No.319136

仮面ライダーEINS 第二十話 過去に駆ける

この作品について
・この作品は仮面ライダーシリーズの二次創作です。
執筆について
・隔週スペースになると思います。
・日曜日朝八時半より連載。

2011-10-16 08:30:06 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:718   閲覧ユーザー数:716

――2011年11月16日 17:12

――学園都市 理系学区 

「ふう……」

 吹き飛ばされたロードチェイサー・カスタムを起こしながらアインツ・ブラストフォームがため息をついた。

「こりゃ使いこなすのに時間がかかりそうだ」

『そんなに?』

「引きこもりにはわからないさ。何より曲がれないから無理矢理曲がるってコンセプトがそもそもおかしい気がする」

 高速で曲がるときはサイドブースターを使って曲がれというのは、そもそも物理的に欠陥があるとしか思えない。

「ハル。気掛かり……というか気づいていると思うが」

『ジェットスライガーはどこで補給を行ったか……だよね』

「さすが」

 先ほどのジェットスライガーはフォトンミサイルをぶっ放してきた。装備なんかは学園都市に入る前に外しているため中で誰かが装備させたのだろう。

悪態をつきながらロードチェイサー・カスタムのエンジンを再稼働させると、元気よくうなり声を上げた。

『一騎。その近くでツヴァイが動いているみたい』

「OK。しっかりと見ておけ」

 そう言ってロードチェイサー・カスタムに跨りツヴァイの戦場に足を向けた。

・・・

・・

「あれか」

 ツヴァイの眼前のカーブからジェットスライガーが姿を見せた。

『尾木、オルタナティブで止めろ』

 指示にあったように両足と両手にカードを挿入する。

 

『オルタナティブ』

 

 速力と攻撃力を重視したモードを選択し、両手に二振りのブレードが転送され、両足にはブースターが装着される。

そのブースターが点火され、ジェットスライガーに向かって直線移動を開始する。

「はぁあ!!」

 だが向かってきているジェットスライガーは曲がりきってすぐで、加速されていない状況だ。

そしてジェットスライガーの最高時速は時速1300km。秒速にして360m。それほどの速度をもち、かつ大質量のジェットスライガーの加速度を甘く見ていた。

「何!?」

 ふっ飛ばされた。体良く言えば。悪く言えば……

『何あの役立たず!何しに出てきたのさ!!』

 実質轢かれに来ただけである。

そもそも出てきたところで高機動用装備を持っていないため完全な足手まといなのだが。追いついたアインツ・ブラストはツヴァイの無様な姿を確認しつつもジェットスライガーを追う。

捕捉はしている。だが、それは晴彦の側だけである。

『くそ、ジャミングだ!!』

 だからこそ弱かった。

突如発生したジャミングによって、晴彦が見ていた画面にノイズが走る。

「ハル?」

『一騎は捕捉しつづけて!』

 だが敵はそれを許さない。突然こちらに顔を向け、ミサイル発射する。

これを見たアインツはブラストアクスガンでミサイルを迎撃するが、あたりが爆炎で包まれそれが目眩ましとなりジェットスライガーの姿を見失った。

「……くそ」

 

 * *

 

 * OP:Justiφ's *

 

 

第二十話 過去に駆ける

 

――2011年11月16日 18:25

――学園都市 理系学区 

――一騎の研究室 総合司令センター

「まさかスマートブレイン社の物が悪用されるとはね……乾さんたちに顔向けできないよ」

「起こってしまった事を悔やんでも仕方ない。後悔しないように前に進めばいい」

「……OK、今やる事を全力で取り組もう」

「そうそう、どのみち足向けて寝れないんだから」

 そもそもスマートブレイン社が開発したライダーズギアとそのツールは、フォトンブラッドと呼ばれる有毒な流体エネルギーを使用している。

その有毒性と劣化した際の危険性から日本政府が学園都市に直々に管理を依頼した物であった。それを研究対象物として貸し出したのはそもそも失敗だったかもしれない。

「しかしあんなでかい物を見失うなんてな」

「まったくだよ。一瞬のジャミングで全ての監視カメラに映らないなんて……」

 その後、二人は黙り込んでしまう。

状況と空気を打破するためにも、一騎は現状を把握しようと試みた。

「結局、状況はどうなってるんだ?」

 先ほどまで走り回っていたため、実はちゃんと理解していなかった。

ツヴァイが轢かれたという笑い話は聞かされたが、研究室に戻るまで晴彦はずっと作業を続けており、何も聞いていなかったのだ。

「監視カメラの復旧後は、僕がしらみつぶしに調べたけど……どこにもその姿を確認できてない。加えてジェットスライガーが走行した付近のネットワークに接続されていた自動機械が暴走しているのを確認している」

