No.109348

真・恋姫無双紅竜王伝激闘編③~織田軍反転~

激闘編第3弾です。
天下統一に向けて邁進する舞人と華琳に暗雲が・・・

2009-11-28 13:45:34 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:6387   閲覧ユーザー数:5315

織田舞人を総大将とする織田軍15万は、着々とその足を徐州に向けて進めていた。その道の途中で―――

「ねぇたいちょ」

舞人が馬に揺られていると、彼の隣に沙和が馬を歩ませてきた。

「なんだー?」

「なんで真桜ちゃんは華琳様の軍なのー?」

だいたい作戦では3人一緒の三羽烏だが、この時ばかりは真桜だけ別行動である。確かに彼女が疑問に思うのも仕方がない事であった。

「馬術に長けた馬超軍を破るには真桜の技術力が必要なんだ」

「それって作戦のうちってことー?」

「ああ。そうだよ」

ポンポンと彼女の頭を叩きながら笑いかける。

「おおー。普段警邏を怠けてる隊長には似合わない単語なのー」

「てめぇ俺を何だと・・・」

引きつった笑みでボキボキと拳を鳴らす舞人。3秒後、痛そうな『ゴンッ!』という音と少女の「痛いのー!」という泣き声が響き渡った。

徐州入りした織田軍は劉備軍についた豪族が籠る小さな砦を吹き飛ばしながら進軍し、西の守りの拠点・小沛城を明日にも攻撃できる位置で夜営を行った。その地で翌日に向けて軍議を行った。

「物見の報告によれば、敵軍の布陣はこのようになっております」

天幕のなかに響く上品な声の主は、参謀の市だ。

「劉備は彭城に諸葛亮・鳳統・張飛とともに控えています。明日我らが攻める小沛城は関羽・趙雲が守り、数は2万と少ないですが将の質がいいので油断はできません」

「続けろ」

「次に南の守りですが、重要拠点・下邳城を呂布と陳宮が1万3千の軍と共に守っています」

呂布―――その名に陣幕に居並ぶ将たちに同様のざわめきが起こる。その名は彼らの指揮を執る織田舞人と共に今は瓦解した董卓軍の両翼として畏怖と共に広まっている名だ。

「劉備の本隊はどうなっているんだ、市?」

「劉備本隊は5万・・・となっているけど、未だに参陣していない豪族もいますから、増えるか減るかはこれからの主殿の戦ぶりにかかっていますわ」

「よっしゃ!」

パンッと右の拳を左の掌に打ちつけて立ち上がって告げた。

「明日は小沛攻撃を行う。夜襲に気をつけながらも兵を休ませよ!」

『ははっ!』

「愛紗」

「星か・・・」

城壁の上に立ち、地平の彼方を睨む関羽のもとに現れたのは趙雲だった。彼女にしては珍しい事に酒も、大好物のメンマも持っていなかった。

「どうした、心配ごとか?」

「・・・星、我々はあの方に勝てるのだろうか?恋と同等、いやそれ以上の武を誇るあの方に」

「紅竜王殿か」

珍しく弱気な関羽。それも仕方あるまいと趙雲は思った。

自軍の将のなかで、武で一番の実力を持つのは言うまでもなく恋―――呂布だ。その彼女をして「舞人には、勝てた事無い」と言わしめ、天下に『紅竜王』の異名を轟かす男の実力を恐れるのも頷ける。

「愛紗、確かに『個』では勝てない。劉備軍という『個』ではな。だが、我々は―――いやお前は一人ではないだろう?」

「・・・ああ」

(そうだ、私は一人じゃない。桃香様や鈴々、星や朱里達もいる)

「やってやろう」

「ああ。天下に名だたる紅竜殿を召し捕ってやろうじゃないか」

ジャーン!ジャーン!ジャーン!

