No.265086

真・恋姫無双「新たなる地と血」第16話

呉には遊びに来ているようなものなので拠点扱いではないです。

2011-08-08 19:07:59 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:5505   閲覧ユーザー数:4337

この作品は恋姫無双の2次創作です。

 

作者の勝手な解釈もある為、若干キャラの性格等のズレが生じる場合が御座いますが

そこらへんはご容赦のほどを。

 

 

~二日目~

 

朝早く練兵場を黙々と走る者が居た。

 

「ほっ、ほっ、ほっ、ほっ、ほっ…」

 

走り終え呼吸を整えると次ぎの鍛錬へと移る、それが終わると呼吸を整えまた次ぎの鍛錬へと移り次々とこなして行く。

 

一通りの鍛錬を終える頃には日は既に昇っており、辺りには自分と同じ様に早朝の鍛錬に来ている者がちらほらと居る事に気付く。

 

その中には見知った顔がいたので挨拶をする。

 

「おはようございます。黄蓋さん。」

 

「おう、早いな。随分と気合の入った鍛錬をするのだな。」

 

「これぐらい普通ですよ。それにやっておかないと直ぐに身体が鈍ってしまいますからね。」

 

旅をしていると基本的には野宿と街で宿のどちらかで寝食をしているのは当然で、野宿では一樹を置いて遠くへ走り込みをする訳にはいかないのでメニューとしては今日やった半分も出来ない。

 

それ故治安の良い街の宿の泊まった場合は鍛錬を出来るだけこなして行くようにはしてはいるが一樹を長時間放って置いてこれもあまり出来るほうでは無い。

 

そんな一刀に感心しながら祭は手拭いと水筒を渡す。一刀もそれを受け取ると水を飲み、汗を拭く。

 

「酒はもう抜けたのか?」

 

夕べの歓迎の宴では散々飲み食いをした(主に酒は雪蓮と祭が)ので雪蓮は当然まだ爆睡中、祭もようやく今し方起き出した所。

 

「まだちょっと残ってますよ。けどそれを理由に先延ばしをしていたら何時まで経ってもやらなくなりますから。」

 

「はは、確かにな。策殿に聞かせてやりたいわ。」

 

「さて、一樹を起こしてそれから朝餉にします。」

 

「ああ、また後でな。」

 

一樹と朝餉を食べた後、街へと散策に来ていた。城を出る途中に雪蓮に会い、街へ行くと言うと「私も行く~」と行って付いて来ようとしたが冥琳に見つかってしまい連れ戻されて行った。

 

今日は昨日の様に逸れることのないようにしっかりと一樹の手を繋ぎいろんな店を見て回り一日楽しんだ。帰って来てから雪蓮に宴の連チャンに誘われたが冥琳に却下された。

 

~三日目~

 

昨日と同じ様に朝早くから練兵場で鍛錬をする一刀。

 

それが終わる頃祭が姿を現し、手合わせを申し込まれた。

 

特に断る理由も無く、祭の力量に興味があった為受けた。朝餉を食べた後にすることにした。

 

朝餉を食べ終わり胃がこなれた頃二人は練兵場に現れた。だが既に其処にはそれを観戦しに来た野次馬で一杯だった。

 

皆祭が挑む相手に興味があるようで、この呉に於いて祭を相手に出来るのは雪蓮、此処には居ない思春、同じく此処には居ないがまだ発展途上の周泰位である。

 

蓮華、小蓮などは自衛の為の武を習っているのでこれは除外。話は逸れたが訓練を受ける者は居ても勝負を挑む者はほぼ皆無で、祭が雪蓮達以外に武を振るうというのが珍しく皆興味津々である。

 

ちなみに雪蓮は先を越されたとぶー垂れていたが、冥琳に早起きして約束をすればよいと言われたが「早起きは無理!」と胸を張って言い呆れられていた。

 

練兵場の真ん中には一刀と祭がそれぞれの武器を持ち、その間には冥琳が審判と立っていた。そして冥琳の開始の合図を皮切りに二人は動き出した。

 

最初に仕掛けたのは祭、多幻双弓により矢を番え一刀へと狙いを付け次々放っていく。一刀の方もそれを剣で打ち落としていくが次々と飛来してくる矢に距離を縮められず防戦一方になっていた。

 

