No.190641

真恋姫無双 おせっかいが行く 第十九話

びっくりさん

お久しぶりです。体調崩してしまったせいで、投稿が遅れてしまいました。

最近、ペロペロキャンディーが売っていたので思わず購入。
これで風に近づけたか?

2010-12-20 02:18:45 投稿 / 全11ページ    総閲覧数:18290   閲覧ユーザー数:13233

 

 

 

「え?引越し?」

 

それは、復興も終え、徐々に落ち着きを見せる街。そんな最中、朝餉を食べていた一刀達に仙花から告げられた言葉だった。

 

「はい。近いうちのあの街へと引越しをしましょう」

「私達も~?」

「あなた達は強制しませんよ。ただ、一刀様は絶対です」

「なんで、一刀は強制なのよ?」

「それは一刀様が県令になられたからです」

 

仙花が言うには、街の復興も終え、政務を行う建物も完成した。この期に生活の拠点を街に移すことで、政務へ集中するということであった。

 

「そっか・・・この畑生活ともおさらばってことか」

「政務をこなして貰えるなら、向こうでも畑を作ってよろしいですよ」

 

引越しに関しては異論はない一刀。彼がひっかかっているのは畑のことだった。この世界に着てから農業生活を送っていた彼にとって、それはまさに夢の生活であった。その生活が終わりになろうとしていることへの寂しさであった。が、後悔もない。それは、彼の信念に則っての決定だからだ。最初は一人だった家に今ではたくさんの人達が集い、村となり、街となった。そんな街のために何かをしてあげたいと思ったから県令となったのだ。だから、政務をこなす為に引越しをするのには反対はないのである。

 

「わかった。なら、少しづつ荷物の整理を始めておくよ」

「ええ。私も手伝いますから」

「ありがとう仙花」

 

一刀の引越しが決定したのだった。それが決まったなら今度は天和や紫苑達のことになるのだが、こちらもすでに決まっている。

 

「私達も引越しするわよ!」

「一刀がするなら私もするよ~」

「置いてけぼりは嫌です」

 

天和、地和、人和達も引越しすることに同意し、紫苑達も。

 

「璃々はどうする?」

「おとうさんといっしょがいい~」

「なら、私達もお引越ししましょう?」

「うん!」

 

ということで全員が引越しすることになったのだ。ただ、これには意訳がある。すなわち。

 

「「「「抜け駆けは許さない(しません)わよ?」」」」

 

自分達が残ると、一刀と仙花の二人っきりでの生活になってしまう。一刀に思いを寄せる乙女達にとって、それは由々しき事態なのである。

 

 

 

 

これは、そんな乙女達に思いを寄せられるおせっかいの物語である。

 

 

 

 

 

 

「え?中央がきな臭い?」

 

書類仕事を行っていたとき、隣で同じく仕事をしていた符儒から周囲の情勢について報告があった。それが、中央政府の情勢である。

 

「ええ、なんでも霊帝が崩御されてしまった為、何進派と十常侍派に分かれて混乱状態になっているそうです。近いうちに内乱が起こるでしょうね」

「ということは、また賊達が活発に動くだろうな」

「どういうことだ?」

「要するに、権力争いに夢中の政府は他に目を向ける余裕がないので、好き勝手暴れられるというわけです。討伐命令が出ないので安心して暴れられると」

「せっかく街が復興したってのに、また賊達が動き出すなんて・・・」

「全くです。とりあえず、我が街を防衛する為に人を集めておきましょう」

「当ては?」

「とりあえず、現状は元賊達の100人ですかね。後はおいおいといったところです」

「わかった。そっちに関しては任せる」

「御意」

 

一刀はわかっていた。これは大きな戦の前触れであるということを。そう、彼の世界では有名な事件である。反董卓連合結成と董卓の洛陽追放だ。近いうちに起こるであろう大きな戦に一刀は緊張を強めるのであった。

 

「詳しいことは皆さんに集まってもらって決めましょう」

「そうだな。ここに集まるように連絡しておくよ。ちょうど、話たいこともあったしね」

 

