一刀達が白蓮の元を訪ねてから数週間、盗賊退治が頻繁に行われていたが、盗賊はなかなか減らない。
それもこれもどうも大陸全体が何か闇に包まれているように飢饉や流行病があったりで大陸は疲弊していた。
そんなある日、一刀達は白蓮に呼び出された。
「ごめん、遅れた」
「休んでるところすまんな。呼び出してしまって」
「いいよ。それより皆集まってどうしたの?」
「北郷も、この城に朝廷よりの使者が来たのは知っているよな?」
「黄巾党討伐の命令だろ?」
今の官軍は腑抜けており、官軍の力だけではその黄巾党討伐は無理であり、朝廷は地方軍閥に力を貸して欲しいときたのだ。
「そうだ。私はすでに参戦する事を決めているのだが…」
「白蓮ちゃんがね、これは私達にとって好機なんじゃないかって」
「好機? ……ああ、独立のためのか」
「そうです」
「黄巾党鎮圧で手柄を立てれば、朝廷より恩賞を賜ることになるだろう。桃香たちがその気になれば、きっとそれなりの地位になれるはずだ。
そうすれば、もっともっと多くの人達を守る事ができるだろう?
残念ながら、今の私の力はそれほど強くない。そりゃもちろん、もっともっと力をつけて、この動乱を治めたいとは思っているけど。
でも今すぐは無理だ。そんな私に桃香を付き合わせるわけもいかない。時は金よりも貴重なんだから」
白蓮の言葉に一刀は考える。
「(さてと…どうするか…。今の朝廷でそこまで良い地位はもらえるとは考えにくいけど、黄巾党討伐はやっぱやった方が良いよな。
それに独立した方が白蓮の負担も少なくなるし……)そうだな。俺たちもそろそろ、自分達の力でやってみるか」
「でも、鈴々達だけで大丈夫かな?」
「分からないけど、そんな弱気よりは大丈夫だと思ったほうが良いさ」
「しかし、我らには手勢というものが無い。そこが問題です」
そこに星が街で集めたらというと当然のことながら白蓮が反論するが、星に言いくるめられてしまい、
結局は許可を出した。もちろんあまり集めないで欲しいとの条件はある。
しかし結果はかなりの人数が集まった。その数は約六千人。しかも白蓮の街だけでなく、その他の邑からも…。その人達を見た白蓮の顔は少し引きつってた。
(ごめんね)
一刀は心の中で謝った。
「しかし…これからどうしましょうか」
「こうきんとーを探し出して、片っ端からやっつけるのだ!」
「勇敢だけど、そんなんじゃ兵糧がすぐになくなるぞ」
「むぅ…ならどうすりゃ良いのだー? お兄ちゃんは何か考えはあるのかー?」
「ない!」
「はっきり言わないで下さい…」
四人でどうしようか悩んでいると…。
「しゅ、しゅみましぇん! あぅ噛んじゃった」
どこからともなく声が聞こえ、皆が辺りを見回すが見当たらない。
「はわわ、こっちです。こっちですよぉ~!」
「どこ?」
「声は聞こえど、姿が見えず…」
「……」
桃香と愛紗の行動に何も言えない一刀。
「みんなひどいこと言うのだなー。チビをバカにするのは良くないのだ」
「下を見てみろよ」
鈴々と一刀の言葉で桃香と愛紗はようやく下を見る。そこには鈴々と同い年くらいの女の子が二人いた。
「こ、こんにちゅは!」
「ち、ちは、ですぅ……」
「こんにちは。で、どちらさん?」
「わ、私はしょ、諸葛孔明れしゅ!」
「私はあの、その、えと、んと、ほ、ほと、ほーとうでしゅ!」
「……二人ともカミカミすぎなのだ」
「噛み過ぎだな……(諸葛亮に鳳統だと!?)」
一刀の心の中はかなりの高ぶっていた。
(おいおい、いきなりこの二人とはこの世界、色々変わってるな)
「諸葛孔明に鳳統か。あなたたちのような少女がどうしてこんなところに?」
「あ、あのですね、私達荊州にある水鏡塾っていう、水鏡先生という方が開いている私塾で学んでいたんですけど、
でも今この大陸を包み込んでいる危機的な状況を見るに見かねて、それで、えと…」
「力の無い人達が悲しむのが許せなくて、その人達を守るために私達が学んだ事を活かすべきだって考えて、
でも自分たちだけの力じゃ何も出来ないから、誰かに協力してもらわなくちゃいけなくて」
「それでそれで、誰に協力してもらえばいいんだろうって考えたときに、天の御遣いが義勇兵を募集してるって噂を聞いたんです!」
「それで色々と話を聞くうちに、天の御遣いが考えていらっしゃることが、私達の考えと同じだってわかって、協力してもらうならこの人だって思って」
