「話は判ったワケ。はっきり言ってどうにもならないワケ」
冥子が来た瞬間、厄介事かと思ったけどそれ所じゃなかったわね。
おば様が横島を欲しがるのは至極当たり前だ。あの能力や戦闘経験
そして、霊能力者としての家の格。どれをとっても垂涎のものでしょうね。
私だって、あそこまでの逸材だと知ってたら離しはしなかっただろうしね。
「お願い~~。エミちゃんしか頼れないの~」
そう言ってくれるのは嬉しいけど、私には六道家と戦える力なんてない。
「あのね冥子。私にもできる事とできない事があるワケよ。
人間だもの、当然ね。私のような一個人で六道のトップになんか渡り合えないワケ
それだけじゃないわ。一瞬で潰されるのが落ちね」
いくらなんでも其処まで危険な橋は渡れないわ。
私にも護るべきものはあるんだし、余計な真似をして潰されるのは御免被りたい。
「でも~。このままじゃ、横島君と令子ちゃんが~」
「わーってるワケ。令子なんてこの際どうでもいいけど。
横島はねぇ…」
「エミちゃんも~横島君は弟みたい~って、言ってたじゃない~」
「それとこれとは話しは別なワケ。確かに馬鹿で情け無い
出来の悪い弟のようには感じてるけど、そいつの為に人生投げ出すような
阿呆じゃないわけ。悪いけど諦めて頂戴」
できれば助けてやりたいけどね。
でも、今回は完全に相手が悪すぎる。全力で向っても返り討ちだろう。
相手は下手をすれば、政治や裏の方にまで手が回る。
私程度なんて、其れこそすぐに社会的に抹殺されるワケ。
おば様も本気でしょうし、いくら私が冥子の友人だからと言って
手は抜かないわ、令子も狙っているのだから。
「あの馬鹿なら神魔に好かれてるんだし、そっち方面に
頼ったほうが良くないワケ?小竜姫辺りなら直ぐに力を貸してくれるでしょうに」
「だめよ~。お母様には秘策があるもの~。
アレを持ち出されたら横島君は断れないわ~」
アレ…ねぇ。
「それ、本当にアレだったワケ?偽物とか良く似た奴じゃないの?」
「クビラちゃんの霊視は完璧なの~。あれは間違いないわ~」
「そこなのよねぇ…」
六道家は其処まで介入してなかったような気がする。
何故アレを持っているのかが不思議なのよね。
私達がそれこそ駆けずり回っても見付からなかったアレを
どうして六道家が手に入れていたのか。
冥子も知らなかったくらいだし、余程巧妙に探していたんでしょうけど。
そこまでしてあの馬鹿が欲しかったのかしらね…
「あれを此方で奪ってしまえば早いんでしょうけど。其れができたら苦労しないわね」
「それじゃあ~お母様が大変な目にあってしまうわ~」
泣きそうな顔で言わないでほしいワケ。
最近はあんまり暴走しなくなったとは聞いているけど
あんたがその表情をしたら生きてる心地がしないワケよ。
「アンタねぇ…いい加減にどっちかに決めたほうが良いワケ」
「ふぇ?」
「おば様を取るか。令子の馬鹿と横島を取るか……
親か友人、どっちを取るか決めておきなさい」
「そ、そんな~~!?皆仲良くがいいの~~」
「そりゃ無理よ。どっちにしても横島とおば様が仲良しこよしってのは
完全にありえないわけ。いいこと?横島がそれこそ必死に駆けずり回って
探していたモノを今まで隠し持ってましたって時点でアイツにとっては
許せるもんじゃないわ。おば様はそれすらも計算の内なんでしょうけど
よしんば、傘下に入ったとしても信頼度は0…
いや横島ならころっと騙されてしまう可能性もあるわね…」
あのおば様の事だ。
其れくらいの話術なら朝飯前でしょうね。どうしてあの腹黒から
こんな天然記念物が生まれたのか不思議で仕方ないワケ。
「横島が上手く入っても、今度は令子と令子のお母さんが許さないわ。
あの二人の事だから何かしらするでしょうけど、天下の六道に相手には不足なワケ
勝てたとしても大打撃、横島を取り戻しても下手すると二度とGSなんかできない
それどころか社会的に表に出れなくなるわ」
令子が原因であの戦いが起こった事なんて
上の連中は全員知っている。知らないのはそこらへんの一般人だけだ。
だからこそ、令子は今を普通に生きていられる。
其れが知られれば、令子は排除の対象だろう。あの戦いで死んだ一般人は
其れこそ数え切れないから。令子達程度じゃもみ消しなんて出来ないワケ。
思えば、令子も横島も逃げ道なんて無いわね…
「やっかいな人に目をつけられたわね…あいつらも」
「うぅ~~。エミちゃ~ん」
「だから泣いたってどうにもならないわけ!