「ネットワークに侵入されたのと関係あるのか」

「そっちは既に対応済み。どうやらジェットスライガーを破壊しない限り収まらないね」

「どういうことだ?」

「つまりジェットスライガー自体がアクセスポイントになっているんだよ。それに連動してスタンドアローンでない機械がアクセスポイント化してさらに危害を広めていく」

「デジタルゾンビってことか」

「言い得て妙だね。現在ジェットスライガーは活動を停止しているから後続の情報は一切ないよ」

 おそらく補給を行っているのだろう。あれだけの巨体が突然消えたのならある程度場所は絞れるかもしれない。

「とりあえず俺はジャミングが発生した地点からの足取りをたどってみる」

「心当たりがあるの?」

「地道な捜査をするしかないさ」

 

 

――2011年11月16日 19:02

――学園都市 理系学区

――カフェAO

「ああ、ここにいた。剣崎さん」

「おお、一騎くん。どうしたの?」

 一騎が探していたのは清掃員であった。

この理系学区のゴミ収集から掃除、喧嘩の仲裁までこなす学園都市のベテラン清掃員だ。腕っ節が立ち性格も相まって何度か一騎のお世話になっている。

「まあ一騎くんが聞きたいことってだいたい限られているよね」

「まあお察しの通りのことなんですが……」

 アインツコマンダーを開き、地図を表示する。その地図にはジェットスライガーの行動ルートも示されていた。

「これって……」

 清掃員は勘もいい。すぐに気づいたようだ。

「取り逃がしたって聞いたけど……あの大きさの物を見失ったってこと?」

「ええ、この地点で」

 一騎が指さしたところに赤い×点が示されていた。そこからの足取りはつかめていたいと言うことだ。

「この地点にさしかかった途端にジャミングが発生して監視カメラが機能しなくなったんですよ」

「へぇ……」

 加えて口も堅く、下手な裏路地やゴミ置き場など何かを隠しやすい場所を熟知している。何度か一騎の目につかなかった場所を指摘し、事件を解決に導いたこともある。

「この地点であの大きさの物が隠れる場所……目撃証言とかなかったの?」

「あの時点では厳戒態勢が敷かれていましたからね。ビルの中から見ているかもしれませんが、調査中です」

 どうやら思い当たる場所は少ないようだ。

「ここに資材置き場、こっちに高架下の空き地、んでここが工作機械学科の試作品置き場……」

 数は少なく何カ所かに絞れる様だ。これはありがたい。

「さすが剣崎さん。よく見てる」

 と、清掃員の顔を見るとどこか一点にその視線が注がれていた。

その視線の先には、柱に隠れる様に二人を観察している沢木マスター。少し驚いた一騎の代わりに清掃員がぼそりとマスターに尋ねた。

「なぜ見てるんです?」

「いや、なんとなく。求められた気がしたから……」

・・・

・・

「サイドバッシャー?」

 ロードチェイサー・カスタムに跨りながら、清掃員から情報を整理していた一騎の横に一台のバイクが横付けされた。ロードチェイサー・カスタムの横に付けたのは、サイドカーを装備した仮面ライダー専用のバイクだった。

