No.179512

真・恋姫無双 刀香譚 ~双天王記~ 第四十八話

狭乃 狼さん

さて、いよいよ本編の再開。

第四十八話です。

急転直下の怒涛の展開!

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2010-10-21 11:33:12 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:10865   閲覧ユーザー数:9298

 荊州・襄陽。

 

 その日、一刀と劉備の二人は、今後の荊・益両州の運営方針を、荊州残留組と話し合うため、久々にこの地へ戻ってきていた。

 

 だが、到着した二人に聞かされた、留守役の劉封の台詞は、まさに青天の霹靂だった。

 

 「なんだって?華琳たちがここに?!」

 

 「ああ。……庇護を求めて、今この地に居る」

 

 「ど、どういうこと?」

 

 劉封の口から語られたのは、まったく予想だにしていなかったこと。魏王・曹操が、家臣全員とともに、中原を追われ、ここ、荊州に逃れてきていたのであった。

 

 「華琳は、みんなは無事なのかい?」

 

 「はい。曹操さん以外の方は、少なからず手傷を負っておいでですが、命に別状はありませんでしゅ。はわわ」

 

 諸葛亮がかみかみながらも、一刀にそう答える。

 

 「……そっか。それは良かった。……で、華琳は?」

 

 「皆さんの看病に付き添っておられます。お呼びしますか?」

 

 「いや。俺のほうから出向くよ。城下の病院でいいのかな?」

 

 「はい」

 

 

 

 その、襄陽の街中にある件の病院では。

 

 「華琳さま、われらごときのために、付きっ切りで看病などしていただけるとは、この夏候元譲、もう、お礼の言葉もありません!」

 

 「何を言っているの、春蘭。みんな私のかわいい将よ?それに、私を守ってした怪我ですもの。こんなことは当たり前でしょう?」

 

 寝台に横たわったまま涙ぐむ夏候惇に、そう言って優しく微笑む曹操。

 

 「華琳さま、なんてお優しいお方……。ちょっと春蘭!いつまでも華琳さまを独占してんじゃないわよ!」

 

 「桂花、落ち着け。あまり興奮すると、怪我にさわるぞ」

 

 いすに座って夏候惇に叫ぶ荀彧を、夏候淵がそう言って諭す。

 

 「大丈夫よ、桂花。心配しなくても、貴女もちゃんと看病してあげるから、もう少しだけ待ちなさいな」

 

 「は、はい!華琳さま!!」

 

 曹操に微笑まれ、恍惚の表情を浮かべる荀彧。

 

 室内には、全身包帯だらけで寝台に横たわる武将組と、その武将組よりは軽症な軍師組が、曹操を中心にしてそれぞれ椅子に座っていた。

 

 そこに。

 

 「お邪魔するよ、華琳」

 

 病室の扉を開け、一刀と劉備が中に入ってきた。

 

 

 

 「……一刀、桃香」

 

 「り、劉翔か」

 

 「あ~、一刀さんなの~」

 

 「久しぶりやな~、大将」

 

 「お久しぶりです、一刀どの」

 

 「お元気そうで何よりなのですよ、お兄さん~」

 

 「……お久しぶりです、一刀、さま」

 

 少しさめたような視線を向ける曹操。そして、その後に続くように、一刀にそれぞれ反応を示す、夏候惇、于禁、李典、郭嘉、程昱、楽進たち。

 

 「ちょっと、沙和!凪!あなたたち、なんでこの男を真名で呼んでるわけ!?」

 

 「……それもそうね。風と稟はもともと面識があったみたいだし、別に不思議ではないけど。……一刀、聞かせてもらえるかしら?」

 

 じろ、と。笑っていない目のまま、笑顔で一刀に問いかける曹操。

 

 「いやほら、春ら、夏候惇さんたちを以前、俺たちが捕縛したことがあったろ?そのときに、さ」

 

 「……そう。春蘭たちも真名を預けているのね?……その理由は、聞かせてもらえるのかしら?」

 

 「か、華琳さま、それは」

 

 「春蘭、その説明は私がしよう。姉上、実は……」

 

 動揺する夏候惇を制し、曹仁がその時の事を、姉である曹操に語る。

 

 「……つまり、こういう事態になるかもしれないのを、一刀は見越していた、と」

 

 「正直、そうならないことを祈っての、つもりだったんだけどね」

 

 一刀が曹操、ひいては漢に従おうとしない事への理由を教わった事、司馬仲達らに対する警戒を、頼まれたこと。そして、曹操自身の身を、かならず守ってほしいと、真名を以って迄頼まれたことを、曹操は妹の曹仁から聞かされた。

 

 

 「……我々と同等に、姉上を想ってくれている。あの時の一刀殿の眼差しは、我々にそう確信を持たせてくれました」

 

