No.185919

君の名を呼ぶ 3章

kanadeさん

当分更新出来なくなるとおもいます。
ほんとにすみません。

2010-11-22 03:33:37 投稿 / 全11ページ    総閲覧数:3117   閲覧ユーザー数:2578

 

瞼を開ければ、目に映ったのは久しぶりの天井だった。

 

「そっか、帰ってきたんだ。フランチェスカに…。」

 

ちょっと前まで毎日見ていたはずの天井なのに、今ではすごく久しぶりに感じた。

 

 

ベッドに横になっていた俺は体を起こし軽く伸びをする。

思い浮かぶのは大陸のこと、華琳のこと、皆のこと、そして霞のことだった。

 

 

優劣なんてつけるものじゃない。

いや、華琳は一番って言わないと怒りそうな気もするが。

 

 

それでも皆と別に霞の事が浮かびあがったのは、きっと霞が俺の中で特別、だからなんだと思う。

別れ際の約束があるから、って言うのもあるんだろうけど

俺と霞は似たもの同士…なんだと思うから。

 

だから互いに惹かれあったんだろう。

 

 

そこまで考えて、俺は小さく笑う。

なんにせよ、これから俺が何をすべきか、は決まっている。

なら今ここで考えているより行動に移すべきだろう。

 

 

「必ず帰るからさ、待っててくれよ?」

 

口にしたのは誓いと願い。

 

誰かが聞いてるわけじゃ無い。ただ、言葉にしたかっただけ。

 

そして俺は部屋を出た。

 

 

 

 

 

 

これが俺が誓いを立てた一年前の話。

 

 

 

 

 

真恋姫無双 魏伝 ~君の名を呼ぶ~

 

 

こっちに戻って一番驚いたことは時間が全く進んでいないことだった。

あっちで過ごした月日はこっちの0.1秒にも満たされないらしい。

だから、ひたすらに走り続けた。

 

 

「かずピー、暇やろ?暇やんな?暇って言いや!?」

 

「うるさいぞ、及川。それに今日は…」

 

「今日は?ちゃうやろ、かずぴー。今日も、やろ。」

 

 

一年なんてあっという間だ。

勉学に励み、剣術の練習に励み、大陸に戻る術を探すのに励み。

 

何の手がかりも無く、ただひたすらに走り続けていたら一年が経った。

じいちゃんに頭を下げて剣術を真剣に学んだのも、勉学で分からない事を必死で学んだのも。

…気がつけばあっという間だった。

 

 

「…まぁ、否定はしないけど。けど、今日は駄目なんだよ。また今度だ。」

 

 

「かずぴーのいけず~。それにその台詞は前回も前々回も聞いたわ。」

 

 

そのあっという間の間で及川たちと遊んだことは両の指でたりる程。

急に変わった俺を見て、皆はどう思ったんだろうな。

 

いきなり付き合いの悪くなった俺に何を感じたんだろう。

 

 

けれど及川は……

 

 

「しゃあないなぁ、合コンする時にワイを必ず呼ぶって言う条件で見逃したるわ。」

何も変わらず、俺に接してくれた。

 

 

「いや、合コンなんて行かねぇから。」

 

ほんとに感謝してもしきれない。

 

 

 

俺は部屋に帰ってきて座っている。

 

俺の前に置かれたのは酒と少量のつまみ。

いつかみたいに蝋燭は置いてないけど。

 

ただ、久しぶりに飲みたくなっただけだ。

まぁ近況報告もしようと思ってはいる。

誰かに報告しなきゃいけないわけじゃないけれど…。

 

ちなみに酒の出所は…じいちゃんのところからくすね……頂いた物だ。

 

「まぁ、気長に話していくからさ。聞いてくれよ。」

 

 

そして話し始めるのは俺が皆の…

 

 

霞の前から消えてからの一年の物語。

 

 

 

 

『俺に剣術を教えてほしいんだ。』

 