「ハルか?」

「はいはい、呼びましたか?」

 ヘルメットを脱いで自分の姿を認識させる。

「免許持ってたんだな」

「仮にも君の相棒だよ?」

 そう言ってサイドカーに積まれていた簡易端末を取り出し、モニターを表示させた。

「どうしたんだ、ビタミンDが足りなくなったのか?」

「年がら年中足りてないよ。カフェインなら過剰摂取だけどね」

 モニターを操作し、一騎に現状を表示する。

「どうやら学園都市内のネットワークにトラップが仕掛けられててね。今の司令センターのPCは信用できない」

「ってことは掃除中か」

 静かに頷いて一騎と晴彦がそれぞれ得た情報を照らし合わせる。

「目を奪われていたんだ」

「?」

「監視カメラの映像は全てダミーだ。僕たちが見ていたのは彼らが映していた映像なら話はつく」

「結構深いところまで入り込んでたって訳か」

「そしてG-6や警備部に頼んで、見失った位置からこの範囲の捜索は終了した」

 晴彦が持っていたモニターに地図が表示され、真ん中に×点が、そしてそれを中心に赤い円が引かれた。

「この円が捜索と監視カメラの無事が確認された地域」

「……待てよ」

 一騎が得た情報を照らし合わせた。清掃員から得た情報を足す事で一点に絞る事が出来た。

「機械工学部の試作品置き場か……」

「なるほど。ここなら中央区も近いし、条件に合致する」

 敵の潜伏場所は察しが付いた。だが問題はもう一つあった。

「一騎、僕のバックアップなしでジェットスライガーを破壊できる?」

 そう、アインツは防具だ。攻撃力はリミッター解除モードで得たが、それでもあのデカブツを破壊できるか微妙なところだった。

「攻撃は当てれる。だが破壊力不足だ。切り札をぶち込んでも一撃で破壊できる自信はない」

「設計者がそれ言っちゃうんだ」

「設計者だから言うんだ」

 とお互いにため息をついた。

「僕は切り札を抱えて先に中央区に向かう。最悪の事態は挟み撃ちで」

 そう言って晴彦は拳を突き出した。それに答える様に一騎を拳を当ててそれに応じるのであった。

 

 

――2011年11月16日 23:32

――学園都市 理系学区 機械工学部

――試作品置き場

 アインツ・ブラストフォームに変身した状態で試作品置き場に侵入した。ジェットスライガーを用いていたとはいえ、主犯の戦闘力が殆ど無いのは考えにくかった。

肝心の試作品置き場には、自動車のパーツや、産業用機械、果てには船の部品など多くの試作品が無造作に並べられていた。なるほど、ここならあの巨体でも隠しやすいだろう。

「……ジェットスライガー!」

 あの巨体を確認した。その横には男性が一人。

「よーし、そこまでだ」

「遅かったな、学園都市の仮面ライダー」

 足下には白い砂。そして身体をすっぽりと包み込むローブが印象的だった。

「ああ、散々後手に回り続けたが……やっと追いついた」

 そう言ってブラストアクスガンの銃口を向けた。

「目的は何だ?」

「進化の足跡だ」

「進化?」

「オルフェノクは淘汰された。もはや我々は生きている価値もなくなった。だからこそオルフェノクが生きた証を刻み込むのだ。人間達に!」

「馬鹿言え!そんなことしても結局何にもならない!」

「貴様に何が分かる!強力な身体と引き替えに次の世代を紡ぐ事が出来ない我々の気持ちが!!」

 オルフェノクの自然淘汰は進んでいた。人は誤った進化を修正し、オルフェノクはその姿を徐々に減らしていったのだ。

「あんたのバックの財団に載せられているだけだ!今すぐジェットスライガーを止めろ!」

「生憎補給もプログラムも済んだ」

 何の拍子もなくジェットスライガーが起動を始め、アインツに突っ込んでくる。

「!」

 済んでのところでこれを躱したアインツは、ローブの男に詰め寄った。

「あんた!」

「もう手遅れだ!ジェットスライガーは中央区につっこみ自爆する!」

 そう言いながら高笑いをあげた。そうして目の前の男は砂と化した。オルフェノク特有の死に方だ。

「こんなことしても誰も喜ばないのに……ハル!中央区に急げ!」

『安心して、もう既に待機中』

 

 * *

 

――2011年11月17日 0:12

――学園都市 幹線道路

 ジェットスライガーの巨体を必死に追いかけているロードチェイサー・カスタムの姿があった。

途中ジェットスライガーの通れない道を利用してショートカットを続けたアインツは、その姿を捉えるまで至っていた。

ちょうど中央区の真ん中あたりで、ジェットスライガーは行動を起こした。突然ミサイル発射管を開き、幹線道路の壁を破壊した。

「マジかよ!」

 飛んできた破片をブラストアクスガンではたき落とし、迫ってきた大きな物はブラストアクスで弾き飛ばす。

その間にもジェットスライガーは幹線道路を降り、中央区の学長室のあるビルに照準を合わせていた。そのまま自爆すれば劣化したフォトンブラッドで学園都市が汚染されてしまう。

破片を捌ききったアインツは、ジェットスライガーを追う様に幹線道路から飛び降りた。空中でサイドブースターを噴かし体勢を整え、衝撃も和らげ着地し、再びジェットスライガーを視界に納める。

