No.157138

雪蓮愛歌 第04話

三蓮さん

オリジナルの要素あり

2010-07-12 03:49:10 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:4189   閲覧ユーザー数:3142

Another Side(風 done it?)

 

お二人ともやはり驚いていましたね。

 

今思えば、稟ちゃんはあこがれの華琳様を見てよく鼻血を…あ、こんな距離からでも見えるほど強烈に出していますね。いつもの稟ちゃんです。

 

さて、お兄さん達の所に行ってみますか。

 

客観的に見るなら、風の行動を誰もが不思議がるかも知れませんねー。

 

私が星ちゃんや稟ちゃんと一緒に大陸を見回っていたのは、見識を広めるため。

 

今、この大陸がどこかしらおかしいと感じているから。私に出来ることは限られていても、人のためにありたかったから。そのためには知識が、己の視点を広げる必要があります。

 

さて、大陸の平穏を求めるならば、例えば曹操様の様な方に軍師としてお仕えするのが普通かも知れません。

 

でも私はお兄さん達に興味を持ちました。何故だか分かりますか?

 

 

天の御遣いだから?

 

…商人に怪しい物を売られないように注意しましょうねー。

 

 

風達の真名を知っていたから?

 

…何時の時代も、「情報が漏れない事」はないでしょう。

 

仮に何を知っていても、偶然それを知っている、なんてことは起こりうるのですよ-。

 

 

雪蓮ちゃんがとても強いから?

 

なるほど。でも強い人なんて、いくらでも上がいるかもしれないじゃないですか。

 

それに軍師たるもの、個人の武に期待を掛けすぎないことは基本ですしね。

 

まぁ、確かにアレは人間離れしていますけどねー。

 

 

正解は、お二人の雰囲気、です。

 

 

とはいっても、雪蓮ちゃんが気品のある雰囲気とか、お兄さんが明らかに女たらしの雰囲気とか、そういう事じゃないですよー。

 

 

 

一体この二人は、どれほどの戦場を乗り越えたのだろう。

 

一体この二人は、どれほどの人の死を見てきたのだろう。

 

 

 

私も一応、軍師の末席に身をおくもの。

 

何度か小さな国の軍や義勇軍の指揮をしたことがあります。

 

そんなとき軍師として一番気をつけなければならないのは、戦術や策なんかじゃないのですよ。

 

戦場に赴く兵士の様子です。

 

私が指揮したことのある兵の何人かは必ず精神的に不安定になりました。

 

何せ今から、「自分」が人を殺す事になるかもしれないですからね。

 

また戦場から帰ってきても、心を閉ざしてしまったことも何度もありました。

 

大義のため、村のため、己の家族のため、いろんな理由があっても戦は怖いものですよ。

 

逆に連戦しても、精神的に何も変わらない人は、すごいなーって思うのと同時に人としてどっかずれているようにも思います。

 

 

話がそれましたね。要は、戦へ出陣する度に、普通の人は心の均衡を保てなくなります。

 

では普通の人が保てるようになるには、どうすれば良いと思いますか?

 

ぶっちゃけ、回数、経験だけが均衡を助けるのです。

 

 

あの二人は何度戦場に立ったことがあるのでしょう。

 

お兄さんはきっと、春蘭ちゃんどころか、普通の兵士よりも武は弱いでしょうね。

 

でも、戦場に出た回数はお兄さんでも今の春蘭ちゃんより多いでしょうね。

 

なのに、まだ戦場に立つと言っているのです。

 

 

何がそんなに二人を駆り立てるのか。

 

言葉なんかじゃない部分が、私は知りたいと思いました。

 

 

そして私の軍師としての知略をもって、それを助けられたなら…。

 

 

 

君は蓮華と俺の手をつながせて、その上から両手で優しく包み込んだ。

 

 

「呉の未来は、…………に掛かっ…………る……」

 

 

 違うだろう、雪蓮も…君が必要なんだ!!