数刻後、街の主要人物が執務室に集まった。といっても、集まったのは9人。県令であり、この街の代表である一刀、軍師として振舞う符儒に、蹴、仙花、紫苑と娘の璃々、天和、地和、人和の三姉妹である。

一刀達はさきほどの会話の内容を知っているが、他のメンバーは話があるから執務室に集まるようにとしか聞かされていなかった。それを説明すると同時に、これからの動向についての詳細を言う為、進行は符儒が行う。

 

「皆さん、集まって頂きありがとうございます。本日集まってもらったのは今後のことについて話しておこうと思ったからです」

「今後のことについて、ですか?」

 

符儒の言葉をいまいち掴みきれていない面々を代表して人わが質問をした。その質問に軽く頷くと話を続ける。

 

 

 

 

 

 

 

「ええ、先日に私が放った斥候によりますと、霊帝が崩御され大将軍何進派と十常侍派が権力争いを始めたようです」

「帝様が・・・」

「ええ、ですが重要なのはそこではありません。霊帝がいなくなった為に、新たな帝を立てなければいけなくなったのですが、その候補者がまだ幼いのです。そこで、その子を傀儡として権力を掴み、自分の意のままに政治を行おうと二つの派閥による権力争いが重要なのです。彼らは自分達が優位に立つよう、有力な諸侯を自分側へと勧誘を始めました。諸侯達もここで自分の名を売っておけば将来、大きな権力を得られるということで断る可能性は低いです。そこで今は沈静化している賊による略奪行為が再び活性化する恐れがあるということが予想されます」

「なんですって!!」

「どうしてそんなことが起こるの?」

「政府が権力争いに夢中になっているからです。賊を見張っている余裕はありません。そんな監視がない状態では賊達は好き放題やれてしまいます」

「「「なるほど!」」」」

「それで、今後私達はどう動くのかを決めようとここに集まったわけですわね?」

「その通りです」

 

場が一気に重苦しくなる。紫苑と璃々以外は賊に対して嫌な思い出しかないからだ。その手の話題にはある種、過敏になっていた。紫苑もそんな周りの雰囲気を察したが、璃々にはまだ早すぎたようである。理解出来ない難しい話をしているとわかると退屈になってしまったようだ。テテテっと一刀に駆け寄ると。

 

「おとうさん、だっこして?」

「こ、こら!璃々!!今、大事な話をしているの。邪魔しちゃいけません。おとなしくお母さんの隣で座ってなさい!」

 

娘の行動に慌てて紫苑が叱りつけるも、一刀は笑みすら浮かべて紫苑を宥める。

 

「まぁまぁ。いいよ。おいで」

「わ~い」

「ごめんね~。璃々ちゃんには退屈だよね~」

「う~ん・・・でも、おとうさんがあったかくてきもちいいから~、いい~」

「はは、ありがと」

 

一刀は璃々を抱き上げると自分の膝の上に乗せる。顔が胸板に埋まるように璃々を座らせると、ポンポンと優しく背中を叩いて頭を撫でる。それで璃々は安心したような、安らいでいるようなとろけるような声で返事をする。それを羨ましそうに見ている乙女が若干いたが。真に驚いたのはその直後である。

 

こてん・・・

 

「くぅ~・・・」

「「「「「(え?もう、寝ちゃったの!?)」」」」」

 

なんと、璃々は眠りに堕ちていた。膝に乗せてから数十秒の早業である。そんなに安らげるのか?一刀に思いを寄せる美女、美少女達は気付かぬ内にごくりと喉を鳴らしていた。が、次に一刀が放った言葉で正気に戻る。

 

 

 

 

 

「すまん。話を戻そう。符儒、頼む」

「わかりました。それで、今後の動向についてですが、私に考えがありますので皆さんに意見をお聞きしたいのです」

「なるほど・・・ですが、私達には出来ることはそんなにありませんよね?」

「人和さんの言うとおりです。言ってみれば私達はまだ弱小勢力、一役人であるだけです。諸侯のように強い武力があるわけでも、豊富な資金があるわけでもありません。なので、必然的に取れる方策は決まっています。今、一番問題なのは賊達が活性化するということです。私達はそれを討伐していきます」

