No.187359

真恋姫無双 おせっかいが行く 第十蜂話の裏鴨

びっくりさん

今回は拠点話。
時系列的には十蜂話の少し後くらい。

申し訳ない・・・俺、糖分を補給しちゃったんだ。

2010-12-01 00:38:23 投稿 / 全13ページ    総閲覧数:19022   閲覧ユーザー数:13803

 

 

 

どうしてこうなった・・・

 

 

「一刀・・・むにゃぅ」

「・・・・一刀様ぁ」

 

 

どうしてこうなったんだ?

 

 

「ちょっと~・・・ちぃのとらないでよう・・・むにゃ」

「姉さん・・・もっと考えてよ・・・・すぅ」

 

 

なんで・・・なんで!!

 

 

「おとうさん・・・むにゃ」

「あらあら、璃々ったら、ちゃんと布団をかけないと風邪引いちゃうわよ」

 

 

あの・・・紫苑さん?起きてるなら助けて下さいな?

 

 

「あら?何を助ければいいんですか?」

 

 

いえ、この状況なんですけど。

 

 

「世の男性方が羨むその状況から助けてなんて、一刀様は変わっていらっしゃりますね」

 

 

いや、確かにそうでしょうが・・・どうせならみんな起きてるときがいいと思うのは贅沢でしょうか?

 

 

「まぁ、贅沢ですね」

 

 

ですよね~?さて、そろそろ種明かしというかネタ晴らしをしましょうか。

先日の天和との一件から後、何故かみんながみんな俺と一緒に寝ると言い出し、その日からみんなで一緒に寝ることになりました。ご丁寧に俺の隣は誰かということを決めてから・・・。参加者は天和、地和ちゃん、人和ちゃんの三姉妹、璃々ちゃん、紫苑の親子、そして仙花だ。で、本日の勝者が・・・。

 

「んふふ~、一刀~♪・・・むにゃにゃにゃ」

「一刀様ぁん♪・・・・くぅ・・・くぅ」

 

天和と仙花だったりする。

 

「あらあら、二人とも幸せそうな顔しちゃって♪」

「楽しそうだね。紫苑」

「はい♪とっても楽しいです♪」

「変わってもらえません?」

「嫌です。私だって一刀様の隣に行きたいんですからね?」

 

ジーザス。唯一の味方だと思っていた方が実は一番の敵だったとは!?

 

 

これは、そんな男の夢を体現したおせっかいの物語である。

 

 

 

 

 

 

 

「おはよう、一刀」

「おはよう、天和」

 

あの一件以来、さん付けで読んでいた名前を呼び捨てにした一刀。天和も周りから見てもわかるくらいに一刀に甘えるようになった。一刀にとってはちょっと視線が痛いときもあるのだが。逆に天和には羨望の眼差しが向けられていたりする。

 

「よし、久しぶりに天和達には畑仕事を手伝ってもらおうかな」

「うん。任せて~」

「きっちりやってあげるわよ」

「私は初めてかも・・・」

「あっ、そっか。人和ちゃんには家事を頼んでたもんね」

「でも、畑仕事ならやったことあるから大丈夫のはずよ」

「そっか。じゃ、安心して任せられるよ」

 

ここにいるメンバーは一刀と張三姉妹だけである。街の復興も順調な為、今まではほぼつきっきりで行っていた作業も、しばらくは見ないでもいいくらいにまでなっているのだった。

 

「よし!出発・・・の前に。おいで」

「「「「「クワゥ!!」」」」」

 

畑に向かおうとした一刀だったが、その前にと別の小屋の扉を開けると。

久しぶりに登場のアイガモ達が飛び出してきた。

 

「や~ん♪可愛い」

「わ、わわわ、よちよちって歩くとこがなおいいわ!」

「おいでおいで」

 

アイガモ達の可愛い姿に三姉妹も一瞬で虜になってしまったようである。

 

「まてまてぇ」

「あ、危ないわよ。ほら、こっちを歩きなさい」

 