「だからあの…私達を戦列の端にお加え下さい!」
「お願いします!」
「いいよ」
二人の早口を無視したように、一刀の答えは即答だった。
「ご主人様、早い…」
「戦列の端に加えるには、歳が若すぎる気もしますが…」
「そんなの鈴々も同じだ」
「それはそうですが、鈴々の武は一騎当千。歳は若くとも充分に戦力になります。しかし二人は見たところ指は細く、体格は華奢。戦場に立つには可憐過ぎるとか…」
「そんなの俺から見たら、愛紗達も可憐過ぎるぞ。それに俺はこの二人をそう言った直接戦わせるんじゃなくて、軍師として迎えたい」
「軍師として…ですか?」
「ああそうだ。さっき水鏡と言う名前が出ただろ? あの人は頭の良い人だと俺の耳に入っていてな。
それにあの二人、そんな人の下で頑張っていたなら、軍略も出来るはず…」
「そうですか。ならば私はご主人様の判断に従いましょう」
(何か納得して無い顔だな。ま、あっと驚く顔が目に浮かぶな)
愛紗のそんな顔を想像する一刀。
(しかし、この世界は色々変わってるって事は、俺はこの世界の時間のダイヤを乱してないというのか?
それとも俺が居る事でダイヤが守られているのか? 何にしろ、俺はこれからの道を切り開くってことだ)
一刀の頭の中ではそんな事を考えていたが、一刀はとりあえず考えるのをやめ、諸葛亮と鳳統の方を向く。
「とりあえず、よろしく」
「はひっ!」
「がんばりましゅ!」
「一応、自己紹介だな。俺の名前は北郷一刀。一応、天の御遣いで仮面ライダー電王だ」
「わ、私はえと、姓は諸葛! 名は亮! 字は孔明で真名は朱里です! 朱里って呼んでください!」
「んと、姓は鳳で名は統で字は士元で真名は雛里って言います! あの、宜しくお願いします!」
「朱里に雛里っと…こちらこそよろしく!」
「はい!」
「は、はいっ! ……朱里ちゃん朱里ちゃん、えへへ、真名で呼ばれたよぉ……」
「良かったね、雛里ちゃん♪」
「うん! えへへ……」
(嬉しそうだな)
そんな二人のやり取りを見る一刀。
「早速なんだけど、俺たちはこれからどうすれば良いか、二人の意見を聞かせてくれないか?」
「新参者の私達が、意見を言っても良いのでしょうか?」
「仲間に新参者とか関係ない。それにこっちは意見が出なくて困ってるんだ。力を貸してくれ」
「は、はいっ! 私達の勢力は、他の黄巾党征伐に乗り出している諸侯に比べると極小でしかありません。
今は黄巾党の中でも小さな部隊を相手に勝利を積み重ね、名を高める事が重要だと思います」
「敵を選べというのか?」
愛紗は不満そうな顔で朱里に尋ねる。
「あぅ……そういうことですけど……。えと」
愛紗の怖い迫力に怯える朱里。
「愛紗、そう怖い顔をするなよ。怯えてるぜ」
「なっ!?」
「それにこの三人の自己紹介がまだだったね」
とりあえず桃香、鈴々、愛紗は真名まで自己紹介をした。
「さてと、話が戻るが…。愛紗、俺は朱里の言う事ももっともだと思うぜ」
「ご主人様もですか? しかし些か卑怯では……」
「(愛紗はそっちを気にしてたのか)誇りが高い愛紗はそう思うだろうけど、俺達は弱小勢力なんだ。
なら、朱里の言うとおりに名を高めて義勇兵を募るしかないと思う。ただ…」
「ただ、どうしたの?」
「問題は兵糧だ。兵が増えるのは良いが、補給が出来てないと逃亡しちまうぞ」
「お腹減るのは、気合で何とかなるってわけでもない無いからなー……」
「名を上げつつ、付近の邑や街に住む富豪たちに寄付を募るか……」
「敵の補給物資を鹵獲するしか、今のところ解決方法は無いと思います…」
「う~ん、だったら弱い部隊を倒していった方がお得だね」
「まあね……。まあ俺個人としては何だが、弱い部隊よりも強い部隊を相手にしたほうが、名も上がりやすいし、補給も取れる量が多くなるとは思うけど……」
「そ……それは……」
「あくまで個人的な意見だ。あまり気にしないでくれ。それにそんなことしたら、俺以外は全滅する恐れもある」
「え?」
「電王は多数の相手をするなんて出来るし、ただの雑兵相手なら俺に傷が出来るなんてことはまず無いだろう。
愛紗や鈴々くらいの強さだったら、さすがにまずいだろうけど、そんな強さ、黄巾党にはいないだろうな。
いたら、今以上の被害になってるだろうし……。ただ俺一人で行くならともかく、戦はそうでないからな。
だからそこを考えると弱い部隊を叩くが妥当なんだよな…。というわけで基本方針は朱里の意見で行く。それで良い?」
