そしてさらに白龍を走らせること三時間ほど、まだまだ追いつかれていないはずなのにその背から悪寒が拭えないまま、茜は一つの一つの小屋の大きさほどもあるダンボールハウスを見つけていた。その前には一人の無骨な、ただ相手を斬ることだけを目的としたような刀を腰に差した男が立っている。なんだか怪しすぎると思いながらも、白龍が疲れを見せていたので、休憩を取らせてもらおうとそちらへと足を向ける。驚きの声とともに。
「だ、ダンボール!?なんでこんなものを家に…というかなんでこんなものがここにあるの!?」
「それは…オレが雷電だからだ」
「それってスネークの方じゃ」
「気にするな、オレはへたれ雷電であってあの雷電とは違うからいいんだ。ところで、あんたが茜だな。あんたのことは江井たちから聞いている。オレはあんたを歓迎しよう。さ、馬はオレに任せて中に」
茜はへたれ雷電(自己紹介もしていないが覚えてしまった)の言うがままに馬を任せ、ダンボールハウスの中に入る。中は意外とこざっぱりと…失礼。物がほとんどなかった。あるのはカ○リーメイトや即席ラーメンとダンボールのテーブルがあるだけだった。
「何この部屋。布団すらないなんて…」
茜は急激に不安になる、どう休めというのだろう。というか白龍になにを食べさせるつもりなんだろう、あの男は。
そう思っていると、いきなり肩を叩かれ、飛び上がった。
「だ、だだだ、誰ですか!?」
「驚かしてしまったか。君の馬にはきちんと水と食料をやっておいた。君もなにか食べるといい。この携帯食料なんかはおすすめだ」
「…お断りします。私意からもらった弁当がありますので」
茜は私意に心から感謝した。流石に携帯食料は勘弁願いたい。そして茜が弁当を食べるのを眺めながらへたれ雷電が口を開いた。
「オレから言えることも一つだ。君は選択するしかない。三王から一人を選ぶか、やつらに…禁則事項なことをされるかだ」
へたれ雷電は真剣な顔で茜に皆が言ってきたことを反復する。それをきいて茜は、悟ったような、諦めたような顔でうな垂れる。
「結局はそれですか…」
「ああ。だが、考える時間は稼いでやる。同じ別の外史からきた誼だ、できる限りの支援はしよう」
「そういえば、へたれ雷電には江井たちみたいな驚き設定はないんですか?」
「ない。前回の犬の騒動にオレは参加しなかったからな。気づけば終わっていたというやつだ」
「…そうですか」
微妙な空気が流れるが、へたれ雷電はその空気をすぐに破った。
「君は自由だ。それもリバティではなく、フリーダムの意味の。君のこれからは全て君が選択しなければならない。そのために今も護衛をはじめとした外史からの来訪者が君のために動いている。だからこそ、君は悔いのない、自身の中での正解を選んでいかなければならない」
「…その発言ってやっぱりあっちの雷電…」
「違うと言っているだろう。…そろそろ旅立った方がいいな。君が旅立ってから半日強、流石の護衛も破られるころだ」
へたれ雷電はそういうと、茜に大量のカ○リーメイトを持たせ、外へと急がせる。そして、白龍を連れてくると急いで跨らせる。なんだか白龍がやけに元気な気もするが。本当に何を食べさせたのだろう。
「これをもっていくといい。これは世界最高の偽装だ。どんな優秀な兵士でさえもたちまち無能に変えてしまうほどの。たとえあの四人が相手でも、一度や二度では絶対に見破れない。ただ大切に、愛情を持って接するんだ。そうすればこれはきっと君に応えてくれる」
そういって持たせてくれたのはダンボールだった。茜はなんとなく重要なものの気がしてそれを受け取った。
「護衛ほど長くは無理かもしれないが、オレは戦うことしかできない男だ。必ず、少しでも長く奴らを足止めしてみせよう。君の未来が最善であることを…行け!」
「えと、ありがとうございました!自分にとっての最善、精一杯考えます!」
そう礼を言うと、茜は白龍にのって駆け去って行った。それを見送ると、へたれ雷電はおもむろに通信機を取りだした。
「…サラダか。対象がそちらへと向かった。アフターケアを…なに、ああ、任せろ。時間は稼ぐ。そちらもよろしく頼む」
そして少しサラダという人物を話すと、奴らが来るだろう方向を見て仁王立ちを始めた。
その頃
「よもや、この大導師たる余をここまで足止めするとはさすがはデウスマキナといったところか」
「左慈ちゃん、それ、作品とキャラが違うわよん」
「そうですよ、左慈」
「それよりも早く先を急ぐのだ」
奴らがとうとう動きだそうとしていた。
暴走度は軽め?
次はサラダさん、よろしくお願いします!
Tweet |
|
|
12
|
3
|
追加するフォルダを選択
リレー六話目。
無難に終わらせてしまった・・・