No.276013

魔法少女まどか☆マギカ マスク・ド・ほむほむとメガネ

昔書いた変態ほむらさんの話です。
和んでください。


あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。

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2011-08-17 01:12:36 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:2502   閲覧ユーザー数:2264

魔法少女まどか☆マギカ マスク・ド・ほむほむとメガネ

 

1 マスク・ド・ほむほむwithみつあみメガネの転校

 

 

『私は鹿目さんとの出会いをやり直したい。彼女に守られる私じゃなくて、彼女をほむほむし尽くす私になりたいっ!』

 

 私が自分の存在を時の迷路の中に迷い込ませてからもう随分な時が流れた。

 今回で記念すべき500回目のループとなる。

 鹿目まどかの愛らしさ可憐さにはいつまで経っても飽きが来ない。

 今回もまた彼女をいっぱいいっぱいほむほむして幸せな1ヶ月間を送りたいと思う。

 私にはほんの欠片もこの迷宮から抜け出すつもりはなかった。

 私のほむほむに満足など存在しなかったのだから。

 

 

 

「ええっとぉ……それじゃあ、自己紹介をお願いしたいのだけどぉ……」

 

 担任が引き攣った表情で私のことを見ている。

 仮にも教育者ともあろう者が転校生に驚いていたのでは他の生徒の手本にならないというのに。

 まあ、この反応ももはや見慣れたものなので無視して手短に自己紹介を述べる。

 

「私の名前はマスク・ド・ほむほむ。かつて暁美ほむらと呼ばれた人間のなれの果てよ」

 

 500周、時間にして約丸40年間中学2年生を続けて来た私が今更普通の人間を気取るつもりはない。

 

「あの、変態仮面さん……じゃなくてマスク・ド・ほむほむさんは一体何故女の子のパンツを顔にかぶって……」

 

 今更普通の人間を気取るつもりはない。

 担任は放っておいて愛しい鹿目まどかの元へと猛然とダッシュを敢行する。

 

「会いたかったわ。鹿目まどかっ!」

「ヒィイイイイイィっ!?」

 

 泣きそうな顔で悲鳴を上げるまどか。

 いつのループの頃からか、まどかは初対面時に私を恐れる場合が増えてきた。

 これは彼女と私の過ごした時間がずれていることを示す証拠なのだと思う。

 哀しい。とても哀しい。

 でも、だからこそ私は自分の使命を忘れることはできない。

 

「貴方と貴方のパンツは絶対に私が守ってみせる。私が、貴方のまどパンなのよっ!」

 

 言葉と同時にまどかの机の下に潜り込り、スカートの中に顔を突っ込んでほむほむしてみる。

 

「ほむほむほむほむほむほむほむほ~むむむむほむぅっ!」

「ひぃええええええええええぇっ!?」

「ほむ。子犬が大きく前面にプリントされた子供っぽいけれど愛らしいパンツね。ほむほむ。匂いも澄み切っている。この世界のまどかは子供っぽさと清純指数が高いわね」

 

 私は長年の研究を積んだまどか探求家。だからまどパンをほむほむしただけで、この世界のまどかがどんな特性を持っているのかすぐに見分けられる。

 

 鹿目まどかはどの世界においても、年齢・性別・住所・家族構成など書類に記載されそうなパーソナルデータは一致している。

 しかし、性格や趣向は毎回微妙に異なっている。

 その差を把握するのに最も適しているのがまどパンへのほむほむ。

 ほむほむはただ単に私の欲望を満たしてくれるだけではない。そのループにおけるまどかの特徴を正確に知らせてくれる大事な役割を持っているのだ。

 例を挙げると、過去にたった1度だけ出現した黒いヒモパンの悪女まどか。あのループでは彼女の放つエロスに押されっ放しで私は毎日彼女の足を舐めるしかなかった。魔女退治なんて些細なことは忘れた。

 後、5回だけ出現したパンツ穿き忘れノーパンまどか。2日に1度の割合でパンツを穿き忘れて登校してくるうっかりまどかに私は彼女の下半身をガードする日々に終始した。魔女退治なんて些細なことは忘れた。

 ……実に素晴らしい最高のまどかたちだった。彼女たちにもう1度会えないかと、私は毎度のループを楽しみにしている。

 今回の場合は、子供っぽさと清純指数が高い割とノーマルなタイプ。扱いに難はないけれど、新しいドキドキもないごくごく普通のまどか。反応が初心なので調教のしがいはある。今回こそ、全裸で鎖で夜の街を散歩の夢を叶えたい。

 

 調査が終了し、机から這い出て立ち上がる。

 正面には今にも泣き出してしまいそうなまどかの顔があった。

 

「ほむほむちゃんがかぶっているパンツって……も、もしかしなくても……私の、だよね? 『鹿目まどか』って名前が書いてあるし……」

「女の子が外から見える位置に下着を干すのは無用心よ。だから私が回収して変態たちの手に渡らないように管理しているのよ」

 

 まどかは自分の魅力を理解しないで無用心すぎる所がある。まったく困った娘だ。

 だから代わりに私が最も安全な場所で管理している。

 

「へ、へへ、へへへ、へへへへ変態さんならもうここに……」

 

 まどかが正面に向かって指を伸ばす。

 振り向くと担任が立っていた。

 

「まどか、あれは結婚したくても出来ない人種だから明白ないき遅れであるのは間違いないわ。けれど、変態と言い切ってしまうのはどうかと思うわよ」

 

 まどかには素直な良い子に育って欲しい。だから担任を変態と言い切る子にはなって欲しくない。

 

「いや、変態は先生じゃなくて……」

「そうだわ。まどかに約束したこれをあげるのをすっかり忘れていたわ」

 

 制服の胸の部分に入れて暖めておいたそれを取り出してまどかの頭にかぶせる。

 

「えっ、この、生暖かい白いヘアキャップみたいなのって何なの?」

「私が今朝まで穿いていたパンツよ。まどか、私のパンツに興味あるって言ってくれたものね。だから……恥ずかしいけどあげるの♪」

 

 『暁美ほむほむ』と名前が書かれた、私の心のように真っ白いパンツをかぶるまどか。その姿は普段よりも一段と愛らしかった。夏の高原に佇む深層の令嬢のような爽やかな乙女のよう。私色に汚したい清純派ヒロイン。

 

「えぇええええええええええぇっ!? 私、そんなこと言った憶えないよぉおおぉっ!?」

 

 思い出すのは私が魔法少女ほむほむとして初めて世界を遡ったあの時のまどかの言葉。

 

『生まれ変わったら……今度はほむほむちゃんのパンツも見せてね』

 

 私はあのまどかの遺言を守り、それから全てのループで自分のパンツをまどかに見せるように動いている。

 最初はパンチラでのサービスショットに拘っていた。わざとらしく目の前で転んだりしてた。私の真似をした巴マミが転んだ拍子にソウルジェムを割ってよく死んだりもした。

 けれど、最近はパンツを直接プレゼントすることにしている。やはり直球あってのピッチングの組み立てだと近頃はよく思う。

 

「まどかはその変態転校生と知り合いで、しかもその変態転校生のパンツを所望してたってのかよ? まどか、いつの間にそんな濃いキャラ立てを!?」

「まどかさん、不潔ですわっ! そういう趣味はもっと大人になってからじゃないと。ああっ、でも上条くんがパンツプレイを要求してきたら私はどうすれば良いでしょうか?」

「えっ? 仁美って恭介と付き合ってるの?」

「はいっ、昨日から。きっともう妊娠三ヶ月です。昨日手を繋ぎましたから」

「恭介がもっと女の子に積極的になりますようにってキュゥべえと契約までしたのに。あたしって、ほんとバカ……」

 

 青い短髪のクラスメイトAと緑の長髪のクラスメイトBが騒いでいる。

 名もなきモブキャラがまどかを苛めることで存在感を示そうとしている。

イジメ、かっこ悪い!