皆、一刀の方針に従う事にし、白蓮と星に別れを告げ、黄巾党退治に出て行った。
一刀達が行軍をし、斥候が戻ってきて、ここから少し離れたところに黄巾党の部隊一万が巣くっていると情報が入った。
「一万か……。俺一人でどのくらいいけるかな?」
「ご主人様、いくらなんでも無謀な事を考えないで下さい」
「ごめんごめん。電王の影響かな……」
「あ、あの……」
「うん?」
雛里が一刀の袖を引っ張る。
「だ、だいじょうぶです。きっと勝てますから……」
「きっとじゃダメだよ」
「あうっ!」
「絶対勝つ! これくらいは言わないと…。で、何か策があるの?」
「私達には、勇名を馳せている愛紗さんとか鈴々ちゃんが居ますし、それに義勇兵の皆さんの士気も高いですから…」
「それだけ?」
「いえ、私達がいますから…」
「うん? それはどういうことだ?」
「あう……」
雛里は愛紗に怯えて、一刀の背中に隠れた。
「雛里を怖がらせたらダメなのだ」
「ええっ!? わ、私は別に怖がらせてなどいないぞっ!? 普通に聞いただけではないか!?」
「へう……」
「大丈夫、大丈夫。怒ってないし、怖がらせてないからね」
一刀が雛里の頭を帽子の上から静かになでる。
「む、むぅ…私の口調はそれほどキツく受け取られてしまうのでしょうか……」
(ああ、何か嫉妬の炎が少し見える)
愛紗の反応を面白がってみる一刀。
「あはっ、大丈夫、大丈夫。愛紗ちゃんは別に怖くないよー? ただちょっぴり真面目すぎるだけ」
「助け舟になっていませんよ、桃香様……」
「と、とにかくですね。こういうときにこそ、私と雛里ちゃんが役に立つと思うんです」
朱里が話題を戻す。
「本来ならば、敵よりも多く兵士を用意するというのが用兵の正道ですけど……。
でもそれは無理な以上、戦力の差を覆すには策があるのみです。だからこそ、私達が勉強していた事が役に立つかと」
「まあ、俺一人で突撃したらどうにかなると思うけど……じゃあ、意見聞かせて」
一刀達は朱里と雛里の意見を聞く。相手が居る場所は交通の要所となる場所で補給や兵の進行ルートにとってかなり大事な場所だが、
それを一万しかいないとなると、相手は雑兵のみであり狙い目でもある。そこを破れば、否応にも名が高まる千載一遇の好機との事。
策としては最初に敵を陣地から引っ張り出して、戦うのは平地ではいけないこと。
「数で負けているのなら、数で負けない状況を作り出せば良いんです」
「なるほど…、つまり俺が一人五千倒せば良いという事だな」
「はわわ!? そんな事言ってませんよ!?」
「冗談だ」
「ご主人様の冗談は冗談に聞こえません」
「狭いところで叩けって事だろ?」
「はわわ……ご主人様すごいです」
「あわわ……先に言われちゃいました…」
「おおー! ご主人様、どうやら正解だったみたいだよ! すごいねー♪」
「いや、それくらいは……」
「しかしご主人様。我らの行く手には峡間など、どこにあります? 目の前には果てしなき荒野が広がるのみですが……」
「あ、あの、あ、ありますよ?」
「うん?」
「ここより北東へ二里ほど行ったところに、川が干上がって出来た谷があります」
「ええ? でも地図にはそんなところ載ってないよー?」
桃香がその事に驚くが、桃香が持っているのは市販の地図でそれは行商や隊商がよく通る道しか書いておらず、
正確な地図は漢王朝や官軍しか持っていないとのこと。
「つまりどこかで盗んだな?」
「はわわ……! そんな事してませんよ! 私達は水鏡先生のツテで正確な地図を見て覚えただけですよ、ご主人様~」
「で、どうすればいいの?」
「簡単です。敵が構築する陣の前に全軍で姿を現して…後は逃げるだけです」
「逃げるね…、相手は追ってくるか?」
「はい。こちらは正規軍に見えませんから」
「元々、明確な主義主張があるのは黄巾党の中心に居る一部の人達だけで、後は食い詰めた農民たちが欲望のままに動いている…これが黄巾党の正体ですから」
「殺し尽くし、奪い尽くし、焼き尽くしってやつか。獣でも殺し尽くすがいいとこだぜ(もっともそれ以上の獣もいるだろうな)」
「だからこそ、だよ。だからこそ、私達がコテンパンにやっつけないといけないの!」
桃香の瞳に輝く何かが一刀には見えた。
「コテンパンにやっつけるのは良いけど、俺は敵だろうが殺さないからな」
「何故です!? 相手は血に飢えた獣、いえ、それ以上のものです!
