No.156080

雪蓮愛歌 第03話

三蓮さん

オリジナル要素あり

2010-07-08 00:57:38 投稿 / 全12ページ    総閲覧数:4097   閲覧ユーザー数:3118

Another Side(王様の夢)

 

最近よく夢を見る。

 

名を『一刀』という天の御使いとともに、私が大陸を統一していく物語だった。

 

雪蓮姉様が毒矢にやられて、最後の大号令を発して、

 

皆が姉様の魂に導かれるように、互いに手を取り合っていく物語。

 

結局、もう一つの(思い出せないのだが)国と一緒に大陸を二分していくのだが、

 

ウマがあうのか、「これでよかったな」と思える統治を互いに行えていた。

 

交易・交流も活発になり、私が死に絶えるまで穏やかな日々を。

 

強すぎては人の身を裂くのだが、皆にちょうどいい、暖かい栄華が続いていった。

 

 

ああ、これが幸せか。これが本物の永遠か。

 

 

目が覚めると、私の視界に一本の剣が飛び込んでくる。

 

『南海覇王』

 

雪蓮姉様がこの先の道のためにと残した剣。

 

思えば、この剣を賜ったときからあの夢を見るようになった…。

 

 

この剣は、いうなれば器でしかない。

 

本当に授かった中身は、この心の中にあるのだから。

 

 

鞘から抜き、剣を磨くことが私の朝の日課になっていた。

 

己の心を、より磨いていけるように願を掛けて。

 

「おはようございます、蓮華様」

 

「あら、おはよう思春」

 

彼女が侍女とともに部屋に入ってくる。

 

朝の身だしなみのために、毎日の光景となっていた。

 

 

 

「蓮華様、最近柔らかいお顔をされるようになりましたね」

 

「あらそう?自分ではよく分からないのだけれど」

 

髪の手入れをしていると、ふいに思春がそんなことを言ってきた。

 

「ええ、最近、なんだか…」

 

「なんだか?」

 

「いえ、失礼しました。私の思い違いです」

 

 

思春はどこかくすぶるような寂しさを覚えていた。

 

いや、彼女にとってそれは喜びを覚えることであり、間違ってもそんな思いを抱くことではない。

 

でも不思議に思う。

 

いつ自分の主は、こんなに強い心の持ち主になったのだろう、と。

 

 

 

 

「…しこまれているわねー」

 

追いかけた3人は、私に追いつかれるのが分かると、全員毒を口に含んで自害した。

 

死体を軽く調べても、手がかりは無いに等しい。

 

武器は大陸の戦で使われるものじゃない…狩猟用の小型の弓だった。

 

予想していたことだが、自分が『蜀』の外史で撃退した「五胡の兵」以上の情報が得られなかった。

 

 

 

今回わざわざ追いかけたのは、実は自分の身体能力を確かめる意味があった。

 

卑弥呼にかなり強化されているとは聞いていたが…ここまでのものとは思わなかった。

 

体力そのものも上がっていて、「狩り」に息一つついていない。

 

加えて、自分の欠点であった「高揚する感覚」もなく、冷静になっている。

 

「これはもうけものよねー♪

 

 しかし…いきなり毒矢かー、何かの運命なのかしらね」

 

過去、二度毒矢で死んだ雪蓮だからだろうか。

 

一刀が叫ぶ大分前に(雪蓮の体感時間では)、敵に気づくことができた。

 

隠そうとして必死に隠れている悪意に。

 

矢を縦にわざわざ裂いたのは、今までの意趣返しだったのだが。

 

 

「さて…戻るかー。あーお酒飲みたいなー…」

 

そう言って手元の『南海覇王』を消した。

 

これがこの度の秘密兵器、魂魄『南海覇王』だったりする。

 

通常の南海覇王と比べて、剣そのものは強度が上がっているくらいの特徴しかないのだが、

 

雪蓮の意志で出したり消したりできる、という利便性があった。

 

卑弥呼からは「過去三度の外史が~」「気が~」と言われていたが、実は雪蓮にはよく分からなかった。

 

卑弥呼も「一応説明しておく」くらいのものだったから、まぁそのあたりは問題ないのだろう。

 

「…何か忘れているような気がするけれど…まぁ、いいか」

 

行きとは対照的に、ゆっくりと一刀の下に帰る雪蓮だった。

 

靴を足でトントンとすると、ああやっぱり「ひーる」じゃないから少し速く走れた…のかしら?