 

「やめてっ! まどかを責めないで。まどかは普通の子とほんのちょっと趣向が違うだけで可愛い女の子なの。私のパンツをかぶりたくて仕方がないだけでとても良い子なの!」

「えぇええええええぇっ!? 私、パンツかぶりたいだなんて思ったことないよぉっ!?」

 

 まどかを正面からキツく抱き締める。

 どんな逆境の荒波に晒されそうと、まどかだけはこの手で守ってみせる。

 それが、私が世界を巡り続けている意義。

 くんかくんか。ほ~むほむ。

 ああ~、まどかの髪からとても良い香りがする。

 まどか分の補充。

 

「へっ、負けたぜ転校生。あたしは自分が一番まどかを理解していると思ってたが……パンツ好きの趣味さえ理解していなかったとはな。まどかの一番は転校生で決まり、だな。それから仁美、お前だけは絶対に許さねえ」

「えぇええええええぇっ!? 私、パンツ好きなんて趣味を持ってないよ!?」

「パンツを頭からかぶったまどかさんはいつもの3倍愛らしいです。まどかさんの魅力をこんなにも引き出せるなんて……悔しいけれど私の完敗です。さやかさんの負け犬っぷりには負けますけど」

「パンツかぶっている方が愛らしいって、どんだけ私は変態さんなのっ!?」

 

 頭を下げて詫びるクラスメイトAとB。

 

「あなたがパンツプリンセスよ、まどかちゃん」

「マスク・ド・ほむほむは鹿目の最高のスタイリストだぜっ!」

 

 クラスメイトA、Bだけでなく、クラス中から大きな拍手が巻き起こる。

 こうして私は転校初日で今回もクラスに馴染むことができた。

 

「どうして私、変態さんにされちゃってるのっ!? こんなの絶対おかしいよぉ~~っ!」

 

 そう言えば、このクラスの同級生や担任の名前を丸40年経っても誰も覚えていない。

 まあそんなのは私の人生に何の影響もない些細なこと。私はまどかを更にキツく抱き締めながらその匂いを堪能し続けた。

 

 

2 巴マミの本領

 

「まあまあ、それじゃあ鹿目さんは今日学校でみんなの注目を集めちゃったわけね」

「もう明日から恥ずかしくて学校に行けませんよぉ……」

 

 放課後、私はまどかと共に巴マミの自宅を訪れていた。

 この世界でもまどかは巴マミに師事しながら魔法少女としての実力を養っていた。

 

「だけどその帽子、鹿目さんの真の魅力を引き出すには地味過ぎるわ。こちらの帽子に変えましょうよ♪」

 

 そう言って巴マミが胸の谷間から取り出したのは鋭いV字型でフリルがついた黄色いレースのセクシーパンツ。更に『巴マミ』と名前が書かれているこだわりの一品。

 でも、甘いわね。私は既にトラップカードを発動させているのよ。その威力思い知りなさい。

 

「って、それ、マミさんのパンツじゃないですか! 嫌ですよ。そんなのかぶったら、私は本当に変態さんになっちゃいますよ」

「大丈夫。これはつい先ほど脱いだばかりの一品だから鮮度は保障するわ」

「何が大丈夫なんですか? 何で私はまたパンツをかぶらされそうになってるのぉっ!? これって絶対おかしいよぉっ!」

「つべこべ言わずに私のプレゼントをかぶりなさい。さもないとティロ・フィナーレよ♪」

「えぇええええええええぇっ!?」

「さあ、私のパンツをかぶるのよ。って、頭に乗ってるパンツが脱げないわね?」

「それ、瞬間接着剤か何かでくっ付けられてるんです。だから私、今日は学校を1日パンツかぶったまま過ごしたんですよ。もぉ、昨日までの私には戻れないんです……」

「やるわね、貴方……」

 

 巴マミが悔しそうな表情を私に向けた。

 フッ、まどかにパンツをかぶせた場合に貴方がどう出るかなど、数々の世界を巡り廻って来た私には既にお見通しなのよ。

 だがここで巴マミは私に屈するような真似はせずに不適な笑みを浮かべ直した。

 

「なら私は、こうするまでよ」

 

 そう言って巴マミは自らの脱ぎたてパンツをまどかの顔に正面からかぶせた。

 ここに新たな愛パンツ戦士マスク・ド・まどかが誕生した。

 

「ひぃえええええええぇっ!? 頭と顔にパンツ2枚もかぶって、これじゃあ私、本当の変態さんになっちゃうよぉおおおおおぉっ!」

「よくお似合いよ、鹿目さん♪ まるで女神様みたい」

「似合ってなんかいませんよぉ。って、また脱げない? これも接着剤入りなのっ!?」

 

 まどかが幾ら引っ張っても巴マミのパンツが顔から外れない。

 巴マミは勝ち誇った表情で私を見ていた。

 

「確かにやるわね。さすが貴方は私の最強のライバル。でもね……」

 

 私は懐からピンク縞々のまどパンをもう1枚取り出して頭にかぶる。

 

「これで私とお揃いね、まどか♪」

 

 ペアルックならぬペアパンツ。

 私とまどかが深い部分で繋がっている証拠。

 

「なっ、何て見事な切り返し。マスク・ド・ほむほむ……貴方一体、何者なの?」

 

 驚愕した表情を見せる巴マミ。

 そんな彼女に対して私は1枚のブルーレイ・ディスクを取り出してみせる。

 

「これを見れば私が何者なのかわかるはずよ」

 

 巴マミの無駄に大きな50インチプラズマテレビで画像を再生する。

 テレビ画面に出て来たのは鹿目家の脱衣所。

 2人の少女がもそもそと衣服を脱いでいる場面だった。

 

『2人で一緒にお風呂に入るなんて初めてだよね、ほむほむちゃん♪』

『そ、そうね』

 

 まどかは何の躊躇もなく衣服を脱ぎ捨てていく。

 ブラもパンツも脱ぎ捨てて一糸纏わぬ生まれたままの姿になった。

 まどかの全てが画面の前に露になる。

 オートズーム機能も働いて、まどかの姿がごく間近で映されている。

 まどかは幼い顔に似合わず意外と胸がある。Bカップの持ち主で私よりも大きい(何周繰り返しても私の体型は1mmたりとも変わってくれない)。対して下は……見た目通りのお子ちゃまでちょっとだけ安心する。

 

『ほらっ、女の子同士なんだからほむほむちゃんも恥ずかしがってないでさっさと脱ぐ♪』

『えっ? そんな、ちょっと、やめて……まどかぁ……』

 

 獣と化したまどかになす術もなく衣服を剥ぎ取られていく私。実に素晴らしい光景。

 

「えっ? 私とほむほむちゃんは今日初めて会ったんだよ? なのにどうして一緒にお風呂に入っている映像があるの? っていうか、どうしてこんな恥ずかしい映像が存在しているの?」

「鹿目さん、少し黙ってて。これは重大なメッセージなのよ!」

 

 巴マミが映像をガン見しながらまどかを叱責して黙らせる。

 そうしている間にも、まどかにより裸にされてしまった私は手を引っ張られながら浴室へと入っていく。

 そしてカメラが切り替わり、浴室の中が映し出される。

 

『ほむほむちゃん。背中流してあげるね♪』

『えっ? 恥ずかしいよぉ……』

『ふっふっふ~。そんな可愛い反応されちゃうと……えいっ♪』

 

 まどかはボディーソープを塗りたくった手で、背後から私の胸をわし掴んできた。

 まさに獣。見境なし。

 毒牙に掛けられる私♪

 

『まっ、まどかっ!?』

『さ~てお客さん、どこか痒い所はありませんか~?』

『痒いっていうか、くすぐったい……あっ』

『おやぁ~? ほむほむちゃんは胸が弱いのかな~?』

『まっ、まどかの獣~』

 

