在りし時

 

 未だ企業と企業が争っていた

 混沌の世

 

 空から訪れる

 異形の戦斗機は

 こう呼ばれ恐れられていた

 

 

 アインハンダー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――指揮衛星HYPERIONヨリ入電

 

 

 次ノ作戦を命ズ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

テスト投稿二次創作SS 魔動少女ラジカルかがり A.C.E.

第一話『撃って、奪って、ぶち壊せ!』

 

原作世界:魔法少女リリカルなのはアニメシリーズ

原作設定:日本製シューティングゲーム各種

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「管理局からの独立というのもありかなー、と思うわけですよ」

 

 

 時空管理局地上本部のお偉様方の私的な忘年会。

 

 地方世界出身の私が地上本部のミッドチルダ方面所属嘱託魔導師になって二年と半年。

 戦場への出動だけでなくダライアス一族としての代表として幹部陣へのパイプ造りを繰り返した結果、外の人間ながらもこの場に御呼ばれされたわけだ。

 

 この前は次元航行部隊、いわゆる海の人達の大事件の解決に関わってしまったため、こういった場での地上の人への挨拶回りと言い訳は欠かせない。

 

 次元航行部隊とその母体である時空管理局本局は、地上本部とすこぶる仲が悪い。

 第97管理外世界の任務完了から半年、地上本部へ戻らず一族の自治区でずっと魔動機械の修復・開発に時間を費やしてしまった分、地上本部の皆様方へのフォローは嘱託を続ける以上急務である。

 

 ミッド方面限定の幹部訪問とは言っても一つの世界というものは広大で、偉い人達は普段各地に散らばっている。

 忘年会などいう場で集まってくれて、そこに出席できるというのは幸運だった。

 しかも公的な場ではないので、弱点であるはずの幼さはむしろ武器として使える。

 

 

 そんな中で一通りお酌をして尻尾を振った後のこと、私は海を嫌っているヒゲのおじ様とお酒を交えながら海のあり方のいびつさなどについて語っていた。

 

 

「局は管理世界からの税金がかなりの額にのぼっているはずですけど、人もお金も技術も本局にとられてばかり。それなら逆転の発想として地上部隊を海から切り離して各世界専属の警察機関としてしまっても、一般市民には受け入れられると思うんですよねー」

 

 

 地上部隊というのは、各管理世界に駐屯し、時空犯罪や魔導師事件の解決を行う時空管理局の一大部門である。

 警察としての側面だけではなく魔導師という兵力を抱えた軍隊でもあり、魔法科学技術を使っての災害救助や異質生命体の排除なども行っている。通称は陸。

 

 ここミッドチルダ首都クラナガンにある地上本部はミッドチルダ方面の地上部隊支部であり、また全ての管理世界の地上部隊支部を束ねる統括本部でもある。

 

 

「そう簡単に言うがな……」

 

 

 米酒と一緒にタコワサビを食べながらヒゲの偉い人、レジアスおじさんが渋い顔をして言ってくる。

 クラナガン近辺の湾岸部ではこの軟体生物を食べる文化があるらしい。はははクレイジー。

 

 でもツナサシミとかいうものは食べてみたいです。

 

 

「まあ、出身こそ違いますけど、管理局に税金取られているミッド在住の一市民の意見として思ってください。税金払うお金は管理局から貰ってますけど」

 

 

 過去に滅びた我が一族の文明復興のために、私は魔動機械の復刻のお仕事もやっている。

 が、わずか人口八千五百人の弱小部族が九歳の若造に支給する資金などたいしたものではない。

 

 物価の高いクラナガンで快適に暮らせているのは管理局からのお給料のおかげであったりする。

 油断すると高級菓子店巡りなどで簡単に吹っ飛んでしまうけれど、そこはまあ、お金の使い方を覚える社会勉強ということで。

 

「独立など本局の連中が黙ってはいまい。君ならどう攻める?」

 

「魔導師は階級に拘らないーとか言いつつ、局の組織編制は海も陸も空もトップダウンの縦割り構造ですからねー。上から狙うか、いっそのこと企業体に資金提供を受けて地上部隊の独断で勝手に独立してしまうのもありです」

 

 勿論、理論なんてあったものではない酒の席の与太話だ。

 酔った勢いの戯言というよりは、話を繋げるジョークの一種だが。

 