「でも、それって私達だけでできるの?」

「少し違いますね。私達だけでやらなければならないのです。これには理由があります」

 

符儒の言う理由とは、地盤固めである。今回の権力争いによる賊の活性化。これについてはまだ確たる兵力を持たない、ここ汝南の街にとっては忌々しき問題である。しかし、符儒は逆に好機だと考えていた。さきほど、賊の討伐と言ったが正確には賊の討伐及び吸収である。つまり、出来るのであれば賊に降伏を勧め、しない場合は討伐するという方針なのだ。これによって、人手、労働力、兵力の確保と言った街に不足している人材不足の問題を解消する狙いである。また、賊を討伐する上で自分の街だけでなく他の街に赴き、そこに現れている賊を討伐することによって、周辺地域に恩を売り、協力を求めることで資金の調達、経済の発展に繋げようという考えもあったのである。

これが上手くいけば、周辺諸侯にも立派に対抗出来る国力、武力を手に入れることが出来、賊に怯える必要もなくなるのだ。

 

「ただ、私達には兵が少ないですので、最初は小さい規模の賊の討伐やこの街の近辺を重点的に守備します。ここである程度兵力を得られれば少しづつ守備範囲を拡大していきましょう。そして、その賊の討伐ですが、本隊を蹴が、援護・後衛に紫苑さんにお願いしたいのですが・・・」

「俺は構わん。その役目、引き受けよう」

「私も引き受けさせて頂きます」

 

蹴は即答で答える。それは、予想通りだったのだが紫苑までも即答で答えたことが

意外だった。

 

「紫苑・・・いいのか?」

「一刀様、璃々のことで心配されるのはありがたいのですが、これはこの街の問題です。璃々が危険に晒される可能性があるのですよ?私は微力ながら戦う力を持ってますから、協力させて頂きます」

「わかった・・・よろしく頼む」

「ええ!」

「続けますね。次に三姉妹です」

「え?私達もやるの!?」

「え~・・・私達には戦いなんて無理だよ~」

「ご安心を。あなた達に戦えと言うわけではありません」

 

三姉妹に与えられたのは街の人達及び兵達へ娯楽を提供することであった。黄巾の乱が終わってから間もない時期に再び賊の動きが活性化したとあっては街の人達の精神が休まる時がないも同然。そこに天和達の歌や踊りなど娯楽を提供することで少しでも安らげるようにするのである。

 

「そういうことなら」

「引き受けてあげるわ」

「本来の仕事が出来て嬉しいかも・・・」

 

人に歌を聞いてもらうこと、それは自分達の本来の目標であったことに二つ返事で返した姉妹。今は畑仕事や一刀の手伝いをやってそれなりに楽しい生活を送っていたが、やはり歌を歌いたいと思っていた。そんな彼女達に回ってきたこの役割、逃す手はないのである。

 

「次に一刀さんと仙花さんには今まで通り賊に襲われた街の復興をお願いします。後は被害を受けた人達に炊き出しを」

「了解」

「任されました」

「最後に私は全体への指示出しと状況変化の確認を行います」

 

こうして、今後の一刀達の動向が決まったのであった。

 

 

 

 

 

これにて解散となるはずであったが、本日はもう一つの議題があった。それは。

 

「もう一つ、今日は大事な議題がある」

「そんなのあったっけ?」

「天和、君達の名前だよ」

「「「あっ・・・」」」

「忘れてた?」

「「えへっ♪」」「すいません・・・///」

 

そう、先日の反乱で天和達の本名は名乗れなくなってしまった。その為に新しい名前が必要となったのだが、何故かその命名を一刀が行うことになったのだ。それから、一刀は一生懸命考えてようやく決めたのだが、当の本人達はそのことを忘れてしまっていた。ちょっぴり悲しくなった一刀であった。

 