 その後テレビには野獣と化したまどかに蹂躙され続ける私の姿が映され続けた。

 

 ブルーレイの映像を全て見終わり、それを更に2度全編をコマ送りで見直してから巴マミは立ち上がった。

 そして鼻血を止め処もなく垂らしながらキリッと表情を引き締めて私に指を突き付けた。

 

「マスク・ド・ほむほむ……貴方はここではない他の世界から来たのね?」

 

 巴マミは私の正体を的確に見破っていた。

 

「そ、そうだよね。私、ほむほむちゃんと一緒にお風呂に入ったことがないのにあんな映像があるなんておかしいもんね」

「そんな些細な部分はどうでも良いの。問題は……」

 

 巴マミはまどかを向き直った。

 

「映像に映っていた鹿目さんの胸はこの世界の鹿目さんの胸より2mmも大きかったわ」

「やはり気付いていたのね」

「2mmって、それは誤差の範囲なんじゃないの!?」

 

 この世界でも巴マミは侮れない実力を持っていた。

 

「そして鹿目さんの胸の先端、ここでは敢えてさくらんぼと呼ばせてもらうわ。そのさくらんぼのピンク色が1677万色のフルカラーで表記した場合、2色分もこの世界の鹿目さんのさくらんぼより赤みがかっているのよ。これは決定的な違いよ」

「わかってはいたけれど、貴方の目は欺けないわね」

「どうして2人はそんな些細な差が平然と見分けられるのぉおおおおおぉっ!?」

 

 巴マミクラスのまどか愛好家ともなれば、語って聞かせずとも他の世界のまどかの映像を見せさえすれば私の正体を理解してくれる。

 他の世界から来た云々と語って聞かせても電波系扱いされるだけ。よほど手っ取り早い方法でもある。

 そう、さっき見せたのは記念すべき100回目のループでまどかと一緒にお風呂に入った時の映像。

 野獣まどかのテクニックにメロメロにされた私が、一生彼女に付いていこうと改めて決心し直した記念すべき世界での出来事。

 

「だけど私はこの世界にはまだ到着したばかりでどんな違いがあるのか掴んでいないの」

「それならこれを見て頂戴」

 

 そう言って巴マミは胸の谷間から1枚のブルーレイディスクを取り出した。

 

『ふんふんふ~ん。明日のマミさん家でのおやつは何が出るかな~?』

 

 浴室でご機嫌に鼻歌を口ずさみながら体を洗っているまどかの姿が映っていた。

 

「なっ、何でこんな映像がぁあるのぉおおおおぉっ!?」

「これは昨夜のまどかの入浴時の映像ね」

「ええ、そうよ」

「どうして2人ともそんなに私の入浴に詳しいのぉおおおおおぉっ!?」

 

 昨夜私は魔女と変質者からまどかを守るべくずっと木の上からまどかを監視していた。

 私のすぐ隣で「ティロ・フィナーレ」と歓声を上げながら夜空に向かって大砲をぶっ放す危ない女がうるさいとは思っていた。けれど、まさかそれが巴マミだったとは全く気付かなかった。

 

「貴方ならこの映像から以前の世界との違いをわかるでしょ?」

「そうね、まどかが使っているシャンプーと石鹸の銘柄が違っていたわ。後、まどかのシャンプーハットの色が白だった。これでこの世界の特徴はわかったわ」

「何でそれだけで世界の特徴までわかっちゃうの?」

 

 巴マミのおかげでこの世界の特徴も大体掴めた。

 やはり恐ろしいほどのやり手ね、巴マミ。

 

 巴マミは私の魔法少女としての師匠だった人であり、鹿目まどかを巡る最強のライバルでもある。そして最強の芸人魂を持つ女。

 巴マミは過去500回の世界において、その死に様の特異性が際立っている。

 

 巴マミの死に方(過去500回の世界での死因統計)

 

 バナナの皮に足を滑らせて転倒、頭を打ってソウルジェムを砕く 475回(95.0%)

 料理の最中に誤って豆腐の角にソウルジェムをぶつけて砕く    10回(2.0%)

 まどかの胸チラに興奮して暴れて自らの手でソウルジェム破壊   10回(2.0%)

 キュゥべえがうっかりして魔法少女になれず交通事故死       5回(1.0%)

 

 巴マミ本人的にはドジッ娘のつもりらしい。

 世のオタクどもは自分の死に様を見てキュンとなる萌えっ娘ヒロインなのだと遺言で何十回と聞かされてきた。

 けれど私には文字通り命を賭けたお笑い芸人にしか見えない。

 そして実力は折り紙つきなのにワルプルギスの夜戦が始まるまで生きていた試しがない究極的に役に立たない女。

 それがこの巴マミという魔法少女の正体。

 

「さて、それでは新しい魔法少女もみつかったことだし、鹿目さんは24時間付きっ切りで私が守るから、マスク・ド・ほむほむさんは適当にこの辺の魔女を狩り尽くして」

 

 巴マミがまどかの腕を引っ張って自分の方へと引き寄せる。

 

「何を言っているの? この街の先任者は貴方でしょ? 先輩の狩場を横取りするような真似はしないわ。だからまどかのことは私に任せて貴方は魔女どもを踏み躙りなさいよ」

 

 負けじと私もまどかの腕を引っ張って自分側へと引き寄せる。

 私と巴マミのまどかを巡る戦い。

 

「痛いっ! 2人とも痛いってば! あっ、ほらっ、ご近所に魔女が出現したよ。親友に男を寝取られたっぽい薄幸そうな顔した魔女が、顔は見えないけどヴァイオリンを持った男の子と緑色のワカメみたいな髪をした女の子だけを無差別に憎しみ込めて襲ってるよ。つまんない争いなんかやめて今すぐ魔女をやっつけに行かなきゃ」

「ティロ・フィナーレ」

「かめはめ波」

 

 ズドーン! チュドーン!

 

「えっ? 魔女も襲われていた男女も消えちゃった? って、2人とも今、変身しないですごい技出したよね? 特にほむほむちゃん、それ、もう魔法ですらないよね?」

「いい加減に放したらどうなの、マスク・ド・ほむほむ。鹿目さんは嫌がっているわよ」

「貴方の方こそ手を放しなさいよ、巴マミ」

「魔法少女にとって魔女退治は大事なんじゃなかったのぉっ!? 嫌ぁあああぁ、放してぇえええぇっ!」

 

 結局、私たちの引っ張り合いはまどかの制服が真ん中から裂けてしまい、下着姿になったまどかを2人でほむほむするまで続いた。ちなみにほむほむは朝まで続いた。

 

 

3 マスク・ド・ほむほむの日常

 

 まどかと一緒の登校。

 それは私にとって至福の時間。

 けれど、今朝のまどかの表情は暗かった。

 

「まどか、どうしたの? 今朝は起きた時からずっと暗い表情をしているわ」

「どうして私の寝起きの表情まで知ってるのっ!? って、そんなことよりもね……」

 

 私がこの世界の学校に転入してから1週間が経ち、まどかもすっかり私に慣れていた。

 私の大概の行動には驚かなくなった。まどかは「人生、諦めって重要だよね」と憂いを帯びた大人びた瞳でそう語っていたけれども。

 そして私はまどかの体調管理の一環で、隣を歩きながらさり気なくまどかのスカートを捲りその柄を確かめている。

 今日は水色と白のストライプ。まどかが落ち込み気味な時、自分を励ます意味で少し明るい柄を選ぶ時によく穿かれるパンツ。ほむほむ指数92の極上品。

 ちなみに巴マミは電柱の上に腕を組んで仁王立ちしながら私たちを見ている。

 巴マミはリアルで私以上にぼっちらしく、まどかともどうやって一緒に登校したら良いのかわからないと以前の世界で嘆かれたことがあった。

 まあ今はそんなぼっちよりも当然まどかの方が大事なわけだけど。

 

「さやかちゃんと仁美ちゃんがね、1週間前から行方不明なんだ……」

「そうなの?」

 

 さやかと仁美とは一体誰のことかしら?

