No.116498

深い闇 09

白亜さん

深い闇の9話です。
説得の部分(肝心な場所)をはしょってしまいましたが。
説明口調をずっと続けるのもどうかと思ったので、
思い切ってはずしてみました。

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2010-01-04 21:03:34 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:4583   閲覧ユーザー数:4415

「つーわけで手を貸してくれ」

 

丁度良くカオスはまだ家に居たようだ。

この時間ならバイトかなんかに出かけてそうな気がしないでもなかったが

まぁ、いいとしよう。ちなみにシロはドアの修理中だ。

壊したものはちゃんと直せよ~。

 

「行き成り呼ばれて手を貸してくれといわれても判らんわい。

というか、なにがつーわけじゃ。何も言っておらんじゃろうが」

 

「そこはお約束かなにかで「あいわかった!」って言う所だろ?」

 

だめだなカオスは。大阪根性?ってのを判ってない。

そこはツーカーで了解する所だろう?

ほらそこタマモ、おもいっきりため息つくんじゃねぇ。

 

「用が無いならわしゃ帰るぞ?バイトの時間なんじゃ。

今月分の家賃を払わねば、ばぁさんにフルボッコにされてしまうからのぅ」

 

あっさり帰ろうとするカオス。

 

「ちょ、冗談だって!大事な話があるんだよ」

 

「…ふぅ。わかったわぃ。で、折角来た客にお茶も出んのかのぅ?」

 

「水ならあるぞ。俺が貧乏なのわかってていってるだろ?」

 

「じゃあ、水でええわぃ」

 

俺が水を用意してやると、勢いよく飲み始める。

このじーさん、もしかして俺より貧乏なんだろうか…なんか切ないな…

ちなみにマリアはいつもどおりカオスのじーさんの横に立っている。

ちくしょう、羨ましい。

 

「で、何の用じゃ?金にならん事なら帰らせてもらうぞ?」

 

ぐっ…金か。

 

「お金は用意できないわ。横島にアンタを雇えるようなお金はないからね」

 

「じゃあ、この話はこれで終わりじゃのぅ」

 

「話しは最後まで聞きなさいよ。ロハなんて言ってないでしょ?

お金は無理だけど。でも文珠なら出せるわ、これならどうかしら?

恐らく人界…いえ、神魔にとっても究極とも言える神器に限りなく近いとされる霊具。

アンタの様な研究者なら手が出るほど欲しいんじゃない?」

 

これがタマモの手だ。

俺達には金が無い。まったくと言っていいほど無い。

絶望的に無い。言ってると悲しくなるが、正にその通りなのでぐぅの音もでないのだが。

カオスは仮にも研究者。文珠のような強力な霊具を代償にすれば、

金以上に価値があるはずというのが、タマモの結論だ。

さぁ、カオス…どう来る!?

 

「ふむ…?小僧が他人に文珠を渡すほどの用件か…むぅ。

確かに金にはならんが、文珠ほどの霊具。わしの不老不死を完全にする為の

研究にはうってつけじゃな…」

 

悩み始めるカオス。

これはいけるかもしれん。

 

「一体わしに何をさせるつもりじゃ?事と次第によっては考えてやらんことも無いぞ?」

 

よっしゃ!食いついた!

 

「これは、私達にとってとても大事な事。もし話を聞くだけ聞いて断るなら

悪いけど記憶を消させてもらうわ。アンタが誰かに漏らす可能性は低いかもしれないけど

こっちは用心に用心を重ねても足りないくらい、危険な状態だから」

 

「ふむ。まぁ当然じゃな」

 

「ってかシロ?まだ終らないの?」

 

「今終ったでござる。しかし脆い扉でござるなぁ」

 

その言葉にスパーンとハリセンでどつく俺。

 

「きゃいん!?」

 

「お前の馬鹿力に耐えられるような扉がそうそうあってたまるかぁ!」

 

「はいはい、どつき漫才は後にしてよね。

辺りに誰も居なかったわよね?こっちでも一応匂いを調べてみたけど

アンタは私以上に広範囲に鼻が利くから」

 

「大丈夫でござる。近場に知り合いや不穏な匂いは感じられなかったでござるよ」

 

「本当は、結界か何かでこの部屋を塞いでー、までしたいんだけど

流石にそんな術はまだ使えないし、そのためだけに文珠を使うのは痛いからね」

 

「最悪オカGが来る前に話をつけないといけないから、さくっと進めるわ…」

 

そしてタマモの説明が始まった…

 

…………

………

……

 

 

「以上よ。ここまでで質問はある?」

 