畑に向かう途中でよちよち歩くアイガモ隊を嬉々として追う地和、そんなアイガモ隊の歩き方を不安気に見つめて、怪我しないように気をもむのは人和だった。そんな対照的な姿の二人に後ろを歩く一刀と天和は微笑んでいる。

 

「すっかり気に入ったようだね」

「だって、可愛いもん♪」

「気持ちはわかるな~。俺もあの子達が生まれたときはすっごく感動したもん」

「あっ、それって一刀が親ってことになるんだ?」

「そうだね。アイガモ達が初めて見たのは俺だし。俺が親ってことになるんだろうね」

 

談笑しながら、先行する妹を追う二人の腕は自然と組まれていて、外から見たら恋人同士にしか見えない。天和の頭が一刀の肩に乗せられて、一組のカップルの完成である。

 

「何やってるのよ!!」

「地和姉さん。声が大きい・・・」

 

そんな二人を見て黙っていないのが、地和である。ゆっくりと歩く二人に早く来い!と言おうと振り向いたら、仲睦まじく腕を組んでいる二人に気付いた為だ。

そんな地和の様子にも動じないのが天和である。

 

「え~、腕組んでるだけだよ~。別にいいじゃな~い」

「よくない!そんな羨ま・・・恥ずかしいでしょ!!ここは他の人も見てるのよ!!」

「別に恥ずかしいことじゃないもん。あっ、もしかして地和ちゃん、ヤキモチ?」

「そ、そそそそんなわけないでしょ!!もう知らない!!」

「地和姉さん・・・説得力なさ過ぎ」

 

最後の人和のツッコミが哀愁を誘う。肩を怒らせ、一人で先に行ってしまう地和。

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「クワックワックワワワ」」」」」

 

「やっぱり、あの子達は可愛いね~」

「姉さん。それはいいけど。ちゃんと仕事やってよ?」

「わかってるよ~」

「いつも同じこと言ってやらないじゃない。もう!姉さんったら・・・」

 

アイガモ達は田んぼに入り、その愛くるしい姿を隣で見ながら畑で作業する天和と人和。一方、まだ機嫌が治らない地和は少し離れた場所で作業をしていた。

 

「まだ、機嫌治してくれないの?」

「私は機嫌悪くないわよ!!」

「そんな声を荒げなくても・・・」

「荒げてない!!」

 

そんな不機嫌な地和に話しかけるのは一刀だ。だが、地和は声を荒げながら返答しかしない為、困り果てる。なんとか、機嫌を治してもらいたい一刀はその後も話しかけるが、機嫌が良くなることなくブツブツいいながら作業を続ける地和であった。

 

「よ~し。そろそろ休憩にしよっか」

「「賛成!!」」

「・・・・」

 

一刀の発言に賛成を表明したのは長女と三女であり、いまだに機嫌が治らない次女は無言を貫いていた。だが、休憩は賛成らしく姉妹と一緒に手を休めている。

 

「ほれ。蜂蜜水だよ」

「ありがと~。ングッングッ・・・プハッ!!久しぶりに飲んだけど。甘くておいしい~」

「うん。なんか、帰ってきたって感じがする」

「あはは。それは嬉しいな。ほら、地和ちゃんも」

「ん・・・」

 

一刀から蜂蜜水を受け取ると各々思い思いに腰を下ろす。一刀の隣には天和と人和が。またも、くっついている姉、今回は妹も追加されて地和の機嫌はさらに急降下する。それを悟ったわけでは決してなく、さきほどから機嫌の悪い地和になんとか機嫌良くなってもらいたい一心で、一刀は少々強引な方法を取ったのであった。

 

ポスン!