 私の身体は任意にアルコールを分解できるので、酔った勢いの失言がない程度にほろ酔い状態になっている。

 耐毒性能の高い肉体なのにアルコールだけ任意分解とか、私のご先祖様は何を考えているのだろう。

 

 

「ふん、妄想の域を出んな」

 

「妄想ですからねぇ。ま、現実的なのは地上部隊単独でのイメージアップ戦略を図って、入局者全員、出身世界の地上部隊希望になるよう誘導するとかでしょうか」

 

 

 横目でちらりと、酒盛りを続ける幹部陣を見る。

 ミッドチルダ方面の担当者達だが、出身世界は皆ばらばらのはずだ。異次元に浮かぶ本局施設生まれも居ると聞いた。

 

「ここにいるおじさん達と違って、知らない世界の平和なんて本心じゃ大して真剣に考えてませんよ一般局員なんて」

 

 私がそうだ。私が地上部隊にいるのは、利害が一致したのとミッドの地上本部の人達のあり方が好きだからだ。

 別に命を懸けてミッドを守りたいとかいう正義感でやっているわけではない。

 

「イメージアップか。今なら話題のアインハンダーをこちらに引き込めれば簡単なんだがな」

 

「アインハンダー? アイドルか何かかですか?」

 

「ああ、まだ知らないか。君がいない間に中解同との戦いに介入してきた所属不明の介入者だ。報道でも騒がれたから見ておくといい」

 

 そういえば今年の四月から八ヶ月もの間、ろくにニュースも見ていない。

 アースラに居る間は何をしていたんだったか。

 あ、お菓子食べてお茶飲んで本読んで機体いじって遊んでいたのか。

 

 

「それより君が入局して記者どもに媚びを振りまけばいい。くくく、魔動少女だったか」

 

「あはは、そこは復興局(じむしょ)を通してもらいませんとー」

 

 

 入局云々は勿論冗談だろう。

 専属武装局員並みの仕事をしつつ局員ではないという今の立場は、人事の強権で私を海の人たちに連れ去られないための裏技だ。

 

 私は、第6管理世界と今住むクラナガン以外の平和には興味が無い。

 

 身内が一番というのは閉鎖部族なら持っていて当然の資質みたいなものだ。

 身内の次に大事な親友であるユーノくんは放浪民族だし、なのはさんたちはそもそも時空管理局でも原則干渉禁止の非魔法文明だ。

 

 海の人たちの恩恵なんてそうそう受けないだろう。

 

 そんなことをこのときは思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結局飲み会は、イメージアップ戦略について全員で生討論などという馬鹿馬鹿しい騒ぎが朝まで続いた。

 

 巫女服だの魔女服だの肩に猫を乗せるだのして着飾って空を飛べなど、親父臭いのか馬鹿なのか良く解らないネタを振られて困惑させられた。

 お酒の勢いというのは恐ろしい。

 

『住所不定無職の二人組の男達が』

 

 ところどころで時勢のネタについていけなかった私は、帰るなり映像配信のアーカイブニュースを流し、電子新聞の一面を順に読み流していた。

 

『悪質な国家反逆罪として』

 

 首都方面のニュースは、四月の頃以上に企業テロの記事が目立つ。

 中小企業解放戦線、通称「中解同」、「中企戦」を中心とした反ミッドチルダ企業群によるミッド中央商業主義に対する武力攻撃。

 大企業の横暴を粛正するという名分の元、大企業の役員・幹部の誘拐事件、市街地を含めた本社ビル爆撃事件など、内容は過激の一言である。

 さらに逮捕された工作員は過去が徹底的に隠蔽されており、追った先が既に倒産していたりダミー企業であったりと、中々その尻尾を掴ませない。

 

『拷問や虐殺など持ち歩いていたナイフで』

 

 大手企業側はそれに対し地上部隊へ武力強化を要求していたり、私設の護衛隊を編成したりしている。

 それよりも気になるのは、レジアスおじさんの言っていたあれだ。

 

 ……あった、これだ。

 

 

 

 

【或門新聞 ARCADIA】

 

 北部で大規模テロ

 

 「中企戦」巨大戦車を破壊する謎の戦闘機

 

 第三勢力の影

 

 

 

 

 中解同の魔法機械群と巨大格闘戦車を管理局の航空魔導師隊が到着する前に、たった一機で殲滅したという小型の戦闘機。

 翌日の新聞ではその写真も掲載されていた。

 