「成程のぅ。其れならば出来なくも無いが…しかしめんどくさい奴じゃのぅ」

 

「ほっとけや!」

 

「まぁ、その程度の事で文珠を手に入れられるなら安いもんじゃ。

受けてやろうではないか!!安心するがいい!このヨーロッパの魔王ドクター・カオスが

小僧、貴様を手伝ってやろう!がっはっはっはっは!」

 

無駄に笑い出すカオス。

何故だろう、非常に心配なんだが。タマモもシロも微妙な顔をしてる。

この人選、失敗して無いといいんだがなぁ。

 

「マリアもごめんな。文珠なんて飲ませちまって」

 

「ノー・横島・サン。マリア・貴方の・お手伝いが出来て・嬉しい」

 

なんていい子なんや…

こんないい子がどうしてボケ老人なんかと…世の中間違ってるな。

 

「小僧?わしを馬鹿にしてなかったか?」

 

「なんでやねん」

 

カオス?何時の間に読心術でも覚えたんだ?

 

「文珠の霊波を隠すのにどれくらい時間がかかる?

ぶっちゃけると、あんまり時間は無いんだが。多分カオスも呼ばれると思うしな」

 

「問題ないわい。小僧、少しばかりマリアを過小評価しておらんか?

その程度事マリアのスペックならば隠蔽なぞ簡単なものじゃ。なんも問題もありゃせんよ」

 

マリアは信頼しているんだがカオスのじーさんはなぁ…

 

「ノー・プロブレム。横島・サン・マリアに・お任せ・下さい」

 

「おしっ、信じてるぞマリア!」

 

マリアに文珠を手渡す。予め文字を刻んであるから後は発動するだけだ。

手渡されたそれをマリアは直ぐに飲み込んだ。

 

「大丈夫かマリア?どこかおかしい所とかないよな?」

 

カオスが言っていたように、本来直ぐに知覚できる文珠の霊波が

微塵も感じられない。其れは其れで良い事なんだが、

今度はマリアの体のことが心配になってきた。

 

「サンキュー・横島・サン。ボディに異常は・ありません・オール・グリーン・です」

 

「当たり前じゃ。わしの最高傑作なんじゃからな」

 

「先生は優しすぎるゆえ、心配性なのでござるよ」

 

「女性限定だけどね」

 

「はいそこ、黙らんか」

 

「用は以上じゃな?そろそろいかんとバイトに間に合わなくなるからの、

ここいらで退散させてもらうぞ」

 

マリアを連れて出て行こうとするカオス。

 

「お、おい?文珠はどうすんだよ。まだ渡して無いぞ?」

 

「ふん。わしは完璧主義者なんじゃ。成功報酬としてもらうわい。

そうじゃな、2個ほど用意して置け、それだけあれば十分じゃ」

 

そういうとマリアが飛び上がりそのままカオスを連れて飛んでいった。

飛んでいくときマリアが「シーユー・横島・サン」と言ってくれたのが少々嬉しかったな。

 

 

「後は、上手くことが運んでくれればいいんだが…」

 

「そうね。準備が整っただけでまだスタートにも立っていないんだから」

 

「先生?今の内に妙神山に行ったほうがいいのではござらんか?」

 

「おいおい、今は隊長が向ってるだろう?今は違う所に身を隠そうぜ」

 

「まったく…人の話を全然聞かない馬鹿犬ね」

 

「犬じゃないもん!!」

 

「じゃあ、馬鹿狼でもいいわ」

 

「おのれー!そこになおれ女狐!!」

 

ぎゃーぎゃー騒ぎ始める二人。

こいつらはこいつらで少しは心配してたんだろうな。

俺の我儘の為にこいつらに気を使わせてしまって、まったく俺って奴は。

 

「ほれ、落ち着け二人とも」

 

「だって横島!」

 

「先生からも何か言って下され!」

 

「俺達はもう家族なんだ。喧嘩はするなとは言わんが程々にな?」

 

二人に軽くでこぴんをする。

 

「…もうっ、乙女の柔肌に傷がついちゃうじゃない」

 

「くぅ~ん、先生~家族でござる~」

 

タマモは少し照れくさそうに、顔を逸らして、

シロは全身で嬉しさを表現しながら俺に抱きついてくる。

俺がどこまで出来るかは判らないけど、

俺について来てくれたこいつらは護ってやりたい、そして美神さんとおキヌちゃんも…

悪いな二人とも、美神さんを守りぬいたらパピリオも入れて静かに…ってのは無理か

賑やかに暮らしていきたいもんだな。

 

 

 

 

 


 
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