距離は縮められないため、とにかく動いてかく乱しようとするもまるで糸で張られているかの如くぴったりと照準を合わせられて動こうとするその先に矢を放たれ思うように動けないでいた。

 

だがそれは祭も同じ筈、なのに同じ様に矢を放ちそれを一刀が打ち落としていく。この繰り返しに違和感を覚えた一刀は周りを見渡した。そこには一刀が打ち落とした矢がいくつも転がっており逃げ道を無くしていた。

 

祭は矢を番えると一刀目掛けて放つがこれも打ち落とす、だがそれは囮で実はその後素早く二本の矢を放っていた。しかもそれは一刀に放ったものではなく地面に転がっている矢に向けて放ったもの。

 

その二本の矢に気付いた一刀であったがさっきの矢を打ち落とした為に体勢が整えられておらず間に合わない。祭は決まったと思ったが一刀はなんと片方の足を上げ矢が当たる瞬間、上げた足を地面に叩きつけた。いわゆる四股を踏んだのだ。

 

それにより祭が狙っていた矢には当たらずずれた為、地面に転がった矢は弾き合う事が無くなった。そんな防ぎ方に一瞬呆気に取られたがすぐに祭は一刀が近づいていることに気が付き、

 

弓で近接では不利と判断するとあっさりと弓を捨て、腰に挿してあった短剣で応戦の構えを見せ、一刀は一瞬驚いたが流石は呉の宿将と感心する。

 

一刀は走りながら祭目掛けて剣を横薙ぎに振るうが祭はそれを難なく受け流し、そのまま今度は一刀の頭上から剣を振り下ろすがそれを素早く横にかわす。

 

避けた一刀は上段から剣を振り下ろすが祭はわずかに後退し避けると直ぐに踏み込み斬りかかった。一刀はまだ体勢が戻っていなかったが剣を手放し斬りかかって来た祭の腕を取るとその勢いを利用して地面に叩きつけた。

 

これによって決着が付いた。見ていた者達は祭が負けたことに驚いていた。一応陳留の州牧・曹操の元にいる夏候惇より強いとは聞いてはいたが、実際夏候惇の強さを目にしたのは一部の者達。

 

しかも格下の賊相手であった為、賊よりは強いという認識程度で本当の意味で武を知っている者は居ない。

 

当然雪蓮も一刀は強いとは思っていたが自分の予想をはるかに上回っており驚いてはいたがそれよりなにより見とれていた。彼の武に。

 

決着が付き手合わせをしていた二人は互いを讃えあっていた。

 

「強いとは思っていたが想像以上の強さだな北郷。」

 

「有難う御座います、そう言う祭さんも手強かったですよ。流石に経験が違いますよ。」

 

「よく言う。実力の半分も出しておらんくせに。」

 

それを聞いていた者達は皆驚いた。アレだけ激しい攻防をして於きながら一刀はまだ本気を出していない事を。呉に於いて最強と思われる祭を以ってしても実力の半分も出さしていない事に皆改めて大陸は広いと思い知らされた今日の一戦であった。

 

~四日目~

 

いつもの鍛錬をこなし朝餉を食べた後、一樹に勉強を教えていると冥琳ががやってきて不思議そうにしていた。

 

「なぜそんな事をする必要がある?」

 

と、そんな質問が来た。必要だからというと。何処でと更に聞かれていたがこれは延々と続きそうだと感じ、逆に一刀は聞き返した。

 

「子供に勉強を教えるのがなぜ不思議なのか。」

 

「文官や武官を目指すわけでも無いのだろう。だとしたら不要では無いのか?」

 

どうやら冥琳は役人でも無いものがそういう知識を蓄えるのに抵抗があるみたいだ。

 

俺の住んで居た国ではこの頃の子供に勉強を教えるのが当たり前だというとすごく驚いていた。…まあ前居た外史でも余りいい顔をされなかったこの案、教育機関の設立。

 

才能ある者を見出すにはいいが、知識を持ってそれを悪用しようとする輩が発生することを心配といった理由で、この案はしばらく保留となった。んだが結局施行される事は無かった。

 

なぜならあの最終決戦が起こったからである。

 

そんな話からなぜか冥琳に色々と天の国での事を聞かれ、それに答えていたらいつの間にか昼になっていることに気が付き食事にする事にした。

 

「ZZzzzzz…」

 