 新手のお笑い芸能人の名前?

 

「さやかちゃんも仁美ちゃんも上条くんって男の子が大好きで、その、想いが少し空回りしちゃってる部分があって……それで3人とも急にいなくなっちゃったから私、心配で」

「つまり、その3人はSCHOOL DAYSがNice Boatしちゃったのね。青春にはよくありがちなことよ。でも、中学生がそんな乱れた性活を送っているなんて嘆かわしいわね」

「えっ? 何、それ? どういうことなの?」

 

 きっと痴情のもつれから、さやかという娘が上条という男を刺し殺し、仁美という娘がさやかを刺して上条の生首抱きかかえて船に揺られてどんぶらことなったに違いない。

 だけどそんな事件、2学期の最初に席替えをするぐらいによく起きることだ。特に気にすることもないと思うのだけれど、まどかは優しいから心配なのだろう。

 ここは私が彼女の心を癒してあげないと。

 

「とにかく3人は貴方の心の中で生きているわ。後5秒ぐらいは覚えていてあげなさい」

「えぇええええぇっ!? 心の中以外じゃもう生きてないの!?」

「5、4、3、2、1……はいっ、もう3人のことを綺麗さっぱり忘れていいわよ。というか忘れなさい。そして私を見て」

「もう忘れていいの!? っていうか、カウントの仕方が早すぎるよぉっ!」

 

 これでまどかを苦しめていた事象は1つなくなった。

 

「それとね、ほむほむちゃんにもう1つ訊いておきたいことがあるの」

「何? 私のスリーサイズ?」

「ううん。ほむほむちゃんが今かぶっているパンツって……」

「勿論貴方のパンツよ?」

 

 一体この娘は何を当たり前のことを聞いてくるのかしら?

 

「毎日柄が変わっているのって……」

「衛生を心がけて毎日取り替えているわ」

 

 まどパンのせいでニキビができたと世間に後ろ指を差されては堪らない。まどかの名誉の為にそれだけは許されない。

 

「勿論、ちゃんと同じ柄のパンツを買って貴方のタンスに入れているわ。泥棒なんて下賎な真似はしない。等価交換の原則は守っているわ」

「その、私のじゃなくて、買って来たパンツをかぶるのは、ダメ、なのかな?」

「ワケがわからないわ」

 

 まどかの言っていることが理解できない。人間の感情が理解できないというキュゥべえの気持ちが少しだけわかった。

 大体、買って来たパンツをかぶったのでは私は変態になってしまう。まどかは私を変態にしたいのかしら? 羞恥プレイ? 羞恥プレイなのね!

 

「まどかは私や巴マミが何故貴方にほむほむするのか理解していないようね」

 

 まどかは挙動不審に目をキョトキョトと動かした。

 

「えっとぉ……私のことが好きだったりするから、かな? なんちゃってぇ」

「まさにその通りよ。私たちはまどかを愛しているからほむほむするのよ」

「愛しているって……そ、そうなんだ……」

 

 何故まどかの表情は引き攣っているのかしら?

 

「でもね、ほむほむは私や巴マミにとっては生きていく上で欠かせないものなの。貴方にとってのシャンプーハットぐらいに大切なものなの」

「ほむほむしないと死んじゃうのぉおおおおおぉっ!?」

 

 まどかはシャンプーハットなしに1人でお風呂に入れない。お風呂に入れないのは女の子にとっては死にも等しい苦行。それはしずかちゃんと入浴を例に考えれば容易にわかる。

 

「私と巴マミは貴方にほむほむすることでソウルジェムを浄化しているのよ」

 

 私は自分のソウルジェムをまどかに見せた。とても艶々した輝きを放っている。

 

「えっ? ソウルジェムの浄化ってグリーフシードに汚れを移すんじゃなかったの?」

「そんな連載当初の初期設定、もう誰も覚えていないわ」

 

 ほむほむに浄化能力があることを知ったその日から浄化は問題ではなくなった。

 

「ほむほむし過ぎるとソウルジェムが浄化され過ぎて時々別の何かに進化しそうになるのだけど」

「それ絶対、魔女になるより危険だよっ!」

「だけどそんな存在に私はなってみたいわ」

「なりたいのっ!?」

 

 ほむほむし尽くすっていうのはそういうことなんじゃないかと思う。

 

「それに……私の旅は、私かまどかのどちらかが人間やめない限り終わらない気もする」

「えぇええええぇっ!? 私、人間やめる気ないよぉ!?」

 

 真の女神となったまどかをほむほむし尽くす。その時こそ私の旅の終わりなんじゃないかと漠然と考えたりする。まあ、ただの夢想だけど。

 

「ティロ・フィナーレ~~っ!」

 

 巴マミの大砲が空中に向かって放たれる音が聞こえた。

 

「ほらっ、ほむほむちゃん。もう予鈴なっちゃったよ。早く学校に行こっ」

「あれは決して予鈴なんて生易しいものじゃないわ。けれど、行きましょうか」

 

 まどかに手を引っ張られながら私は学校へと向かった。

 まどかにリードされる私……幸せだ。

 私、受けな自分が好き。

 

 

 

4 まどか祭り開催

 

 

 学生の本分は勉強。

 それは時の理から外れた私にも当てはまる。

 私には魔法少女としての才能が欠けていた。なのでそれを補う知恵がどうしても必要だった。

 強力な爆弾を作るために数学と化学と物理を懸命に勉強した。

 魔女の特性を掴む為に心理学を、歴史を、地理を、外国語を懸命に勉強した。

 魔女の出現ポイントを効果的に見極める為に統計学を勉強した。

 まどかをほむり尽くす為に保健体育の大家になった。

 そして今日、いよいよその勉強の成果を試す時がやって来た。

 

「わっ、ほむほむちゃん。急に雨が降って来ちゃったよぉ。どうしよう?」

 

 統計と地理を極め天気予報士免許1級を取得したこともある私に読めない天気などない。

 魔女を探すふりをしてまどかと2人で外を出歩いていた所に狙い通り雨が降って来た。

 しかも大雨。

 このままにしていれば2人とも風邪を引いてしまうことは間違いない。

 フフっ、計算通りよ。

 

「大丈夫よ。この橋を渡った先に私の家があるわ。そこで雨宿りをしましょう」

 

 後は、自宅にさえ着いてしまえば今まで習得してきた保健体育の知識を実践するのみ。

 まどかにはほむほむの限りを尽くして私の娘を産んでもらおうと思う。

 あっ、でも、まどかにほむほむの限りを尽くされて彼女の娘を産む私も素敵かも。

 500回目のループを記念してまどかとの禁断の、いえ、当然の一線を越える瞬間を私は迎えるっ!

 

「じゃあ、ほむほむちゃんのお部屋にお邪魔するね」

「ええっ。ちゃんとまどかのご両親へのご挨拶の際には粗相のないようにするから」

「へっ? 何で挨拶?」

 

 私はまどかの手を取って走り出す。

 この先に輝かしい未来が待っているのだから。

 私はもう、迷わないっ!

