No.140400

『偽・悲恋姫†異聞録』13

Nightさん

GW企画午後の便

どなたか一人でも面白いと思っていただけたら僥倖です

2010-05-02 18:50:40 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:4681   閲覧ユーザー数:3977

 大輪の淡い青の薔薇が戦場に咲いた・・・

 

 舞うように広がる麗のブルーのスカートの裾が広がり、遅れて流れるように広がる金糸の髪・・・

 振るわれた黄金の方天画戟が、命を奪わんと迫り来る二矢を打ち落とし、そのまま回転して前面で構えた戟の柄で残りの二矢を受け止めてみせる。

 あまりに戦場とかけ離れた、舞のような動きでありながら、必殺の四矢を微笑みを絶やさず防ぎきった、こぼれんばかりに盛り上がった胸元を隠そうともしない麗に、秋蘭の眼に驚きの感情が走るのも当然、だが・・・本当の驚愕はその先に待っていた。

 

 青い薔薇を飾るように、真紅の薔薇が咲き乱れたのだ・・・麗を囲むように迫っていた曹魏の兵、その首といわず、腕といわず足といわずを宙に舞い上げながら・・・

 中央の青い薔薇はただ艶然と微笑むばかり・・・

 彼女の戟は自分に迫る四矢を打ち落としたのみ

 誰かの口から、小さな呟きが漏れる・・・

 

「・・・化け物の部下は、やっぱり化け物だったんだ」

 

 麗は戦場で舞う・・・彼女が舞うたびに、敵の兵は成すすべなく四肢を首を、命を散らしていく。

 何をされたのかがわからないうちに、青い薔薇を讃える真紅の薔薇として、最後の役目を与えられ。

 

 『舞姫』ではない・・・

 

 彼女は『魔王の舞姫』

 

 演目は阿鼻叫喚の凄惨な悲劇だけ

 

 歓声は断末魔の絶叫

 

 御代は見るものの命そのもの。

 

 状況の趨勢は決まった、麗は一気に敵兵の・・・将ではなく兵の心に恐怖の花を芽吹かせた。

 

「円周陣形、そろそろ幕にしましょうか、夏侯妙才・・・いえ、『秋蘭さん』」

 


 
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