「ちはや……いっしょに、寝よ……」
「え……?」
えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?
「ちはや……ダメなの……?」
「だ、ダメじゃないわよっ。ダメじゃないけど……」
ど、どうしよう。ゆ、優雨と一緒に寝て、もし正体がバレてしまったら洒落にならないし。
でも、優雨のお願いを無碍に断るのも……だって、優雨は僕の事を女の子だと思ってるし。
本当にどうしたら――
「千早。ちょっといいかしら?」
「香織理さん?」
「優雨ちゃん。ちょっと千早を借りてもいいかしら?」
「うん……」
「ありがと。さ、千早こっちに来なさい」
「あ、はい」
香織理さんなら、この状況の打開策を見つけてくれるかもしれない。
そんな期待を込めて香織理さんの所へと向かったんだけど……
「あ、あの……香織理さん」
「千早。いくら優雨ちゃんが可愛いからって、襲ってはダメよ♪」
あ、あれ……?
香織理さん、もしかして楽しんでいる?
「香織理さん。僕の状況分かってます?」
「ええ。分かってるわよ。千早がついに優雨ちゃんを毒牙にかけようとしてるのよね?」
「違います。物凄く間違ってますからね」
僕が優雨を毒牙にかけるなんて……
「……千早のエッチ」
「――違っ!? ぼ、僕は――」
「はいはい。あまり大きな声を出すと正体がバレるわよ」
「う……っ」
ダメだ。香織理さん、確実にこの状況を楽しんでいるよ。
こうなっては、もう頼る事は出来ない。
自分の力で、この状況を打破しないといけないな。
はぁ……
「ちはや……だいじょうぶ?」
「あ、うん。大丈夫よ」
「……ほんと?」
「ええ。本当よ」
なんとか時間を稼いで優雨に本来の目的を忘れてもらうしかないよね。
「ところで、優雨はもう宿題は終わったのかしら?」
「……まだ」
「そう。宿題はちゃんとしないとダメよ」
「うん……」
とりあえず、優雨に宿題をさせて時間を稼ごう。
もしかしたら、宿題で目的を忘れるかもしれないしね。
「優雨は良い子ね。さあ、早く宿題をしなさい」
「わかった……」
迷いもなく、自室に宿題をしに行く優雨。
ごめんね。優雨。本当にごめん。
でも、僕は優雨と一緒に寝るわけにはいかないんだ。
僕を慕ってくれる優雨のためにも。そして、僕自身のためにも。
「あらあら、純粋な優雨ちゃんを弄ぶなんて、千早はなんて悪い子なのかしら♪」
「……香織理さん」
なんなんですか、その嬉しそうな表情は。
「可愛い妹のお願いを断ろうとするなんて、お姉様の取る行動じゃないわよ」
「ぐ……っ」
僕だって、優雨の我儘は出来るだけ叶えてあげたいけど、でも……
「大丈夫よ。千早さえ我慢すれば優雨ちゃんに正体がバレるなんて事はないんだから」
「そ、そうでしょうか……?」
本当にバレないのかな?
「あら? 千早は本当に優雨ちゃんを襲うつもりなのかしら?」
「お、襲いませんって!」
「なら、一緒に寝てあげなさい。優雨ちゃんだって、人肌が恋しい時があるわよ」
「そう……ですよね」
誰だって、寂しくなる時があるよね。
それに、せっかく優雨が僕を頼ってくれているんだ。だから僕は――
「香織理さん。僕、今日は優雨と一緒に寝ます」
「そう。頑張ってきなさい」
「はい」
迷う事は何もない。僕は、僕を信頼してくれる優雨のために一緒に寝よう。
「ふふ……頑張りなさい。男の子」
「優雨? 入るわよ」
ドアをノックして優雨の部屋に入る。
優雨は僕の言った通りに宿題をしていたようだ。
「ちはや。どうしたの……?」
「その……さっきの話なんだけれど……」
「……?」
「優雨。今日は一緒に寝ましょう」
「……いいの? ちはや」
「ええ」
僕は……いや、私は妃宮千早なんですから。
それに――
「ちはや。ありがとう……♪」
優雨のこんなにも嬉しそうな顔を見る事が出来たんだから、何も文句は無い。
そう。優雨が喜んでくれるのなら、僕はどんな障害をも乗り越えようと思う。
鉄の理性を持って……ね。
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ほい。“処女はお姉さまに恋してる 〜2人のエルダー〜 秋の作品フェスティバル”の参加作品です。
ゲームをやっていて思ったんだ。
もう少し優雨の話が見たいってね♪
だから書いてみました。