No.107889

新たなる外史の道 23 劉備、超大国の王を知る

タナトスさん

恋姫無双の愛紗ルート後の二人が真の世界にやってきたら?
という妄想から生まれた駄文です。
読んでもらえれば幸いです。

2009-11-19 22:25:02 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:9318   閲覧ユーザー数:6666

劉備が幽州城に入城した知らせを受け俺は会談に臨む準備をした。

 

 

≪劉備サイド≫

私達は馬車から降り立ち、女中さんの案内で応接室に到着した。

 

「ごゆるりとお寛ぎくださいませ」

 

そう言い、“ソファー”って言うふかふかした椅子に座る。

 

座り心地がカナリいい。

 

暫くして、戸を優しく叩く音が室内に響く。

 

「失礼いたします」

 

女中さんがお茶とお菓子を持ってきた。

 

「お茶とお菓子をどうぞ」

 

そういい丁寧なしぐさでお茶を入れていく。

 

ここからでも解るくらいお茶のいい香りがする。高い茶葉を使っている事が私でも理解できた。

 

「主様の準備ができ次第、会談場所に移動いたします。暫くお待ちください」

 

そういい、女中さんは退出した。

 

お茶とカステラって言うお菓子を食べながら北郷さんを待つ。

 

あらかたお茶とお菓子を楽しんだ時、戸を優しく叩く音が室内に響き渡る。

 

「失礼いたします。主様のしたくが終わりました。会談場所へご案内いたします」

 

私達は女中さんの案内で会談会場までつく。

 

 

扉が開きそこには長い机があり向こう側に北郷さん、北郷夫人、たしか・・・及川 佑さんともう一人金髪のお坊さんが座っていた。

 

「ようこそ、劉備殿。多分私の記憶が確かなら国賓がこの幽州城へ来たのは貴方が初めてだ。孫策殿もこの幽州城に入城はした事が無いはずだ。なにせ、幽州城を建てる前に来たぐらいですからな」

 

そう言い北郷さんは私たちを裏表ない微笑で私達を向かい入れてくれた。

 

とても超大国の王様とは思えない振る舞いだ。

 

私達の印象だと超大国の王ともなると私達みたいな弱小国家の王など不遜で舐めきった態度を取るのがこの大陸の慣習なはずなのに、北郷さんは私達を“国賓”として迎え入れてくれた。

 

戦争状態の国の王なのにも関わらず、北郷さんは私達を“客”として向かいいれてくれた。

 

あれほど失礼極まりないことをした私達を迎えてくれた・・・

 

これが超大国を治める王の度量・・・

 

私はこの途方も無く大きな王を相手に何処までやれるだろうか・・・・・・

 

 

劉備たちが会場に入り、劉備達が椅子に座りいよいよ交渉と言う時に劉備が突如立ち上がった。

 

「北郷さん・・・会談の前に先の会談での非礼をこの場を借りてお詫び申し上げます。すみませんでした・・・」

 

俺は驚いていた・・・まさか国のトップが謝ってくるとは予想外だった・・・

 

公式の場で国のトップが謝るなどそうそうありはしない。

 

思いっきりが良すぎるのか、素直すぎるのか、国同士の交渉をした事が無いのか・・・

 

そこら辺が劉備の魅力でもあり、欠点でもある・・・か・・・

 

「気にしなくてもいい、悲しむべき行き違いがあっただけだ。しかし、貴方のその自身の過ちを是正するその姿は君主として好意に値すると共に少し軽率であると老婆心ながら忠告申し上げる。

一国の王が妄りに頭を下げるべきではない。それと・・・」

 

俺の注意を愛紗が止める。

 

「一刀様、そろそろ交渉の方に移っては如何でしょうか? 劉備殿も反省しておられるみたいですし」

 

「・・・解った、交渉に移る」

 

交渉の方は意外や意外スンナリ進んだ。

 

諸葛亮の提案で一部商品や民の国交には通行手形が必要なものの後の事はスンナリと通った。

 

条約内容は、

 

① 一部商品や、民間人の出入国には国際手形が必要であるが、両国政府関係者及び、蒼蜀外資系企業の場合、両政府が承認した企業に限り自由に国交の往来を許可する。

 

② 蒼蜀との対等な軍事同盟を締結する。

 

③ 蜀の留学生の受け入れを積極的に蒼は支援する。

 

④ 蒼はその技術力及び政治体制の一部を蜀に指導する。

 

⑤ 両国は同盟国としての条約違反を犯した場合は宣戦布告とみなす。

 

などが明記され調印、捺印された。

 

 

条約調印が終わり、晩餐会が始まる時、真名を許してもらった。

 

晩餐会の時、朱里が俺に質問をしてきた。

 

「蒼はどうやってここまで発展したのですか?」

 

俺は朱里の大まかな疑問に答えていく。

 

「道路や河川の整備などの公共事業は、職業軍人や普段働いていない女性や子供などを雇い、班を編成、最初は彼等に支払う給料を一定にし、よく仕事が出来た班は報酬を上げていくという形をとって公共事業を開始した」

 

「確かにそれだと働く人達は労働に対し意欲を持って働きますからね。更に職業軍人を入れることで兵農一体の軍事訓練にもなり、重たい物を運ぶ時は筋力強化にもなります。更に、経費もそんなに掛かりませんから。この班編成には団結力や集団での意識の向上にもなりますから良く考え出されています」