帰ってきた俺が一番最初にしたこと、じいちゃんに剣術を習うことだった。

 

別に誰かを倒したいから強くなりたいわけじゃない。

 

あっちでは口にはしなかったけど悔しかった。

ただ、守られるばかりだったのが悔しくて、不甲斐なくて。

 

だから強くなろうと思った。

自分の身はもちろん、彼女たちをも守れるように。

 

そんな俺を見たじいちゃんが言ったのは

 

『何故力を求めるのは知らんが、お前がそれを望むなら教えてやろう。ただし、ワシの剣を教えるつもりは無い。お前はお前の、北郷一刀の剣を見つけろ。』

 

なんてお言葉だった。

 

 

 

 

剣術は凶器、人を殺すためのモノ。奪う剣だ。

もちろん、じいちゃん…というか北郷の剣術もそれだ。

じいちゃんの得物が真剣なら俺は何度も死んでいることだろう。

 

けれど俺は、俺の剣は違う。

奪うのではなく、守る剣。

勝つための剣ではなく、負けないための剣。

 

だからじいちゃん言った。

‘ワシの剣を教えるつもりは無い’と。

 

俺がそれに気付くのにだいぶかかったのだが宅の爺様は俺の目を見て直ぐに気付いたらしい。

 

 

ホント、俺はすごい人を爺さんに持ったと感じたよ。

 

 

次にしたのは、あっちに戻るための術を探すこと。

こっちは手がかりもないし、教えてくれる人もいない。

 

まさにゼロからのスタートだ。

 

 

学校の図書館から県外の図書館まで。

三国志に関連する本は片っ端から探しだした。

 

 

…けれど戻る術は全く見つからなかった。

 

かと言って諦めるわけにはいかない。

 

 

考えて、考えて、…そして出した結論が華琳だった。

前回あの大陸に呼び出されたのが華琳のためだと、華琳の願いを叶えるためだと仮定するなら、その華琳が願ってくれればいい。

 

俺が、北郷一刀がまだ必要だと。

 

 

が、まぁあの華琳がそんなことを願う筈も無いだろうと自己完結。

結局振り出しに戻ったわけだ。

 

 

 

そんなこんなで、未だに戻る術は見つかっていない。

まぁそんな感じ。

 

 

「そうそう、じいちゃんと剣術修行始めて目指す場所が遥か彼方にあるってのに気付いてさぁ~。」

 

一年で俺もちょっとは強くなったつもりだ。

けれど、未だにじいちゃんに勝つ事は出来ない。

 

ならば、じいちゃんより強い皆を守るなど夢のまた夢の話。

まぁそれは俺のこれからの努力次第だろう。

 

 

「ありゃ?もう酒が無いや。」

 

いつの間にか酒を飲み干していたのか、瓶は空になっていた。

酒に強くなったなぁ、なんて思い、新しいのを開けようとしたとき

 

ーー…ウチかて寂しいんや、いつまで待たす気やーー

 

 

 

なんて声が響いた。

 

 

此処に霞が居るはずない。

分かっている、けれど探してしまう。

 

立ち上がって部屋を見渡し、姿を探すけれど見つからない。

 

「何が酒に強くなった、だよ。弱いままじゃん…。」

 

 

酒の飲みすぎでどうやら幻聴が聞こえたのだろう。

此処に霞は居ない、当たり前のことだ。

 

…けれど、もう少しだけその声を聞いていたかった。

 

「…そう言うなよ、俺だって頑張ってるんだから。」

 

あるはずの無い返事を期待してしまう。

やっぱり俺は、弱いままだ…。

 

ーーホンマに頑張ってんの?約束守れるん?--

 

そしてまた聞こえる霞の声。

俺はそれが嬉しくて…。

 

「頑張ってるし、約束は守るって。」

 

ーーけど待たせすぎや、そんなん信じられんなぁーー

 

「…それを言われると痛いなぁ、けど絶対帰るって。」

 

