No.178310

真・恋姫無双~君を忘れない~ 十一話

マスターさん

十一話の投稿です。
相変わらず更新が遅くて申し訳ありません。
今回は話を進めず、久しぶりのあの御方の登場です。今回は結構失敗してしまったような気がします。寛大な気持ちでご覧になっていただけるとありがたいです。

コメントしてくれた方、支援してくれた方、ありがとうございます!

続きを表示

2010-10-15 02:38:29 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:15445   閲覧ユーザー数:12614

一刀視点

 

「それでは月殿、御健勝で」

 

「桔梗さんこそ。紫苑さんにもよろしく伝えてください」

 

「董卓さん、ありがとうございました。あなたに会えたことを決して忘れません」

 

「へぅ……わ、私も忘れません。是非、また遊びに来てください」

 

 俺の挨拶になぜか顔を朱に染める董卓さん。すると、脇に控えていた他の面々も、それぞれ別れの言葉を言った。

 

「ふん、どうせ来るなって言っても、来るんだから、酒くらいは持参しなさいよ!わ、私もたまに飲みたいし……。それから、北郷一刀!あんたはもう来るな!」

 

「桔梗、焔耶もまた酒飲みに来いや。か、一刀もまた飲もうな……」

 

「……………一刀、また来る」

 

「北郷一刀!二度と恋殿に近づくなです!」

 

 また来てくれやら、もう二度と来るなやら、好かれているのか、嫌われているのかよくわからなかったけど、俺の頬は自然と緩んでしまった。

 

 挨拶を終えて、俺たちは天水城を発った。ここでは様々なものを学んだ。戦とは?民とは?国とは?そんな哲学的な問いに、まだ俺は解答を見出すことが出来なかった。いや、そもそもこれらの問いに解答なんてあるのだろうか?

 

 いずれにしろ、この地で得た経験は、きっといつか活かせるだろう。董卓さんにはいくら感謝しても足りないな。

 

 後ろを振り向いて、徐々に小さくなっていく天水城に向かって、俺は深々と頭を下げた。

 

「桔梗さん、次の目的地はどこでしょうか?」

 

「ふむ、次は今回のように簡単にはいくまい」

 

「……どういうことですか?」

 

「次の目的地は、ここよりさらに北にある、中華の果て、西涼だ。そこを治めるは、最強の騎馬隊を有する北の王、馬騰。」

 

「北の王、馬騰……」

 

 馬騰、もちろん聞いたことのある名だった。蜀の五虎将軍に選ばれる馬超の親。俺の知る三国志では、確か曹操に都で殺されて、馬超と曹操が対立する原因になったはず。

 

 でも、馬騰その人に関する記憶はほとんどなかった。桔梗さんは、馬騰さんの事を「王」と言った。桔梗さんが他人の事をそこまで評価するということは、馬騰さん自身、かなりの器の人に違いないだろう。

 

「今回のようにはいかないっていうのは?」

 

「会ってみれば、わかるだろうて」

 

 桔梗さんはそのまま話をはぐらかしてしまった。まぁ、桔梗さんが素直に教えてくれるはずもないな。俺は、目で見て、耳で聞いて、肌で感じるものを率直に受け入れれば良いのだから。

 

 桔梗さんとの会話はそこで打ち切られた。すると、俺たちは仲の良さそうな親子とすれ違った。手を繋いで、買い物にでも行くのだろうか。子供の眩いばかりの笑顔を見ていると、璃々ちゃんのことを思い出した。

 

 璃々ちゃんに、紫苑さんは今頃何をしているのだろう?俺は益州の方の空を見つめながら、二人に思いを馳せた。

 

紫苑視点

 

「ふぅ……」

 

 政務を処理する手を止めて、思わずため息を漏らしてしまった。最近は珍しく政務に集中できていない。何が原因なのかははっきりしていた。椅子から立ち上がり、窓から見える青空に視線を送る。

 

「一刀くん……」

 

 今、どの辺りを歩いているのかしら?桔梗も、気を使って、どこにいるのか便りで知らせてくれても良いものを。

 

 桔梗の事だから、おそらく月さんの所に行くのでしょうね。あそこは他の地域に比べれば、治安も良いし、危険も少ないと思うけど。

 

 一刀くんたちが出発してからすぐに、璃々が寂しくてぐずりだした。

 

「お兄ちゃんは、いつ帰って来るの?」

 

 私の顔を見るたびに、泣きそうになりながらそう言っていた。初め、私はそんな璃々をあやすので苦労したから、気づいていなかったけど、璃々が少しずつ一刀くんのいない生活に慣れ始めたころから、私自身も一刀くんがいないことが堪らなく寂しいことに気付いた。