 

なんて思いながら。

 

 

 

「で、どういうことか説明してもらえるんでしょうね」

 

華琳の言葉は、文面は疑問型だが、明らかに「強制」「命令」の意志を含んでいた。

 

「え、えっと、俺はしがない旅の」

 

「もう聞 き あ き た わ!」

 

「華琳様、こやつを拷問に掛けましょうか!?」

 

「まま、まってくれ、助けた、そう、助けたじゃないか」

 

 

現在、一刀はある料理屋の特等席にいた。

 

ソファーのような長椅子の中央にひとりぽつんと。

 

そしてぶっちゃけ、尋問をうけていた。

 

一刀の正面には華琳。

 

一刀の背面左右には夏侯姉妹。

 

その付近で星たち3人は一刀を見ていた。

 

くそっ、官軍に関わってやっかいなことに巻き込んでくれたな、と。

 

…もしや破滅の外史とは、俺が理不尽のまま皆に白い目で見られ続ける外史か…。

 

 

「ええそうね助けてもらったわ。だから礼をしたいのよ。

 

 けど、貴方がどこの誰だか分からない以上、礼をすることもできないでしょう?

 

 貴方が悪党だったり、奴らのグルかもしれないじゃない」

 

 

言っていることは正論だ、至極。

 

 

「だから、身を明かせと言っているの。

 

 上から目線でわるいけどね、

 

 あの女とこの布、どう考えても普通じゃないでしょう」

 

 

雪蓮は大陸の出身だぞー…っていっても、正確には違うのか。

 

 

「お主、名は?」

 

「北郷、北郷一刀」

 

埒があかないと思ったのだろう、秋蘭が一つ一つ質問をしてきた。

 

「そうか。では北郷、何故お主は私の名前を知っていた?」

 

「名前?真名なら知らないぞ」

 

「そうではない、なぜ私が『夏侯淵』だと思った。

 

 私は曹操様の、言ってみれば私的な部下。顔を知るものなど限られているはずだ」

 

…あ。

 

『魏』の外史の教訓から、真名には気をつけようとは思っていた。

 

そうか、今華琳は刺史、華琳でさえ顔は有名ではない。

 

その部下である秋蘭の顔を、どれくらい知っているのだろう。

 

…やられた。

 

 

 

「そ、それは「見つけた、かーずと♪」わぷっ」

 

急に赤い何かが一刀の上に覆い被さってきた。

 

流れに逆らって泳ぐ川魚のように、優雅にでしなやかな動きが周囲の兵をすり抜けた。

 

「ね、かずと、お酒飲みたいの♪ついでにアレが再発しちゃったのよ~」

 

「う、嘘付け、顔が笑っているじゃないか~」

 

「えー「おほん!」」

 

 

 

周囲に明らかに白い目で見られている一刀。

 

お構いなしに一刀を押し倒して、胸をスリスリ、ゴロニャんとしている雪蓮。

 

 

そんな中、春蘭がとうとう忍耐の限界に来てしまった。

 

「おい貴様ら、ふざけているのか!

 

 質問に答えなければ、賊と見なして叩き切るぞ!」

 

大きな剣を向ける春蘭。が、

 

 

 

「…下がれ下郎。なにか?見ず知らずの人間に剣を向けるのが趣味か?