「ちぃ!」

 新型のモンスターバイクにやや振り回されながらも、その馬力を頼りにジェットスライガーに食らいつく。

「ハル!今どこにいる!?」

 場面は変わって中央区のビル屋上にいる晴彦に移る。

「こちら晴彦。準備は出来ているよ。そっちとこっちで……ジェットスライガーを破壊する」

 彼の腰には最後のライダーズギアが装着されていた。

最後のライダーズギア装着者はこのベルトを安置するのを求めた。このベルトは世間には行方不明、もしくは破壊されたと発表されているはずだ。かつて装着していた男性も争いを好まない。だから彼を戦場に駆り出すのも酷な話だ。

だから晴彦が変身する。

「さて、初変身といこうか」

 デルタフォンを口の近くに寄せ覚悟を叫ぶ。

 

――変身

『Standing by』

 

 そしてドライバーの右腰に接続する。

 

『Complete』

 

 ドライバーからフォトンストリームが形成され、身体に沿ってフレームは構成される。そして学園都市が接収した人工衛星からエネルギーが転送され、仮面ライダーデルタが長いときを越えて姿を現した。

本来仮面ライダーデルタに変身した際に、不適合者は攻撃的な性格に変貌していくが、対抗薬は既に投与済みだ。

そしてデルタの目に、ジェットスライガーとアインツが駆るロードチェイサー・カスタムが確認できた。

「一騎……いやアインツ。目視でカウントダウンを表示する」

『了解だ、デルタ!』

 アインツはコマンダーを開きコードを入力する。

5――5――5

 

――リミットカット!!

『BLUST!!Release!!』

 

 アインツの身体に雷がまとわりつく。アーマーの縁に金の意匠が現れ、腕にもエネルギーの経路が繋がりその流れも金色に変化する。

纏われていた雷が振り払われ、アーマーの色が青へと染まり、瞳とアーマーから怒濤があふれ出した。

同時に手にしていたブラストアクスガンが、より射撃に特化した大型のボウガン、ブラストアーバレストに変化する。

出番は少ないが、暴走するジェットスライガーを破壊する事ができるのは、現在最高威力を出すことができるのはこのブラストフォーム・リミットカットモードであった。

そしてロードチェイサーカスタムに備え付けられたダイヤルで一つのモードを起動した。

 

『DynamicEntry!!』

 

 ロードチェイサーの前輪が二つに別れ、やや前方に重心が移動する。

今度はアインツコマンダーを開き、新たな必殺技を起動する。

9――9――9

 

――ライダーキック!

『BLUST!!RIDERKICK!!』

 

 ブラストアーバレストに電撃が纏い、先端に光が宿る。

「目視でロックしろ。おそらく衛星もハックしている」

『了解』

 旧世代の技術であるジェットスライガーだが、学園都市のネットワークに組み込まれ、その結果クラッキングされている。そして学園都市ではスマートブレイン社の人工衛星をそのまま流用しており、主犯のクラッキング能力を考えると、人工衛星からもたらされる情報は改竄されている可能性がある。

アインツの指示を受け、デルタはミッションメモリーをバックルから取り出し、デルタムーバーに挿入する。

『Ready』

 

――Check

『Exceed Charge』

 

 デルタムーバーから三角錐状の光を放ってジェットスライガーをポイントし、アインツもブラストアーバレストから特殊弾を発射し、円錐状の光がポインターとなる。

ロードチェイサーの急激なブレーキによる慣性からアインツが跳びたち、デルタはビルの屋上からジェットスライガーに向けて跳び立つ。

 

「おりゃぁぁあ!」

「たぁぁ!」

 

 ジェットスライガーに、アインツのブラストライダーキックとデルタのルシファーズハンマーが直撃した。

 

 

――2011年11月17日 0:54

――学園都市 中央区

「変身って結構疲れるんだね」

 そう言って晴彦は地面に大の字で寝転んだ。

「俺の偉大さがよく分かるだろ」

「ははっ、研究して、授業して、警備して、変身して。参りました」

 二人して大の字になり平和な夜空を確認した。

「結局、主犯は何をしたかったのかな?」

「いつものバックの組織のそそのかされて、キレて、絶望して。それで歴史に挑戦しようと思ったんじゃないのか?」

 見上げる星。それぞれの歴史が輝いて。星座のように線で結んだ。

「歴史に挑戦というよりか……もみ消せないほどの大事件を起こして歴史に刻もうとしたってことか」

 

 

次回予告:

――俺は今回ここで公演する事になった雨無一騎だ

 

――止めておけ、如月。お前の頭じゃ時間の無駄だ

 

――宇宙キターーッ!

 

第二十一話 特・別・授・業

 

――青春スイッチ・オン!!


 
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