No.326354

仮面ライダーEINS 第二十一話 特・別・授・業

この作品について
・この作品は仮面ライダーシリーズの二次創作です。
執筆について
・隔週スペースになると思います。
・日曜日朝八時半より連載。

2011-10-30 08:29:48 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:719   閲覧ユーザー数:719

第二十一話 特・別・授・業

 

――2011年11月21日 9:10

――天ノ川学園高等学校 体育館

「天ノ川学園高等学校の生徒諸君。俺は今回ここで公演する事になった雨無一騎だ」

 小さいながら拍手がおきた。歓迎半分、飽き半分と云ったところだ。

「歓迎ありがとう、諸君。さて俺が講演する内容は……"夢"に関する事だ」

 一騎が青臭い事を言った途端、講演堂が失笑の渦に巻き込まれた。生徒だけではない。

「何言ってるんですかね、あの大学教授」

「私はとても大事なことだと思ってますよ」

「そうですよねー」

 生徒指導の大杉教員が横にいた園田教諭に思わずそう話しかけるくらいであった。

「そうだ、夢とは実に青臭い。だが、誰もが一度見るものだ」

 その渦の中でもよく通る声でそう言って一騎はおもむろに壇上を降り、最前席に座っていた体格の良い男性生徒の前に立つ。大文字だ。

「君はどうやらアメフト部のようだが……夢はあるかい?」

「もちろん、日本選手権で優勝する事だ!」

「素晴らしい。だがそれはアメフト部全員の夢だ。君個人の夢を聞きたい。君ほどの男だ、そうとうビックな夢を持っているはずだろう?」

 やや大げさな手振りを大文字を持ち上げる。

気分を良くしたものの一騎をやや怪しむように、言葉を続けた。

「ナンバーワンの選手になる事だ」

「なるほど、では壇上に上がってくれたまえ」

 壇上で大文字と相対した一騎はこう言い放った。

「よし、得意のアメフトタックルで俺を倒してみろ。ちなみに俺はド素人だ」

 大文字は壇上で失笑し講堂に煽る様にそれを広め、七分程度の力で一騎にタックルした。

だが一騎はびくともしない。それどころか、頭の後ろをポンッと押されるだけで簡単に受け流されてしまった。

起き上がった大文字の顔は驚愕のものだった。

「今のはまぐれかもしれない。One more.」

 本気になったか。大文字が再び一騎に懐に飛び込むが……ビクともしない。そして再び受け流されてしまう。

「さっきも言ったように、俺は全くの素人だ。だが俺は彼のタックルを受けても後退しなかった、それどころか簡単に受け流せた」

 再び壇上を降り、今度はクイーンビーの風城美羽に話しかける。彼女の顔も隠そうとしているものの驚いているようだ。

「ではレディ、質問だ。俺と彼、何が違うと思う?」

 首を爨げるだけだ。これには講堂にいるほぼ全員が同じ動作をしただろう。

「まあ難しい質問だな」

 そう言って再び壇上に上がり、大文字が起き上がるのを手助けする。

「さて、傷心の君に聞くのは酷かもしれないが……君の夢はナンバーワンだったな」

 大文字は動揺を隠せない様だった。そんな大文字を労る様に肩を叩き、話を続けた。

「君は今、素人の俺に手も足も出なかった。君はどうする?」

 我に返った様に大文字は力強く一騎に答える。

「練習を重ねる!」

「Excellent!君は才能溢れつつも努力を惜しまない男だ。それだけで賞賛に値する。諸君、拍手で彼をたたえよう!」

 そう言って一騎は、講堂の全員に拍手を促した。もちろん人気者である彼はそれなりの拍手を貰うが、それだけでは腑に落ちない。

「ではさらに酷だが……君は努力の結果、再び俺に手も足も出なかったとする。君はどうする?」

 再び講堂は静まりかえった。

「みんなで考えよう。意見があるものは挙手をして答えてくれ!」

 誰も答えようとはしない。気恥ずかしかったのか、それとも大文字の面目を保とうとしたか、どこからか声がした。

 一騎はその呟きを聞き逃さなかった。

「はい、今誰が言った!?まあいい、聞こえなかった人のためにも復唱しよう。研究すると聞こえた!」

 ここで大文字に席に戻る様に促した。学園のジョックを手玉に取った男は実に図々しく映っているだろう。

「ここでさっきの質問に戻る。俺の彼との違い、それは知識だ!」

 かなり大げさに。それこそ誰かの誕生を祝うように。

「皆に紹介し忘れたが、俺は学園都市において人体の構造や性質を研究している。難しいから言い換えよう!物理を勉強している!」

 そしてその大げさな手振りのまま、先ほどの大文字と組み合った時の姿勢を再現する。

