新暦65年12月12日未明。ミッドチルダ圏エルセア地方某国空域。高度約二千メートル。

 私は単機、密雲の中を飛行していた。

 さっきからセントエルモの火が、ふらふらと機体にまとわりついては離れていく。

 ■■■■(検閲)に所属するアインハンダー乗りの私が、この■■■■(検閲)で大気圏に降下してから、既に四時間が経過していた。その間、このミッドチルダで目にしたものと云えば、人の明かりの灯らない廃棄都市郡、そしてこの忌ま忌ましい黒雲と放電だけ。■■■■(検閲)でしきりに喧伝されている美しいミッドチルダの光景とは、余りにもかけ離れていた。■■■■(検閲)もうんざりしてしまうだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

テスト投稿二次創作SS 魔動少女ラジカルかがり A.C.E.

第二話『最終蒐集兵器。彼女は、もう、引き返せない。』前編

 

原作:アインハンダー

原作世界:魔法少女リリカルなのはアニメシリーズ

原作設定:日本製シューティングゲーム各種

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 不意に目が覚めた。

 

 視界には見覚えのない白い天井。

 音はない。

 あれ、こんなところで寝たかな?

 

 状況を把握できず、眼球を動かして周囲を見た。

 

 白い部屋だった。

 

 壁の位置から推測すると、普段私が寝泊りしている家の寝室よりも広い。

 今度は頭を動かして周りを見渡す。

 頭痛がした。

 部屋には窓、そして扉がついていた。当然か。

 

 どうやら私はベッドに横たわっているらしく、ベッドに繋がれた点滴らしきものが私の右腕まで管を伸ばしていた。

 病室、に非常に似た部屋だ。

 

 そして思い出した。私は通り魔に襲われたのだと。

 

「あーあー」

 

 声は出る。私は死んでない。

 

 とりあえず、ここが病院ならナースコールで人を呼ぶのが良いのだろうか。

 だがどうも体に力が入らず、起き上がることができない。

 ここは、叫んで人を呼ぶのが良いのか?

 

 でも、私が襲われたのが通り魔ではなく一族の身体を狙った密猟者だとすると、ここは人体実験の研究所だったりするのかもしれない。

 戦闘機人の摘発のときにもそんな施設を見た覚えがある。

 

 しかし、よく魔力炉を抉り出されて生きていたものだ、私。

 あの時は錯乱していたけれど、あの襲撃者はリンカーコアを貰うとか言っていた。

 人体収集趣味の猟奇殺人者でないのだったら、貴重魔力素体回収業者に貴重素材としれ回収されて実験体として生かされているとかそんなフィクション的展開になっているのかもしれない。

 私的には普通の病院であることを祈るのみだ。どう見ても第6管理世界の部族の医療施設ではないけれど。

 

 むう。一応念話で助けを呼べるか試してみよう。遮断されている可能性が高いが。

 念話回路、機動。

 

 ――機能凍結中。魔力異常解決の後凍結解除を行ってください。

 

 あれ? 念話チップ破損?

 それとも使えないよういじられてる?

 

 いや、私の身体は超高度科学の頂点の産物であるダライアス一族のものなのだ。

 今のミッドチルダ中心の魔法科学技術では、再現はおろか情報なしにまともに解析することすら不可能なはずだ。

 

 どこかおかしいのだろうか。魔力炉をえぐられた影響がでているのか。

 体内スキャン機構、起動。

 

 ――機能凍結中。魔力異常解決の後凍結解除を行ってください。

 

 ……はあ。いや、何だこれは。一族ならば二歳児でも出来る基本機能が動かない。

 どうなってしまっているんだろう、私の身体は。

 魔力炉損失? 深刻な後遺症? 実験で何か埋め込まれた?

 

 私はこれからどうなるんだろう。

 ここは、一体どのような場所なんだろう。

 このまま一族の益を見出せないまま無駄に生きてしまうのだろうか。

 

 そのようなことを見覚えのある医療センターの制服を着た看護士さんが入室するまで、一人悶々と考えていた。

 

 

「両腕を数箇所骨折、肋骨もほぼ全滅、魔力炉は損傷。簡単に言えば重傷です。ダライアスさん、二週間も意識不明だったんですよ」

 

 

 とのことです。

 

 骨折は正常に魔力炉と魔力経路が繋がっていない状態で、対近接緊急攻撃機能が自動起動でもしたものだろう。

 魔力炉損傷は無理矢理体外に摘出されたうえに、その状態で攻撃機能で酷使してしまった結果とかだろうか。

 そりゃあ重傷にもなる。

 