 

 

「二人………………て……呉の民………………い……」

 

 

 俺たちだけじゃ、無理だよ。雪蓮がいないなんて、無理だよ!!

 

 

「さよ、なら……………………と……あな…………えて―」

 

 

  雪蓮!!雪蓮!!雪蓮!!

 

 

 

 

 

 

 

「うっそー、かーずと、ぎゅー♪」

 

 

へ?うそ?いや、周りは何で俺のことを白い目で見ているの。

 

蓮華?いや、確かに雪蓮は毒矢で…痛い。手が痛いって。そんなに強く握らないで!

 

雪蓮、面白そうな顔してないで、いや、便乗して右手を、痛い。

 

痛い、本当に痛いから、痛いって!!!

 

 

 

 

「はっ!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

チュンチュン、チュン。

 

さえずりな小鳥のさわやかとともに北郷一刀目覚めます、俺。

 

…余りにもひどい夢だったから混乱してしまった。

 

寝汗がひどいな、そう思って起き上がろうとしたが、

 

右手が雪蓮に拘束されていた。

 

俺の右腕を半ばバンザイさせて、ひっしりと手首を握っていた。

 

 

「ぐぅー、すぴすぴすぴー」

 

静かな寝息。ちょっと意識すると、胸が上下しているのを感じる。

 

 

今日で二日目だ。ここで軽く、今まで何があったかを整理してみると…

 

 

 

 

 

あの宴の翌日。結局あの店の部屋で雑魚寝をしてしまった。

 

…皆、凄い格好で寝ているな、そう思いながら華琳と秋蘭の姿が無かった。

 

あれ、もう出たのか?早いなー、とかぼけっとおもいながら部屋をでると、華琳、秋蘭が店の店主と会話していた。

 

 

「…こうだから二回にして欲しいのよ。保障は…」

 

「いえ、曹操様ですから信頼をしておりますが、ここだけは…」

 

「うむ、そうしよう。では騎馬の…」

 

 

一体何の会話をしているのだろう…声をかけてみるか。

 

「華琳、秋蘭、おはよう。どうしたの?」

 

「あら。お、おはよう、一刀。なんでもない、わ、よ」

 

「…う、うむ。おはよう、北郷」

 

 

華琳はなんだか顔が引きつっているようにも見えるし、秋蘭はあの苦悩の顔をしている…これはかなり深刻な、春蘭が料理をした時ぐらいのレベルか。

 

「どうした、何か…」

 

「なんでもないの、秋蘭と一緒にあちらで待っていて」

 

「いこうか、北郷」

 

そういって促されるように一刀はその場を離れた。

 

 

「本当に何かあったんじゃないのか?」

 

「…うむ。あるにはあったのだが…やめておこう」

 

「その、機密云々じゃなければ、話して欲しい」

 

「機密…ではない。実は…」

 

 

 

そういって秋蘭が昨日会ったことを話し始めた。

 

これも何かの縁、そういって華琳の主催で昨日の宴は始まった。

 

初めは粛々と宴は進んでいた。だが、皆、お酒が入って気分が良くなったのだろう、雪蓮と星が悪ノリしていったらしい。

 

初めに、俺、風、稟があっけなく沈没。

 

その後、ターゲットは春蘭に。猫化して秋蘭の膝でゴロゴロ…沈没。

 

最後に四人が残ったのだが、秋蘭もギリギリまで粘って…最後に、酒を入れた器ごとすすめられて酒を飲み干したところで記憶が途切れたらしい。

 

そして(ストライク)フリーダム二機相手に奮闘する華琳。

 

後に華琳は語る。

 

「将の中で最も武を極めたものを決めることは難しい。だが酒を最も極めたものは私を悩ませる必要が無いだろう…今も頭痛がするけど」

 

 

 

「あ…ああ…」

 

「その後もまだ飲み続けていたらしい」

 