 装甲に包まれた後部へ飛び出す二つのアフターバーナー。左から突き出た巨大なアーム。

 そして、それらを装着したスーツに包まれた人影。そう、人だ。

 

 戦闘機と言ってもこれは小型の飛行機のことではない。これは、ダライアス一族で言うところの装着型装甲機械、機動小型戦闘機だ。

 

 かつてミッドの空を飛びまわった私に酷似したその機影に新聞は、「新たな魔動少女か!」などとあおり文を載せている。

 

 名前も解らぬこの戦闘機は、翌日以降の紙面でこう呼ばれていた。

 アインハンダーと。

 

 

 なるほど、レジアスおじさんがイメージアップの対象として引き合いに出すわけだ。

 颯爽と現れてテログループを一掃する英雄として報道では扱われている。

 

 地上本部的には無断飛行と危険魔法使用でしょっ引きたいけど、想定外の戦力にどう扱って良いか困ってしまうとかそういう感じだろうか。

 

 使われている技術じゃダライアスの技術が流用されているのか、それともこちらの魔法科学で同じ領域まで辿り着いたのか。

 管理局の技術部門にでも確認したいところだが、残念ながらこれからまた第6管理外世界に逆戻りだ。

 

 スクライア一族との合同でダライアス一族の過去にまつわる博覧会をミッドチルダで開くことになり、その手伝いで呼ばれている。

 バイド戦役の歴史資料と、バイドと戦った全てのR戦闘機のミニチュアを使った博覧会だ。

 私は機動小型戦闘機として復刻させた展示用機体の監修に一週間詰めなければならない。

 

 もちろんそれが終わったあとはまたミッドチルダへUターンだ。

 

 手続きが面倒なはずの監視指定共通人類種の所在地移動申請も、私に限ってすんなり進むようになってしまった。

 うーん、業務割り当てが極端すぎと喪失文明復興局に言っておいたほうが良いのかどうか。

 

『ニュースをお伝えしました』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 第6管理世界の辺境、交通機関も全く発達していない緑に満ちた草原を進む。

 移動手段は足首につけた魔動機械の重力制御による低空飛行だ。

 ミッドチルダのように飛行するのにもいちいち許可が必要ないため、自然を感じながら自由に飛ぶことができる。

 

 手荷物は片手に持てる小さな鞄だけ。

 自治区に戻れば先日まで過ごした宿舎に生活用品は全て揃っているので、手持ちの着替えは一回分。

 他はお菓子とかお土産とかお菓子とかが入っている。

 

「お前、魔導師だな?」

 

 と、急に呼び止められた。

 

「はい? 何でしょう」

 

 声の聞こえた方を向く。

 

 草原の真ん中に背の高い女性が背筋を伸ばして立っていた。

 

 紫色の服に白いコートを羽織り、桃色の髪を後ろに縛った若い女性。手には剣。

 え? 剣?

 

「お前に恨みは無いが……」

 

 言いつつ女性は剣を真横に構えた。

 途端に膨れ上がる魔力。……高位魔導師だ!

 

 反射的に足首の飛行機械をフルブースト。上空へと逃れる。

 閃光が走った。

 

 女性が先ほどまで私が浮遊していた場所を恐ろしい速さで一閃していた。

 魔力をまとった剣撃。間違いない、あの剣は魔法の攻撃用デバイスだ。

 襲撃者。なぜこんなところに、なぜ私を?

 反時空管理局主義者か、ダライアスの体を狙った密猟者か、魔導師に恨みを持つ無差別復讐者か。

 

 どちらにしろ、逃げなければ。

 飛行機械に魔力を流す。魔力は強大だが、飛行魔法は高度な技術を要する魔法だ。空を行けば逃げられる。

 手のひらに埋め込んであるチップを起動させる。

 訓練弾を射出する護身用チップだ。

 

 長高度跳躍で追いつかれないよう牽制として訓練弾を射出する。

 訓練弾といえど、機銃の扱いになれた私が使えば機関銃のように止まることの無い連続弾が撃てる。

 

 殺傷能力を持たない魔力の塊が女性へと殺到する。

 

「ふん、こんなものか」

 

 女性が軽く手を振ると、防盾魔法で全ての弾が弾かれてしまう。

 だが、これでいい。高度は稼げた。

 このまま自治区まで飛んで兵装を……。

 

「翔けよ、隼!」

 

 後方で魔力の収束。狙撃された!