 ここはミッドチルダの地上本部に近い、クラナガンの先端技術医療センターだった。

 ミッドチルダ文明の医療技術の集大成とも言える場所で、時空管理局との多世界医療技術交換も盛んな場所だ。

 というか窓の外の景色で初めに気づきなさいな私。

 

 でも、第6管理世界で怪我をしたはずの私が、何故ミッドチルダの医療施設にいるのだろう。

 ダライアスの自治区に近い場所だったから、そのまま自治区に運ばれての医療局のオーバーテクノロジーで修理とかされていそうなものだけれど。

 

 いや、あの人たちすぐにパワーアップだと言いながらクローン義体で手足の付け替えとか、バージョンアップだと言いつつ有機部品改造とか、ビットだフォースだと言いつつ脱着可能な追加魔力炉の埋め込みとかしたがるので、普通の医療センターにこれて良かったのだけれど。

 

「時空管理局の方が運んできたこと以外はあたしはちょっと知らないですねぇ……。管理局のほうに意識が戻ったって連絡しておきますので、お見舞いに来た方に聞いてみてください」

 

「そうですね、そうします」

 

 そういくつかやりとりをして、看護士のお姉さんは点滴を変えて通信機で誰かと話しながら早足で部屋を去っていった。

 点滴、か。魔力炉が壊れていると言うことは生きるだけの熱量が作れないと言うことで、栄養第一味は二の次と評判の病人食を一日に何度も食べなければいけなくなるのか。

 これまで怪我をしたときは、栄養だけ摂取して食事はさほど取ってこなかったのだけれど……。

 

 ……あれ? なんだか私、今年に入ってから怪我してばかりの気がする。

 四月から六月の間に、第97管理外世界で二回倒れている。

 

 地上本部での激務でもそうそう怪我は無いというのに、ミッドチルダを出た途端にこれだ。うむー。

 

 

 計三回。しかも二度は奇襲にあい、二度は自爆での怪我だ。

 さすがに今回は残虐行為手当……じゃないや、労災降りないだろうなぁ。

 今回は任務外の襲撃というノーリターンでの怪我。やるせない

 

 弱いな、私。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目を覚ました翌日から、地上部隊の皆さんが次々とお見舞いにやってきてくれた。

 私の所属する航空魔導師隊の皆、地上本部の士官さん、宿舎でお世話になっているアイナさん、人伝で聞きつけたという魔法学校時代の同級生まで来てくれた。

 皆が皆お菓子を差し入れしてくれるあたり、私がどんな人物か完璧に把握されている。

 

 病院食はやっぱり美味しくなかった。

 というよりは、普段食事がほぼ必要ないので、浮いた食費で高い料理店や菓子店ばかり行っていたので舌が肥えすぎているのだ。

 

 早く治って欲しいのだが、魔力炉が治らないと有機機械で強化された治癒能力も発揮しきれない。

 魔力炉がないと、頑丈で力持ちなだけの普通の人間とたいして違いがないのだ。

 しばらく入院は続きそうだった。

 

 

 今日は、お見舞いにオーリス姉さんが来ていた。

 オーリス・ゲイズ。レジアスおじさんが男手一つで育てたという、良くできた娘さんだ。

 キャリア良し、器量良し、容姿良し、クールビューティで、お父さん譲りの時折見せるお茶目さも相まって、士官の男性陣だけに留まらず一般局員の女性陣にも密かな人気を誇る才女さんだ。

 レジアスおじさんに紹介されてからというもの、私的な場面でも何かと気にかけてくれて、今では頼れるお姉さんといった感じだ。今年で十三歳だったかな?

 

「カガリをここに収容したのは、ダライアスから医療技術を提供してもらうため。テストケースなんだ」

 

 オーリス姉さんが私がこの医療センターに収容された経緯を改めて説明してくれていた。

 

「ダライアスの医療は、純科学方面でのノウハウと生体技術が前から話に上がっていた。そちらから医療協力の提案があったので受け入れたんだ」

 

 うわあ、さすが自治区の皆は転んでもただでは起きない人たちだ。

 ダライアス本星に帰るまでは人口を無駄に増やすわけにもいかないので、使える人材はとことんまで使い切る。

 ちなみに本星は第一級ロストロギアがばら撒かれている危険性があるので、発掘にも管理局の同行がいる封鎖状態になってしまっている。

 