 

「なっ!?」

「あ~、地和ちゃん、いいな~」

「一刀さんも強引な気がするけどね」

 

そう、一人だけ立ち続けていた地和の腕を引き寄せ、胡坐をかいている自分の足の上に座らせたのである。そして、逃げ出されないように両腕を前に回し、ガッチリとホールドした。

 

「こら~!!離せ~!!」

「こら!暴れるなって・・・」

「うるさい!こんな状態、誰だって暴れるわ!!」

「え~!!私は暴れないよ~。むしろ、居座る」

「姉は黙ってなさい!」

 

闇雲に腕を振り回し、ホールドから抜け出すと一刀から距離を取る地和。それでも、蜂蜜水を零さすにいるのは何気にすごかったり。完全にお冠の地和は頬を膨らませて一刀を睨みつける。何気に顔は真っ赤に染まっているが、照れなのか怒りなのか判断がつかない。そこに一人の小さな乱入者が現れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ~!おとうさんだ~!おねえちゃんたちもいる~」

 

紫苑の娘で、復興作業資材調達係達の癒し系アイドルになった璃々だ。彼女は一刀に駆け寄ると、ごく自然に胡坐をかいている一刀の上に座り込んだ。そのあまりの違和感のなさに驚愕する地和だったり。

 

「なにやってるの~?」

「畑仕事をして疲れたから休憩してるんだよ。璃々ちゃんも蜂蜜水飲む?」

「いいの?わ~い、飲みたい!!」

「はい、どうぞ」

 

一刀は自分の分の蜂蜜水を璃々に差し出す。それを両手で受け取りゴクゴクと飲み始める璃々。

 

「おいしい?」

「うん!!」

「そっか~。これは蜂さんが一生懸命集めてくれたものだからね。後でお礼を言おうね?」

「うん!いっぱいありがとうする~」

「いい子だ」

 

一刀が頭を撫でると、璃々は嬉しそうに享受するのであった。それを左右から微笑ましそうに見る天和と人和。自然にこんな言葉が出てくる。

 

「本当、二人って親子だよね~」

「そう?」

「うん。仲の良い親子にしか見えないわ」

「ほんとう?おねえちゃん?」

「本当よ」

「わ~い。おとうさんとおやこ♪おやこ♪」

 

璃々の質問に笑顔で返し頭を撫でる人和。その言葉が嬉しかったのか璃々はおやこという言葉は歌のように繰り返すのであった。

 

「ねぇ。一刀。私にも抱かせて~」

「璃々ちゃん。いい?」

「うん!」

「じゃ、ほい。天和」

「うん。わ~、可愛い♪私も子供が出来たらこんな風にしてあげたいな~」

 

一刀から璃々を受け取ると両手で抱え込むように抱きしめ、頬ずりを始めた。

 

「おねえちゃん、くすぐったいよ~」

「や~ん♪かわいい~♪」

「そういえば、璃々ちゃんはどうしてここにいたの?」

「あのね~、おかあさんとおかいものにきたんだけど~」

 

頬ずりしている天和を気に留めず、璃々はここにいた経緯を話してくれた。話によると、紫苑と買い物にきていたのだが、店員との値段交渉に熱くなっているらしい。あまりにも長いので近くにあった畑にきてみれば一刀達がいたという訳である。

 

「そっか~、でも今度からは気をつけてね。いきなり璃々ちゃんがいなくなったって気付いたらお母さんが心配するからね」

「うん・・・わかった」

「よし。いい子だ」

「えへへ」

 

何も言わずにここにきた璃々に注意をする一刀だが、退屈と感じる気持ちもわかるので軽く注意するだけに留める。それでも、璃々は反省したようなので、頭を撫でて褒めるのであった。そんなところに紫苑がやってきた。

 

「ああ、璃々・・・ここにいたのね。よかった・・・」

「おかあさん。かってにいなくなってごめんなさい」

「お母さんもごめんなさいね。もっと注意してれば・・・でも、一刀様達がいてくれて安心しました。ありがとうございます」

「いや、こっちも楽しかったから気にしないで。ね?天和」

「うん♪璃々ちゃん、可愛いかったもん」

「ええ、私達は迷惑とは思ってませんよ」

 

紫苑の感謝の言葉に笑顔で返す天和達。まだ買い物の途中らしく、頭を下げると璃々を連れて街へと入っていく紫苑。紫苑達を見送った一刀達は再び腰を下ろす。ただ、さきほどと違うことが一つだけあった。

