』をしたのでしょうねw
たんぽぽの学力
ゲームでは触れられてはいなかったので
脳筋を馬鹿にする位の実力はあるようにしてみました。
弓とおっぱい
本当に大きくなるそうです。
但し必ず巨乳になるわけでは無いようですが。
しかも右腕と左腕、どちらに力が入るかで
大きさが偏るそうですよ。
詳しい方がいらっしゃれば
補足していただけると幸いです。
次回は授業をしてみるわけですが
はたしてみんなは華琳のお菓子を食べられるのでしょうか?
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第四部からかなり間が開きましたが
第五部の開始です。
成都から戻った白蓮にも教師役の白羽の矢が。
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