「あれから考えてたんだけどね、やっと決まったから皆集まったこのときを使って発表しようと思ってね。ってことで、天和、地和ちゃん、人和ちゃん。こっちきて」

「なになに~?」

「なによ?」

「なんですか?」

「(ゴニョゴニョ・・・)どう?」

「うん、私は気に入ったよ~」

「ふん。まぁまぁね」

「ありがとうございます」

 

呼ばれた三人に耳打ちをする一刀。三人はふんふんと聞いて最後にこくっと頷くと、一旦元の位置に戻る。そして、改めて自己紹介を始めた。新しい名前で。これはやはり自分が言うより、本人が言ったほうがいいだろうとのことから一刀が考えたことだった。

 

「では、改めまして~。張角改め、姓は歌、名は覚、真名、天和で~す」

「同じく、張宝改め、姓は歌、名は法、真名、地和よ」

「同じく、張梁改め、姓は歌、名は療、真名、人和です」

 

彼女達の名前、思いを覚まし、道を教え(方法)、心を癒す。歌の可能性をそのまま名前としたのだ。彼女達も気に入ってくれたのでちょっと安堵したのは秘密。

一刀達は、これから起こるだろう賊の活性化に向けて準備を進めるのであった。

 

 

 

 

「姉さん。この荷持つを纏めておいて」

「え~!!面倒くさいわ。天和姉さんに頼んでよ」

「え~?私は今服を纏めてるから地和ちゃんがやってよ~」

「仕方ないわね。わかったわよ」

「おかあさん。これどうするの?」

「あら?これはそっちの袋に入れてね」

「は~い」

 

あれから、賊への対応の為兵を募り、訓練を始め、街の政治を行いと着々と準備を整えている今、一刀達は汝南の街へと引越しする為に荷物を纏めていた。最近、住み始めた天和達はともかく、住んで一年も経っていない一刀もそんなに荷持を持っていない為、ものの数刻で荷物整理は片付けることが出来た。

 

「じゃあ、新居にいきますか」

「「「「「は~い」」」」」

「なんだか、子供みたいね」

「ってことは俺と紫苑が父親と母親か?」

「まぁ♪それもいいですわ」

「それじゃ、いきますか?かあさん?なんて」

「ええ、いきましょう。あなた♪ふふっ」

 

みんなにいうと怒られるので小さく囁きながら会話をする二人。特に紫苑はやけにノリノリだった。

 

「蹴も符儒も整理できたか?」

「ああ。これから移動するところだ」

「一刀さん達も同じのようですね」

「ああ、一緒に行くか。目的地は同じなんだし」

「「そうだな(ですね)」」

 

途中で蹴と符儒も合流して新居に移動することになった。新居に移る際に蹴と符儒もそこに住むことになっている。というのも、そこは執務室、玉座など城として造られたものであり、今後の政務、軍務の中心となる場所であるからだ。その為、主要な人物はそこに移り住んだほうが何かと便利である。よって、蹴と符儒も引っ越すことになったのであった。

 

「あっ、そういえば。新居の間取りってどうなってるの?部屋割りを決めなきゃいけないだろ?」

「「そうだな(ですね)」」

「「「「「!?」」」」」

 

一刀の一言、それは乙女達の顔をここが戦場の如く引き締めた。仙花は無言で自分の持っていた新居の間取り図を取り出す。それを広げた途端、乙女達が殺到してすぐに検分を始めてしまった。

 

「な、なんか入りにくいな」

「紫苑はともかく、こいつら本当に武の心得がないのか?」

「恋する乙女は無敵といったところですかね」

 

そんな乙女達の雰囲気についていけない男衆であった。

 

 

 

 

「私達は後でいいので先に一刀様達が部屋を決めて下さい」

 

ひとしきり図を眺めた後、仙花が放った言葉である。一刀は『なんで先に決めないんだ?』と疑問に思っていたが、彼女達が図を見ていたのは部屋を決める為ではないからである。その理由は後に語ろう。とりあえず、一刀、蹴、符儒は言われた通りに部屋を決め始める。