「すまん、秋蘭。やつらはかつて『蜀』の時代、酒豪として一位、二位を…」

 

 

やはりか…秋蘭は顔に手をのせて天を仰ぎ見た。

 

 

「で、いくらだったんだ?」

 

「…うむ」

 

 

突然だが、華琳はお金持ちだ。

 

陳留刺史にして、祖父は大長秋という最高位の宦官。

 

無論、色々な戦をしなければならないのでそのために軍資金がいる。

 

が、兵士の待遇はたぶん記憶の中で一番良かった。

 

しかし、金遣いが荒いわけではない。

 

華琳は自身の覇道のために、資金が無限に必要となってくることを知っている。

 

引き締めるところはきゅっと、出すときは惜しみなく。

 

それ故に、規模で勝る袁紹にも負けることは無かったのかも知れない。

 

…まわりくどくなったが何が言いたいかというと、

 

「秋蘭」

 

「…」

 

「俺の記憶が正しければ、予算の五倍はいっているよな?」

 

「…さすが、『天の御遣い』」

 

「秋蘭、店主と交渉がついた「すんませんでした!!」わよ」

 

日本式ドゲザを速やかに実行する俺。

 

その時、隣の部屋から雪蓮が起きてきた。

 

「おはよー、あれ、一刀、何やってんのー?」

 

あくびをしている雪蓮を見ても、華琳は笑顔を崩さなかった。

 

華琳さん。あんた、漢や…。

 

 

 

その後、さすがに俺たちが華琳達に支障をきたしては本末転倒ということで、盗賊の討伐に手を貸すことになった。

 

一刀が働くわよー、とは言っていたものの、雪蓮の目は明らかにやる気だった。

 

「血を見ても冷静でいられる」と言っていたから、少し安心した。

 

で、風が「ついていきますー」と仲間になってくれた。

 

華琳じゃなくて俺たちで良いのかと聞いたら「稟ちゃんが華琳様につくでしょうから」とのこと。

 

軍師は多分この後、桂花がつくのだろうけど…。

 

 

 

「すぴすぴ、むにゃ」

 

いかん、考え事をしていて意識が飛んだな。

 

で、華琳にあてがわれた部屋に俺たちはいる。

 

さすがに住み込みで働くので部屋は一部屋…いや、

 

「一刀と一緒ならどうでもいいー」って言っていたから、どのみち一部屋だったか。

 

で、昨日は迷惑を掛けた料理屋のために、あちこちの村に馬で食材を取りにいったり、

 

少人数の盗賊が馬を走らせていたから、雪蓮と春蘭で軽く脅して情報を吐かせたりしてたな。

 

 

で、昨日とはうってかわって慎ましく夕食。

 

そのまま、…があって、就寝。

 

そして目覚めると、雪蓮が右腕を(以下略。

 

「むにゃ…おはようー、かーずとー」

 

雪蓮が起きた。

 

「おはよう、雪蓮。悪いが、腕を」

 

「腕?あら、ごめんなさい…一刀、凄い汗ね」

 

そういいながら俺の腕を放す雪蓮

 

「ああ、凄い夢をみたからな」

 

「どんな夢?」

 

「雪蓮が死ぬときの夢なんだけれど、雪蓮が茶化して感動の瞬間を壊してしまう夢」

 

そう聞くと、一瞬ポカンとしたのち、ククッと笑い出した。

 

「そっかー、よかった♪」

 

「良くないよ。もし物語だったら、一番感動する山場じゃないか」

 

「ううん、夢でも一刀が泣くことなくて」

 

 

もう私がいるから。たとえ夢だって、私は一刀を泣かせない。

 

 

そう言われて、ぐっ、ときてしまった。

 

思わず一刀は横を向いた。

 

「で、でも…もう、雪蓮ひどいんだぜ、ぎゅっと痛いくらい冗談で手を握ってきて」

 