ーーほんまに?--

 

「ほんまにほんま、必ず大陸に…霞の元にもどるから。」

 

ーーしゃあないなぁ、もうちょっとだけ待ったるわーー

 

「おぅ、じゃ直ぐに帰らないとな」

 

 

 

そして、部屋には静寂が訪れた。

けれど…改めて帰りたいと思う想いが強くなった。

 

 

そのために一歩を踏み出そうとしたとき、

 

‘ぐにゃり’と俺の視界が歪んだ。

 

 

気がつけば俺は真っ白い部屋の中にいた。

全てが白に染められた空間、そこには何も無い。

 

 

歩いてみても進んでいるのか全く分からない。

始まりもなく、終わりもない。そんな場所。

 

 

そこで俺は……

 

 

「………!?…霞!」

 

愛しい人の姿を見つけた。

 

 

俺は嬉しかった。

また逢えた、逢うことができた。

 

戻ってくることが出来たのだと。

駆け出して俺は横になっている霞に近づく。

 

けれど…俺と霞の間には見えない何かが立ち塞がっていた。

 

 

「……ッ!?何だよこれ……?」

 

見えない何かにぶつかって顔面を打った。かなり痛いんだけど。

まるで巨大な壁に阻まれてるようだった。

 

「何なんだよ、これは…。霞?なぁ霞?」

 

横になっている。と、いうより倒れている霞に呼びかける。

しばらく呼びかけて霞の体が反応した。

よかった、声は届くらしい。

 

 

「……一刀?…かずとッッ!?」

 

体を起こし俺を見つける霞。

そして駆け出して……俺と同じ目にあった。

 

 

「痛たたた……、一刀!何やねん、これ!?」

 

「俺に聞かれても分かんねぇよ、逆に俺が聞きてぇよ!」

 

 

こうして見えない何かを挟んで始まった口論。

もっとこう…感動とかあってもいいんじゃないですか、霞さん?

 

 

あーだ、こーだと言い争った後、ようやく現状分析を始めた俺たち。

 

此処が何処かは分からない、帰り方も分からない。

何故此処に居るかも分からない。

 

分かっている事はただ一つ。

 

「この見えへん何かが邪魔ちゅうことやな?」

 

そう、俺と霞の前にある見えない何かが邪魔だってことだ。

 

 

「一刀、離れとき。こんなんウチがぶち壊したる。」

 

と言って、何処からか自分の得物を出す霞さん。

華琳といい霞といいどっから出しているのか不思議である。

 

が今はそれは置いておこう。

 

霞の方に向き直すと堰月刀を振り上げた姿が映った。

 

そして、振りかぶろうとした時、

 

 

 

ーー止めておけーー

 

 

と何処からか制止の声がかかった。

 

 

俺と霞は辺りを見回す。けれど目に映るのは白一色のみだ。

 

ーーそれが何か知っておるのか、北郷一刀よ?--

 

また聞こえた声。

 

「知らねぇよ!それよりなんで俺の名前知ってるんだ?」

 

ーーお前さんは有名人だからのぅーー

 

「アンタ、一体誰やねん?」

 

ーーワシの事など放っておけ、張遼。それよりそれが何なのか知りたくは無いか?ーー

 

誰かは知らないがこれが何なのか知っているらしい。

 

「…なら教えてくれ、これは一体何なんだ?」

信じれるかどうかは別として今は情報が欲しい。

 

 

ーー…それはの、繋がりじゃよ。北郷一刀。ーー

 

…繋がり…?どうゆう意味だ?

