――――蜀、軍事訓練場 一兵卒広場
俺の目前には、屈強な肉体を持ついかにも熟練した年寄りが2本の木剣を悠然と構えていた。
「おいおい、老人は布団の上でゲートボールでもやってろよ」
「ふん、かつてワシはこの木剣で300の戦場を駆け抜けてきた、それはもうハイパーなベテランじゃ。
そのワシと相対すること光栄に思うがいい・・・・・」
ってか、その経験値で未だに一兵卒かよ!
ホントに駆け抜けただけじゃねえーか!
――――――
――――
――
―
・・・俺こと北郷一刀は一兵卒どもに混ざって軍事訓練を受けていた。
関羽曰く、一軍の将となるには、まず軍の端である一兵卒を知らなければならないらしい。
どうもあの一件があって以来、関羽はこの俺を「治水専門家」から軍人にジョブチェンジしようと画策しているみたいだ。
まあ、もちろん反対はしたさ。
「あのよ、俺は治水王子であって火曜サスペンスは専門じゃないから」
でもあの女
「しかし北郷殿の場合あの黒歴史がある以上、どこへ行こうともはや治水業者として生きていくことは叶わないと思いますよ」
「・・・・・・・・・・・うぃ」
治水以外に生きていく術も秘策もなかった俺にもはや選択肢はなかった。
――――そして現在
「ほらほら、じーさんどうした、どうした~。壁際まで追い込まれたぞ~。
オラッ!牙突ッ!牙突ッ!牙突・零式ッ!」
「いたッ!やめッ!ホントッ!グァハッ!」
適当に手打ちにしても後になってパシられる可能性も否定できん訳だから、
躾の意味としても初回から絶対的な力の格差社会を見せておく必要があった。
それに、何事も最初が肝心だからな、根をあげようとも絶対に容赦はしない。
「・・・今思えば、普通に関羽をダンボール詰めにでもして、蜀宛に郵送で送り返せば良かったんじゃね?」
レジェンド刑務所脱出の際に、武器庫で手に入れた初期装備「業物の太刀」で地面に地上絵を描きながらふと思った。
あの時
偶然にして関羽を発見した時
関羽は両足の負傷が見られたものの、案の定というかやはり民家の屋根に引っかっていた。
俺はその怪我を負わせた罪悪感から、関羽を送り届けるため、嫌がって抵抗する関羽を無理やりリヤカーへ押し込み蜀へと戻った。
「あ、汗で手が滑った」
「ちょ、またで、きゃあああああああああああ」 ズボオッシャン!!
しかし、リヤカーの操作は見た目より難易度が高く、軌道に乗るまでに何度か水田へダイブさせてしまった。
そのせいで蜀へ戻る頃には関羽は全身泥だらけで、城門まで迎えに来た蜀の武将達も顔を引きつらせていた。
そのせいかあれから関羽以外、俺に対して会話を試みようとした人物はいなかった・・・・・ハハッ。
その時、俺の心の悲痛な叫びに共鳴したのか
イスに座った拍子に尻でプレスしてしまったドラ焼きが慟哭をあげる
「イタッ、イタ、イタッいよよよいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」
あとがき
いかがでしたでしょうか?
次回は
北郷一刀が実力行使を持って下克上を宣言します。
この作品を覗いて少しでも日常の暇つぶしとなれば、私としては僥倖です。
ああ、幸あれ・・・
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第4話
世界とは誰か? 誰が世界なのか?
北郷一刀とは一体何なのか?