「ふふふ♪でもそうね、」

 

そういって雪蓮はノソノソと俺の上をホフク前進してきた。

 

「こーんな、汗をかいちゃうような夢を見るってことは、昨日、私が注いだ一刀への愛が足りないってことね」

 

両手でぎゅっと俺を寝台に押しつけて、見下ろす雪蓮。

 

今、バスローブみたいな夜用の着物を着ているけれど…薄い。

 

なんだか、雪蓮の体にピッタリと張り付いていて…。

 

「いや、どっちかというと注いだのは俺で…違う、そうじゃな―」

 

ピタっと人差し指が俺の口を押さえるように触れる。

 

思わず黙ってしまった…。

 

そして、雪蓮の顔が…。

 

 

 

「一刀、雪蓮、悪いのだけれどそろそろ―」

 

 

 

入り口に見えますのは、魏の王、曹操。

 

朝でもシャキッと決まっていますねー。

 

優秀な部下が付いてくる理由が分かります。

 

 

 

対する、寝具に見えます北郷一刀・孫策はどうでしょう?

 

両者、全力で半裸。

 

寝起きで服は乱れて、しかも一刀君の上に何かが乗っかっていますねー。

 

 

 

「…夜にして、悪いけれどすぐに大広間に集合して頂戴。頼むわね」

 

「違うんだ華琳、これは―」

 

「いいのよ。ちょっと気になっていた疑問も解決したし」

 

「疑問?」

 

そういって、納得した顔をしている華琳に尋ねる。

 

「いや、なんでもないわ。 ――やはり一刀が受けだったわね」

 

そういって立ち去る華琳。

 

一刀の雄叫びが城中に響いたのは言うまでもない。

 

 

 

 

「と、いうわけで、盗賊討伐ですよー」

 

俺たち六人は広間で簡易の軍議を開いていた。

 

「といっても、一刀たちは将ではないから雪蓮はただの兵士として、風は私の近くで軍師として働いてもらうことになるわ」

 

「わかった」

 

「あと、雪蓮には春蘭と前線に出て欲しいのよ。理由は二つ」

 

 

一つは「余所者」である一刀達の信頼を軍に示すため。

 

もう一つは「天の御遣い」として前線を鼓舞する役割を夏侯姉妹と共に担うため。

 

 

「任されましょ。本格的な戦らしい戦は久々ねー。敵は殺してしまってもかまわないわね?」

 

「ええ。村の被害は死刑に相当してもおかしくないものばかり。やり過ぎるぐらいでちょうど良いわ」

 

 

「ではこれにて終了する。他に意見は…北郷?」

 

「ああ、すまない。秋蘭に頼みたいことがあるんだ。華琳の許可も欲しいことなんだが…」

 

会議が終わる前に、俺は思いついたことを秋蘭に話してみた。

 

 

 

「…そんなことできるの?」

 

華琳が疑問を投げかけてきた。反応は純粋な疑問、否定はしていない好感触だった。

 

「ああ。実際、天の国、俺たちの国でもやられていたしな」

 

「利点は?」

 

「ようは『展開力の早さ』につきるんだ。この差はでかい」

 

「…私には発想自体が無かったわ。確かに出来れば強いわね。しかもさして準備に時間がかからないわ。どうして私たちにそんなことを教えたの」

 

「俺たちの都合…いや、弓の名手は何人もいるんだ。だが、実際に出来そうなのは、多分秋蘭とその部隊ぐらいだと俺は考えているんだ」

 

「秋蘭、できそう?」

 

「既存の弓兵の運用とは根本から変わりますが…おもしろい。やってみたいと考えています」

 

「そう。なら、試験的にやってみましょうか。ただ今回、実際にやるのは秋蘭だけにして…といっても、多分今は秋蘭しか出来ないでしょう」

 

 

こうして、俺の考えを華琳に伝えて、会議は終了した。

 

 


 
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