「俺は先ほどのハンサムからタックルを貰った。だが、どの体勢をとり、どこに力を込めたら止まるか。そしてどう力を入れたら相手を受け流せるか!それを総て知っていた!」

 解説がうっとうしくなるので省いたが、手玉に取られた大文字は興味津々であった。その表情に満足した一騎は話をまとめる。

「そうして勉強し、研究を重ねれば、君の夢はきっとすぐそこさ。Good Luck!」

 大文字にサムズアップしてみせる。彼の目は燃えていた。

一騎の話に少しは同調してくれたか、先ほどより大きな拍手が巻き起こる。

「俺が言いたい事。無駄な事なんてないってことさ!勉強なんてクソ喰らえかもしれない、俺も学生の時思ったさ。ここで諸君に講演しているのが不思議なくらい勉強が嫌いだったよ」

 講堂で珍しく畏まって聞いていたとある男子生徒が、感動の表情と憧れの視線で一騎を見つめていた。

「あのセンセ……すげえ!」

「もう一人夢を聞いてみよう。……そこのカッコイイ髪型の男子生徒!」

 急に自分が当てられ、かなり焦って男子生徒は立ち上がった。髪型はリーゼント、服装は短ラン・Tシャツ・ボンタンという昭和の不良のような出で立ちをしている。

「そういえばさっきのハンサムボーイに名前を聞くのを忘れたな……。まあいい、君の名前を教えてくれ」

「俺は如月弦太朗!この学園の生徒全員と友達になる男だ!」

 再び失笑の渦ができあがった。

しかしこの夢を一騎は笑わなかった。むしろどこか悲しげな表情となる。

「ありがとう、グットオールドボーイ。君の夢は……ある意味人類の夢かもしれないな」

 大いにテンションが下がった講演者に、聴講者は静まりかえってくる。

「如月。君は戦争をどう思う?」

「どうって……。みんな仲良くすればいいのにって」

「その通りだ。銃なんか捨ててしまえばいい。たったそれだけのことだ!だが人間は……それをできない」

 しんみりとした雰囲気で、一騎は壇上に右から左へ移動する。

「おそらく地球上で銃声が聞こえない時間はないだろう。今こうしている間にも誰かの命が奪われている」

 そして一騎は弦太朗に再び問いを出した。

「では今一度聞こう。君は君の夢を叶えるために何をする」

「努力!友情!」

「その言葉が出てきたのなら、君は夢を叶えられるかも知れないな。応援しているよ」

 そうして弦太朗にもサムズアップを送った。

「諸君、残念だが時間が迫ってきたようだ。最後にまとめよう。夢を持ってくれ!そしてそれを叶える努力を怠らないでくれ!以上だ」

 

 

――2011年11月21日 12:00

――天ノ川学園高等学校 渡り廊下

 二時間目の講義を終え、特別講義の興奮冷め上がらぬ男子生徒は、いつもの仲間と共に食堂へと歩いていた。

「いやー。あの先生、凄いね」

「物理!よし、俺も物理勉強するぞー!」

「止めておけ、如月。お前の頭じゃ時間の無駄だ」

「無駄ってよう、賢吾。やってみないと……分かるよなぁ」

 そう言って如月と言われたリーゼントの学生はうなだれた。

食堂のドアをくぐると、弦太朗に学園の情報屋、JKが肩をかける。

「ちわっす、弦太朗さん。なんか元気っすね」

「俺はいつも元気だぞ?」

「弦ちゃんね、特別講義を聴いてなんかやる気ばくはーつって感じで!」

「へぇー。そういえば弦太朗さん、あの先生について耳寄りな情報が……」

 あると続くはずだった。

 

 

 突如、食堂の壁が爆音と共に破壊され、怪人の姿が現れる。もちろん普通の生徒はもちろん食堂の職員もこれに驚き逃げ惑う。しかしここにいる四人は特別だ。

「見つけたぞ、新たな仮面ライダー」

「俺達を直接狙ってくるって初めてじゃないか!?」

 四人に向かって吶喊してきたゾディアーツだが、横から現れた男のドロップキックを受け、彼らの視界からフェードアウトする。

「よし、久々に直撃した!」

 起き上がってガッツポーズしたのは先ほどまで体育館で講演を行っていた一騎だった。

「へ?」

「お。おう」

 一騎は弦太朗を見つけると会釈する様に片手をあげた。

咆哮と共に星座の紋がゾディアーツに現れる。

「身体に星座?」

 見た事のない星座の輝きに思わずユウキが首を爨げる。

「どのみち学園の平和を脅かす奴には違いねえ!!」

 そう言って弦太朗がフォーゼドライバーを腰に装着し、左右の手で右左のスイッチを起動する。

「なるほど、あれがゾディアーツか」

 明らかに知らないはずの人間から知った単語が飛び出した。

ユウキは違和感を覚えながらも目の前で直立不動となっている弦太朗の方を見る。

「弦ちゃん!気をつけてね!」

 

3――2――1――

――変身!