ご主人様はこれまでも盗賊達を殺さずに生かして返しました。ですが、相手はそれ上回る黄巾党なのですぞ! 今は報復はありませんが、もしもそんな事があれば……」
「言ってないけどな、仮面ライダーは人間の自由と平和のために戦う使命がある。だが人間の命は絶対に奪わない。それが敵であっても…」
「ですが……!」
「とにかく俺は人は殺さない。ま、怪我くらいはしてもらうけど、仮面ライダーとしてどんな人間でも清らかだった心を呼び覚ますためにも戦いたいんだ。
だがそれは仮面ライダーしかできない。愛紗達も殺さないようになんて言っても恐らく清らかな心を呼び覚ますのは無理だ。
だから俺だけはそれでいく…。皆は無理しないでくれ。きれいごと言ってるだけかもしれないが、俺はその道を行く」
一刀の言葉に皆が黙り込んでしまう。
「とにかく作戦はそれで行くけど、行動途中で俺は一人で敵陣地に行くから宜しくね」
「ご主人様、だったら私も……」
「愛紗は朱里たちの指示に従って…。これは俺のわがままだ。そんなわがままについてこないでくれ」
一刀の背中からはなにやら寂しい気迫が漂っていた。その気迫には誰も逆らえず、誰もその気迫に入って来れないと感じた。
作戦が開始され、黄巾党と戦闘になった。
「死ね! 死ね! 死ね! 死ねーーーーーーー!」
「うおおおっ! しねこの野郎!」
「この野郎、殺す!」
「こっちの台詞だこらぁ! やってやんぞーこのヤローどもが!」
自軍の兵士や黄巾党兵の悲鳴、怒号、罵声が飛び交う。
一刀はソードフォームで戦っているが、段々と胃がねじ切れそうになってくる。
それはこの惨状だけが原因じゃない。罵声などの言葉、流れてくる血、そして本当に目の前にいる敵を殺すしか考えていない兵達に……。
「手前らいい加減にしやがれ!!」
一刀が腹のそこからものすごい声を出し、その言葉はその戦場全体に響き、皆一時攻撃をやめる。
「ご主人様?」
「さっきから黙ってりゃ、殺すだの死ねだのそんなこと簡単に言いやがって……。
手前ら、俺を怒らせたいのか!? ああ!?」
一刀の怒りは敵だけでなく、味方にも向けられていた。
「そんなに死にてえほどの思いがしてえなら、俺が相手しやるぜ!」
一刀が紫色のボタンを押す。
「本当はこれは使いたくなかったけどよ、怒らせたお前たちが悪いんだからな!」
一刀はパスをベルトの真ん中に通す。
「ガンフォーム」
その音声と共に桃のようなソードフォームの姿が変わり、龍のようなガンフォームに姿を変えた。
そして電王ガンフォームはその場でなにやら踊りだす。
「♪~♪~~♪」
「ご主人様?」
一刀の突然の踊る行動に遠くで見ている桃香や近くにいる愛紗は戸惑う。
それは一刀を見る、味方兵や敵も同じであった。
そして踊りが終わると同時に一刀はデンガッシャーをソードモードからガンモードに変える。
「お前達……倒すけどいいよね? ……答えは聞いてない!」