 

「地和ちゃん?」

「何よ?」

「いや、なんで座ってるのかなって・・・」

「何よ?悪いの?さっきは無理やり座らせたくせに!!」

「(さっきは嫌がってたジャン!!)」

 

そう、一刀の上に地和が座っているのだ!内心、恥ずかしげもなく一刀とくっつける姉妹が羨ましかった地和。しかし、さきほどの璃々の行動で我慢できなくなった彼女は素直に一刀に座ったのである。反論したかったが、ここは黙っていることにした一刀。何せ、さきほどまで不機嫌だった地和がやっと笑顔を見せているのだ。下手なこといって再び笑顔がなくなるのはごめんである。

 

「いいな~。地和ちゃんいいな~」

「やれやれ・・・地和姉さんはとことん素直じゃない」

「うっさいわよ。人和」

「あはは。仲良くね?」

 

しばらく雑談をした後、再び畑仕事に戻るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱ人数が多いと早く終わるね」

「そうですね。この後は書簡仕事があるんでしたっけ?」

「うん。この街だけだっていうのに、結構書簡があるんだもんな」

「仕方ないですよ。まだ、この街は復興中なんです。もう少ししたら落ち着くと思うので、それまでの辛抱ですって」

「だよね。それに、疎かにしたらみんなが困るからね。頑張らなきゃ」

 

畑仕事を終えた後、人和を連れて向かうのは街の一角にある建物。そこは、一刀が県令になって以来、県令の仕事を行う場所にしているところであった。だが、それももう暫くのこと。現在、新しい建物が建設中でそれが完成したら、そちらに移る予定なのである。話を戻して、その政務を行う場所にどうして人和も連れているのかというと、人和にも手伝ってもらっているからだったりする。天和と地和はこの後、街で買い物するといって畑で別れていた。

姉妹だけで旅をしている間、金銭、舞台、予定など管理の全てを行っていた彼女の文官能力はこの街でもトップクラスであった為手伝ってもらっているのだ。というのも、一刀はこの街の県令となった為、街の問題や要望、管理などの仕事を行わなければならなくなった。が、量が多くとても一人では対応できない。仙花や符儒にも手伝ってもらっているが、三人では足りない。そこで、劉表のところでも書類仕事をしていた紫苑と人和に白羽の矢が立ったのである。お世話になっているからということで彼女達はその申し出に快く了承してくれた。ちなみに天和と地和はそういうのは苦手とは人和談。

 

「あっ、一刀様。人和さん」

「仙花?先にきてたんだね」

「こんにちは。仙花さん」

 

部屋に入るとそこにはすでに仙花の姿があった。書類に取り掛かっている姿を見るとついさっき来たばかりではないようである。一刀と人和はすぐに仕事に取り掛かる為、書簡を手に取ると席に座った。仙花の向かい側に一刀、一刀の隣に人和という形である。

 

「紫苑は今日は休みだったよね?」

「ええ」

「符儒はどうしたんだ?」

「ああ、彼なら前にあった問題について実際に見てみないとわからないということで、現地に視察に行ってますよ。何か『これは蹴のいるところに近いじゃないですか!』とニヤニヤしてましたが」

「そ、そっか。ありがとう」

 

書類といっても何も机の上で全て決めるだけではない。実際に見てみないと判断できないことや、それが本当に妥当なのかわからないことがある。そういう問題については現地を視察してみて判断しなければならない。今、この街には無駄に出来るお金は存在しない。材料は村の近くの森から調達、労働力は以前の戦で捉えた者達、食糧は自分達の畑からと移住を考えている村人からの協力、それと戦の食料庫から隠蔽した物と出来るだけ資金を削減しているのだ。そんな状況だから、要求される金額、資源の量などは出来るだけ正確に判断しなければならない。というわけで、現地視察は欠かせないことであり、書類仕事の半分近くの割合を占めていた。

