No.113417

真・恋姫無双紅竜王伝激闘編⑥~北伐軍発進~

激闘編第六弾です。そろそろ09年も半月を切りました。そろそろ正月っぽい拠点イベントでも考え始めるべきかしら?とか思ってるここ最近です。

2009-12-21 00:35:08 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:5620   閲覧ユーザー数:4814

「いや~。しっかし大きな城だねぇ、ここは」

「いやはやまっことその通り!名門袁家の居城に相応しいお城ですなぁ!いやはやほんとにまったく!」

「まったくもって!」

魏軍冀州方面軍の拠点で張郃と于禁が守る鄴城を包囲する軍の指揮を執る男が3人、呑気に本陣で談笑していた。

三つある床机のうち真ん中に座っているのは大黒様を連想させる小太りで細目の男である。彼は袁譚。袁家軍残党の総大将であり、同時に汝南袁氏の一族で実力者だった『袁家三人衆』の筆頭である。

向かって左側、揉み手をしながら袁譚に追従するのは袁煕。同じく『袁家三人衆』の一人で袁譚の太鼓持ち役である。

そして最後に口数少なく相槌を打つ筋骨隆々の男は袁尚。彼もまた『袁家三人衆』の一人である。

「まー、しかしあれだね。この鄴城、田舎者の曹操の軍が所有するには相応しくないねぇ。しかも城を守るのは裏切り者の張郃だろ?それがあたしには我慢ならないねぇ」

小悪党丸出しの会話だが、彼らの実力を過信する事は出来ない。官渡の戦いで大敗し、当主袁紹や文醜・顔良といった有力武将を失って四散した袁家の軍勢を再びまとめ上げたのは他でもない、彼らなのだから。

「北伐を行おうと思う」

許昌城会議室に集められた諸将に、舞人は包囲網打破の第一弾として北の袁家残党軍を討伐する旨を伝えた。そして各将軍達の配置を告げる。

「参謀は風、任されてくれるか?」

「分かりましたー」

「市は許昌守護」

「心得ました」

作戦立案に優れる市を置いて、謀略に優れた風を連れて行くのには訳があった。

先の徐州撤退戦において、凪の奮闘で織田本隊は大して損害は出ずあまり日を置かずに再度の出陣が可能になったのだが、南の寿春に孫策軍があり、東の劉備も隙あらば許昌への侵攻を画している。

その為舞人は霞を南の備えに残し、凪を市の指揮下において許昌に残す決断を下した。

「そうなるとお兄さん、主力を欠いての北伐になりますね」

「ああ。そこで、徐晃―――淡雪(あわゆき)!」

「オ、オウッ!」

頭に白の頭巾を被り、軍議の末席で鼻提灯を膨らませて舟を漕いでいた少女、徐晃こと真名を淡雪が夢の世界から帰ってくる。

撤退戦で舞人に代わって劉備軍の張飛と戦って生き延びた彼女は、舞人から一兵卒から小隊長に昇格させられていた。

「お前には北伐軍の先陣を任せる。霞の穴を埋めて見せろ!」

「・・・よっしゃあ!いっちょやってやるぜ!」

あまりにあっさりと命じられた大役にポカンとしていた淡雪だが、舞人の言葉を脳内で噛み砕いて理解をすると両の拳を突き上げて歓声を挙げた。

編成を終えた織田軍は軍議から数日後、許昌を発した。その数―――4万。劉備戦より数が圧倒的に少ないが、これはあくまで本隊の数。

「お兄さん、明日には孔融殿が、三日後には公孫淵殿が合流するそうですー」

「分かった」

今回、舞人は直属の武将ではなく、曹操派の諸侯の連合軍を率いての北伐を敢行していた。普段連携が取られていない軍は連絡手段などで弊害が生ずるが、それを承知でともかく数を募ったのだ。また、そうしなければならない事情があった。涼州で戦う華琳率いる魏軍本隊に多くの兵を回し、各方面の抑えにも兵を送ったためだ。さらに―――

「はやく奴らを倒してしまわないと、南と東が動き出すわね・・・」

「俺の元弟子と、あんたの元弟子が―――だろ?玲」

舞人の隣で馬を進めるのは廬植―――玲だった。知謀の士として名高く、舞人の友人である彼女は今回の北伐軍に請われて副将軍として出陣していた。

「そうね。あの甘ちゃんの桃香が隙を見せたこちらに対してどんな動きを見せるのか、元師匠としてみものね」

2人は劉備の標的が青州に居を構える孔融と踏んでいた。主力を率いて今回の北伐軍に参加している隙を突いて青州を抑え、魏軍の北からの進軍を抑える。

「どうでしょうか~?風は、結局動かないと思いますね~」

2人に対して異を唱えたのは、舞人の胸に背を預けた風。簡単にいえば抱っこされている感じだ。

「なんでそう思うの?風ちゃん」

玲と風はすでに真名を交換し合った仲だ。

「劉備さんの性根はやっぱり『甘い』んです。先の追撃戦も下邳城を奪われた為、本城の防衛と呂布さんを案じて本腰を入れた追撃ができなかったといいますし。そもそも劉備軍の兵力では青州に攻め込んでも領土を維持できる力がありませんから~」

冀州・鄴の城に楓と沙和は詰めていた。徐州から撤退してきた2人は郭図率いる袁譚軍の包囲を一度は破り、郭図を討って敗走させたが三人衆率いる本隊に鄴城に押し込まれて籠城戦を強いられていたのだった。

「沙和、師匠が後詰に出陣したそうだ」

「おおー、やっと来たのー?」

総大将・楓の報告に嬉しそうに手を叩いて喜ぶ沙和。彼女の顔にも籠城戦の疲労が隠しきれなくなっていた。

「我らが後もうひと踏ん張りすればこの城は落ちる事はない」

そこで楓は足を止め、沙和の真向かいに座る2人に目をやった。

「・・・お2人とも、ここが正念場ですぞ。戦功を挙げれば助命嘆願の材料ができますから」

「わかってる!アタイたちにぜーんぶ任しときな!楓っち!」

「うう・・・楓ちゃん、ごめんね・・・」

どこに根拠があるのか分からないが自信満々で力瘤を作る大剣使いと、親友の気遣いに涙を浮かべる大槌使い、金の鎧を纏った2人の少女の姿があった。


 
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