成都の劉備の居城に俺はいる・・・
蒼蜀首脳会談に臨むため俺は蜀の王都、成都に来ている・・・
この交渉が世界に何らかの影響があるはずだ・・・
良くも悪くも・・・・・・・
なら私は、よい方向に向かうよう努力をしよう・・・
我が願いが届くように・・・
俺は応接室で出された、茶と菓子をいただきながら劉備を待つ。
脇には会談の資料が入ったビジネスバッグが置いてある。
暫く待っていると、案内の人が応接室に入ってきた。
「お待たせいたしました。劉備様のお支度が整いましたのでご案内いたします」
「委細承知した」
俺は女中さんの案内で場内の廊下を歩く。
暫く歩き、観音開きの扉が目の前に現れる。
扉が開き、俺は中に入る。そこには・・・
長机に劉備、諸葛亮、鳳統が座り、部屋の四方には、過去愛紗、呂布、張飛、馬超、が固めていた、外の気配を窺うと、黄忠が弓矢で狙撃体制、厳顔、魏延が強行突入部隊か・・・
豪華な布陣だ・・・しかも各自武器を持っている・・・
「交渉の場に武器を用いるのが蜀の交渉なのかな?」
俺の質問に武将全員が身構える。
「いいえ、ですが今回は非常措置的なものです・・・」
諸葛亮が俺の質問にそう返す。
「そうか・・・では、交渉を始めよう・・・」
交渉はまず、今回の国交回復の議題から始まる。
「何故、今回我々、蒼との国交を断絶されたのかお聞きしたい」
俺の言葉に孔明は答える。
「今回の私達の国交断絶を決断したのは魏の侵攻による被害を抑える為です・・・
魏の国力は我々蜀の上を行きます・・・国を守るために今回の措置と成しました・・・」
俺は孔明の答えに頷きながら答える。
「なるほど・・・しかし、現状では国は滅びかけている・・・不況という名の強大な敵によって・・・貴方達の行為は、結局、国の損害の方が大きい結果となった・・・」
孔明は辛そうに、俺の言葉を聴きながら言う。
「・・・確かに・・・事実そうなりました・・・しかし、誰にも予想できない事はあります・・・少なくとも私達は国交断絶が私達の国を守ると決断して行いました・・・」
俺は孔明の言葉が言い訳にしか聞こえない・・・
国が滅びかけているのに、自分達の言い訳をしている・・・
「・・・貴方達の意見は解りました・・・しかし、貴方達はこの不況に際しどの様な打開策がおありなのか窺いたい。私達の打開策はまず、4カ国間の国交正常化、国境の関所の無い国境の自由化、商業の自由化による経済の活性化による回復が私達の答えだ」
孔明は俺の言葉に答える。
「私達の考えてとしては、国交回復は私達の総意ですし、私達はそれを望んでいます・・・
・・・蒼外資系企業の蜀での経済活動は正に私達に利益を齎してくれます。
ただ・・・国境の関所を通らない自由化は私達は反対です。何故なら、人材の大量流出や犯罪者の流入。また、経済の自由化による貿易摩擦が起こらないとも限りません・・・この観点から商業の自由化、国境の自由化も認められません」
孔明の言葉に俺は考え込む。
確かに、俺達は俺達の意見にメリットしか入れていなかった・・・彼女達にデメリットは言っていなかった・・・そこからデメリットを的確に見抜き、その事に反対してくる。
俺は“朱里”を侮っていた・・・
良いだろう・・・この慢心は戒めよう・・・
「それもあるでしょう・・・だが我々に時間が無いのも確か、この不況という病魔に対抗する特効薬が今我々が示した案しかないのも確か」
「ですが、急速な回復は反動も強いです。その事をお考えいただきたいのです」
議論は平行線の様相を呈し始めた・・・
「我々は最早一国で物事を考える時代は終わりを告げたのです。確かに国としての単位の考え方も大事でしょう・・・しかし、今はこの大陸からの視点で物を考えていただきたい」
「しかし、我々の住んでいるところはこの蜀なのです。たとえ一時的な事であってもそれを抜きにする考えは出来ません」
「私とて蒼の王だ、だがこの大陸に住む人たちは国の事など関係ないのです・・・今日食べる事に事欠く彼らにとって国の威信や国の存続より、今日食べる食事の方が重要な問題なのです。彼らに我々が必要な存在と認識されるのは、今日食べる食事を国が補償してくれる。今日も安全に床につける。この条件が満たされた時、始めて国という所属できるという意思を持つ事が出来ます。そこから国に認められたい、国の為に働きたいという意思を持ち、国民が自己意識で国のあり方を考える。
私達は彼らにこれ等を与える義務と責任がある、と私は考えます」