 

「ティロ・フィナ~~~~レっ♪」

 

 けれど、私とまどかの輝かしいはずの未来はたった1発の砲弾によって打ち砕かれた。

 

「ま、マミさんっ!?」

「やってくれたわね……」

「円環の理に導かれマミさん登場~♪ 凶悪で獰猛な魔女を追っていたのだけど、止めを刺そうとしたらつい手元が狂ってしまったわ♪」

 

 巴マミは私の家へと通じる橋を吹き飛ばしてしまった。

 

「ああっ、せっかく真面目に働いて買ったりんごが流されちまうっ! 食い物を粗末にできるかよっ!」

 

 見たこともない赤い髪の毛のポニーテールの少女がティロフィナーレで吹き飛ばされたりんごを追って、橋がなくなった河へとダイブする。そして……濁流に流されていった。

 巴マミの暴挙がまた新たなる悲劇を一つ生んでしまった。

 けれど、今はまどかとの明るい未来の方が重要よ。そう、明るい家族計画の方が。

 

「とにかく2人ともこのままでは濡れてしまうわ。私の家に来て服を乾かさないと」

「あっ、はい。ほむほむちゃんの家にも行けなくなってみたいだし、お願いします」

「そうね……お願いするわ」

 

 悲しみに耐えながら、屈辱に打ち震えながら巴マミの家に行くことに同意する。

 まどかに双子の女の子を産んでもらう夢は潰えた。

 けれど、まだまどかとの入浴の夢は潰えていない。

 諦めるにはまだ早い。

 

「わぁ~。マミさん家のお風呂って広くて綺麗ですねぇ~♪」

「そうね。本当に……綺麗よ……」

 

 巴家の脱衣場で私は理性を保つのに必死だった。

 まどかは巴家のブルジョワな浴室に驚きながら無警戒に服を脱ぎ始めている。スカートが床に落ちる音がして遂にまどかは下着姿になってしまった。

 上下お揃いのピンク色のブラとパンツはまるで私の頭の中の色のよう。ううん、もしかするとまどかも私と同じ考えなのかもしれない。

 理性が、私の鉄の理性がまどかという溶鉱炉のせいで跡形もなく溶かされていく。

 美女と野獣。ううん、私たちは2人とも美女で野獣になるべきなのよっ!

 

「うわぁ、下着までびしょびしょだよぉ」

 

 そう言いながらまどかは私の最後の理性(ブラとパンツ)をいとも簡単に脱ぎ去った。

 一糸纏わぬ天使の降臨。

その御姿を拝見した私に残されたのは野獣としての本能のみだった。

 

「私たちの娘の名前はどらむ。頑張って子育てするわぁ~♪」

「鹿目さ~ん。脱いだお洋服はこっちに持って来て。洗濯機回すから」

「は~い」

 

 けれど、まどかに3500gの健康な赤ちゃんを産んでもらう計画は不発に終わった。

 空中で一瞬にして全裸になるルパンダイブを敢行したのにその先にまどかはいなかった。

 この桃色空間に存在したもう1人のお邪魔虫の存在によって失敗に終わった。

 巴マミという最も憎たらしい女の存在によって。

 

「わぁ~マミさん。すごい素敵なスタイルですね。憧れちゃいますよぉ」

「鹿目さんだってすぐにこれぐらいになるわよ♪」

 

 まどかに称賛されて調子に乗った声を出している憎き怨敵へと視線を向ける。

 その視線の先に私が見たものは──

 

「ティロ・フィナーレぇええええええぇっ!?」

 

 中学生とは思えないほどの抜群の破壊力を持ったスタイルを誇る全裸な巴マミの姿だった。

 D? ううん、Eっ!? もしかするとそれ以上なんじゃ!?

 見滝原の黄色い(戦隊モノで言うとカレー担当)のは化け物なの!?

 ちょっと喋っただけで揺れるってどんだけでかけりゃ気が済むの!?

 ま、負けた……。

 ガックリと膝を突いて倒れる。

 そんな私を巴マミは勝ち誇った顔で見ていた。

 

「マミさん胸大きいですよね。どうやったらそんなに大きくなるんですか?」

 

 ダメよ、まどか。それは人の心を惑わす魔乳よ。そんなものに興味を持たないで!

 興味を持つのは大和撫子っぽい清純で控えめな私の胸だけにして!

 

「特別なことは何もしてないわ。あっ、でも鹿目さんに毎日揉んでもらったおかげかも♪」

「えぇええええええぇっ!? 私、マミさんの胸を揉んだことなんかありませんよぉ」

「あらっ? それじゃあこれから毎日鹿目さんに揉んでもらってもっと大きくしようかしら?」

「えぇえええええええぇっ!? 揉んで大きくしてもらいたいのは私の方ですよぉ」

 

 ダメよ、まどか。そいつの言葉に惑わされないで! 

 その悪魔は貴方に胸を揉んでもらい、あわよくば貴方の胸を揉み返そうとしている淫獣よ。

 気を付けないとすぐに妊娠させられちゃうわよ!

 

(ふふふっ、鹿目さんとの娘の名前は既に考えてあるわ。まどマミか。良い名前でしょ?)

 

 巴マミがテレパシーで私に話し掛けて来た。

 相変わらず如何ともし難いネーミングセンスを振りかざしながら。

 

(くっ! まどかに娘を産ませるのは私よ)

(そういう台詞はせめてBカップに成長してから言いなさい)

 

 巴マミは貧相なスタイルの私を見ながら鼻で笑った。

 鼻から出る息の振動でプルルンと揺れる胸。

 私なんて全力疾走しても揺れてくれないのに……。

 

「マミさんに胸を大きくする相談に乗ってもらおうかな?」

「ふふふ。鹿目さん。それじゃあ今すぐにでも胸を大きくするミッションを開始しようかしら。大丈夫。何も怖くないわ。だって貴方は独りぼっちじゃないのだから」

 

(この勝負、私の勝ちのようね。私が鹿目さんをほむほむ……いいえ、マミマミし尽くす瞬間がもうすぐやってくるわ。ああ、興奮し過ぎて別の何かに進化してしまいそう♪)

(まだよ。まだ負けたわけじゃないわ!)

 

 テレパシーでは強がってみるものの、まどかが巴マミの魔乳に興味があることは間違いなかった。

 まどかは両手で自分の胸を触りながら巴マミの胸を羨ましそうに見ている。まどかが巴マミルートに入ってしまったことを私は認めざるを得なくなってきた。

 そして、私にとって更なる悲劇が起きた。

 

「あっ、そう言えば脱いだものを洗濯機に入れるんでしたよね? きゃっ!?」

 

 まどかが自分の脱いだ衣服を拾おうとした瞬間だった。

 まどかは巴マミのお化けブラジャーに足を滑らせて巴マミへと頭から突っ込んだ。

 

「わわわっ? ご、ご、ごめんなさいっ! でも、柔らかくて気持ち良いよぉ~♪」

 

 まどかは頭を巴マミの魔乳に埋め、その両手は胸をわし掴みにしていた。

 しかも、まどかはその後も巴マミの胸に顔を埋めたままその感触を楽しんでいる。まどかは巴マミをほむほむしていた。巴マミが行儀悪くブラを脱ぎ捨てていたからとはいえ、何てToLOVEるが起きてしまったの……。

 

「マミさんの胸ってお母さんって感じがする。幸せな気持ちになれるよぉ。すりすり♪」

「ティ……ティ……ティ……ティ……ティロ・フィナーレ~~~~っ!?」

 

 胸の感触を存分に楽しんでいるまどかと、予想外の事態に硬直している巴マミ。

 意外と純情な少女らしい。

 

「マミさんっていつも優しいし、お母さんがピッタリ。マミさんには私のママになってもらおうかな? うん、決めた♪」

「私が……鹿目さんのママ……?」

 

 それはつまり、まどかが巴マミのパパになるということ。

 まどかは巴マミに娘を産ませる気であるということ。

 つまり、まどかから巴マミへのプロポーズ。

 私たちの世界ではそう翻訳される。

 それが、まどか愛。

 

「まどかが巴マミを選ぶなんて……」

 

 力が抜け落ちて床に崩れ落ちる。

 絶望の衝動が込み上げて魔女に堕ちてしまいそうだった。

 そして巴マミは──

 