 

ーーお前の世界にいる友人、家族、それらとの絆だと言っても構わん。…すなわち、お前たちがそれを壊せば二度とその者たちには会えんーー

 

何だって…?つまりコレは…

 

ーーさぁ、どうする北郷一刀?今ならまだ戻れるぞ?--

 

 

途端白一色の空間に黄色い光が輝きだした。

あれは俺の世界につながっているんだろう。

 

 

ようやく霞に出会えたのに、皆の下に帰れると思ったのに…。

二択の選択に答えを渋っていると…

 

「一刀、何迷ってるねん。早よ帰り…。」

 

「……え?」

 

今まで黙っていた霞が口を開いた。

 

「何を迷う必要があるねん?家族っちゅうんはかけがいの無いモンや。ウチらを気にする必要は無い。」

 

だから…、と霞は続ける。

 

「一刀は自分の国に帰り。華琳らにはウチが説明しといたるさか…。」

 

そして霞は俺に後ろ姿を見せる。その後ろ姿は……震えていた。

 

…また俺は繰り返すのか?また皆を傷つけるのか…?

 

また…約束を破るのか…?

 

 

「……ざ…なよ…」

 

同じ過ちを繰り返すな、答えは決まっているだろう…?

なら…

 

「ふざけんなよ、このバカ霞!!」

 

思いっきり叫んでやれ!

 

「家族は大切?あぁ、大切だよ。唯一無二の存在だからな!…けどな、そっちの世界にだって俺の家族はいるんだよ!!」

 

血は繋がっていないけど、絆で繋がった家族。

俺にはそっちだって大切な家族だ。

 

「何言うとんねん!?本もんの家族のほうが大切にきまっとるやろ!!」

 

「…父さんにも、母さんにも、じいちゃんにも、数え切れないほどの恩がある…。」

 

「だったら……」

 

「けどなぁ、父さんたちに会えなくなるより霞のそんな姿見るほうがよっぽど辛いんだよ。」

 

 

‘ピキリ’と真っ白の空間に亀裂が走った。

そして

 

ーーなるほど、お主はそっちを選択したかーー

 

「…あぁ」

 

ーー後悔は?ーー

 

「あるに決まってるだろ?ただ、どっちが後悔が強いか考えたら…って話しだ。」

 

ーーそうか、ならば往くがよいーー

 

 

俺と霞の間にあった何かはもう無い。

 

俺は呆然としている霞に近寄り、手を掴んだ。

 

 

 

 

「……ん?一刀……?」

 

ウチが目を覚ました時、そこは真っ白い空間やなくてウチが一人で飲んでいた小川やった。

どうやら木に凭れ掛かって寝てたらしい。

 

 

「やっぱり、夢か……」

 

当たり前や、本物の家族を選ぶんが普通。

だとしたら、あれは夢っちゅう事や。

 

 

…けど、嬉しかった。

一刀の言ってくれた言葉が、選んでくれたことが。

 

 

それだけで胸が満たされた。

 

「ありがとうな…、一刀。」

 

それが夢の中だったと…

 

「どういたしまして、霞。」

 

しても……?

 

 

ウチは気付いた。

凭れてるんが木ぃやなくて誰かの胸で、

ウチが誰かに抱きしめられてる事に…。

 

「……これも夢っていうんは?」

 

「残念ながら夢じゃないんだよね。」

 

「……ホンマに一刀?」

 

「正真正銘、北郷一刀ですが?」

 

「……さっきのは、夢や無かったん?」

 

「あれも現実らしいよ、一応。」

 

「……待たせすぎや。あほぅ…。」

 

「ごめん…でも約束守った…ッッ!?」

 

一刀の腕から抜けて一刀の口をウチので塞ぐ。

 

 

 

そこには確かなぬくもりがあった。

 

 

 

あとがき

 

 

すいません、だいぶ遅くなりました。

 

まさかデータが飛ぶとは思っていなかったので…

 

 

 

3章は一刀君主体でしたがどうでしたでしょうか…?

もしかして急展開すぎじゃね?とかも考えたりしたのですが…どうなんでしょう?

 

 

 

 

あと作者はこれからテスト勉強にはいるので十日ほど更新が出来ません

ごめんなさい…

 

でもテストが終わったら直ぐに更新しますので!!

 

 

ではまた

 

 

 

 

 


 
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