私だって助けられるなら、助けてやりたいわけよ!」
横島があの決断をしたお陰で私達は生きてるんだからね…
「他に…どうにかできる相手なんか……
居た…あの人達ならどうにかなりそうなワケ」
「??」
「横島の件。どうにかなるかもしれないワケ。
ま、まだ五分五分…下手すればまだ低いかもしれないけどね」
居たわ。六道家に並ぶとんでもない存在が。
あの人達なら横島を助けてくれるでしょうよ、全身全霊でね。
すっかり忘れてたワケ。ま、仕方ないか。
「私ができるのはあの人たちが動くように口添えする事程度なワケ。
それだけでも、下手すれば大変な目に会うんだから我慢して頂戴」
「ううん~。やっぱりエミちゃんは頼りになるわぁ~」
こいつ…本気でこれからの事考えてるのかしらね。
「エミちゃ~ん。電話鳴ってるわよ~~」
「えーい、こんな時に誰よ!!…もしもし小笠原ゴーストスィーパーオフィスです…
えぇ…はい……!?……了解したワケ。行くだけは行くわ、その後どうするかは
此方で決めさせてもらうワケ。えぇ、それじゃ」
「エミちゃ~ん?どうしたの~?」
「タイガー!タイガー来なさい!!」
私が呼ぶと直ぐにタイガーがやってきた。
「どうしたんですカイノー。エミしゃん?」
「仕事なワケ。直ぐに用意しなさい。A級装備で行くわ」
「了解しましたジャー」
どたどたと用意を始めるタイガー。
どうでもいいけど少しスマートに動いて欲しいワケ。
「エ~ミ~~~ちゃぁ~~ん」
「あー、はいはい。言うから落ち着きなさい。
早速、令子のお母さんがやり始めたワケ」
「何を~?」
「多分、横島獲得の為の作戦か何かでしょ?こっちに応援を要請してきたわ」
「それって~~。お母様と~同じ事~?」
「そうね。それも令子が魔族に狙われてるっていうオマケ付きでよ。
タイミングが良いと言うのか…流石に応援を要請してるって事はヤラセ
じゃなさそうだけど…」
あの女の事、これが嘘って訳も無いし。
これを気に横島をどうにか自分の所に呼び込むつもりかしらね。
やれやれ、横島モテモテじゃないの。
私なら御免被るけどね。
「そんな~~。令子ちゃんも狙われてるなんて~横島君も~可哀相よ~~」
「可哀相というか、ここまで来ると不幸の連続って感じなワケ
無間地獄の呪いでも受けてるのかしらね…」
ま、私は私でできる事でもしましょうか。
折角頼りにしてくれる奴もいるし、それに…
気に食わないってのもあるしね。
「ま、安心しろとは言わないけど、のんびり構えてなさい。
アンタがそんなんだと、何か知ってますって感じ丸判りすぎるワケ、
何時も通りのほほ~んとしてればいいわ。後は任せておきなさい」
……………
…………
………
……
…
「そうですか。えぇ、情報の提供有難うございます。後は此方の方でお任せ下さい」
電話を切るとそこには愛しい妻が居た。
「誰だったのかしら?」
「あぁ。この前会った小笠原さんだよ。忠夫について色々聞かせて貰った」
途端に眼の色が変わる。
流石は村枝の紅百合って所か。
「どうやら、六道と美神の所から熱烈アピールを受けてるらしいぞ?
本人の与り知らぬ所でな…特に六道の方は少しばかりやり過ぎな所もある」
「へぇ…うちの馬鹿息子の何処がいいのかよくわからないけど…
困るわよねぇ、本当に」
あぁ、あれは完全に切れてるな。
俺もはっきり言ってかなり腸煮えくり返って来てるからな。
忠夫の事は既に聞いた。御宅の息子のお陰で世界は救われました、
有難うございます。詳細については教えられませんってか。
「世界を救って、恋人を亡くしたうちの息子をこれ以上どうするつもりや…
なぁ、うちの息子がここまでされる理由がどこにあるんや…」
「百合子…だから俺達で守ってやろう」
「せやね。クロサキ君に調べてもらいましょうか。
彼なら直ぐ動けるでしょうし、今の忠夫の事も聞きたいしね」
「そうだな、俺はこれから六道の方を調べてみるよ。
潰せそうな場所から狙わせてもらおうか、俺達の息子にいらんちょっかいを
かけるならどうなるか目に物見せてやろう」
六道家?美神?関係ないな俺達には。
何処のどなたか知らないが、俺達の愛すべき馬鹿息子をこれ以上
自分達の思うように使うつもりなら、俺達の流儀で相手をしてやろう。
「じゃあ、私は美神さんの方を調べてみるわ。
あれだけの事があったんだもの、つつけば何か出てくるでしょ」
「あいよ。じゃあ行ってくるよ百合子。帰ったら期待してる」
「ふふ、帰ったらね。朗報を期待しているわ」
期待されてるか。其れは全力でかからんといけないな。
まっていろ馬鹿息子。親は偉大だという事を少ない脳で知るといい。
そして、馬鹿ども。横島家に手を出した事後悔するんだな。
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深い闇8話の投稿です。
横島君は欠片も出てきません、多分次回に出てくるかなぁ…
難しそうなこと色々言っていますが。
白亜はこれの半分も理解できてません(笑
頭がもう少しよければもう少しうまい表現方法が出来るのですが
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