「鹿目さん……いえ、まどかさんにマミマミされて、尚且つプロポーズまでされるなんて……円環の理脱出ティロ・フィナ~~レっ!!」

 

 ソウルジェムを輝かせ過ぎて別の何かへと進化してしまった。

 

 

 巴家のバスルームにいた筈なのに空間が一変する。

 気が付くと草一本生えていない白い砂で覆われた不毛の荒野に私は全裸(まどパンだけはフェイスに標準装備)のまましゃがみ込んでいた。

 

「ここは一体?」

 

 そこは魔女の結界内部に似ていたけれどどこかが違っていた。

 そして、私のすぐ側にいた筈のまどかと巴マミがいなくなっていた。

 

「まどかっ! まどかっ、どこにいるの!? 返事をして」

 

 周辺を必死になって見回す。

 すると、500m~1kmぐらい右に進んだ地点にオアシスを発見した。

 そしてそのオアシスからは巨大な白い柱が何本も立っているのが見えた。

 

「怪しいわね。というか、明らかにあそこが怪し過ぎでしょっ!」

 

 魔法少女への変身を試みる。

 しかし、衣服と一緒にソウルジェムもバスルームに置いて来たので変身もできない。

 走って向かうしかなかった。

 

 ソウルジェムは魔法少女となる少女の魂を具現化して固体化したもの。

 つまり、ソウルジェムが本体で、この身体は操り人形のようなもの。

 故にソウルジェムのコントロール範囲から外れてしまうとこの身体は糸が切れた人形のように動かなくなってしまう。

 そしてソウルジェムのコントロール半径は大体100mほど。

 だから、普通ならソウルジェムなしの状態では1km近くも走れるはずがない。

 けれどそれが可能ということはやはりここが元は巴家の脱衣所で間違いないということ。どんな広大な空間に見えても、実際の所ここは幅3mほどの空間なのだ。

 

「ほっ、ほむほむちゃ~んっ! た、た、た、助けてぇえええええぇっ!!」

 

 4分ほどの全力疾走を経てオアシスへと辿り着く。

 そしてそこで私が見たものは、全身に白い衣のようなものを纏った巨大な柱のような生命体数体に胴上げされている、生まれたままのまどかの姿だった。

 

「何なの、この不思議な生き物は?」

 

 ガンダムよりも大きい柱のような生命体。スキンヘッドの男のような顔を有している。ぱっと見た所、個体差は認められない。

 魔女にも似ているけれど、どこか違う。

 使い魔は存在せず、結界内部特有の禍々しい邪気を感じない。むしろこの空間にいるとまどかにほむほむしている時と同じ幸せな気持ちに包まれる。

 ということは、あの全裸まどかを胴上げしているあの柱状の生命体の正体はやはり……。

 

「まどかっ! 巴マミがどうなったのか知らない?」

「わかんないよぉ。この空間が出現する直前、マミさんは新しい境地がどうとか言っていたような気もするけれど……」

 

 どうやら私の推測は間違っていないようだった。

 

「まどか、よく聞いて。貴方を今胴上げしているその白い柱の群れ。それこそがつい先ほどまで私たちが巴マミと認識していた女で間違いないわ」

「えぇえええええぇっ!? マミさん、魔女化しちゃったってことなの!?」

 

 まどかが驚きの声を上げる。

 

「まどか、今貴方を胴上げしている存在は魔女ではないわ。魔女は魔法少女が絶望で塗り潰されて生じた存在。けれど、今貴方を胴上げしているのは魔法少女が欲望によって別の次元に辿り着いた存在。そう、まどかへの邪な欲望でジョブチェンジした魔獣なのよっ!」

 

 私は以前のループでまどかへの限りない欲望によりスーパーほむほむに変身したことがある。一方で巴マミは人間という殻を脱ぎ捨てて私とは別の方向に進化を遂げたのだ。

 

「そして巴マミは魔獣化するに当たって複数に分裂した。もう彼女は独りぼっちじゃなくなったのよ。全部自分だけど」

「いや、そんな冷静に解説してないで早く助けてぇ~っ!」

「巴マミが己の欲望を満たせるこの究極形態を私は『魔獣ぼっちぼっち』と名付けるわ」

「名前とかどうでも良いから早く助けてぇ~~っ!」

 

 究極の進化を遂げた『魔獣ぼっちぼっち』。

 今回のループでは巴マミに完敗したことを認めざるを得ない。

 そして巴マミは500回目のループにして新たなる可能性を私に見せてくれた。

 やはり人間は無限の可能性を秘めている。

 

「そうそう、まどか。何か勘違いしているようだから言っておくと、私に貴方を助けることは不可能よ」

「えぇえええええぇっ!? ど、どうしてぇっ!?」

「だって今の私は魔法少女に変身もできないのよ。そして1体だけでもワルプルギスの夜並に強そうな魔獣を12体も相手にできるわけないでしょ」

 

 フル武装していてもきっと歯が立たないだろう。

 

「それに害意はないようだし、心配することはないわよ」

「でも、胴上げで空中に飛ばされたり、大きくてプルンプルンした頬にすりすりさせられたり……ある意味魔女よりも身の危険を感じるよぉ~~っ!」

「大丈夫大丈夫。私はここから貴方の雄姿をそっと眺めているから」

「恥ずかしいから見ないでよぉおおおおぉっ!」

 

 よくよく考えてみれば今のまどかは全裸。しかも空中で回転までしちゃったりして、普段の覗きでは見られないあんなシーンやこんなシーンが見放題。

 ここってやっぱりすごい桃色空間じゃないだろうか。

 やっべぇ~。いつまでもいたいんじゃね、これ?

 

「えっ? もっと近くで見せてくれるというの?」

 

 魔獣の1体が手を地面に下ろして私に乗れと意思表示を示した。

 表情には全く変化がないのだけど、私にはその魔獣の心が何故かよく読み取れた。

 手の上に乗る。すると、あっという間に私はビル5階よりも高い位置に持ち上げられて、まどかの姿をごく間近で見えるようになった。

 

「とても可愛いわよ、まどか♪」

「そんなことどうでも良いから早く助けてぇえええええええぇっ!」

「まどかが何をそんなに嫌がっているのか……ワケがわからないわ」

 

 私は感涙の涙まで流しているというのに。

 そして、私の感動の涙に応えたのか、魔獣たちがまどかを胴上げしたまま一斉に腰を激しく振って踊り始めた。

 それは日曜日夜6時30分のお茶の間アニメのOPのあの踊りで間違いなかった。

 

「フフッ。まどか祭りの開催というわけね。その誘い、乗ったわ!」

 

 魔獣たちに負けじと私も腰を振って踊りだす。

 

「何でみんなで踊りだしているのぉっ!? こんなの絶対おかしいよぉっ!」

 

 まどかの絶叫が響き渡る中、まどか祭りは3日3晩夜を徹して開催され続けた。

 

 

5 VSワルプルギスの夜改めデビルキュゥべえ

 

 まどか祭りの開催から1週間後、ワルプルギスの夜は出現した。

 

「ごめんなさい、まどか。私はもう体が動かないの」

 

 空中に浮かぶ魔女を私は仰向けの姿勢で見上げることしかできない。

 

「不眠不休で3日3晩も踊り続けるからそんなことになるんだよぉ」

 

 魔法少女に変身したまどかが涙目で私を見下ろしている。

 

「だけどあの時の私には、踊り続けるしか方法がなかったの……」

「嘘だっ!」

 

 魔獣ぼっちぼっちと私によるまどか祭りは75時間連続して行われた。

 その間、1分たりとも休む間もなく踊り続けた私のガラスの腰は完全に砕けてしまった。

 後悔はない。

 けれど、祭りが終了して4日が経った今でも私は巴マミの家のベッドから動くことができないのが少し困る。

 ちなみに魔獣ぼっちぼっちはまどかにマミマミし尽くして満足したのか、それとも魔力が切れたのかしらないけれど消えてしまった。

 