 

俺の言葉に朱里は理解を示した。

 

「次に経済だがより多くの税金を取れるのは豪商や豪農といったお金持ちから税徴収したほうがお金は取れる。しかし、彼らは豪商、豪農になるだけありお金に五月蝿い。そこから取るに彼等に確定申告を義務付けた、これにより、一体どれだけ儲けたのかが丸解りになる。勿論、ズルをさせない為に諜報機関に調査させた。徹底的に、それこそ米粒一つ見逃さない位に調べ上げた結果、かなりの豪商、豪農が隠し財産や、申告漏れがあった。

そこで俺達は彼等に儲けの三割から、四割にまで税金を上げる罰則を与え、反対するなら取り潰し、財産を没収すると脅した。そうすると彼らは規律を守り、税を納めた。

それだけでは豪商、豪農の指示を得られない、逃げていくだけだ。彼等に我が国にいると利益が上がるそう思わせる為に我々は、株式や証券取引、外国への事業拡大などの知識を使い彼等にソレを教えた。彼らは我等に奪われ失った金を取り戻す為、必死に学んだ。

その結果、彼等はより高い利益を生み出すようになり、我々に税金を納めるようになった。

 

彼等の弱点は自分達の長所でもある欲望だ、それを刺激し、お金を出す方向に待っていけばいいだけだったから実に簡単に金が舞い込んできた。

国民には住民税、所得税、消費税を導入した。最初は彼らは反発したがその税金は福祉や衛生、学校などに回し彼等の生活を豊かにする方向に使ったから反対は次第に無くなった」

 

「その様な経緯が・・・」

 

朱里は俺の言葉を覚える様に呟く。

 

「次に教育だ、教育は小学校を開設し義務教育にする。そうする事により、子供達の識字率や教養、知識力を上げることで国の将来の発展が見込める。更にその上に、中学校、軍学校、その上に大学を置き、より学ぶ意欲がある者の学びの場を作った。大人たちの識字率の向上は、夜間学校を開設しそれの参加を義務づけ、読み書き計算が出来るようになれば来なくていいと言う方向に持っていった」

 

「でもそれでは民に要らぬ知識が身に付いてしまい反乱の危険は無いのですか?」

 

朱里の疑問は尤もだし、稟や風、星などは反対した事を思い出した。

 

「国を治めていて反論や批判が評価されるのは当たり前だ。更に今は非常事態で国は緊張しているが何れ戦いは終わる。終わったとき国は緩み、建国当時の尊い理想も次第に薄れ、民を蔑ろにする政治を行いやすい。今までの漢王朝や多くの王朝がそうだったように、だからこそ国民には王や政府、文官や武官を戒める力を養ってもらいたい。そう思い、我が国では教育を受ける自由と権利、言論の自由と権利、発言の自由と権利を彼ら蒼の民に蒼王、北郷 一刀の名の元に保障している」

 

「でもそれでは王の威信が・・・」

 

「民の意見に耳を傾けられない王など不要だ。民を納得させられない王など死んでしまえ。民を豊かに出来ない王など王ではない。民や国が無ければ王は王を名乗れない。しかし、王がいなくとも民は民を名乗れる。そう思い、俺は政務に付いている。

俺はこの国が好きだ、この国の民を愛している

俺達の様な余所者を暖かく向かい入れてくれた人たちの為に俺は政治を行っている」

 

朱里は俺の言葉を聴き、その口を閉ざした。

 

 

≪桃香サイド≫

私は北郷さんと朱里ちゃんの会話を黙って聞いていた。

 

最初の方は理解できなかったが、最後の所だけは私に重く圧し掛かった。

 

『民の意見に耳を傾けられない王など不要だ。民を納得させられない王など死んでしまえ。民を豊かに出来ない王など王ではない。民や国が無ければ王は王を名乗れない。

 

しかし、王がいなくとも民は民を名乗れる。そう思い、俺は政務に付いている。

 

俺はこの国が好きだ、この国の民を愛している

 

俺達の様な余所者を暖かく向かい入れてくれた人たちの為に俺は政治を行っている』

 

 

私はソレを聞いたとき自問していた。

 

 

私は民の意見に耳を傾けているだろうか?

 

 

私は民を納得させているだろうか?

 

 

私は民を豊かにしてあげれるだろうか?

 

 

私は北郷さんほどに国や民を蜀に住まう人たちを蜀王として導き、幸せにしてあげているだろうか?

 

 

 

今の私ではどれもこれも出来ていない。

 

悔しいけど・・・認めたくないけど・・・

 

私は北郷さんに国力だけでなく、王としての姿勢も負けている・・・

 

国や民を思う気持ちでも負けている・・・

 

朱里ちゃんと話す北郷さんを見た時、あの肩にどれ程の重たい物を乗せているのだろう。

 

一体どれ程その胸の中に国や民を愛する気持ちが詰まっているのだろう。

 

一体どれ程の国や民の期待をその背に背負っているのだろう。

 

今の私ではソレを図り知ることは出来なかった・・・

 

 

 

 

私はこの時、超大国の頂点に君臨する王の姿のほんの一部を垣間見た気がした・・・

 


 
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