「それと、こちらが君が巻き込まれた事件の報告書だ」

 

「事件……ってうわ分厚い。ただの通り魔事件じゃなくてロストロギア関連とは聞いていましたけど、これは……」

 

 全時代的な紙束のファイルを手渡された。

 表紙には、『新暦六十五年度 闇の書事件報告書』と書かれている。

 

「……局外秘とか書いてあるんですけど、大丈夫なんですかこれ」

 

「大丈夫。私と君とお父さん以外の人間が触れると発火する仕組みを入れてある」

 

「あぶなっ! せめて文字が消えるとかにしましょうよ」

 

「ああ、読み終わったら発火して文字通り消えたほうが良かったか」

 

「何でそんなに発火が好きなんですか……」

 

「カガリが見せてくれたスパイドラマではそうなっていた」

 

「無表情で見ていたのにはまったんですかあれ。ああもう可愛いな」

 

 相変わらずどこかずれた姉さんに和みつつ、報告書に向き直る。

 闇の書……。ああ、魔法学校時代にロストロギアに関する授業で出てきた。

 

 記憶野検索が出来ないので純粋な記憶力頼みの知識になるは、確か数十年単位で不定期に発生する寄生型のロストロギアで、魔導師の魔力を無差別に吸った後に暴走破裂するんだったか。

 

 ちなみに時空管理局創立後の最初の大規模ロストロギア暴走事件は、新暦二年に起きたダライアス本星の人類滅亡事件だったりする。

 ちょうど初等部四年の学習範囲だったので、滅亡のときの人類最後の戦闘機と石のような物体の戦いの話をしたら皆喜んでいたっけ。

 

 授業では一つ一つのロストロギアについて詳しく触れなかったが、詳細は報告書に書いてあるだろう。

 

 

 事件は初め、魔導師の襲撃から始まる。

 世界を問わず発生したその襲撃は、民間の魔導師だけでなく各世界に駐屯し小人数で市街の巡回を行う地上部隊の局員も多く狙われた。

 非殺傷での魔法攻撃による襲撃。ただし、いずれもリンカーコアを抜かれている。

 なるほど、あの剣士がこの襲撃者か。

 

「リンカーコアは損傷してもすぐに治るんでしたっけ」

 

「ええ。二週間も意識不明の重体というのはカガリだけ」

 

 運が悪すぎたとかそういうのか。納得いかない。

 

 で、襲撃者の正体は第一級ロストロギア指定されている闇の書の守護プログラムだとか。

 闇の書は管理局が過去に何度も次元兵器アルカンシェルで吹き飛ばしてきたが、そのたびに転生を繰り返し、次の主を無作為に選び寄生してきた。

 

「……虚数空間にでも放り投げれば転生もできなかったんじゃないですかね」

 

「闇の書の主の支援者だったグレアム元提督は、永久凍結魔法で封印と考えていたようだな」

 

「時間を止めるとか言うロストロギア魔法ですか。時空間吹っ飛ばすアルカンシェルに耐えるロストロギアに効くんですかね」

 

「使われなかったからそれには誰も答えられないな」

 

 転生した闇の書は魔導書でありながら白紙であり、魔導師のリンカーコアを蒐集することでその魔術師の習得する魔法を魔導書内に新たに記述する。

 記述された魔法はどのような魔法系統であろうとも、主が闇の書を起動するとこでエミュレートが可能。

 

 魔法を予めデバイスに登録しておき使用者はそれを起動することで術式を完全に理解せずに魔法行使が可能であるという、ミッド式のストレージ概念。この闇の書の募集行使は、そのストレージの到達点の一つであるように思えた。

 

 他の魔導師のリンカーコアから回収した魔法術式を闇の書でエミュレート。魔法の技術体系を学ぶことなくあらゆる種類の魔法行使を可能とする。

 なるほど、先史時代は魔法研究用の器具だったと注釈があるのも頷ける。

 

 

 守護プログラムは魔法を蒐集し魔導書を完成させるために、襲撃を繰り返していたという。

 闇の書は長い年月を経るうちに無茶な改造をほどこされ、バグが発生。

 闇の書の主である八神はやて女史は、闇の書の影響で脚部の麻痺を患っており、さらに募集を拒否したために麻痺が進行していったという。

 