 

 そんな高圧的な態度をされては、動く口も動かぬわ」

 

 

 

引退した。

 

そう本人はいうものの、色々とパワーアップしている今、彼女の威圧は「江東の虎」に恥じるどころか、歴代随一といっても過言ではないだろう。

 

後ろの方で、兵が数名気絶した。

 

 

「なっ…貴様!!!」

 

雰囲気に飲まれなかったのは、彼女の武人としての誇りと華琳への忠誠故に。

 

本来、武人は武器を持たぬ人間に剣を向けない。

 

だが目の前の褐色の女は、振らねば頸が飛ぶ。

 

そう、今すぐ…。

 

 

「両者よせ!!!」

 

 

シーンと、静寂が訪れて空気がニュートラルに、空間を締め付けていたものがなくなる。

 

「すまない、確かに俺はごまかそうとしていた。

 

 それは、俺が君たちに今関わるとこちらの都合が悪くなるからだ、分かって欲しい。

 

 毒矢から守ったのも、その都合のため、君らを大事にしたいためなんだ。

 

 それと雪蓮、やり過ぎだ。

 

 『交渉を優位にすべきなら相手を己の卓に座らせよ』は君から教えてもらったことだ。

 

 だが俺たちは、か…曹操相手にそんなことをすべき人間ではないだろう?」

 

「…ぶーぶー」

 

先ほどのわざとらしいまでに甘えた態度をやめ、一刀の胸にコツンと額をのせる雪蓮。

 

彼女の肩を支えながら、ゆっくりと一刀は起き上がると、雪蓮を左に座らせて華琳と向き合った。

 

「すまなかった。こちらの素性と、本当のことを話そう。

 

 ただ、荒唐無稽で、嘘だと言われても仕方がない話なんだ。

 

 …最後まで聞いてくれるか?」

 

「…分かったわ、最後まで話を聞きましょう。

 

 秋蘭、悪いけれど、兵と武芸者たちには、席を外してもらえるよう…」

 

「待ってくれ、一応せ…趙雲さん達にも関連のあることなんだ。

 

 だから…もし望むのならば、聞く権利がある…」

 

どうする、と星達に視線を送る一刀。

 

三人は俯いて考えた後、

 

「分かりました、お聞きしましょう」

 

と、席に着いた。

 

 

 

「…つまり何、これがあなたにとって、4度目ということ?」

 

一刀は抽象的なことだけを話した。

 

 

自分が「天の御使い」として、三度の外史で統一を見届けたこと。

 

一度(『蜀』時代は微妙なので)天下を華琳が取っていること。

 

風と稟は大陸を見回った後に、華琳につかえることを決めたこと。

 

星も武将として活躍していくこと。

 

そして、この外史が五胡に飲み込まれる破滅の外史であること。

 

「『占い』のことは耳にしていただろう?」

 

「そうね。確かに耳にしているわ」

 

「だいたい、『おまえのことをよく知っている』って突然言われたところで、特に曹操なんかは気分が悪いだろうし…」

 

「それは誰だって知らない人間に言われたらそうなるわ。

 

 でも、それより気になることがあるわ。」

 

「何かな?」

 

「仮に、貴方が言うことが全て本当だと仮定するわよ。

 

 どうして貴方はかつて一緒だった私、『曹操』の前から逃げだそうとしたのかしら」

 

 

仮に一刀の言葉が真実ならば、何故わざわざ私の前から姿を消す必要があるのか、と。

 

 

「それは…『魏』『呉』『蜀』各々の体制確立と『蜀』時代の三国同盟をより速く成立させたいからだ。

 

 特に『蜀』は、そのためにいろいろと「ズル」ができる…外部からの将がおおいからな。

 

 そして、3つの外史でカギになったいくつかの戦い、

 

 特に『反董卓連合』と『赤壁』と呼ばれる戦いで消耗をさせない、どうにかねじ曲げてでも避けたい…

 

たぶんそんなことをしている暇がないんだよ、この世界では」

 

あの初っ端からの狙撃を見ている限り。

 

「まって下さい。もし北郷殿の描く夢物語を完成させたいのなら、

 

 逆に戦いは必須なのではないですか?