 

「一刀くん、この書簡を……」

 

 ある日、いつも通りに一刀くんにお使いを頼もうと、彼の部屋に入ってしまった。すでにいない一刀くんの部屋に。

 

 それまでは全く気にしていなかった。しかし、誰もいない一刀くんの部屋を目にした瞬間、一刀くんはすでにいないことを実感してしまった。

 

 自然とそのまま一刀くんの部屋に入った。もうすでにひと月以上も使われていないその部屋からは、一刀くんの気配を感じることは困難になっていた。

 

 一刀くんがいつも寝ている寝台に座って、手のひらで撫でた。すでに彼の温もりは消え、まるで彼の存在など初めからなかったかのように思われた。

 

 頬に涙が流れていた。無意識のうちに我慢していたのだろうか。まるで堰を切ったかのように、涙が止め処なく溢れて来た。

 

 一刀くんが出発する前の晩に、感じた彼の温もり。それは今でも、昨日の事のように思い出せた。

 

 いつの間にか、彼の存在が想像以上に、私の中で大きくなってしまったようだ。璃々の事をとやかく言う事など出来そうにない。

 

 最初はあの人と重ねていただけだった。容姿が、性格が、雰囲気が、あの人に限りなく似ている一刀くんに、自分の想いを擦り付けているだけだった。

 

 酷い言い方になってしまうけれど、一刀くん自身に、私は何の想いも抱いてはいなかった。あの人の代わりとしか思えなかった。

 

 だけど、今は彼に会いたかった。その感情にあの人の影は存在しなかった。私は一刀くんのことをどう思っているのだろう?自分の抱く感情が理解出来ず、私はただ困惑した。

 

 私、どうしてしまったのかしら?あの人が死んでから、こんな感情なんて抱いたことなかった。

 

 ねぇ、一刀くん、あなたにもう一度会ったら、分かるのかしら?こんなに胸を締め付けて止まない、この苦しみの正体が。

 

一刀視点

 

 紫苑さんとの、あの出発前の出来事を思い出した。あの時の紫苑さんの表情、身体の温もり、匂い、全てが鮮明に思い出せた。

 

 これまで女性とあんなシチュエーションになったことがないけど、あれはかなり良い雰囲気だったと思う。

 

 もしかしたら、紫苑さんは俺の事が……?そう思ったら、紫苑さんに堪らなく会いたくなってしまった。

 

「北郷、どうした?そんな顔をして」

 

「え?あぁ、いや、何というか、益州が恋しいなって……」

 

 桔梗さんに、まさか璃々ちゃんや紫苑さんに会えなく寂しいなんて、言えるはずもなく、俺は苦笑しながら、誤魔化そうとした。

 

「ふむ……」

 

 桔梗さんは、じっと俺の顔を見つめると、何か思いついたような顔をして、それからニヤニヤ笑いだした。

 

「まぁ、旅ももう少しの辛抱だ。そうしたら紫苑にも会えるて」

 

「な!?何を言ってるんですか!?」

 

「ほぉ、違ったかの?顔に紫苑に会いたくて堪らんと書いてあるぞ」

 

 本音がばれてしまって、俺は動揺を隠すことが出来なかった。顔が真っ赤になるのが、実感できて、顔を見られまいと、背けた。

 

「まぁ、しかし、恋煩いも程々にしておけよ」

 

「え……?」

 

 さっきのニヤニヤ笑いが急に消えて、桔梗さんは真顔でそう告げた。俺はその意味を理解することが出来なかった。

 

「あの未亡人は、未だに夫の事を忘れられずにいる。これは隠しても仕方のないことだから、はっきり言わせてもらうが、お主はあやつの亡き夫にそっくりなのだ」

 

 桔梗さんの言葉で全て納得してしまった。紫苑さんは俺と前の旦那さんを重ねているのだ。出発前夜のあの時も、きっと俺を前の旦那さんだと……。

 

 次の瞬間には、俺の中にあった感情が急激に冷えていくのが分かった。そうだ、単なる俺の勘違いだ。紫苑さんが俺みたいな子供を男性と見るはずがない。ハハ……馬鹿みたいだな、俺って。

 

「何も儂は諦めろと言っているわけではないぞ。ただ、もし本気で想っているのなら、それなりの覚悟を持ってだな……」

 

「大丈夫ですよ。紫苑さんは俺の命の恩人です。そんな想いを抱くなんて、あの人に失礼ですからね」

 