 

「宇宙キターーッ!」

 一番若い仮面ライダー、フォーゼが両手を宇宙に伸ばしその白いボディを輝かせた。

「さあ、雨無センセ!下がっとけ!」

 と、フォーゼは一騎の方を見ずにゾディアーツに相対する。

だがその横を一騎は静かに通り過ぎる。

「ちょ、センセ!」

 フォーゼは一騎に手を伸ばす。しかしゾディアーツは既に一騎に向かって吶喊していた。

「さて、色々試したい事もある」

 いつものコードを入力し、腰にアインツドライバーを召喚する。

4――9――1――3――

 

――変身!!

 

 アインツコマンダーとアインツドライバーを合体させた瞬間、白いリングがドライバーから飛び出しゾディアーツをふっ飛ばす。その白いリングが回転を始め、一騎の身体を包み込む。

内部から白いリングが振り払われた時、先輩とも言える仮面ライダーアインツが姿を現した。

「え、センセも仮面ライダー!?」

 驚くフォーゼを余所に、アインツはこれまた自分の相棒と通信していた。

「ハル。初めての相手だ。しっかりデータ取っとけよ」

 そう言ってアインツはゾディアーツを視界に納める。

『OK。フォーゼとはもう仲良くなったの?』

 晴彦の見ていたモニターにフォーゼが映った。どうやらアインツはフォーゼに視線を移した様だ。

「仮面ライダーは助け合いさ。そうだろ、フォーゼ」

「ああ!俺は全ての仮面ライダーとも友達になる男だ!」

「上出来だ、行くぞ!」

「押忍!」

 そう言ってフォーゼがまず最初に吶喊し、全体重をかけた右パンチをお見舞いする。

ゾディアーツはこれを回避するが、続いてアインツが左の重い蹴りでこれをカバーする。

だがこの蹴りを身体で受け止めたゾディアーツはアインツの足を掴み、そのままフォーゼのいる方に放り投げる。

 

『MAGICHAND』

 

 右手に多関節のロボットアームに換装され、咄嗟にアインツの右足を掴み、そのままゾディアーツの方に放り返す。

これに対応できたアインツは流石だろう。そのまま回され蹴りでゾディアーツに吶喊した。

もちろん敵はこれに対応できるはずもなく、なすがままにふっ飛ばされる。もちろん脳を大きく揺さぶられたアインツもしばらく動けない。

「扱い酷くね?」

「スイマセン!」

 起き上がったアインツに謝るように会釈して、再びゾディアーツに拳を突き立てた。

だがその拳はゾディアーツはこれを掌で受け止め、そのままフォーゼの勢いを利用して投げ飛ばした。

「こいつ、むちゃくちゃ強え!」

「如月!エレキを使え!」

「やるっきゃねえな!」

 

『Elek』

 

『Elek,On!』

 フォーゼの周囲に電撃が迸り、白いベースステイツから雷のエレキステイツにステイツチェンジを敢行する。

しかしこの電撃のフィールドを物ともせずにゾディアーツは、フォーゼへと吶喊する。

「何!?」

 すんでのところでステイツチェンジが終了し、転送してきたビリーザロッドで相手の拳を受け止めた。

「こいつ、サソリと同じくらい強え!」

「判断力といい、突撃力といい、かなりやるな!」

 ようやく起き上がったアインツが、これの援護に向かう。

『一騎!右!』

 しかしその援軍に右から横やりという名の伏兵が入る。

晴彦が僅かに声を上げていたおかげで、上手く蹴りのダメージを殺せたアインツは二体目を視界に入れた。

幹部級と称されるスコーピオン・ゾディアーツだ。

「二体目か!」

 起き上がってすぐの上段右足の回し蹴りを屈んで回避。そして再び目の前に迫った左脚の上段蹴りは右手で捌き相手の体勢を崩す。そして的確に右頬に向かって左ストレートをぶち込む。

「!?」

 しかし身体を半身ずらしたスコーピオン・ゾディアーツに被害を最小限に抑えられ、与えられた外力を利用して回転し、胴に大きな回し蹴りを受けてしまう。そのままスコーピオン・ゾディアーツは空中に跳び、そのまま連続蹴りでアインツに迫る。