 

「どこにしようかな~?」

「俺はここでいい」

「早いですね。では、私も同じへy「冗談だろ?」本気ですが?」

 

符儒の言葉に一刀と蹴はドン引きである。

 

「いいじゃないですか。同じ部屋でも・・・別に男女混同ではないですよ?」

「いや、問題ある気がする。主に俺の精神的に」

「ふふふ、ナニを考えているんですか?そんなことはないですよ?」

「や、やめろ。そんなさわやか過ぎる笑顔で近づくな」

「心外ですよ。蹴」

 

数十分の言い合いの末、別々の部屋になった。が、ちゃっかりと隣同士の部屋にしていた。転んでもただでは起きない軍師かな。

一刀も割りと簡単に部屋を決めていた。執務室の隣である。

 

「決まったよ~」

「では、私達が今度決めます」

 

さあ、いよいよ女性陣の部屋決めである。

 

「では、一刀様の補佐をする立場から私が隣の・・・「「ちょっと待った~!!」」なんですか?」

「あんたはいつから、一刀の補佐になったのよ!」

「だったら、私が一刀の隣で歌を歌って疲れた一刀を癒してあげるんだから~」

「姉さん。それなら私も出来るわ」

「あら、人和も言うようになったじゃない」

「おねえちゃんたちずる~い!!なら、りりはおとうさんといっしょのへやがいい!!」

「あらあら、璃々が同じ部屋なら私も同じへ「「「「断固反対!!」」」」あらあら♪」

 

女性陣の部屋決めは深夜にまで及んだという。その間、男達は部屋に荷物を運んで整理まで終えて言い合いをBGMに就寝したのであった。

 

 

 

 

数日後・・・

 

「よし。行くぞ!」

「「「「「応!」」」」」

 

蹴の掛け声に答え、複数の男達が一斉に木に登り始めた。これは、中央の権力争いに乗じて活性化するだろう賊を討伐する為に集められ、蹴の部隊として配属された兵達の訓練である。

 

「次!駆けろ!」

「「「「「応!」」」」」

 

蹴の部隊は木はもちろんのこと、川、坂、草むらなど走りにくい、障害がある場所を使い徹底的に体を苛めて体力強化を行った後、組み手などを行い個人技を磨き、個々の戦闘力を上げる。最後にみんなで隊列訓練を行うことで部隊単位での動きを習得するといった内容で訓練を行っているのだ。蹴は徹底的に部隊を鍛えた。現段階では数で劣っている。なら、質で・・・数の不足を補うしかない。これが、弱小勢力である白士軍の生き残る道なのだから。

 

 

 

 

 

「精神統一始め!」

 

こちらは紫苑の部隊。彼らも体力強化は行っているが、その後の内容は蹴の部隊とは違っていた。それがこの精神統一である。彼女の部隊は後方からの支援である。つまりは弓での遠距離攻撃が主力となる。この精神統一はその弓での射撃の際に非常に重要な訓練なのである。精神統一後、実際に射撃練習を行い、最後は蹴と同じく隊列を組んでの訓練だ。

 

「そこ!集中なさい!」

「申し訳ありません!」

 

普段、落ち着きがありおしとやかな淑女である紫苑も、この時間は厳しい女将軍に変貌する。何故なら、これは生死に直結するからだ。真面目にやらなければ自分はもちろん、仲間までも巻き込みかねない。一時も油断が許されない戦場に赴くのだから。それ故に甘いことなど言っていられない、否。言ってはならないのだ。兵達もそれを理解しているからこそ、謝罪の言葉は出ても文句は言わないのであった。

 

「ここで回って~・・・」

「ここはこうした方がいいんじゃない?」

「ん~、なんかしっくり来ないね」

「うん。何か足りないのよね・・・人和~。あんたは?」

「・・・曲のほうはともかく、詞のほうは少し詰まってるわ」

「人和ちゃんもか~」

 