 俺の顔色が急激に変わったのに気付いて、フォローしようとした桔梗さんの言葉を遮って、この会話に終止符を打った。

 

 そうだ。きっと単なる勘違いだ。命を助けられた恩と、少し優しくされたことで、勝手に俺が都合良いように解釈してしまっているだけ。桔梗さんはそれに気付いて、俺を窘めてくれたんだ。

 

 紫苑さんは俺の大切な恩人だ。ただでさえ俺を養ってくれてるんだから、これ以上、甘えるわけにはいかないよな。

 

桔梗視点

 

「あの未亡人は、未だに夫の事を忘れられずにいる。これは隠しても仕方のないことだから、はっきり言わせてもらうが、お主はあやつの亡き夫にそっくりなのだ」

 

 儂の言葉に北郷の表情は一気に冷めたものになった。まぁ、普通の人間なら、自分が死んだ夫に重ねられていると聞いたら、そいつに幻滅してしまうのも当然だな。

 

「何も儂は諦めろと言っているわけではないぞ。ただ、もし本気で想っているのなら、それなりの覚悟を持ってだな……」

 

「大丈夫ですよ。紫苑さんは俺の命の恩人です。そんな想いを抱くなんて、あの人に失礼ですからね」

 

 儂の言葉を遮って、北郷は悲しそうな笑顔でそう言った。儂も酷い女だな。青年の純粋の想いを踏み躙るようなことを言ってしまった。

 

 だが、これで良いのだ。中途半端な想いを持つな。愛するのなら死ぬほど愛せ。儂の言葉で冷めるようならば、それは単なる勘違いに過ぎぬ。

 

 まぁ、お主もこれで自分と向き合えるだろうよ。もう少し一人で考えてみるのだな。そして、再び紫苑に会った時、本当の自分の想いに気付くはずだ。

 

 全く、面倒な男なことだ、お主も。そういうところまでそっくりだとはの。紫苑も厄介な男のみに好かれるものよ。

 

「桔梗様、一刀と何を話していたのですか?」

 

 北郷と儂が話し終えたのを見計らったように、焔耶が儂に近づいてきた。

 

「一刀がとても悲しい表情をしていたのですが……」

 

 北郷の事を心配しているのだろうが、焔耶が男にこのような表情を見せるとはの。北郷が来る前は、男であるという理由だけで、毛嫌いしていたものを。

 

「お主も頑張るのだぞ」

 

 それだけ言って、焔耶の頭を撫でた。焔耶は訳が分からないという表情をしていた。お主も自分の気持ちにまだ正直になれずにいるのだろう。

 

 儂の周りの人間は、どうしてこう面倒なものばかりなのだ。武将としての腕は、一人前のくせに、女としての腕は半人前だの。

 

 フフフ……益州に帰ってからが楽しみだ。北郷が来てから、本当に飽きない生活が送れそうだな。

 

あとがき

 

更新が遅れてしまって、それに加えて今回は短くなってしまって申し訳ありません。

 

あるユーザーの方から、アドバイスをいただいて、それを参考に今回の話を考えました。久しぶりの紫苑さんの登場です。

 

的確なアドバイスありがとうございました。今後も、何か意見などがありましたら、言っていただけると非常に助かります。

 

今回ですが、書けば書くほど、どう展開させたらよいのか、わからなくなってしまい、結果、こうなってしまいました。

 

すいません。風邪を拗らせてしまい、想うようにネタが思い浮かびませんでした。

 

はい、単なる言い訳ですね、すいません。

 

自分の気持ちに困惑する紫苑。

 

桔梗さんの言葉に、自分の気持ちが勘違いだと思ってしまう一刀。

 

二人の想いはどうなるのでしょうか?

 

書いている作者自身がわからなくなってしまいました。

 

もちろん、最後はハッピーエンドで終わらせるので、そこは御安心してください。

 

そして、前回種馬スキルを思う存分発揮した一刀くんですが、桔梗さんを見れば分かる通り、原作に比べて若干弱めに設定されています。

 

桔梗さんは、一刀の良き相談相手の役目を、これから与えていきたいと思います。

 

過度な期待はせずに、お暇な時だけ御覧ください。

 

次回から旅が再開されます。オリキャラも初登場ですね。誰だかはもうお分かりですよね?

 

おかげ様で、お気に入り登録数が百件を超えました。これも皆様の応援のおかげです。心の底から感謝いたします。これからも、この駄作製造機を応援していただけるとありがたいです。

 

誰か一人でもおもしろいと思ってくれたら嬉しいです。


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
89
6

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択