ちなみに話題に上がった蹴は、復興作業の中心として現場監督をしている。

 

 

 

 

 

「一刀様、ここの採算なんですが・・・」

「どれどれ?・・・うん。妥当だと思うよ」

「わかりました。では、このように」

「よろしく。それと、こっちも質問。ここの区画なんだけど・・・」

「そうですね。では、もう少し大きく取りましょうか」

「了解」

「一刀さん、ここの予算が・・・」

 

と、それぞれが勝手に判断するのではなく。自分で判断出来るものは自分でやるが、少しでも疑問に思うことがあった場合、他の人に相談するように書類を片付けていく。そうして、三人はしばらく書類仕事に没頭するのであった。

 

「今日の分終了~っと」

「「お疲れ様です」」

「二人もお疲れ様。さぁ、帰って夕飯にしよう」

「「はい!!」」

 

本日の分の書類を終わらせると、外は薄暗くなっていた。一刀達三人は書類を片付けると、揃って部屋を出る。家への帰り道、人和はさりげなく一刀の腕に自分の腕を絡めた。

 

「ん?人和?」

「朝は天和姉さんがやっていましたから」

「ああ、そうだったね」

 

人和の言葉に、朝のことを思い出し笑みを浮かべる。別に嫌ではないし、断るのも変だと思い一刀は何も言わなかった。だが、朝のことを知らない仙花は、突然の人和の行動に嫉妬した。

 

「なんですか?朝のことって!!」

「ああ、仙花は知らなかったね。実は天和がね・・・」

 

突然怒ったように声を張り上げた仙花に、朝のことを知らなかったことを思い出し説明する一刀。そんなことを聞いてしまっては仙花の取る行動は・・・。

 

「ずるいです!」

 

となるわけで、家へ帰るまで一刀は両手に花状態で左右から腕を組まれ帰ることになったのであった。

 

 

 

 

 

 

「「「ただいま~」」」

 

家に到着すると、まず最初に出迎えてくれるのは・・・。

 

「おかえり~、おねえちゃん、おとうさん!とう!!」

「おっと。ただいま、璃々ちゃん」

「「ただいま、璃々ちゃん」」

 

璃々である。一刀達が帰ってきたとわかるとすぐに駆け寄ってきてくれるのである。相手が一刀の場合だとそれにプラスして飛び込んでくるので、一刀はいつも抱きとめていた。そして、女性人はその抱きとめられた璃々の頭を撫でるのである。

 

「ごはんできてるよ~。はやくはやく~」

「はいはい。今いくよ」

 

おろした途端に今度は腕を引かれる一刀。もう、気分は本当にお父さんである。後ろにいる仙花と人和も苦笑して後についてきた。途中で今度は天和と地和が出迎えてくれた。

 

「一刀、仙花さん、人和。おかえり」

「「「ただいま、地和ちゃん(姉さん、さん)」」」

「おかえり~。仙花さん、人和ちゃん、一刀~。そして、私も~とう♪」

「ててて天和!?」

「「あ~!!」」

「姉さん・・・」

「いいな~。てんほーおねえちゃん、いいな~」

 

普通に出迎えてくれた地和とは違い、天和は璃々のように一刀に飛び込んだのである。天和の行動に驚くもしっかりと抱きとめる一刀。天和の行動に大声を上げる仙花と地和、人和は姉の行動に呆れてため息を吐く。璃々は純粋に羨ましがっていたが。

 

「あらあら、夕飯が冷めてしまいますよ?」

「あ、ごめんなさい。紫苑さん」

「今いきま~す」

 

なかなか来ない皆を不思議に思って現れた紫苑。本日は非番だった彼女が夕飯を作ったようだ。紫苑に言われて天和、地和、人和、仙花の順に夕飯の準備されている囲炉裏へと向かうのであった。

 

「ごめん、紫苑。すぐ行くよ」

「一刀様・・・私は抱きしめていただけないのですか?」

「し、紫苑!?」

「うふふ、冗談ですよ♪」

 