張改め、歌三姉妹は新曲作りと振り付けの見直しを行っていた。しかし、彼女達の表情は浮かない。作詞の面で、振り付けの面で、納得のいく出来のものが出来ないからだ。三人は思わず唸り声を上げて手がとまってしまった。そこに仙花が通りかかる。

 

「どうしたんですか?」

「あ、仙花ちゃんだ~」

「ちょっと、歌作りが上手くいかなくて・・・」

「私でよければ相談に乗りますよ」

 

もちろん、歌作りは出来ないがと前置きをして。それでも、行き詰った三人にとってはありがたい申し出であった。

 

「私達の役割は娯楽の提供でしょ?なんか、元気の出る歌がいいな~と思って考えてたんだけど。浮かぶ言葉のどれもがしっくりこなくて・・・」

「私も同じかな~。元気の良さを表現しようとするんだけど、空回りしてる感じがとれなくて・・・」

 

話を聞いてすぐに原因がわかった。彼女達は今回の自分の役割に責任を感じ過ぎてしまったのだと。いつもはみんなに聞いてもらいたいと自分達の思ったことをそのまま歌にしていた彼女達。しかし、今回はみんなに娯楽を提供し、楽しませる。戦のことを忘れさせる、傷ついた心を癒すなどテーマが課せられていた。それを意識してしまったあまり、そのテーマに沿わせようと合わせようとしてしまい彼女達本来の良さがなくなってしまったのだと。この街の為にそこまで考えてくれていたことの嬉しさと、そんな彼女達にこのテーマで作ってくれと頼んでしまい、苦悩させてしまっている申し訳なさで複雑な心境になる仙花だった。だから、占い師の力を使ってささやかな助言を与えることにした。

 

「・・・天和さん」

「何?」

「一刀さんと話しなさい。これがあなた達の悩みを解決する方法です」

「なんでそんなことわかるの?」

「私の占いで出た結果です。根拠があるわけではないので、信じて下さいとしか言えませんが・・・」

「そんなことない。私は信じるよ。仙花ちゃんがそんな嘘をつくはずないもん。ね?地和ちゃん」

「そうね。それに一刀と話せばいいんでしょ?そんな無理難題をふっかけたわけじゃないのよ。あまり気にすることないわ」

「むしろ、一刀さんに話しかける理由が出来たのですから感謝すべきですね」

「あら?余計なことを言ってしまったかしら?」

 

三姉妹は仙花の占いの力を知らない。知らないが、仙花が自分達を気遣って言ってくれたことはわかった。だから、気に病むことはないと軽口を言うことで遠まわしに伝えた。それに気付いた仙花も軽口で返す。彼女達の絆がどれほど深いかわかるエピソードである。

 

 

 

 

 

 

「ね~?おとうさん。どこにいくの~?」

「鍛冶屋だよ」

「なんで~?」

「これからまた戦いが始まるからね。俺も武器を作ってもらおうと思って」

「また、たたかうの?」

 

件の一刀は今、璃々を連れて鍛冶屋に向かっていた。目的は自分用の武器を作ってもらうことだ。直接ぶつかるのは蹴や紫苑の部隊だとしても、戦は何が起こるかわからない。それに、これから軍の規模が大きくなれば自分も兵を率いて戦うときが来る。そのときの為に自分にも武器が必要と考えていたのだ。そんな一刀の言葉に璃々は不安を抱いた。また、戦いが始まる。そうなると、紫苑も戦いに出ることに。もしかしたら、もう帰ってこないかもしれない。そんな風に考えて。父親のいない璃々は人がいなくなる、可能性の話でも敏感に反応する少女であった。それに気付いた一刀は慌ててフォローすることに。

 

「大丈夫だよ。今、符儒が作戦を考えてくれてる。みんな無事に戻ってくる為に。蹴も紫苑もこの街を守る為に、何より自分が死なない為に厳しい訓練に励んでる。そんなみんなが死ぬなんてないよ」

「でも、いくさはなにがおこるかわからないってまえにおかあさんがいってた」

「その通りだ。でも、紫苑は絶対死なせないよ。約束する。俺がお母さんを守るって。だから、璃々ちゃんは俺を信じて待っててね?」

「うん!りり、おとうさんをしんじる!やくそくね!」

「ああ、約束だ!」

 

