No.1093385

テレーズさんの不思議発見

砥茨遵牙さん

腐ったテレーズから見たルカ主の短編二本立て。
2主→ヒエン

2022-05-31 19:28:51 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:355   閲覧ユーザー数:355

薔薇満開

 

 

ヒエンとルカの初めてのチュウの翌日。ムツゴロウ城テラス。その一角で、アップル、エミリア、テレーズがひそひそと何かを話していた。

見目麗しい女性達の内緒話かと思いきや、たまにエミリアが心臓を押さえたりテレーズがニヤニヤ笑ったりアップルが鼻血出したりと、どう見ても関わってはいけない内容に違いないと、皆が遠巻きにしていた。

さて、ここで彼女達の会話を聞いてみよう。

 

「アップルさん、つまりル…ンンンッ、獣さんはヒエンさんに飼われることで光堕ちしたという解釈でよろしいんですね?」

「もちのロンですエミリアさん。」

「あの憎悪の塊のような方が光堕ち…、ということはつまり、いずれはプリキ○アになるのでは?」

大真面目な顔でとんでもない発言をするテレーズ。彼女もまたアップルのプレゼンによって堕ちたお腐れ様であり、口の硬い人物の1人である。

「テレーズ様、ニチア○ではありません。」

「でもエミリア、ゴリラがキュ○ゴリラになる時代よ?不可能ではないわ。」

「一旦プリキ○アから離れて下さいテレーズ様。」

「では契約して魔法少…」

「それは混ぜては危険ですテレーズ様。」

「モクモクさんと契約したい…。」

膝の上に乗せていたモクモクを撫でるテレーズ。

「ムムムー。」

テレーズはお腐れ様と同時にヒエンによって動物好きも開花していた。何故ならムササビ5はほとんどグリンヒル近くの森で拾っており、こんなに素晴らしいモフモフちゃん達が近くにいたなんて!とその魅力の虜になったのだ。最推しは膝の上に乗せているのんびりした顔のモクモクである。ちなみに、とアップルがモクモクを見ながら語り出す。

「ヒエンさんが獣さんを好きになるきっかけはそのモクモクくんを探しに行った時だそうですよ。」

「まあ!ではあなたは恋のキューピッドなのね。なんて素晴らしいのモクモクさんっ。」

「ムムムムー。」

モクモクをムギュッと抱きしめて頬擦りするテレーズ。ふわふわの毛の質感に癒される。

テレーズ自身、何も思わないわけではなかった。あの非道な行いをしてきたルカ・ブライトが生きている事実を聞かされた時には驚いたし、動けないなら止めを、と考えたこともあった。

だが、テレーズはヒエンとの内密の話で彼の想いを聞いて、考えを改めた。

『戦場なら殺し殺されは仕方ないんだけどね。ルカは、戦場じゃないところで、ダレルの手先に大事なお母さんをめちゃくちゃにされて、それを助けなかったお父さんにも絶望して恨んで。その当事者ももう亡くなってるから、恨みが都市同盟全部に向いちゃったんだ。』

まさか元ミューズ市長ダレルが非道な行いをしていたとは。ヒエンはテレーズが女性のため詳細は伏せて話した。しかし、殺したと明言しないことで聡明なテレーズは気付いてしまった。当時少年だったルカ・ブライトを狂気に落とすほどの所業。なんと、むごい。

恨みが恨みを生む。復讐が復讐を生む。その連鎖を断ち切るとヒエンは断言した。

『僕はね、元々好みのタイプではあったけど、ルカが大好きになったよ。好きって、すごいよね。今までの行いが酷かったのも分かってるのに、好きになって、全部に理由があったって分かると、その人の心を守りたくなるんだもん。それにね、ルカも僕の道を見届けてやるって言ってくれたんだ。だから僕は最後まで戦うよ。復讐が復讐を生む国よりも、動物でいっぱいにする国のために!』

動物でいっぱいの国。それを見届けると言ったルカ・ブライト。この軍主は突飛もないことをするが、戦争については達観した考えを持っているし、動物に関して決めたら真っ直ぐだ。だから、テレーズもヒエンに賛同する。恨みを断ち切り、癒される動物達の国のために。

 