一刀もすぐに行くと言う前に紫苑にからかわれてしまう。実は紫苑は結構、お茶目なところがあり、よくからかわれているのである。蹴と符儒にはからかわないのだが、一刀と仙花はよくからかわれていた。まぁ、二人がからかいやすいというのも理由だろうが。

 

「さあ、璃々。ご飯よ~」

「うん!りりおなかへったよ~」

「はいはい。じゃ、いきましょう」

「お~!」

 

固まってしまった一刀を他所に、紫苑は璃々の手を引いて囲炉裏へと向かうのであった。ただ、一言。

 

「もう・・・我慢できなくなってしまいそうです」

 

と零したのは誰にも聞こえなかった。

娘と自分の危機から助けられた、行く宛てはあれど、璃々を連れての長旅は出来ないことで家のない私達を引き取ってくれた。そして、村での生活。あまりにも幸せで、紫苑はいつの間にか本気で一刀に惚れてしまっていた。そんな意中の相手との生活でいつしか一刀に対する思いが大きくなり溢れそうになっていた。今までは年長者としての義務であるように一歩引いた立場で接していたが、それが抑えられなくなってきているのを自覚していた。さきほども、冗談と言ったが本音もあったのだ。そうとは知らず、紫苑の言葉に固まったままの一刀であった。

その後、なかなか来ない一刀を璃々が呼びにきて正気に戻ると何事もなかったように夕飯を食べた。

 

 

 

 

 

 

 

「では!」

「今日も決めましょう!」

「負けないんだから!」

「私も~」

「今日こそ私が!」

「りりがかつの~!」

「あらあら」

 

夕飯も、お風呂も済まし就寝の時。これまた、今日も一刀の隣をかけての勝負が始まった。勝負方法はシンプルにジャンケンである。

 

「「「「「「「最初はグー!ジャンケン・・・ポン!!」」」」」」」

 

果たして結果は?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天和、地和、人和の気持ち

 

「姉さん」

「何~?地和ちゃん」

「姉さんは一刀のことどう思ってるの?」

「大好きだよ~♪地和ちゃんもでしょ?」

「・・・うん」

「やっぱりね。私達、二回も助けてもらっちゃったもんね」

「そうだね。それがきっかけなのは確かね。人和もそうでしょ?」

「・・・私はまだ好きかも答えてないんだけど?」

「好きでしょ。人和ちゃんも」

「ご想像にお任せ」

「否定しないってことはそうでしょ。で、話を戻すけど。確かに助けてもらったことはきっかけよ。でも、あくまできっかけ」

「そうね。後は一緒に生活をしていつの間にか大きくなっていた」

「うん。私達を気にかけてくれて。受け止めてくれる」

「倒れる人・・・」

 

 

「「「だから、好き・・・」」」

 

 

「これだけは姉さんにも、人和にも譲れないわ」

「それはこっちの台詞よ」

「お姉ちゃんも負けないんだから」

「待ったなしだからね」

「「もちろん」」

 

 

「でも、三人とも貰ってもらうのもありかな~♪」

「「!?」」

 

 

 

 

 

 

 

紫苑と璃々の気持ち

 

「おとうさ~ん・・・むにゃ」

「あらあら。前は私だけだったのにね」

「だ~いしゅき~・・・」

「ふふ。まだ一緒に過ごしてちょっとしか経ってないのに、もう璃々の中で大きな存在になっていたのね」

 

「でも、そんなこといってる私の中でも・・・」

 

「今の生活があるのは、一刀様のおかげ・・・。こうして、璃々と一緒にいられるのも全部」

 

「おとうさん・・・・ずっといっしょ~」

「璃々・・・そうね。ずっと一緒ね」

 

「ふふ、こんなにも私達を虜にしてしまった罪な人。覚悟して下さいね」

 

「璃々の本当の意味で父に、私の夫に、なってもらいます」

 

「おとうさんは~・・・・りりの~・・・もの~」

 

「あらあら・・・もしかしたら、私の息子になっちゃうのかしら?」

 