これを両手で完全に捌ききったアインツは、スコーピオン・ゾディアーツを正面に着地させ、そのままアメフトのタックルよろしくに体当たりで大きく間合いを開けた。

「こいつ、幹部級か」

 格が違うと称されたスコーピオン・ゾディアーツと見事な格闘戦を繰り広げる。だが足技を得意とするスコーピオン・ゾディアーツと、パンチを主体としているアインツでは、手数は兎も角威力では圧し負けている状況だった。

アインツが想像以上に強敵と感じたか、それとも早く勝負を決めに来たか。スコーピオン・ゾディアーツは纏っていたローブを脱ぎ捨て、その全身から黒いオーラを発生させる。

「そうかい。ならこっちも全力でお相手しよう」

5――5――5

 

――リミットカット

『ENERGY!!Release!!』

 

アインツに雷にまとわりつき、アーマーの縁に金の意匠が現れ、腕にもエネルギーの経路が繋がりその流れも金色に変化する。

纏われていた雷が振り払われ、アーマーの色が暖かい赤へと染まり、瞳とアーマーから深紅の炎があふれ出す。最後に火炎のマフラーが形成され風になびく。

「はぁぁぁぁ」

 そのまま低いうなり声を上げ、両手と両足に炎をまとわりつかせる。

そのままかけ声と同時に再びスコーピオン・ゾディアーツと拳を交える。先ほどとは違い、反応速度も攻撃力も上昇している。

スコーピオン・ゾディアーツは空中に跳び上がり、強襲する様な蹴りを放つ。それは真っ正面から拳で迎撃し、スコーピオン・ゾディアーツを吹き飛ばす。

予想外であり、空中で体勢を変える事もできず、そのままスコーピオン・ゾディアーツは地面に転がる。

その隙を逃さず一気に間合いを詰め、火炎の如くインファイトで一気に体力を削り、業火を纏った重い中断蹴りを突き刺す。そのままの体勢でアインツコマンダーを開きコードを入力する。

9――9――9

 

――ライダーキック!

『ENERGY!!RIDERKICK!!』

 

 アインツの両手と右足に電撃が走り、スコーピオン・ゾディアーツを少し押し出し、すぐさま両手でボディにフックを打ち込む。

そこを起点に円錐状のポインターが現れ、スコーピオン・ゾディアーツを拘束する。

「フォーゼ!悪いが幹部級は俺がいただくぞ!」

 そのまま空中に跳び上がり、円錐状のポインターに飛び込む様に飛び蹴りを放った。

だがスコーピオン・ゾディアーツは全力を振り絞り、アインツごとそのポインターを蹴り飛ばした。

地面に転がされたアインツはすぐさま起き上がり、スコーピオン・ゾディアーツの姿を確認しようとするが、既にそこに姿はない。

「ちょっと欲張りすぎたな」

 

『OVERHEAT!』

 

「何?」

 突然全身から白い煙を吐き出しながら、アインツの変身が解除される。

「エナジーのリミッター解除だけやたらと不安定だな」

『そうだね。こっちでもちょっと調整しておくよ』

 かなり熱くなっているアインツコマンダーを握り、フォーゼ・エレキステイツをゾディアーツの戦いを注視した。

だがフォーゼは押すものの、ゾディアーツはその押しを利用しながら受け流し、ビリーザロッドの驚異は全て捌ききる。要するに圧されていた。

「フォーゼ!先手に回りすぎた!後手に回れ!」

「え?」

 こちらに気を取られたか。次に瞬間、ゾディアーツの拳が胸に突き刺さりフォーゼが変身解除しながら弦太朗へと姿が戻る。

「基本が出来てねえじゃないか」

 仮面ライダー二人が戦闘不能となった。それを確認したゾディアーツは変身解除した弦太朗に迫る。

「やらせるかよ!」

 一騎が手をかざすと、ゾディアーツの周囲に高速で飛行する物体が現れ、ゾディアーツにダメージを与えた。

これに驚いたゾディアーツは全身から羽根の様な物をまき散らし、姿を消した。

「何、今の?」

「何だ、今の戦い方は?」

 一騎の謎の攻撃に驚いている弦太朗に対し、一騎は新たな仮面ライダーにややあきれ顔だった。

「こりゃ鍛える必要があるな」

 そう言って一騎は大きなため息をつくのであった。

 

 

次回予告:

――うん、今は既に使われていない星座だね

 

――宇宙で戦います

 

――だが夢は呪いといっしょだ。呪いを解くには夢を叶えるしかない

 

第二十二話 一・騎・四・弦

 

――青春スイッチ・オン!!


 
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