とりあえず寝ている我が子を起こす事にした。どうやら冥琳との議論で置いてけぼりを喰らい寝てしまったようだ。

 

昼餉も終わり今度は一樹に武術を教えていた。主にしていることは柔軟と型の稽古である。

 

その途中、雪蓮がやってきて一緒にそれを見ていた。一応政務は終わらして来たらしい。

 

「ねえ、一刀は一樹をどうしたいの?」

 

「どうしたいの、とは?」

 

一緒に一樹の稽古をみていた雪蓮が聞いて来た。今一つ質問の意味が分からず聞き返す。

 

「将来よ、武官とか文官とかさぁ」

 

ああそういう事かと理解する。要するに将来一樹になにになってもらいたいのかということらしい。

 

「一樹がなりたいものなら何でもいいさ。」

 

雪蓮は驚いた。文官を目指すための勉強、武官を目指すための稽古。それらのためにしているものだと思っていたのだが一刀の答えは意外だった。

 

「親ってのは子供にあれをしろ。これをしろ。なんていう権限は無いと思うんだ。精々子供が間違った道に行かない様にするだけのものだと思ってる。もし間違った道に行こうとしたらそれを正す、それだけの存在だから。」

 

この時代、子供が家業を継ぐのが当たり前で現代みたいに職業選択の自由などもない。家業を継ぐ者達以外は必要になったら勉強をするというのが一般的である為目標も無いのに勉強をする一樹はある意味特殊なのだ。

 

そんな一刀を見て雪蓮はふ~んと言うだけでどういう思いを抱いたのかは表情からは何も窺えなかった。

 

~五日目~

 

朝餉の後、一刀は旅の準備を始めた。此処へは雪蓮へ挨拶に来たようなもので長居するつもりはなかった。

 

雪蓮たちにもそう言ってあるが雪蓮はこのまま居て欲しいようで事ある毎に此処に残ってと言っていた。

 

だが一刀はある出来事が差し迫っている事を気にしてそれを断っていた。前回の世界では白装束の連中が董卓こと月を傀儡とし一刀をおびき寄せると言う事をしていた。

 

今の所白装束や左慈たちの情報は無いが、泉が殺されているという事態が起こっているため、完全に安心は出来ない。取り越し苦労ならそれで良いが、念の為確認しに行こうと思っている。

 

冥琳には先日全てを話してあるので、問題無く事を進めてくれるだろう。華琳もこれから先のことに対してもなんの問題は無いだろう。後は月たちの安否の確認のみである。

 

一日準備と挨拶で過ごした日であった。夕餉の頃別れの宴の話が出たが冥琳によって財政的な問題で却下となった。それを聞いて雪蓮と祭がぶーぶー文句を行っていたのは言うまでも無い。

 

~六日目~

 

城門には雪蓮、冥琳、祭が見送りに来てくれた。

 

「残念ね~、寂しくなるわね。」

「また会えるよ。今度はもう少し長めにお邪魔するよ。」

「お姉ちゃん、また遊びに来るからね。」

 

「北郷又何時でも遊びに来い。また色々とお前の話を聞きたい。」

「ああ、又遊びに来るよ。雪蓮達を頼んだよ。」

「ちょっと!まるで私が冥琳に世話になっているみたいじゃない!」

「「………」」

「二人とも黙らないでよー!」

「冥琳お姉ちゃんもまたねえ。」

 

「北郷、又手合わせをしよう。今度は負けんぞ。」

「ええ、又何時か。俺も鍛錬を積んでおきます。」

「祭おば「待て一樹それは駄目だ!」?…祭お姉ちゃん?またね。」

「…何を言おうとしたかは敢えて聞かぬが、疑問系で呼ぶでない。」

 

雪蓮と冥琳が横で祭に背を向け笑いを堪えているのはご愛嬌。

 

最後に一樹が爆弾発言しかけたが、気を取り直したのを確認すると改めて挨拶をすると、馬を走らせ去って行った。

 

「ねえ冥琳一刀とどんな話をしたの?」

 

一刀の去っていく姿を見ながら雪蓮は聞いて来た。

 

「…我々の今後の事。としか言えんな。」

 

「なにそれ?」

 

雪蓮は冥琳が何を言っているのか分からずきょとんとする。

 

「心配するな雪蓮。お前達は私が守ってみせる。」

 