同時に、テレーズは彼らの恋を応援すると決めた。光堕ちしたルカ・ブライトを内密に部屋で飼う。しかも向こうは利き手が動かない。なんて美味しい状況。そして、先日アップルが見たという2人のファーストキッス。内容を聞く限りヒエンがグイグイ押している。つまりは、

「アップルさん、つまりヒエンさんは…、いわゆる襲い受け、というやつですね?」

「その通りですテレーズさん。」

「攻めが動けないことをいいことにあれやこれやする受け、うっ、なんて尊い…。」

思わず心臓を押さえるエミリア。

「たまりませんね…..。先日伺ったヒエンさんのスカーフを届けるために足枷を引きずってきたお話。あのル、ンンン、獣さんが優しさを見せるなんて。順調に光堕ち…、いえ、監禁が光堕ちでよいのかしら?でもそれもまたよきかなです…。」

モクモクを抱えつつニヤニヤするテレーズ。

「ロミジュリ的な関係から一転、攻めを死んだことにして受けが飼う展開は今までにありません。まさに萌えは正義、ジャスティス。本にまとめなければ。」

鼻血を流しながらウフフフフと笑うアップル。

 

 

内密の会話のために離れたところにいるシンのことは気にもせず、知的な女性達のお腐れ談義は今日も満開なのであった。

 

 

 

 

 

 

後半へ続く。

 

 

 

 

愛、それは、愛。

 

 

ヒエンとルカの初めてのチュウから2週間。応援する決意を固めたテレーズだったが、好奇心に負けて本人に会うことを決断する。

光堕ちしたルカ・ブライトを見てみたい。いずれプリキ○アになるかもしれない。だってゴリラもキュ○ゴリラになる時代ですもの!

そうと決まれば善は急げと、聡明なテレーズはてきぱきと手筈を整えた。アップルとシュウに許可をもらい、シンはティントに行くヒエンの護衛をしなさいと命令してついていった。今日は彼の診察をするというホウアンに同行して、ヒエンの部屋に向かう。

ホウアンがコンコンとノックして。ガチャッと扉が少しだけ開いて覗きこんできたのは。

「ムムムッ!」

ムササビ5のリーダー、ムクムク。なんて可愛い。

「はい、こんにちはムクムクくん。今日は診察ですよ。テレーズさんはシュウさんとアップルさんの許可をもらってます。」

「ムー!」

いいよーというように扉を開けるムクムク。賢い、可愛い。やっぱり動物はいいですねヒエンさん。絶対動物王国作りましょうね。

中に入ると、ベッドの手前にグリフォンのフェザーが座っていて。この方もグリンヒルの森にいたはず、後で触らせてもらいたい、と考えながらテレーズがフェザーを眺めていると。

ホウアンがフェザーの後ろに回り込んで、声をかけた。

「こんにちは、獣さん。診察です。」

「…ああ。」

ぶっきらぼうな返事をして、ガチャガチャと手枷を鳴らしてゆっくり立ち上がったその人は。

「ん?貴様は確かグリンヒルの…」

「て、テレーズ・ワイズメルです。」

紛れもなくルカ・ブライト。しかし、以前のように狂気や憎悪といったものは感じられない。

「こいつにも話したのか。」

「アップルさんが口の硬さを保証しています。」

「そうか。あの眼鏡の女は鼻血は出すがなかなか切れるからな。」

「医者としては、鼻血は出さないでもらいたいんですがね。」

ぶっきらぼうで、無愛想な、態度の大きい青年といった印象。何よりホウアンが普通に話している。

これが、光堕ち。

「はうッ!」

キュウウゥン!と心臓がときめく。思わず心臓を押さえて膝をついた。テレーズの様子を見てホウアンが心配そうに話しかける。

「テレーズさん?どうしました。」

「な、な、」

「な?」

「生の、光堕ち…。」

「はい?」

「最高に、萌えますっ…。」

「…ああ、もしかしてテレーズさんもあの類いの。」

「…貴様もか。」

ホウアン先生が遠い目をして、ルカ・ブライトも呆れたような目をして。何ですかその顔見たことないです光堕ちの効果ですか!?