 宿主に害をもたらすのは寄生型ロストロギアではしばしばあることだが、本来主に絶対服従であるはずの守護プログラムまで暴走して勝手に魔導師狩りを始めてしまったらしい。

 報告書には主を助けたい忠誠心から来たものと思われるとか書いてあるが、嘘でしょう、これ。忠誠心とかいいつつここに一人重傷者を出すなんて、バグ以外の何物でもない。

 

 で、魔導師襲撃事件を闇の書によるものだと突き止めた次元航行部隊は、出没世界を絞り捜査を開始する。

 守護プログラムが多数発見された第97管理世界で任務に当たったのは、戦艦アースラクルー、守護プログラムに襲われ協力を申し出た現地魔導師高町なのは、保護観察中の嘱託魔導師フェイト・テスタロッサ。

 ……ジュエルシード回収と同じメンバーじゃねーですか。

 

「フェイトさん嘱託やっているんですねー」

 

「ああ、あの石のような物体の事件でカガリがぼろ負けしたとかいう犯罪者」

 

「友達です、友達。絆地獄です」

 

 で、海の人たちは最終的に闇の書の主の所在を突き止め、完成した闇の書を暴走させることなく回収したという。

 うわ、事件の解決にはヤマト・ハーヴェイ執務官補佐の功績によるところが大きいとか書いてある。うわ。

 

 ヤマトさんは蒐集した魔法や守護騎士、管制人格を初期化することなくデバイスとしての機能部分のみの初期化を行ったらしい。

 結果、内部にバグとして組み込まれたプログラムは全てクリアされ、膨大な魔法を溜め込んだ安定性の高いユニゾンデバイス夜天の魔導書が残った、と。

 

 バグ回収の決め手は、本局の大規模データベース無限書庫と、それを隅々まで検索しきったスクライア一族だとか。

 なるほど、無限書庫を使うのは海の士官であるヤマトさんだからできたことだろう。

 そして、ヤマトさんはスクライア一族とのコネが強い。

 

 三年前の初めてのダライアス、スクライア合同での発掘作業のこと。

 何故か私についてきていた当時の魔法学校中等部の同級生であったヤマト・ハーヴェイ当時十一歳は、発掘隊わずかにいたスクライア一族の女性を次々と魅了した。

 ちなみに多数いたダライアス一族の女性は、子供として可愛がられるまでで魅了はできなかったようだが。

 

 その当時から今日まで縁は切れていなかったようで、報告書には無限書庫の闇の書に関する古代ベルカの文献をスクライアの発掘部隊一つ丸ごと使って漁りきったと書いてある。

 ……人脈って大切だと痛感させられてしまう。

 

 で、暴走することなくバグによる麻痺から解放された八神はやては時空管理局に素直に投降し、逮捕された、と。

 

「……寄生型ロストロギアなら無罪じゃないんですか?」

 

「自我を保っていた守護プログラムが、現に重傷者を出しているから難しいな」

 

「私は罪の証ですか。ああ、今の響き何だか格好良いですね」

 

 そして以前から八神はやての生活支援をしており、なのはさんたちを襲ったりして闇の書の完成に介入していたギル・グレアム提督とその使い魔も逮捕。

 こちらは時空管理局設備へのクラッキングと捜査妨害で処理されて、既望辞職となったのだとか。

 

「うわー、レジアスおじさんも黒い黒いと海の人たちに言われてますけど、あちらも大概ですね」

 

「肥大化しすぎた組織なんてそんなものだ」

 

 ふん、と今更何をと言わんばかりにオーリス姉さんが鼻をならした。

 色々な意味で強い人だ。

 

「と、大体こんなところですか。これ海の資料っぽいですけどよく手に入りましたね」

 

「カガリが撃墜されてミッド地上は皆この事件に注目していたから。報道機関にもいくらか情報回るかも」

 

「あああ、確かにニュースで私の撃墜が報道されてたって局員さんたち言ってましたけど……」

 

「人気者だな」

 

 いやいやいや、私の立場はアイドルでも花のプリンセスでもラジカルナースでもなく魔導師なんですが。

 しかも、武装がなくてやられる一方でしたとか恥ずかしいことこの上ない。

 

「あと、その資料には書かれていないけど、八神はやては守護プログラムと管制人格プログラムとの家族関係の継続を希望、少なくとも裁判が終わるまでは闇の書の主を続けるみたい」

 

「Vasteel-Technologyは身を滅ぼす、なんていうことわざが私の部族にはあるんですけどねー」

 

「……前から何度か言っていたな。どういう意味?」

 