 

 その『赤壁』とやらで、失礼ながら曹操様が負けて同盟が生まれるのが、その『蜀』の話だと言っていたではないですか」

 

稟が口を挟んだ。

 

「そうだ、その通りだ。ただ、今回は五胡の勢力が圧倒的、桁違いなんだよ」

 

 

貂蝉が言う話からすれば、蜀の外史の100万などという数値と比べものにならないはず。

 

もし対抗するならば…夢物語を、理想の軍隊を皆の手でつくりあげなければならない。

 

 

「だから俺が逃げ出した理由は、

 

 俺の現状を話してしまえば、それは『覇道をあきらめろ』と間接的に言っていることになるんだ」

 

「私があんたのいうことを鵜呑みにするとでも?」

 

「鵜呑みにはしない。曹操は民を、臣を、現実をちゃんとみる王様だから。

 

 だが俺の言葉が経験に基づいているせいで、奇妙な説得力をもってしまっているんだ。

 

 そのせいで…君に、」

 

 いびつな傷を、つけてしまうから。

 

 

 

「…気に入らないわね」

 

華琳は茶を飲み干すと、ほとんど割るような勢いで陶器を卓にたたきつけた。

 

「すまない、無礼だった…」

 

 

 

「違う!!

 

 あんたに礼儀なんて期待していない、

 

 三度も同じことやって身につかないようじゃ、あきらめることね!!

 

 覇道をあきらめろというのが嫌だった?

 

 いくらあんたが言うことに信憑性あっても、そんなの占いと同じよ!!

 

 だいたいこの先、あと何度私がその言葉を言われるかなんて、少し考えれば分かるでしょう!?」

 

 

 

「そ、それは…」

 

 

 

「だいたいあんたの言う他の世界で、一体『私』の何処を見てきたの!!

 

 あんたの知っている『曹操』は、そんなあんたに左右されるようなナヨナヨしい女か!!

 

 だったら、あんたの目が腐っていたのよ!!断言するわ、そいつは私じゃない!!

 

 あんたがこの大陸を、かつて一緒に戦った『私たち』を愛しているのは分かるわ。

 

 でも、そのために一人でグルグルと抱え込んでたら、結局袋小路じゃない!!

 

 あんたそのうち、一人で戦い出すとかそのうち言い出すわよ。

 

 そしてなにより、なによりも耐え難いことはね、」

 

 

 

「どうして! 目の前にいる、『私』を、見ようとしないのだ、北郷一刀!!!!」

 

 

 

 

華琳は悲しかった。

 

とても悲しかった。

 

目の前にいる男が、別の世界で天下のために私に尽くしたことはおそらく事実だろう。

 

だから、嘘さえもつけない彼の感情を押しつけられているようで、とてもいたい。

 

それが真綿のようにいくら柔らかくても、強すぎるのだ。

 

しかもそれは、『私』の全身をぎゅっとしてくるものだったから。

 

どうしてこんな気持ちになるのか、芯の部分はもしかしたら分かっていないかも知れないけれど。

 

 

「所詮、あなたの描く大陸の救済も、私の思い描く天下も、今は夢物語。

 

 この手で一つ一つ積み重ねていくしかないわ。

 

 天の知識をもって、『私』を思ってくれることはうれしいこと。

 

 あなたの中の私は、とても綺麗なのね。

 

 でも、あなたのやろうとしていることは、まず目の前を見る必要があるんじゃないかしら?」

 

―何が、見える?

 

 

ああ、華琳が見える。

 

春蘭が、秋蘭が、そして星が、風が、稟が。

 

そして、いつのまにか俺の左手を黙って握っていてくれた、

 

雪蓮が。

 

 

「俺は、間違っていたのか?」

 

「いいえ、その思いは大切なものよ」

 

「俺は、傲慢だったのか?」

 

「いいえ、それとは対極…すぎるのよ」

 

 

 

静寂。そして華琳が左手の鈴を鳴らした。

 

「さて、私も自分の今を重ねすぎて、感情的になりすぎたわ。

 

 悪かったわね」

 

「いや、こっちも、すまなかった」

 

「貴様~、華琳様が謝っているのに、なんだその態度は!!!」

 

「いやっ、剣が! 剣が首に当たってますー!!」

 

「姉者、やめぬか」

 

「しかしこやつが~」

 

 

扉が開かれると次から次に運ばれてくる、料理、料理、料理。

 

「これも何かの縁、武芸者…いつまでもそう呼ぶのも苦しいわね。

 

 酒は好きでしょう?一席どうかしら?