 

 

 

 

 

 

 

仙花の気持ち

 

「一刀様・・・」

 

『自分の生きたい生き方を探してみたらどうかな?』

 

『俺も一緒に探すよ。それが俺の誓った生き方だしね』

 

「私の生きたい・・・生き方」

 

「それは・・・・」

 

「あなたと共に歩むことです」

 

「あの一緒に暮らし始めた頃から。ずっとあなたを見ていました」

 

「料理をしているとき、お風呂を沸かしているとき、お風呂に入っているとき、寝ているとき、私に気を使ってくれているとき、激怒したとき、心配そうに見ているとき、畑仕事をしているとき、おせっかいなとき・・・いろんなあなたを見てきました」

 

「日に日に、私の中であなたの存在が大きくなっていくのを感じました」

 

「当初はそんなこともわからないほど、精神が疲弊していましたけど」

 

「それも、蹴と符儒と出会った時まで」

 

「あのときから今の私が生まれたのかもしれません」

 

「全ては一刀様、あなたのおかげ・・・そんなあなただから、私は共に歩んで生きたい」

 

「嫌と言っても離れません!」

 

「それが・・・私が精一杯生きると決めた道です!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

本日の一刀の隣争奪戦も終了し、皆が皆就寝したのだが、一人だけ寝るに寝れない者がいた。そう、その争奪戦の景品(笑)だった一刀その人である。

 

「・・・温かい吐息が!!」

 

彼は今、己の欲望と戦っている最中である。何故なら、本日の隣が隣であるからだ。

 

「んふふ~・・・一刀~♪むにゃ・・・」

「ああ・・・一刀様ぁ♪」

 

現時点で一刀の周りでもっともグラマラスなボディを誇る二人が隣に寝ているからだ。左右から一刀の腕に自分の体を絡ませ寝ている為、密着し、密着状態である為、彼女達の寝息が一刀にかかり、嫌でも意識してしまう。彼女達の柔らかさ、暖かさ、そして無防備さを。そして、目を開けば美貌も飛び込んでくる。一刀の内では理性と欲望の激しい戦いが繰り広げられていた。

 

「うぅ・・・ここは地獄か?」

 

これが天和だけならまだ耐えられたのだが、紫苑は駄目だった。一刀は紫苑以外のメンバーが隣で寝ていても耐えられる自信はある。しかし、紫苑だけは自信を持つことが出来ない。何故なら・・・。彼女を女性としてみてしまうからだ。

例えば、地和。彼女は見た目は幼く、性格も少し子供っぽいところがある。そんなわけで一刀としては彼女は素直になれない妹として見れる。人和もしっかりものの妹と見ていた。仙花と天和は守るべき存在である。仙花とは生き方を一緒に見つけるという役割があり、天和とは彼女の悩みを受け止める存在であろうとしている。少し強引に解釈すれば、家族として見れるわけである。

だが、紫苑は・・・紫苑だけは違う。紫苑は大人の女性なのだ。彼女も人間だ。悩みとかもあるだろう、しかし、彼女は璃々という愛娘がおり、娘の為に強くあろうとしている。本人の持つ器量と覚悟が合わさり、彼女は心配する必要があまりないのだ。それでも、家族として見れないのか?というと、見れないのだ。正確には見ることが出来るが、意味がないのである。その理由が娘の璃々だ。彼女は一刀のことをお父さんと呼んでいる。その為、紫苑を家族として見た場合、どうしても妻として意識してしまうのだ。こうなると、欲望を抑える所か促進してしまうだろう。よって、気合いで耐えるしかなかったのである。

 

「うあああ・・・吐息をかけないで。色っぽい、柔らかい・・・ああ!!」

 

この日、一刀は一睡も出来なかった。

 

 

 

 

 

 

前回のアンケートに答えていただきありがとうございます。

アンケート結果は今作を読んでもらえればわかる通り、拠点話でした。

 

全体的にほのぼのってところですかね。

 

次回は、本編を進める予定です。


 
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