「じゃあ私は冥琳を守ってあげる。」

 

そう言って冥琳に抱きつく。

 

「ああ、頼りにしているぞ雪蓮。」

 

「なんじゃなんじゃ儂は除け者か?」

 

「祭殿も頼りにしていますよ。」

 

「そーそー大船に乗った気でいなさい。」

 

「ふ、では今日の政務も雪蓮に任しても大丈夫だな。」

 

「げ、ちょっとそれは…」

 

そう言って下がろうとしたがそれより早く冥琳が雪蓮の手を掴み逃すまいとする。祭も同じ様に逃げようとしたが雪蓮を拘束しているとは思えないほどの早さで捕まってしまった。

 

そして引きずられる様に城へと戻って行った。

 

北郷親子が去って数日後、各地の視察を終えた蓮華達が帰ってきた。玉座にてその報告を行なったが、口頭では伝えきれなかった部分を報告書に纏めて翌日それを持って政務室へと持って行った。

 

数日は休んでいいと言われたが黄巾の乱が終わってはいるとはいえ、今だに各地で小さいながらも混乱が続いている、そのため少しでも早く手を打てるようにといま自分に出来る事をするために、

 

朝早く起きてそれらを纏めて雪蓮たちがいる政務室に持って行った。そして政務室の机に乗っている竹簡の数に驚いた。

 

雪蓮はいつも政務をさぼって放っているため残っているのは当然なのだが、普段のものとは違う案件が多数残っていることに驚いていた。

 

「…冥琳、この案件は何?」

 

「一刀から聞いた事を冥琳ったら実践するって、それでこんなに仕事が増えたのよ~。」

 

冥琳への問いかけを代わって愚痴付きで雪蓮が机に突っ伏しながら答えた。

 

「…一刀って、確か曹操の所で客将をしているって言ってた北郷という男でしたか?そんな男の言う事が信用出来るのですか?!」

 

「はい、これ。」

 

論より証拠と言わんばかりに雪蓮は竹簡の一部を蓮華に渡した。それを訝しげに受け取りしばらく見ていた。

 

 

 

 

竹簡を見た後、自分の部屋に戻った蓮華はそのまま寝台へと身体を横たえた。

 

「北郷…一刀」

 

その名前を聞いたとき、今までに無いくらいに胸の奥が熱くなった。竹簡の字を見た時、字が滲んで見えなかった。雪蓮に指摘され初めて自分が泣いている事に気が付いた。

 

流石の雪蓮も驚いており、只事じゃ無いと思い茶化しには来なかった。

 

思春と穏、それに周泰こと明命は必死に慰めようとしていたが、原因が今一つ分からず戸惑っていた。

 

冥琳は何も言わず只じっと蓮華の様子を見ていた。

 

以前雪蓮に聞かされたときも胸の奥が熱くなっていた。今日はさらに涙までも流した。自分のこの気持ちが理解出来ないでいた。

 

面識の無い名前しか知らない男のことで、こんなに悩むとは思いもしなかった。出来ることなら会ってこれが何なのか知りたいと思った。

 

(蓮華様も北郷の事をおぼろげながら覚えているようだ。もし全てを思い出した時、あの方はどうされるだろうか。…だがそんなことは関係無い、私の覚悟はとうに決まっている。例えどうなっても…)

 

蓮華の様子を見ていた冥琳はそっとその場を離れた。

 

あとがき

 

やっとできたー!リニューアル後の7月31日に出来た前半だけでも投稿しようとしたらエラーが2回連続で出た為テンションが下がりそのまま寝ました。そして後半も出来た今日、併せて投稿となりました。

何が悪かったんだろう?

 

それはさておき。解説でも書いたようにあくまで呉へは遊びに来ているということで拠点では無いのです。

 

祭さんとの手合わせですがなぜ弓から剣になったかというと、あの人はオールラウンドプレーヤーだと思っているのからです。他のssを見てもいろんな武器を使用しているようなので、伊達に歳をくttゲフンゲフン流石歴戦の猛者(棒読み)

 

後一樹の勉強に関しては一刀の現代の感覚(義務教育)が未だに抜けきっていない部分がある為です。

 

そして今後の行き先と蓮華と冥琳との邂逅がどうなるかという所でしょう。

 

これに関しては次回以降をお楽しみに、です。

 

ではまた次回~


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
40
2

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択