二人の義親子は口での簡単なものだが、絶対に破ることの出来ない誓いをするのであった。

 

「一刀~」

「一刀」

「一刀さ~ん」

「あっ、てんほーおねえちゃんたちだ」

「本当だ。お姉ちゃん達とも一緒に行こうか?璃々ちゃん」

「うん♪」

 

一刀は思う。この小さな少女の笑顔を失くしたくない、と。その為にさきほどの約束は絶対に破らないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

「準備は出来ましたか?」

「ああ、いつでもいいぞ」

「こちらもいつでもいけますわ」

 

あれから、符儒の集めた情報により、最初に討伐する賊を発見した。そこにこれから左慈隊50と黄忠隊50からなる、前衛後衛計100名の部隊が出撃しようとしていた。見送りに来ているのは、軍師の符儒、県令の一刀、そして仙花である。

 

「信じてるぞ。蹴」

「ああ。任せろ」

 

一刀と蹴は拳を突き出し、軽く合わせた。それだけで互いの思いは伝わっただろう。二人には笑みが浮かんでいた。

 

「御武運を」

「・・・」

 

符儒も一刀と同じく軽く拳を合わせる。仙花は軽く会釈で送り出した。それだけで彼らの思いも伝わる。

 

「紫苑さんも蹴の援護をよろしくお願いします」

「ご無事に帰ってきて下さい」

「ええ。約束しますわ」

 

続いて紫苑にも送り出す言葉をかける二人。紫苑も微笑みでそれに答えた。そんな中、無言で紫苑に歩み寄る一刀。すると・・・。

 

「か、一刀様!?」

「!?」

 

慌てたのは紫苑と仙花だ。何故なら、一刀は優しく紫苑を抱きしめたのだから。いつもは一刀をからかっていた紫苑もいきなりの行動に焦ってしまった。が、次の言葉で一瞬にして心が温かくなり、落ち着きを取り戻す。

 

「絶対に無事に帰ってきてくれ。璃々ちゃんと待ってるよ」

「ええ。必ず」

 

そっと離れる一刀。それを見計らって蹴は全軍に出撃命令を下す。

 

「全軍出撃!」

「「「「「応ぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」」」」

 

その声は城にまで届き、そこにいた天和、地和、人和、璃々にも討伐軍が出撃したことがわかった。

 

「いったみたいね」

「みんな無事に帰ってきてね」

「大丈夫よ。蹴さん達は強いもの」

 

そういいながらも、三姉妹の視線は璃々へと集中するのをとめることが出来なかった。その璃々だが、じっと紫苑が出撃した方向を見て、両手を組んで祈るように立っていた。

 

「おかあさん・・・」

 

小さく言葉を呟いて。

これより、白士軍が動き出す。それがこの外史にどんな影響を及ぼすのか、現段階では誰にもわからない。

 

 

 

 

 

 

お久しぶりです。

一週間くらい体調悪い日が続いてしまいまして、投稿が遅れてしまいました。

申し訳ない。

 

 

さて、今回は原作で言う反董卓連合の前の話になります。

果たして一刀達はどういう行動を起こすのか?

期待しないで待っていて下さい。

まぁ、バレバレでしょうけどwwww

 

 

さて、本編中に結果を書かずに終わった話しがあって気になっている方もいらっしゃると思います。

それは・・・乙女達の部屋割りです!!

 

一刀の隣は執務室になっていますので、残るのは隣と廊下を挟んだ部屋、その隣の部屋の四つ。

仙花、天和、地和、人和、紫苑と璃々。さて、誰がいいでしょうかね?

 

 

   執務室 | 一刀 | ???

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

        廊下

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

   ??? | ???| ???

 

 

こんな感じです。

どうしようかな~と思ってずっと決められずにいます。

アドバイスあれば欲しいです。

まぁ、あまり重要ではないですがね。

 

では。今回はこのへんで。


 
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