「あれが最後のぼっちぼっちとは思えないわね」

「私、もし世界を作り変えられる機会とか与えられたら、魔法少女が倒すべき敵としてあの魔獣を設定するよ、絶対にっ!」

 

 魔獣ぼっちぼっちとの再会を胸に、私たちは巴マミとの別れを告げた。

 

「うっうっうっ。ほむほむちゃんが動けないんじゃ、私1人であの大きな魔女に勝てるかなぁ?」

「まず不可能ね」

「そんなはっきり言わなくても……」

 

 魔女ワルプルギスの夜は強い。

 どのぐらい強いかというと、毎回私の全力より強いぐらいの力に因果が設定されてしまっている。

 500周のループを繰り返して私の魔法少女としての力はかなり強くなった。

 仮に私の現在の戦闘力を100とすると、ワルプルギスの夜の力は200ぐらいに上がっている。私が強くなるたびにワルプルギスの夜の力も上がっているのだ。

 ちなみにまどかの戦闘力は多く見積もっても5。

 私が現れてからは魔女と1度も戦ったことがないし、戦力として考えることは厳しい。

 

「でも、このままあの魔女を放っておいたんじゃ、街が酷いことに……」

「そうね。いつまでも時間稼ぎもできないだろうし」

 

 とりあえず無限に増殖できるキュゥべえに魔法を掛けて、体当たり攻撃を無限に仕掛けさせ、あの魔女の気を惹くことには成功している。

 

「暁美ほむほむ? ボクは生まれて初めて人道的見地とは何かについて思いが至った気がする……ぼへっ!?」

 

 しかし、ワルプルギスの夜の体がキュゥべえの血で赤く染まって行く以上の効果は何も挙げていない。既に3万匹以上のキュゥべえが特攻して果てたというのに。

 

「やはり、スーパーほむほむに変身しないと勝てそうにないわね」

 

 穏やかなる心を持ちながら激しい情欲によって目覚めた伝説のスーパーほむほむ。

 私の力の限界を超えた伝説の戦士になるしか最強の魔女には勝てない。

 

「けれど、今の私がスーパーほむほむに変身するのは難しいわよね」

 

 かつての私はまどかのおへそとパンツを見ただけでスーパーほむほむに変身できた。

 けれど、まどパン標準装備となった今の私では理性を全てかなぐり捨てるようなハァハァに出会うことは難しい。一体、どうすれば……。

 

「えっと、ほむほむちゃんがそのスーパーほむほむに変身するにはどうすれば良いの?」

「私の中のまどか指数が限界を超えれば……要するに貴方への興奮がメーターを振り切れば良いのだけど」

 

 けれど、このループではまどかの裸さえも堪能し尽くした。後にもう、何が残されているというの?

 

「私への興奮? じゃあ、恥ずかしいけれど……」

 

 まどかが私へと顔を近づけてきた。一体、何を?

 

「この街の為に戦ってくれる騎士さまにお礼のキッス♪」

 

 そう言って……まどかは私の左頬に……

 

 キスを

 

 した。

 

「うぉおおおおおおおおおおおおぉっ!」

 

 ループ500周目にして私の体にはかつてないほどのパワーが漲って来た。

 

「ああっ! ほむほむちゃんの体全体から金色の光が湧き出ているよ!」

「ありがとう。まどかの愛の力のおかげで私はスーパーほむほむに変身できたわ」

 

 断りもなく私の頬を奪う強引なまどか。嫌いじゃない。嫌いじゃないわよぉおおおぉ!

 

「まどか、私はちょっとあの雑魚を倒してくるわね」

「うんっ。帰って来たら、ご褒美に右頬にもキスしてあげるね♪」

「絶対よ」

 

 私は今、悪女と化したまどかにいい様に使われている。

 キスを餌に命がけの戦いに飛び込まされそうになっている。

 でも、そんな自分がどうしようもないぐらいに好き♪

 私は溢れる鼻血をジェットエンジンに変えてワルプルギスの夜との決戦に向かった。

 

 

「なるほど。僕自身が魔女と化した方が人間が絶望に陥るエネルギーを効率良く回収できる。これは凄く便利だよ」

 

 ワルプルギスの夜の元に辿り着いた時、そこにいたのは別の存在と化した悪魔だった。

 メリーゴーランドみたいな上部の更にその上にキュゥべえの巨大な顔が乗っていた。

 

「暁美ほむほむ。ボクは君に感謝しているよ。おかげでボクは簡単にこの星からエネルギーノルマを達成できそうだよ」

 

 キュゥべえはワルプルギスの夜と融合、いや、乗っ取っていた。人間の絶望をエネルギーとして回収しようとするその存在はまさに悪魔。デビルキュゥべえの降臨。

 

「契約における瑕疵担保責任も知らない下等生物如きがラスボス気取りとは良い度胸じゃないの」

 

 デビルキュゥべえに向かって跳びこむ。

 そして──

 

「ほむほむほむほむほむほむほむほむほむほむほむほむほむほむほむほむほむほむほむほむほむほむほむほむほむほむほむほむほむほむほむまほむほむほむほむどほむほむほむかほむほむほむらほむほむほむほむほむほむぶほむほむほむはほむほむほむあほむほむはほむほむあほむほむほむほむほむほむほむッ!」

 

 必殺のほむほむラッシュをお見舞いする。

 しかし──

 

「ワケワケワケワケワケワケワケワケワケワケワケワケワケワケワケワケワケワケワケワケワケワケワケワケワケワケワケワケワケワケワケワケワケワケワケワケワケワケワケワケワケワケワケワケワケワケワケワケワケワケワケワケワケワケワケワケワケワケワケワケワケワケワケワケがわからないよ」

 

 キュゥべえがその巨大な耳を使って私の拳を全て弾き返してしまった。

 それどころか巨大耳ビンタを2、3発食らってしまう。

 口が切れて血が滴り落ちて行く。

 

「スーパーほむほむになってもまだデビルキュゥべえには敵わない。一体、どうすれば?」

「やれやれ。魔法少女如きがこのボク、アルティメットキュゥべえに勝てると本気で思っているの? まったく人間の考えることは理解できないよ」

「私は絶対にお前なんかに負けないわっ!」

「君たちはいつもそうだね。事実をありのままに伝えると、決まって同じ反応をする」

 

 ワルプルギスの夜に勝てないのは仕方ないとしても、このキュゥべえに負けるのはどうにもプライドが納得いかなかった。

 

「ほむほむちゃ~んっ!」

 

 そんな私の隣にまどかがやって来た。

 

「ここは危ないわよ、まどか」

「でも、苦戦しているほむほむちゃんを見ていられなくて……」

 

 戦いに関してほとんど理解がないまどかにも私の劣勢は伝わっていた。

 

「ほむほむちゃん、口元に血が付いているよ」

 

 まどかがハンカチを取り出して私の口元の血を拭う。

 まどかの真っ白なハンカチを血で汚してしまったことを申し訳なく思う。

 しかし、どうすればあのデビルキュゥべえを退治できるものか。

 

「あっ、メガネにも血が付いているよ」

 

 まどかは私のメガネを外してレンズに付いた血を拭いた。

 ちなみに私の現在の視力はものすごく良い。

 両目とも6.0以上。

 まどかのことを遠くから見守って、着替えやパンチラを凝視している内に良くなった。

 だから私が今でもメガネを掛けているのは昔からの惰性。

 もっと肯定的な表現を使えば、私は最初の世界、即ち初心を忘れない為にメガネを付けている。

 そんな私、ちょっとだけ格好良い。

 

