閑話その二
十常侍の屋敷を後にした俺と言葉は宿に帰るために屋台など冷やかしつつ歩いていた。
ふと言葉が戦闘体制に入り、静かに体制を低くする。
―追手か?いくら華琳の為とは言え、少し焦りすぎたか?
後ろから気配が近づく。速い。
屋台が並ぶこの通りは、人が多く刀は使えない。
一呼吸おいて、体術で迎え撃つために体制を低くする。
そして、俺が振り返り見たものは・・・。
「えっ?」
犬のドアップだった。俺はそのまま押し倒され、顔中を嘗め回された。
その犬がようやく体から下り、俺の周りを走り回る。
「一刀様、大丈夫ですか?」
「ああ。でも、びっくりした。コーギーかな?」
「こぉぎぃ?ですか?」
「ああ、犬の種類だよ。」
「はぁ。」
その犬は、俺の袖を引っ張り始め、まるでついて来いといっているようだった。
「どうする?」
「遊んで差し上げれば良いんじゃないでしょうか?この後には何も予定は入っていませんし。」
「そうだな。」
その犬は、一定の距離を保ち俺達の前を走り、一軒の家に着いた。
周辺の家に比べ5倍ほどだろうか、かなり大きい。
家の中を歩くと中庭の木陰で二人の女の子が寝ていた。
二人を起こさないようにそっと近づいた。
あと十数歩のところで、その内の一人が俺に気付き、殺気を飛ばす。
「・・・・誰だ?」
「俺は、北郷一刀。この子と遊んでたらこの家に着いたんだ。」
俺は犬を抱き上げながら言った。
それを見た女の子は殺気を出すのを止め、首を傾げた。
「・・・・不思議。」
「何がだい?」
「セキトが人に懐くの・・・。」
「セキト?この犬かい?」
「・・・・・・・・コクン」
「そうなんだ。お前、セキトって言うのか。」
「ワフン。」
俺の応えにセキトが応える。
「そういえば君の名前なんていうの?」
「・・・・恋。」
「恋って真名じゃないのかい?」
「セキトが懐いてるから。セキト悪い人には絶対懐かない。・・・だから良い。」
「そうか、それで性と名は?」
「呂布。」
彼女の名に驚く。彼女が飛将軍と恐れられた呂布だという事に。
彼女は猛将というより、小動物と言ったほうがしっくり来る。
試しに先ほど買った点心を恋に上げてみる。
恋は点心をまとめて口の中に詰め込みリスのようになっている。
俺はその姿を見て思わず笑みがこぼれる。
「そんなに慌てて食べなくても取ったりしないよ。」
「・・・・・コクン。」
「まだ食べるかい?」
「コクン。」
「わかった。もう一度、屋台に戻って買ってくるよ。今度は、あそこで寝てる女の子にも食べたがるとおもうからね。」
「・・・・すぐ戻ってきて。」
「わかった。」
俺は、恋の頭を一撫でして屋台があった通りに向かい、点心など大量に買いあさり恋の家に戻った。
恋はじっと俺の持つ荷物から視線をはずさない。
「恋。あの子起こしてくれないか?一緒に食べようか。」
「・・・・コクン。」
恋はまだ眠っていた女の子の元に向かって走っていった。テーブルの上に買ってきた点心などを並べ二人が来るのを待った。
「・・・一刀。」
「恋。連れてきてくれてありがとう。」
「貴方は?」
「俺は北郷一刀だ。」
「わたしは陳留王。いや劉協と名乗ったほうが良いかしら?」
「!!」
彼女が帝位継承権二位の劉協。器も兄の劉弁にも優ると言われた実質この国のNo.2である。
「失礼いたしました。殿下、先ほどのご無礼お許しください。」
俺はすぐさま殿下の前で膝をつく。
ここで何かあれば華琳の名に傷がつく。
「気にするな。ここに居るのは、ただ友として恋に会いに来ただけだ。」
「しかし・・・。」
「恋。北郷は信用に足る人物か?」
「・・・コクン」
「なら良い。恋もこう言ってる。」
「・・・・わかりました。」
「それに、曹魏の種馬と言われる人物がどのような人物か気になっておったところだ。」
「!!・・・ゴホッ、ゴホッ。」
劉協からの一言で俺は盛大に噎せた。噴出さなかっただけでも上出来だと思う。
御使いならまだしも種馬と知られてるとは・・・。
「姫様。種馬とはどういうことでしょうか?」
「君主である曹操を筆頭によなよな乙女の純潔を奪っておると聞いたが?」
「それは噂に過ぎません。」
「詰まらんのぉ~。」
「はぁ。」
俺は十常侍を相手した時以上の疲労感に襲われた。
その後は買って来た料理を食べ、日が沈むまで他愛のない話をした。
「そろそろお暇させて貰うよ。」
「そうか・・・。」
劉協の表情が曇る。
「姫様?どうかなさいました?」
「一刀よ。今日は話が出来て良かった。」
「そう仰ってくださるとは、光栄ですね。」
「やはり独りは寂しい・・・。」
「姫様。」
「のう一刀よ。私と友になってくれないか?」
帝位継承者である以上、近づいてくる人間は必ず野心を持っている。
権力争いの中にいるのだ。しがらみの無い人間と接するのはおそらく恋が初めてなんだろう。
だから劉協は恋に心を許しているのだろう。
「もちろんですよ。」
俺は劉協の頭を撫でながら応えた。
「そうか・・・一刀は私の友か。///。」
そういうと彼女は照れているのか少し頬に朱が挿した。
「では姫様、これで失礼いたします。」
俺たちは洛陽を後に許昌に向かい馬を走らせた。
今回のオリキャラは劉協でした。
容姿は華琳の髪が茶色+ストレートって感じのイメージなんですがね。
彼女は華琳のライバル的な存在にしたいと思います。
実際思ってるだけでどうなるかはわかりません。
あとがき
今回かなり間が開いてしまいました。本当に申し訳ないです。
夏休みになって時間が空くかと思えばまったく時間がなく遅れてしまいました。
ここで孫堅さんの真名を募集します。なかなかいい名前が思い浮かばないのでお力を借りたいです。どうぞよろしくお願いします。
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遅くなりました。
今回も閑話です。
今回もオリキャラがいます。