No.171368

剣と魔導 小話-2

八限さん

小話その2
士郎とティアナとおまけなスバル

2010-09-09 14:05:21 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:21536   閲覧ユーザー数:20160

 

 

 

 唐突な話なのだが、高町なのはの教導とは一体どれほど苛烈なものなのだろうか?

 

「へ? なのはさんの教導の厳しさですか? どれくらいかというと……」

 

「というか、衛宮さん。何でそんなところにいるんですか?」

 

「……? 昼食の準備のためだけど」

 

 機動六課の食堂にて、ジト目呆れ顔のティアナ・ランスターの問いかけに、ジャガイモを茹でつつ、衛宮士郎はさも当然とばかりに答えを返した。

 

「いえ、そういう意味じゃなくて…やっぱりいいです」

 

 これも一宿一飯の恩返しということなのだろう。

 その場にいるのが似合いすぎる頭巾にエプロン姿の出で立ちを見て、ティアナはそう自分を納得させた。

 そういえば先程廊下ですれ違ったとき、『仕事がないわ…』と、困ったように、寂しそうにポツリとアイナさんが呟いていた。

 それを裏付けるように、綺麗に掃除された六課隊舎。この男、本当に午前中で六課隊舎を磨きつくしてくれた。

 なお、現場を目撃していたリィンフォースⅡいわく、『何か、魔法を使ってたみたいです』との事。

 どこの世界に掃除に魔法を使う魔導師がいるというのか。

 いや、彼の世界では魔術師だったか。

 

「…衛宮さん。家事がうまくなると、魔法のスキルアップに繋がるんですか?」

 

「へ?…そうだなぁ…」

 

「いきなりどうしたの? ティアナ?」

 

 呆気にとられた表情の後、考え込む士郎。キョトンとした表情で問いかけてくる傍らに立つスバル。

 

「…ごめんなさい。何でもないです」

 

 馬鹿なことを聞いた。

 額に手を当て、ティアナは軽く頭を振る。

 自分は何を言っているのだ。

 彼の驚異的な狙撃スキルと家事の腕前が関係しているなどと、何で思い至ったのか。

 疲労の蓄積で、思考能力が低下しているのかもしれない。気を取り直し、ティアナは士郎に向き直った。

 

「訓練の内容ですけど、規則がありますので詳しくは話せません。ただ、今まで私達が行ってきた訓練とは一線を画しているのは事実です」

 

「わかった。ちなみに食事の内容は決められてるのか? 食べなきゃいけないものとか、食べられないものとか」

 

「いえ、特には…」

 

「…そうか」

 

 何かを考え込むような素振りを見せつつ、士郎は鶏肉に小麦粉をまぶすと手早く油で揚げていく。

 どうやら昼のおかずは唐揚げのようだ。

 

「じゃあ、特別な食事メニューってわけでもないんだな。普通の食事で問題なしってことか」

 

 そう一人納得するように呟くと、今度は茹でたジャガイモをつぶしてゆく。付け合せにするつもりらしい。

 

「一体どういう事なんですか? 私達の訓練内容と衛宮さんが厨房に立つことに何か関係が?」

 

 知らずキツイ口調になっていたようだ。ティアナの言葉に士郎は顔を上げると苦笑を浮かべた。

 

「特に深い意味はないんだ。みんな訓練で疲れているみたいだから、力のつくものを食べてもらえればと思っただけなんだ」

 

「はぁ…」

 

 キャベツの千切りを作りながら述べられた言葉にティアナは納得いかなげな表情を浮かべた。

 

「もしかして、衛宮さん達は違うんですか? こう、魔力がドーンと上がるような魔法の薬とかを飲んでるんですか」

 

 身振りを交えながらのスバルの言葉に、ティアナはハッと小さく呟くと士郎の方へと向き直った。

 成程、彼ら魔術師の食生活において日常、あるいは疲労時に摂取する特別な食物や薬物があるのであれば先程の質問にも頷ける。

 

「…特別な薬を飲んでいる魔術師もいるかな」

 

 暗に自分は違うとそんな答えが返ってきた。

 

「へぇ~。そうなんですか」

 

 感心した様子で頷くスバル。対して士郎は出来上がった料理を次々と皿に盛り付けていく。

 それはどんな。と、ティアナが言葉を発しかけた丁度その時、ガヤガヤと食堂の入り口が騒がしくなってきた。

 どうやら他の部署も昼休憩に入ったらしい。

 キッチンカウンターに次々と料理並べられていく。

 食欲を刺激する匂いにティアナは無意識のうちに唾を飲み込み、スバルのお腹の虫が鳴き声をあげた。

 照れ隠しに笑うスバルの前にも、盆に載った料理が置かれる。先程士郎が作っていた唐揚げだ。

 続けて大盛りご飯と味噌汁が載せられ、これで完成。

 出来上がった唐揚げ定食を受け取るとティアナは礼を述べて、スバルと共にカウンターから離れた。

 こちらの質問についてはまた後で答えてもらうとしよう。昼時で忙しい時間帯になってしまったようだし。

 すでにおさんどんとなって、配膳を行っている士郎を見やりながら、ティアナはそう判断した。

 しかし…

 

 やっぱり、よくわからない人だなぁ…

 

 

 

 

 

 小話-2 終


 
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