 

 とりあえず、私は曹操、字は孟徳。

 

 ここにいる英雄…候補たちへ。真名は華琳よ」

 

「か、華琳様!!」

 

「どうせ『何故か』知っている奴が2人ほどいるようだから、今さら感が漂うわね~」

 

「ですよね~華琳様」

 

「…あなたに言われると、腹立つワイ!!」

 

爪楊枝の入った紙袋が、スコンと一刀の眉間にあたる。

 

 

その後、自己紹介を終えて、ついに最後の一人になった。

 

 

そういえばこの赤い虎は一体何処の誰なのか。

 

天の御使いであることは確かだが、服装自体は大陸のような気がしてならなかったからだ。

 

 

「え~っと、北郷伯符でーす♪ 前まで孫策ってなのっていましたー♪」

 

 

シーン。

 

 

「一刀、貴方妻帯者だったの!!」「孫策って、孫家の暗殺された当主の名前じゃ!!」

 

質問が2つ同時に飛ぶ中、それを丁寧に説明しようとする一刀。

 

その傍らで、

 

「「…こいつ、できるな(飲めるな)!?」」

 

と目を合わせた雪蓮と星は、慌てる一刀をさかなに酒を飲み始めた。

 

 

 

翌日。

 

貸し切った料理屋は死屍累々となったが、不思議と朝の目覚めは皆爽快だった。

 

一日でももったいないからすぐに出ると三人は出発することを決めた。

 

「できれば士官してくれないかしらー」と呑気に言っていた華琳は、三人を送り出すための少量の必需品を渡していた。なんだかんだで、皆気に入ったらしい。

 

さすがに、刺史の仕事があるので見送りにはこれなかった。

 

と、いうわけで、雪蓮と一刀は三人を見送りにきていた。

 

「ここにしばらく残るのか」と星。

 

「ああ…昨日たらふく酒を飲んだ奴がいてな」

 

じと目で雪蓮を見る一刀。

 

「私も同罪なのにすまないな」

 

「いいじゃなーい♪働いて返すわ…一刀が」

 

「俺かよ!!」

 

ははっ、と笑いあう五人。

 

「それでは北郷殿、私たちは出発しますね」

 

「ああ、気をつけてな」

 

三人が旅立っていった。この後、華琳に呼び出されていたので、二人も歩き出した。

 

「なぁ、雪蓮」

 

「なーに?」

 

「昨日、あの時は何もしゃべらなかったのってさ、

 

 やっぱり、俺が抱え込んでいると思ったから?」

 

「そうねー。ただ、今の私が反則をして強くなって、

 

 一刀が過去の経験を持っていてもさ。

 

 やっぱり『それだけ』なんだよねー」

 

「…そっか」

 

「気負いすぎなのよ。破滅でもなんでも、もうちょい気楽にいきましょうよ」

 

そういって一刀の右腕をもって歩き出す雪蓮。

 

その時、

 

「おうおう、昼間っから見せつけてんじゃんか、これから一発」

 

「これ宝譿。恋人の間で野暮ですよー」

 

「「風!!」」

 

そこには先ほど旅だった風が立っていた。

 

「どうしたんだ?」

 

「忘れ物じゃね―ヨー」

 

「やっぱり行くのをやめました」

 

そういってペロペロ飴をなめる風。

 

「どうして?」

 

「お兄さんの話がもし本当なら、私はこのまま行って曹操様に仕えることになりますが、

 

 言われた通りのことをするのはどうも苦手で」

 

そういって、雪蓮の右腕をとった。

 

「お兄さん達について行くことに決めました。

 

 それでも見識は広がりそうですしね。

 

 野良軍師はいりませんか~」

 

「風…」

 

「今、名前を程昱に改めますね~。

 

 さて、これで歴史を大きく曲げてやりました」

 

ふふっと笑う風。

 

「雪蓮ちゃん、両手に花ですよ~」

 

「あら本当、両手に花だわ♪」

 

「両手に…俺、花なのか、また花なのか!!」

 

キャッキャとしながら、三人はとりあえず華琳の下へ向かっていった。


 
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