 「せやな。大将の想いはほんまもんやったで」

 

 「そうなの。沙和も真桜ちゃんに賛成なの」

 

 「私もです、華琳さま。その想いは、私たちと寸分変わらないと、そう思いました」

 

 曹昂、于禁、李典、楽進の四人が、曹操に対して切々と訴える。

 

 「……わかったわよ。真名の件については、貴方達が預けて良いと判断したのね?なら、それでいいわよ」

 

 少々顔を赤らめながら、不承不承といった感じで、納得をしたという曹操。

 

 「孟ちゃん、顔が紅いで?もしかして照れとんのか?」

 

 「うるさいわよ、霞。けが人は黙って寝ていなさい」

 

 「へいへい。おーこわ」

 

 ぎろりと。自身をからかった張遼を、さらに紅くなった顔でにらむ。

 

 「……それで、華琳。そろそろ、何があったか聞かせてくれるかい?」

 

 「魏の武将さんたち全員が、ここまで手傷を受けるなんて、いったい何が起こったの?」

 

 曹操に揃って問いかける、一刀と劉備。それに対する曹操の答えは、衝撃、の一言だった。

 

 「…………漢が、……滅んだ、わ」

 

 『…………え?』

 

 うつむき、歯がみする曹操の両拳は、ギリリ、と音を立てるかのごとく、強く握られていた。

 

 すべては半月前のこと。

 

 魏王都、許にて。

 

 

 

 「それは本当なの、桂花!?」

 

 「……はい。残念ながら、委細、間違いありません」

 

 「そん、な……」

 

 その報告に驚愕し、玉座からおもむろに立ち上がって再度問うた曹操は、改めて荀彧から返ってきた返事に、愕然とした。

 

 「……陛下が、劉協さまが、仲達に禅譲、した……」

 

 禅譲。

 

 それは、今代の王朝から、次代の王朝に行われる、国譲りの儀式のこと。

 

 漢の今上帝劉協が、丞相である司馬懿仲達に、帝位を譲ったと。

 

 荀彧は鄴からもたらされたその報告を、主君である曹操に、涙をその瞳にためながら報告をした。そしてさらに、追い討ちをかける報告をも、彼女はしなければならなった。

 

 「それからもう一つ。早急に対応しなければならないことがございます。その司馬仲達の軍勢が、すでに黄河を渡り、青州と兗州、そして洛陽を攻略中との事です」

 

 「ちょっと待て桂花。いくらなんでもそれは無理があるだろう?河北の戦力はせいぜい、二十万がいいところだ。そんな戦力で多方面への同時侵攻など」

 

 荀彧のその報告に疑問を持った夏候淵が、河北の戦力からしてありえないと、口を挟む。

 

 「確かに。けど、青・兗二州に総勢十万、洛陽に二万が、それぞれ襲い掛かっているのは事実よ」

 

 「……ちょっと待って、桂花。それじゃおかしいわよ」

 

 「そうですね~。数が合いませんね~」

 

 荀彧が語った河北軍の戦力数に、首をかしげて疑問を呈する曹操と程昱。

 

 「んー?青・兗の二州に十万だろ?で、洛陽に二万。河北の兵は全部で二十万だから、残りは……。あれ?え~と」

 

 「……後八万だ、姉者」

 

 「その程度の計算ぐらいできなさいよ、この脳筋」

 

 「うう」

 

 なぜか恍惚としている表情の妹と、しらけた表情の荀彧に突っ込まれ、がくりと肩を落とす夏候惇であった。

 

 「……それはともかく、いかが対処されますか、華琳さま」

 

 「いかがも何もないわ。私は、漢の臣たる魏王よ。ならばすべきことは一つ」

 

 郭嘉に問いに一瞬笑みを浮かべ、そしてすぐにまた、いつもの凛々しい顔になる。

 

 「……やるんか、孟ちゃん?」

 

 「ええ。仲達ごときの好きになど、決してさせるものですか。全軍に通達せよ!これよりわれらは、漢より帝位を簒奪した愚か者を誅滅する!直ちに出陣の支度を整えよ!」

 

 『御意!!』

 

 

 

 場面は再び、襄陽の病院。

 

 「私たちはそうして、二十万の兵で許を発ったわ。そして、兗州に入る直前で、三万の虎豹騎に遭遇した」

 

 「三万?八万じゃなくてか?」

 

 「ええ、三万よ。……正直、そのときに気付くべきだったわ。残りがどこに向かったか」

 

 「……戦の結果については、われらがここにいる以上、聞くまでもなかろう?」

 

 「……十倍近い戦力でも勝てない、か。相変わらずとんでもないな」

 

 「虎豹騎の兵士自体は、そんなにてこずる様なものではない。だが」

 