俺はマズローの自己実現理論を国に置き換え孔明に訴える。
「北郷さんの考えは解りますが、私達は国の為に仕える者達です・・・私達、蜀は確かに貧窮する民の為に立ち上がった者達です・・・しかし、私達は国を持ち、国として考えて行動しています・・・」
孔明の言葉に俺は失望しかけていた・・・“朱里”は国とかそんな小さい事を言う人間ではなかった・・・
ああ・・・そうか・・・これは俺の過去の朱里と孔明を混同して考えていたんだ・・・
それが解ってしまった時、俺は何か冷めた想いで、孔明を見ていた・・・
「・・・劉備殿のお考えはいかがか・・・」
俺は劉備に話を振った。
「・・・確かに・・・北郷さんが言われた事は私達の理想です・・・ですが、それはこの世界では理想でしかないんです・・・
今の状況下では理想だけで物事を進められません・・・北郷さんは強国の王です・・・私達みたいに弱小勢力でもない、曹操さんすら追い返せる大国だからこそ言える言動なんです・・・」
「たとえ理想でも、私は諦めなかった・・・どんなに泥水を啜っても、どんなに絶望しかけても私は希望を捨てなかった・・・
劉備、貴女は諦めが早いと私は思う。
劉備・・・希望や絶望の正体は何だか解るか・・・?」
劉備は首を横に振る。
「それは人自身なんだ、人が希望にもなり、絶望にもなる・・・私の師の言葉です・・・
その方は諦めなかった・・・どんな状況でも決して諦めなかった・・・自分より遥かに強大な敵にも臆せず戦った・・・自分の命を返り見ず戦い、自分の信念に忠を尽くした・・・
私の中にこの言葉が今でも離れない・・・未だに・・・
私は・・・私達は人々の希望にならなければならない・・・その為に私はここに来た・・・」
「・・・例えそうだとしても、私はこの国の人たちの王なんです・・・王が国を捨てた考えは出来ません・・・」
「待て! まだだ、まだ話合う余地はある! 早まるな、劉備!!・・・」
劉備は首を横に振り言う。
「貴女は王としてではなく1個人として会談した・・・そして私は王として会談した・・・
確かに貴方の理想は素晴らしいし、私の理想そのものです・・・ですが、私は蜀の未来を・・・この国の人たちの未来を考えなくてはなりません・・・故に、商業の自由化、国境の自由化は承認できません・・・」
「それでは間に合わない、君も見ただろう、民のあの惨状を、民の顔から希望が失われたあの顔を君は見て何とも思わないのか?」
「思わないわけ無いじゃないですか!!!!」
劉備の叫びに俺は押し黙る・・・
「・・・それでも私は蜀の王でもあるんです・・・」
そうか・・・彼女は・・・国の王と言う呪縛にとらわれている・・・
師匠の言葉を思い出す・・・
人が組織を作るのではない・・・組織と言うメカニズムが人を作る・・・
劉備は王と言う名の歯車なんだ・・・それを強要したのは回りや、状況がそうした・・・
心優しい少女もまた、王として生きることを選んだ・・・
「・・・解った・・・我々、蒼は蜀に対し・・・宣戦布告を申し上げる・・・」
辺りは殺気にも似た空気が満ちる・・・
「・・・ここでそれを言う事は貴方の命がありませんよ・・・」
「孔明・・・俺を低く見てないか・・・?」
「・・・貴方を人質として取ります・・・」
関羽、呂布、張飛、馬超が刃を俺の喉元に突きつけていた。
俺は氣を解放し、時を遅らせる。椅子からズリ落ち、椅子を蹴る、椅子は関羽に当たり、関羽が怯む、その隙に、馬超を蹴り上げ、張飛の首に指刀を入れる。呂布には顎に裏拳を当て、関羽の左肩、右腕を掴み、足払いを同時に行い床に叩きつける。
この間僅か、2秒・・・
四人は唸りながら気を失う。
俺が劉備に向き直ろうとした時、扉が開き、厳顔、魏延が強行突入をしてきた。
俺は、加速して魏延の側面に近づき、魏延の鳩尾に右膝を叩き込み、顎に手のこうを叩き込み倒す。崩れ落ちる魏延。
「クッ!!」
厳顔がパイルバンカーみたいなものを俺に叩き込もうとするが、俺はそれを右回りに回転し、避けると同時に指刀を後頭部に叩き込む。
「ガハッ!!」
厳顔も倒れたが、弓矢が俺を襲う。
俺はステップを踏みながらかわし、窓を突き破り、撤退する。
俺は馬車に乗り込む。
「出せ!!」
操縦士は慌てて馬車を走らせる。
交渉は決裂した・・・・・・
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恋姫無双の愛紗ルート後の二人が真の世界にやってきたら?
という妄想から生まれた駄文です。
読んでもらえれば幸いです。