至近距離では萌えすぎてつらい。私のことは構わずどうぞ診察を、とテレーズは二人から離れて部屋の角に移動した。

では、とホウアンがルカ・ブライトの診察にとりかかる。

「左手と右足の麻痺はどうですか?」

「足の痺れは取れた。左手はまだ麻痺が残るがだいぶ動かせるようになってきた。」

「であれば、多少動かした方がいいでしょうね。一応あなた監禁されてるわけですし。運動不足は毒です。スクワットがオススメですよ。」

「…鍛えていいのか?」

「ヒエンさんから逃げるおつもりですか?」

「…いや。」

「でしょうね。逃げたら地の果てまで追いかけますよ彼は。」

「…そうじゃない。」

「?」

「…あいつから逃げる気はない。俺は、あいつの獣として生かされたからな。」

あいつの獣。つまり、つまり、ヒエンさんのペット発言ですか!?

なんということでしょう。アップルさん、腐海に落ちて日が浅い私には刺激が強すぎます。萌えすぎてつらい。

「…あなたも随分あの子に毒されましたね。」

「……否定はせん。」

「とはいえ、日の光を浴びなければ免疫力が落ちますからね。はい口開けてー。」

かぱっと口を開くルカ・ブライト。はい、異常無しと言われてすぐ閉じて。あのルカ・ブライトが大人しくホウアンの指示に従っているのが不思議でならない。テレーズは思いきって聞いてみることにした。

「せ、先生、どうして彼は大人しく指示に従っているんですか?」

「ああ、それはですね。“万が一あなたが風邪引いたらヒエンさんにも移りますからね”って以前言ったからでしょう。」

「えっ。」

「………。」

「ムササビくん達も外に出てますから、風邪菌を持ち込んでもおかしくないですし。それにヒエンさん、彼と一緒に寝てるそうです。」

一緒に寝てる?風邪引いて移したくない?えっ?それはもう、もう、

「愛じゃないですか!!」

「愛ですねえ。」

「…うるさい。」

なんということでしょう。アップルさん、あなたが叫びたくなる気持ちが分かります。彼らはあまりにも尊い。

萌えは世界を救います。正義です。断言します。私は恨むよりも!!彼らを応援したい!!

「ジャスティス….!」

「…おい貴様、鼻血は出すな。」

「ご心配なく。私にはアップルさんのようなジョジ○立ちする体幹はありません。」

「…どういう基準なんだ。」

普通に会話出来たことにテレーズは内心驚いたものの、これが光堕ちと萌えの効果ですね、と1人で納得する。

「診察は終わりましたから帰りますよテレーズさん。立てますか?」

「は、はい。」

ホウアンに手を引いてもらって立ち上がるテレーズ。ではまた来週、と2人が出ていこうとすると。

「待て、テレーズ。」

「はへっ?」

しまった。萌えすぎて変な声になってしまった。

テレーズがくるっと振り返ると、ルカ・ブライトが足枷をずるずる引き摺って歩いてきて。テレーズの前に立って、左手に持っていた3冊の本をズイっと差し出した。

「これの続きを持ってこい。」

「えっ?」

「眼鏡の司書の女に言えば分かる。コイツらは図書館には入れんらしい。」

コイツら、とはムササビ5のこと。そういえばエミリアも彼のことを知っていた。きっと監禁中のルカ・ブライトに本を持ってきていたのだろう。とはいえ、彼女も司書の仕事があるから頻繁には来れない。ならば。

「分かりました。他にも欲しい本があれば言って下さいね。」

「…ああ。」

ぶっきらぼうな返事をして、ずるずるとまた足枷を引き摺ってフェザーの後ろに戻っていった。きっとあれが定位置なのか。大人しく戻るなんて、なんて、愛。

「ホウアン先生、ドキがムネムネします。」

「多分それ逆ですね。その症状は医者には治せませんよ。」

そうしてホウアンと共にヒエンの部屋を後にしたテレーズは、早速図書館へ行こうと本の表紙を見てみた。

そのタイトルは、『薔薇の剣士~ラインバッハ3世の冒険譚~』

世界的に有名な冒険小説。確かこれはヒエンが好きだと言っていた小説だ。つまりは。

「完全に、愛。ですね。」

これは巻数も多いからまた3冊ほど持っていってあげましょう、とテレーズは意気揚々と図書館へ向かっていったのだった。

 

 

 

終わり。


 
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