「見て見て、ほむほむちゃん。私、メガネ似合う、かな?」

 

 回想を終えて正面を向き直す。

 そこには……メガネを掛けた……メガネまどか……がいた。

 

「似合わない、かな?」

 

 まどかは自分の顔を手鏡で見ながら照れ笑いを浮かべている。

 まどかは全然理解していない。

 自分のその姿がどれだけ規格外に魅力的であるかを。

 どれだけの希望と欲望を人に与えるものであるかを。

 ほらっ、魔獣ぼっちぼっちと化して消失した筈の巴マミだって必要とされていないのに一時的に復活して720mm望遠の超大型カメラを構えて激写を始めている。

 退場したキャラを再登場させるぐらい彼女の魅力をもってすれば造作もないこと。

 そしてそれは当然、生きている私にだって影響を与える訳で

 

「えっ? ほむほむちゃん? 顔にかぶっている私のパンツが白から黒レースのセクシーなひもパンに変わったよっ!?」

 

 私もまた究極のパワーアップを遂げていた。

 

「ありがとう、まどか。貴方のおかげで私はパワーアップできたわ」

「へっ?」

「スーパーほむほむを超えたスーパーほむほむ。私はスーパーほむほむ2になったのよ」

 

 ほむほむには無限の可能性がある。

 今の女神まどかはそれを私に教えてくれた。

 そして私の体はその無限の可能性に答えたのだ。

 

「ちょっとばかりあの外道を葬ってくるわね」

「うんっ♪」

 

 私は先ほどまで圧倒的力を誇っているように思っていたデビルキュゥべえに正面から飛び込んでいく。

 そして──

 

「まどかを心配させた罰を受けなさい。食らえっ、愛と怒りと悲しみの爆裂ゴッドあ~~んパンチぃいいいいいいぃっ!」

「……やれやれ。全宇宙の為に働いているボクを概念レベルから滅ぼすなんて、人間の考えることは本当にワケがわからないよ……」

 

 私の魂込めた一撃によりキュゥべえは完全に消失した。

 私とまどかの蜜月の日々を邪魔しようとするものは何であれ容赦はしない。

 デビルキュゥべえの敗因はたった一つシンプルな理由。

 ヤツは私のまどかにメガネを掛けさせた。

 

「ほむほむちゃん、すご~い♪」

 

 まどかが地上へと降り立って行く私へと駆け寄って来る。

 彼女を元気に迎えたいが体中がどうにも痛い。

 スーパーほむほむ2はパワーが大きな分、消費する魔力や体力も桁違いに大きかった。

 消費した分はまどかに実際にほむほむすることで補給するしかない。

 けれど、ここで予想だにしなかった悲劇がまどかを襲った。

 

「ほむほむちゃ~ん……きゃっ!?」

 

 まどかはバナナの皮に足を引っ掛けて転倒。

 

 鹿目さんは落ちていたバナナに足を滑らせて転倒。

 転んだ衝撃で自らのソウルジェムを砕いてしまった。

 

 

6 再びループに

 

 私が地上に降り立った時、制服姿に戻った鹿目さんは既に虫の息だった。

 

「せっかくほむほむちゃんが大勝利を収めたのに……私がドジしちゃって……ごめんね」

「そんなことない。私はまどかがいてくれたからパワーアップできたんだよ……」

 

 私は泣きながらまどかの手を握っていた。

 握りながら戦場に落ちているバナナに注意を払わなかったことを後悔していた。

 いつもなら巴マミがバナナを踏んで散ってくれていた。

 巴マミさえ生きていてくれれば、まどかがバナナを踏んで転びソウルジェムを砕くこともなかった。

 巴マミの生存がまどかが生き残るための条件になっていたなんて考えもしなかった。

 巴マミがバナナを踏んで死ぬことがまどか生還エンドのフラグの一つだったのだ。

 全ては、私が甘かったからまどかは死ぬことになってしまった。

 

「最期に一つ……頼んで…いい?」

「まどかっ!」

 

 まどパンを脱ぎ去って涙を拭う。

 そんな私に対してまどかは精一杯の笑顔を見せてくれた。

 

「ほむほむちゃん…やっと素顔を見せてくれたね。嬉しい」

 

 言われて私はまどかにこのループで初めて素顔を晒したことに気付いた。

 彼女を求めて止まなかったのに、彼女と親しくなりたくて必死だったのに、彼女をほむほむし尽くしたくて狂いそうだったのに、私は彼女と1歩距離を置き続けていた。

 そんな自分にやっと気付いた。

 まどかを悲しませていたバカな自分にやっと気付いた。

 

「それで、願いって何なの?」

 

 まどかにはどんなに謝っても許されるものじゃない。

 けれど、せめてまどかの願いだけでも聞き届けておきたかった。

 

「ほむほむちゃんって……本当は視力良いんだよね? だって、これ、伊達メガネだし」

「まっ、まあそうね……」

 

 1km離れた地点からまどかの着替えと入浴を双眼鏡なしで見守れるほどには目が良い。

 

「ほむほむちゃんは……メガネでも美人だけど……私はメガネなしのほむほむちゃんの方がもっと綺麗に見えるよ……」

 

 まどかのその言葉を聞いて私は雷に打たれたよりも大きな衝撃を受けた。

 

「ま、まどか……」

 

 私は今まで自分のことばかり考えてきた。

 私がまどかに何を望んでいるのかばかり考えてきた。

 それを初心を忘れないという言葉で自己正当化ばかり図り続けてきた。

 けれど、まどかが私に何を望んでいるのか。

 相手の立場に立ってものを考えてみること。

 それが私にはとても不足していた……。

 

「生まれ変わったら……今度はほむほむちゃんのメガネなしバージョンもよく見せてね」

 

 その言葉を最後にまどかは瞳を閉じ、二度と開くことはなかった。

 

「まどかぁあああああああああああぁっ!!」

 

 幾ら泣き叫んで絶叫してもまどかはもう瞳を開けてはくれなかった。

 

 そして、左腕に装備している機械仕掛けの砂時計がカチンと大きな音を奏でた。

 

「お前は今回もまた私にまどかの死に悲しむ暇さえ与えてくれないと言うの……」

 

 それは既に500回も体験した、過去へと戻る予兆で間違いなかった。

 私の願いはまどかをほむほむし尽くすこと。

 まどかが死んでしまえばこの願いは叶わないものとなる。

 だからまどかとの出会いの時点に強制的に巻き戻されることになる。

 

「ごめんね、まどか。私、貴方の側にもっといたいのに、それさえも許されないの」

 

 まどかの遺体に駆け寄りそっとその頭を撫でる。

 

「それから追い剥ぎみたいで悪いけど、私がこの世界を生きた証として、まどかの遺品をもらっていくね」

 

 私はまどかの体からその遺品をそっと抜き取る。500枚目の遺品。

 

「私、わかったの。メガネは自分で掛けるものではなくて、まどかに掛けてもらうものなんだって。そして次の世界では必ず貴方をほむほむし尽くしてみせるから。まどかに幸せな一生を過ごしてもらえるように頑張るからっ!」

 

 まどかに向かって誓いを立てる。

 次の瞬間、私の体はこの世界から消失した。

 

「まどか、私、頑張るからっ! 絶対に諦めないからっ!」

 

 時の回廊とでも呼ぶべき異空間で私は決意を新たにする。

 そして決意の証にまどかの遺品をハチマキのように頭に締めてみせる。

 まどかの縞々パンツは、まだ暖かかった。

 

「私は何度でも繰り返す。同じ時間を何度も巡り、たった一つの出口を探る。貴方を絶望の運命から救い出す道を。そして貴方をほむほむし尽くせる道を」

 

 今、500周目だから残りはおそらく後99500周ぐらい。

 私の旅はまだまだ始まったばかりだった。

 

 

 了

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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