 視界を援護するカメラアイは無い。直感で横へ避ける。

 轟音をあげ風を切り裂きながら真横を通り抜けていく魔法の矢。

 飛行機械に戦闘用魔力障壁などという守りは無く、強大な魔力が通過した衝撃で重力制御が乱れ墜落してしまう。

 

 剣状のデバイスから見て近代ベルカ式の近接型と思い込み油断した。

 相手は遠距離攻撃も可能な高位魔導師だ。こんな貧弱な武装でこの強大な魔力にどうすればいいというのか。

 

 地を走る音が聞こえる。相手はもう、すぐそばまで迫っている。

 急いで飛ばないと。重力制御を取り戻し宙に浮く。

 次は撃ち落されないよう背を向けずに飛んで逃げよう。

 

 だが、一度落とした獲物を逃がすほど相手は甘くは無かった。

 

 跳躍とともに足を切りつけられた。バランスが大きく崩れる。

 その一瞬の停滞で足首を掴まれ、宙から地面へと叩きつけられた。

 

「かはっ」

 

 背中を強く打ち、肺の中の空気を全て吐き出してしまう。

 息を吸おうとあごを上げ空を仰ぐと、靴の底で私の体を地面に押さえつけて見下ろしてくる女性の姿が見えた。

 つり目気味のその表情からは何の感情も読み取れない。

 

「リンカーコア、頂いていくぞ」

 

「そんな、もの、ありません……」

 

「ふん、空を飛んで魔法を飛ばして何を言うか」

 

 なんだ、一体何なんだ。リンカーコアを奪う?

 猟奇殺人鬼、なの?

 

 殺される。

 

 嫌だ、死にたくない。

 こんなところで死にたくない。

 部族へ何も残さない死など、本当の死ではない。

 そんなのは嫌、嫌、嫌、やめて!

 

「助け……」

 

「おとなしくしていろ」

 

 馬乗りになり、喉元を掴まれて叫ぶことすら止められる。

 

「すぐにすむ」

 

 空いた手を胸へと突き入れられる。

 抵抗も無く胸の中へ突き刺さった腕。

 

 身体の中から何かを引きずり出されるような感覚が――。

 痛い。

 痛い。

 痛い。

 痛い。

 痛い。

 痛い。

 痛い。

 痛い。

 痛い。

 痛い。

 痛い。

 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!

 

「む、なんだこれは。リンカーコアではない……?」

 

 ……胸が痛い。

 手足が痛い。

 喉が痛い。

 頭が割れるように痛い。

 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いいいいいいいいいああああああああああ!

 

 なんで! なんで! なんで!

 

 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。

 

 こんなの、助けて、誰か、誰か、誰か!

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――危機状況における操作者の正常意思喪失を確認。自動防衛チップ起動します。

 対近接緊急攻撃機能を選択します。操作者は魔力炉酷使の衝撃に備えてください。

 

点火(ボンバー)

 

 

 

――――――

あとがき:プロローグなので日常をだらだらと。書きたくなったので魔動少女続けてます。

本編はガチで戦えるなのはさん視点なので有耶無耶にされていますが、守護騎士は通り魔です。通り魔、絶対ダメ。

 

 

用語解説

■A.C.E.

Another Company Episode

-ATTACK CODE "EINHANDER"-

 

■住所不定無職の二人組の男達が

「兄貴と私」は超兄貴のゲーム中に使用された曲ではなく、サントラ用に新規に収録されたオリジナル曲です。

 

 

SHOOTING TIPS

■アインハンダー

スクウェアが唐突にリリースした横スクロールSTG。プレステ時代のスクウェアのポリゴン演出とファンキーな音楽が組み合わさった名演出STGです。

敵弾よりも雑魚機のカミカゼアタックのほうが怖いという懐かしいシステムのゲームでもあります。STGの王道で、突撃してきた敵機は自機とぶつかっても無傷ですが。

 

■こんな貧弱な武装でこの強大な魔力にどうすればいいというのか

パワーアップ制のSTGでのミス時によく陥る事態。

フルパワーで挑むよう設定されているボスに強化リセットされた最弱ショットでどう挑めというのか。

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
0
0

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択