一刀の言葉が終わると同時にデンガッシャーのガンから何かが放たれて、敵はそれに撃たれたように倒れていく。
敵に血は流れていないが、意識は完全に失っていた。それもそのはず撃たれたのはオーラエネルギー。いわば氣である。
「手前!」
「お前達、生意気だよ!」
一刀は自分の周りを回り、やってくる敵を次々に撃ち倒す。
「ご主人様……」
「完全に作戦を無視してる…」
一刀の踊るように敵の攻撃を巧みによけ、攻撃してきた敵を撃つ。
一刀の行動というか、その時の一刀はまるで子供。物を簡単に壊すかのように、敵を倒していく。
敵の後続部隊も出てくるが、今の一刀には関係なかった。
「お前達、さっさとやられてよね」
「フルチャージ」
一刀はライダーパスを再びベルトの真ん中に通し、パスを投げ捨てる。
「はあああああああああ!!」
デンガッシャーの銃口にオーラエネルギーが凝縮される。
「でゃああああああああああ!!!!!」
そしてそのエネルギー弾は発射され、敵はそのエネルギー弾の爆発に皆巻き込まれ、全滅した。
「ふん」
一刀が倒れている敵兵達を見る。
「お前達がいけないんだ。お前達がこんなことするから……」
一刀がその後、止めを刺そうとする兵達を見て、デンガッシャーを突きつける。
「お前達、そんなことしてみろ。俺がお前達を撃つぞ」
兵達は一刀の行動に恐怖した。その後、目覚めた黄巾兵達はなにやら生まれ変わったかのように清々しいと言い、
今までしてきた事を生きて詫びろと一刀に言われ、本当にそうしようと決し、出て行った。
「皆、俺のことを偽善者だと思うなら、出て行っていいぞ」
一刀は自分の兵達にそう言うが兵達は出て行かなかった。
「俺たちこそ、ごめんなさい!」
「俺たちあいつらに怒りの感情しかなくて……」
「別にそれが悪いなんて言ってないぜ。俺だって怒ってこんなことしたんだ。
ただあんな罵倒だけはやめろよな」
一刀はそう言って敵の捨てた陣に入った。
「ご主人様、二度とあんな真似をしないで下さい」
「あれってなんだ?」
愛紗が一刀に言ってくる。
「とぼけないで下さい! あんな行動、本来なら兵達の心はご主人様から離れてしまいます」
「離れててもいいよ」
「え?」
「例え孤独でも命ある限り戦うのが仮面ライダー。例え俺が一人になっても俺は俺の戦いをする。
それに俺は負の連鎖を続けさせたくなかった」
「負の連鎖……」
「ああ、人を殺せば必ず報復が来る。例え殺したのが盗賊であろうと……。俺はそんな場面を何回か間接的だが見たことがある。だから俺は人を殺さない」
「ですが……何度も言ってますが、あいつらは……」
「獣でも心の中からやってはいけないことを教え込めば、愚かな事はしないさ。それはあいつら盗賊も同じだ。
俺がやってる事が偽善であってもだ。それだけは分かってくれ」
一刀の目にはその信念を曲げずにいられる自信に満ちた目であるのを愛紗は感じた。
(この人には何を言えば良いのだろうか?)