「宇宙から発掘された未知の技術を使って宇宙ステーション作ったら暴走して人類に牙を剥きましたー、という故事です。意味は、未知の技術を使おうと欲を出したら痛いしっぺ返しが来ますよ、みたいな感じで」

 

「君を使う地上本部のこと?」

 

「未知じゃないですし牙も剥きませんよ。まあ歩くロストロギアで、しかも上司に無断で大怪我入院してますが」

 

 今は歩けないけれど、と内心で一人ツッコミを入れながら報告書を閉じる。

 まあ、終わってみれば私は単に運が悪かったとしか言いようがないものだった。

 そんな私にオーリス姉さんは、ぼそりとつぶやいた。

 

「恨みはないの?」

 

「この報告書を見る限りでは少なくともこの闇の書の主に悪い感情は沸きませんね。寄生型ロストロギアで酷い目にあった宿主なんてこの二年間で何度も見てきましたよ」

 

 不死身の肉体を得るが、危険を快楽とする異常性を植え付ける強化服。

 宿主に永遠の命を与える代わりに、食人を強制させるシキガミ。

 宿主を洗脳して過去のやり直しを行わせようとする赤い石。

 ロストロギアが引き起こす悲劇を何度も見てきた。

 

「主としての管理責任とか言いましても、成人が十八歳の管理外世界の九歳児にそういうのを求めますのも、ね?」

 

「ごもっとも」

 

「まあ私を襲った剣士さんには、相手が魔導師か科学の申し子かくらい見分けなさい馬鹿とか言いたいですが」

 

「少なくとも私は見分けられない自信がある」

 

「素人とリンカーコアを集める業者さんを一緒にしちゃいけませんよ姉さん」

 

 言いながら報告書を返す。

 

「仕事の合間に抜け出してきたから、こんな報告書がお見舞いの品になってしまってごめんなさいね」

 

 オーリス姉さんは報告書を受け取ると、乱雑に鞄の中に放り込んだ。

 発火魔法がかかってる重要資料じゃなかったのか。眼鏡の奥の真意が見えない。

 

「お菓子なら局員の皆さんがたくさん届けてくれたので大丈夫です。ろくにニュースも見れないので、次来たときに土産話でもしてくれれば」

 

「ん、何か聞きたいことでもある? ニュースも見れないってことは、何か気になる事件でもあった?」

 

「ええ、襲われる直前に調べ始めたものがありまして……アインハンダーと言うんですけれど」

 

「ああ、あの中企戦の。解った、捜査資料適当に持ってくる」

 

「それはそれでどうかと思いますが……」

 

 私の弱気のツッコミは見事に無視されて、オーリス姉さんは鞄を持って立ち上がった。

 お仕事の合間に抜け出してきたというので、そんなに長くここに留まれないのだろう。

 

 

「ああ、それと」

 

 忘れてた、と扉へ向かう途中に姉さんが振り返った。

 

「明日カガリのお見舞いに来たいって言っている人がいる」

 

「局員の人なら勝手に来ていますが、オーリス姉さんを通すような人……誰かいました?」

 

「闇の書の主、八神はやて。それとカガリを襲った闇の書の守護プログラム」

 

 ……それはまたハードなお見舞いで。

 

 

 

――――――

あとがき:前のエピローグでA's時系列を書くといったが、すまんありゃあウソだった。

一期編のような原作再構成を読みにきた方には失礼ですが、A's後の時系列のオリジナル展開となります。

 

 

用語解説

■成人が十八歳の管理外世界の九歳児

記憶検索が不可能なため、おぼろげな記憶で97サブカルチャーからこの成人年齢を引き当てたのだと思われる。

 

 

SHOOTING TIPS

■不死身の肉体を得るが、危険を快楽とする異常性を植え付ける強化服

サイヴァリアシリーズは、敵機や敵弾にかすることでレベルアップし一定時間無敵になり、ローリングすることで当たり判定が極小になる特異なシステムを持つSTGです。

安全を得るためにローリングするには、常に動き続けていなければいけません。何度ローリングしようとして敵弾にぶつかってしまったことか。……あれ? 何かおかしくね?

 

■宿主に永遠を与える代わりに、食人を強制させるシキガミ

ケイブの純和風STGぐわんげより。式神に従わなければ命を吸われて死ぬ。従えば超常の力を得られる。そんなひたすら暗い背景の作品です。

妖怪一杯のホラーゲームとしても楽しめます。ラスボスとか。

 


 
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