 「あの五神将って連中、化け物だよ!ボクも流流も、春蘭さまも秋蘭さまも霞さまも!みんなみんな、まるで子ども扱いなんだから!」

 

 許緒が泣きながら、そう叫ぶ。

 

 「季衣のいうとおりよ。春蘭たちがあっさりと負けて、兵たちの士気はがた落ち。あっという間に、黒い波に飲み込まれてしまったわ」

 

 少し自嘲気味に、苦笑する曹操。

 

 「それでも、何とか孟ちゃんを守って、うちらは許に戻ったんや。せやけど……」

 

 「……別働隊に、制圧されていた、か」

 

 「……そういうこと、よ」

 

 静まり返る一同。

 

 精鋭で知られた魏の軍勢が、正面から十分の一程度の数の相手に対し、一当たりしただけで、壊滅に追いやられた。その事実は、改めて虎豹騎、いや、項羽を筆頭とする五神将の恐怖を、一刀たちに再認識させるに十分だった。

 

 「けど、不思議なのはその後よ。……連中、私たちを追っては来なかった」

 

 「え?」

 

 「そうなんよ。連中、許から南下して逃げようとするうちらを、追撃せえへんかったんや」

 

 「……つまり、わざと見逃した、と?」

 

 「何でそんなことする必要が?」

 

 「それが判れば苦労はないわ。ま、そのおかげでこうして、全員生きて荊州に入れたんだけど」

 

 魏軍をわざと見逃す。

 

 仲達の思惑がどこにあるのかは、現状では何も判らない。ならば、まずは目の前の現実に、しっかりと対処する。それが、現状での最優先事項だが、一刀は後一つだけ、曹操に聞かねばならないことがあった。

 

 「……なあ、華琳。陛下……劉協さまは」

 

 「……私に判るわけないでしょう?確かめる術なんて、あったと思う?」

 

 「う。……そう、だよな。ごめん、軽率すぎた」

 

 「わ、わかればいいのよ。わかれば」

 

 仲達に禅譲をした後、劉協がどうなったのか。一刀はそれが気になって曹操に問うたが、残念ながら、曹操にもそれを確かめる手段は無かった。

 

 「陛下が無事だったら、あの人たちの目的も、少しはわかるかも、なんだけど」

 

 「やつらの目的、ね。普通に考えれば、大陸の統一、なんでしょうけど」

 

 「……それだけじゃ腑に落ちないところも、多くありすぎだし、な」

 

 室内を再び、沈黙が支配する。

 

 その時だった。

 

 

 「うふふふふ。……その答え、私が教えてあげましょっか?」

 

 突然響いた”野太い”声。

 

 「だ、誰?!」

 

 「何者だ!姿を見せろ!!」

 

 「どぅふふふふ。……ほんとーに、みせちゃっていいのねぇん?いっちゃうわよぉん?」

 

 ”声”がそこまで言ったときだった。

 

 ビカアッ!!

 

 室内が激しい閃光に包まれる。

 

 「くっ!」

 

 「ま、まぶしい!!」

 

 思わず目を閉じる一同。そして、光が収まり、目を開いたとき、そこに、”ソイツ”が、いた。

 

 「はあ~~~~い!!全外史の一億人の漢女ファンのみなっさ~ん!お・ま・た・せ♪永遠の漢女、貴女の貂蝉ちゃんぃよお~~~~ん!!」

 

 『オエ~~~~』

 

 ……パンツ一丁の、自称・永遠の漢女こと、変態筋肉だるまが。

 

      

                        ~続く~

 

 <あとがき>

 

 さって!刀香譚はついに、これより最終章の開幕です!!

 

 「・・・・・・作者さ、あんたの頭の中、一度解剖させてほしいんだけど」

 

 なんでやねん!!

 

 「どーゆー展開やっちゅうこっちゃ!」

 

 「そーですよ!むちゃくちゃもほどが」

 

 そ~お?これぐらいで驚かれてたら、この先ついて来れなくなるよ?

 

 「・・・もっとトンでも展開になる、と?」

 

 むふふ。読者には絶対読めないだろうね、ここから先の話。

 

 「・・・これでよむやついたら、うち、尊敬するわ」

 

 てなわけで、いきなり急転直下、三百六十度ぐらいぐるりとひねりました今回のお話、いかがだったでしょうか。

 

 「また、たくさんのコメント、お待ちしておりますね」

 

 「支援もできれば、したってな~」

 

 あと、刀香譚とは関係ありませんが、TINAMI学園祭にも参加しましたので、そちらにも目を通してやっていただけると、私としては嬉しいです。

 

 「わたしたちがメ・イ.ン、の、お話ですよー!!」

 

 「ほかにも、蒔さんとか拓海くんとか出てるから、いっぺん見たってな~」

 

 ではまた次回、四十九話にておあいしましょう~。

 

 『再見~!!」

 

 


 
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