そんな時、兵士から連絡があり、近くに官軍らしき軍団が現れ、指揮官に会いたいと言ってきたのだ。
「官軍らしき、とはどういうことだ?」
「それが……通常、官軍が使用する旗を用いず、曹と書かれた旗を掲げているのです」
「(曹……曹操か)じゃあ会いに行こうぜ」
一刀と桃香の意見により曹操と会う事にした。
「あんたが曹操か…」
「でもさっき呼びに行ってもらったばかりなのに……」
「他者の決定を待ってから動くだけの人間が、この乱世の中で生き延びられると思っているのかしら?」
「最初っから俺達があんたと会う事を分かっていたってことか」
「寡兵なれど、戦場を俯瞰して戦略的に動ける部隊ならば、大軍を率いて現れた不確定要素を放置しておけるわけは無い。ただそれがわかっていただけよ」
そして曹操は改めて自己紹介。それに対して劉備も自己紹介。
「あなたが率いていたの?」
「それはその…私が率いていたのじゃなくて、私達のご主人様が…」
「ご主人様?」
「俺だ。北郷一刀って言う。宜しく」
「北郷一刀……聞いた事ある名前ね」
「そりゃそうですよー。ご主人様は最近噂の天の御遣いなんだもん♪」
「天の御遣い…ああ、あのつまらない噂のことね。まさかあの与太話が本当の事だと、そう言い張りたいのかしら?」
「天の御遣いかは俺も知らないが、仮面ライダーは聞いた事があるかな?」
「仮面ライダー?」
「知らないのか…。さっきここを一人で制圧した仮面ライダーが俺だ」
「一人で……まさか先ほどの大軍に怒鳴ったのは……」
「俺だ」
「あなたね……。そんな事したら真っ先に自分が狙われるなんて考えなかったの?」
「自分だけが狙われるようにしたんだよ」
曹操は呆れて物も言えなかった。
「……北郷…と言ったわね。あなたがこの乱世に乗り出した目的は何?」
「さあな、俺はただ桃香達の意見を聞いて、手伝うかと思っただけに過ぎん。いわば戦う御輿だな」
「御輿、ね。…なるほど。ならばこの軍の真の統率者は、やはり劉備と言うことで良いのね」
「そう思ってもらって結構」
曹操は一刀の方を見て、次に桃香の方を向く。
「ならば再び問いましょう。劉備。あなたの目指すものは何?」
「私は、この大陸を、誰しもが笑顔で過ごせる平和な国にしたい」
「それがあなたの理想なのね」
「うん。…その為にも誰にも負けない。負けたくないって。そう思ってる」
「そう。わかったわ。…ならば劉備よ。平和を乱す元凶である黄巾党を殲滅するため、今は私に力を貸しなさい」
桃香は悩み、一刀は申し出を受けることにした。
そして黄巾党本隊があるであろう場所へと向かった。しかしどうやら首謀者の張角、張宝、張梁の三人がいないそうだが、敵の兵糧の半分があるとの事。
曹操からの伝令により、劉備軍が先陣で囮になり、その間に曹操の特殊部隊が兵糧を焼き払うとの作戦が出た。
「囮なら、これがぴったりだな」
一刀はデンオウベルトの青いボタンを押し、パスを通す。
「変身」
「ロッドフォーム」
そして電王ロッドフォームに変身し、敵たちに言った。
「お前達、僕に釣られてみる?」
「ふざけるなーーーーー!」
敵が電王につっこむが、一刀はデンガッシャーロッドモードを駆使して、敵を巧みに倒していく。
一刀達が時間を稼いでる間に特殊部隊は作戦を成功させたようで、それを見た一刀は赤いボタンを押して、ソードフォームにフォームチェンジする。
「俺、参上! いくぜ! いくぜ! いくぜ!」
一刀はまたしても一人で敵に向かって突っ走った。
「うりゃ、うりゃ、うりゃ!」
一刀の攻撃は派手だが、全然血は出ないし、実は皆死んでいない。
そうこうして、その場での戦闘は終わり、しばらくは曹操たちと行動を共にし、半年ほど経ってようやく黄巾の乱は終わったのであった。
おまけ
作者「どう? 仮面ライダー×真・恋姫†無双蜀編第2章」
一刀「俺がかなりキレてたな」
作者「まあ若干俺の気持ちも入ってたけど、気にしないでもらいたいな」
一刀「お前の気持ちつきかよ」
作者「そして次回だが…」
一刀「話し変えやがった」
作者「次回は反董卓連合の話だが、魏編と同じで1話で終わる」
一刀「魏編だとカブトが出てきたけど…」
作者「バレになるけど、過程は違うが新しいライダーの力を手に入れるぞ」
一刀「一体なんだよ?」
作者「今回というか蜀編はノーヒントなんだよね。これもちょっとしたバレになるけど呉編だと序章の時に何が出るのかわかる」
一刀「で、俺はまた恋とやるの?」
作者「やるけど、魏編と違って蜀編の戦いの流れが原作どおりだな。今のところ…」
一刀「どこかで変わるみたいな言い方だな」
作者「さあね…。それではまた……」
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基本的には真・恋姫†無双の蜀ルートの話ですが、もしも北郷一刀が仮面ライダーの力を手に入れたらという妄想から生まれました。
そして流れも基本的に原作のままですが、仮面ライダーの力があるためセリフや一刀の態度が違うところや話そのものが大きく違うところも出てきたりします。
そのためそんなの嫌だという方は閲覧をご遠慮願います。
先に言いますが一刀が手に入れる仮面ライダーの力は全部で3つです。何が出るかはお楽しみ。