銅鑼の音と共に、劉備軍の関羽・趙雲の守る小沛城を包囲した織田軍は攻撃を開始した。東からは楽進隊、西からは張郃隊、北からは于禁隊、そして南からは張遼隊を先陣にした織田本隊が攻撃を開始した。

「なかなか粘るな・・・一揉みに攻め潰してやろうかと思ったんだが・・・」

舞人は馬上で指揮杖を握りながら、城壁に取り付く自軍の兵の戦ぶりを見やる。敵兵は物量で攻めるこちらに対して、敵軍は必死に矢や岩を落として抵抗する。この状態が、すでに1週間続いていた。

そんな時だった。許昌を守る風から凶報が届いたのは。

「冀州にて袁一族の袁譚が兵を挙げ、賊の劉辟と共に我が軍の補給路を脅かしておるとのこと!」

「そうか、袁譚軍が・・・」

「は。織田軍は反転するか否か軍議が紛糾しているそうです」

小沛城内で関羽と趙雲は包囲網発動の吉報を受け取っていた。さらに吉報は続く。

「彭城から劉備様の本隊も後詰に向かわれるとのことです」

「と、いう事は―――」

関羽の傍らに座る趙雲が、ニヤリと笑みを浮かべる。

「彼の者が動いたという訳だな」

「補給路を断たれては戦は出来ません!ここは反転して袁譚軍を討つべきです!」

「いや、市よ。短期決戦を仕掛けて小沛を落とすべきではないか?」

「楓様。彭城の劉備が後詰に出たとの報告があります。本隊出陣で城側の士気は上がり、攻略は難しくなるかと・・・」

織田軍本陣では劉備軍の密偵通り、軍議は紛糾していた。沙和は退屈そうに爪の手入れをし、霞は酒を煽っていた。

(董承や韓遂が狙うのは何だ?華琳や俺を許昌から主力を率いて不在にさせ、袁譚がその隙に俺の背後を突いて挙兵・・・これは俺の動きを前後で封じる策。必然的に華琳も馬超と対峙して動けなくなる・・・となると?)

「そうか!」

ガタッと椅子を蹴倒して舞人が立ちあがって叫ぶ。

「市!全軍撤退だ!すぐに許昌に戻るぞ!」

「ど、どうなされたのですか主殿!?」

めったに見ない舞人の慌て様に驚く諸将。

「敵の狙いは許昌―――皇帝の身柄を奪う事だ!」

「申し上げます!」

舞人の焦りに駆られた叫びと同時に飛び込んだ使者が更なる凶報を告げる。

「孫策謀反!袁術軍の本拠寿春城を攻め落とし許昌城に迫っているとの由!」

包囲網を組み上げし者達の本命『孫策挙兵』の凶報だった―――

「桃香様、吉報です!織田軍が撤退を開始しました」

小沛城救援に向かう劉備は、軍師の諸葛亮から吉報を受け取っていた。

「愛紗さんと星さんはすでに織田軍の追撃を開始しているそうです」

「わかった。じゃあ鈴々ちゃん!」

「わかってるのだ!」

彼女の隣に轡を並べる義妹の張飛は、元気よく自身の得物である丈八蛇矛を元気よく掲げる。

「深紅の髪のお兄ちゃんを捕まえてくればいいんだよね!」

「うん。気をつけてね、鈴々ちゃん」

義姉の声援を背に受けて、張飛は一隊を率いて駆けて行った。

次回予告

一目散に許昌に向けて逃げる舞人。彼が討ち死に必至の殿軍に指名したのは凪だった。

「凪・・・許昌で会おう。必ず生きて帰れ!」

しかし彼の前にも危機が。

「深紅のお兄ちゃん!鈴々と一緒にお姉ちゃんのところに来てもらうのだ!」

立ちはだかるは万夫不当の猛将・張飛。

「ったく・・・お子ちゃまに構う時間はないってのに!」

「鈴々は子供じゃないのだー!」

一方的に張飛に押される舞人。しかし、彼にも救いの手が。

「大将!ここはこのオレにまかせて次の戦に備えてくれ!」

「助かったぞ!お前の名は!?」

舞人の問いに彼女は答える。頭に白の頭巾をかぶり、大斧を得物にする彼女の名は―――

「オレは徐晃!字は公明だ!」


 
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