シャドウ一行は聖地でダーズに操られたゼルダ姫、こどもリンク、そしてクロムを解放した。
今はバラバラになっているため、合流を図らなければならないが、手掛かりはなく、仲間の救出に専念した。
そして、森の奥にいたチャッピーとランディアのスピリッツを解放すると、一行は衝撃的なものを発見した。
「……お前は……ソニック……!」
それは、ピカチュウを助けようとして光に飲み込まれた青いハリネズミ、ソニックだった。
シャドウの足取りが重かったのは、彼の気配を察知していたからだ。
「嘘でしょ、ソニックがこうなるなんて!」
「嘘ではない、これは事実だ。こいつは今、ダーズに自由を奪われている」
シャドウは鬼気迫る表情で一行に言う。
彼にとってソニックは気に入らない相手だったが、ほとんど操られないソニックがこうなった事には衝撃を隠せなかった。
「どうするんですか、シャドウさん」
「……こうなった以上は、僕が戦う。この中でこいつの事を一番知っているのは、他でもない、僕、なのだからな」
しずえがシャドウを心配していると、シャドウは銃を構え、ソニックを縛る鎖を連続で撃った。
すると、ソニックは赤い瞳を光らせて、超音速でシャドウに体当たりした。
シャドウはすぐに攻撃を受け流した後、ソニックの前に立つ。
「……」
「ソニック! お前の自由は、僕が取り戻す!」
シャドウとソニックの、何度目かも知らない一騎打ちが始まった。
「はっ!」
最初に攻撃を仕掛けたのは、シャドウだった。
シャドウは地面を駆り、勢いをつけて丸くなり、ホーミングアタックを繰り出す。
ソニックも鋭いホーミングアタックで反撃する。
「ぐあぁ! だが……!」
シャドウはサブマシンガンを構え、ソニックに乱射して反撃の隙を与えない。
その後にシャドウは距離を取り相手の出方を伺う。
「うぐっ、うぅっ、ぐぁっ!」
ソニックはホーミングアタックでシャドウに近付き体術で連続攻撃した。
「ダーズサマノ……シンセカイノ……ジャマハサセナイ……」
「……ソニック。ダーズに君の好きな自由を奪われて、苦しいか?」
「……ダレ……ダ……」
「僕はシャドウ・ザ・ヘッジホッグ。名前は何度も聞いた事はあるだろう? 究極生命体……分かるか? ……なんで僕がこんな事をしてるんだ……」
シャドウは、操られているソニックに呼びかける。
ソニックが愛する自由をダーズに奪われた事が、彼にとって苦しいのをシャドウは理解している。
そのため、本人は乗り気ではなかったが、ソニックを説得する事で彼を戦わずに助けようとしているのだ。
「オマエモ……ダーズサマニ……サカラウキカ……。コノセカイカラ……キエサレ!!」
「ソニック!」
しかし、ソニックの自由な魂も、ダーズの呪縛には逆らえず、ソニックはシャドウに超音速で体当たりした。
シャドウは、混沌の力を使って、何とか体当たりを回避した。
混沌の力と自身のスピードであってもギリギリと言っていい回避で、
ソニックのただでさえ速いスピードが、闇の力によってさらに速くなったとシャドウは思い知った。
「ちっ……流石に速いな。だが、『アレ』はまだ……使うべきではないようだ」
シャドウは舌打ちした後、混沌の力を使ってソニックに接近し、連続攻撃を叩き込んだ。
ソニックは防御していたがシャドウの猛攻が上回り最後の一撃でソニックはダウンした。
「よし……!」
「マダダ……」
ダウンしたソニックはゆっくりと立ち上がる。
彼に宿る闇の闘志はまだ消えておらず、それどころかさらに燃え上がった。
ソニックの動きはますます速くなり、シャドウの攻撃を次々にかわしていく。
「くっ……!」
これがソニックの本気か、とシャドウは感じる。
ソニックとシャドウの動きは非常に敏捷で、他のメンバーの目には映らなかった。
今のところ、戦況はシャドウが劣勢になっている。
「カオスブースト!」
「グアアアアアアアアアアア!!」
シャドウは状況を打破するべく、カオスエメラルドの力を使って他方からの同時攻撃を放つ。
三回のチャンスで確実、かつ大ダメージを狙える技により、ソニックに大ダメージを与えた。
「……」
「ぐぅぅぅっ!」
しかし、ソニックもただやられるだけではない。
ソニックはホーミングアタックで、シャドウの急所を狙い定めた一撃を繰り出す。
互いに大きなダメージを食らった後、二人はもう一度構え直す。
「オマエハ、ホントウハホカノファイターガニクイノダロウ? ホカノファイターニフクシュウヲシタイノダロウ?」
「復讐……か。かつては僕もそう思っていたが、今の僕は違う」
そう言って、シャドウはソニックに発砲をした。
ソニックはそれをひらりとかわすが、シャドウは熱く冷たい表情をしていた。
「……ナゼ、ミトメナイ。オマエハ、ヒトノオモイヲウケタアマリニ、タニンノイバショヲウバッタ、フトドキモノナノダゾ」
「そんな事を言う時点で、お前はソニックではない! 人の思いは底なしとは言う。それは時に、絶望を呼び起こすものとなる。
それでも、人の思いというものは、時に希望を生み出す事がある。その希望があるから、今、僕はこの場に立ち、お前と戦っている!」
「ウラギリモノハ、オトナシクシヌガイイ……」
「そんなの、僕が許さない」
普段は冷静沈着で、感情を表に出さないシャドウ。
しかし、相手に侮辱されたため、目の前の存在に対し怒りを露わにしている。
まだ、本気で怒ってはいないようだが……。
「オソイッ」
「遅いぞっ」
ソニックはシャドウの攻撃を避けながら、シャドウに確実にダメージを与えていく。
何とか隙を突けないかと、シャドウは相手の出方を伺いながら走る。
しかし、ソニックの動きは自分よりも遥かに速い。
(どうにかして隙を突けないか……)
「うぐぅっ!」
防戦一方のシャドウに、ソニックの容赦ない一撃が入る。
「そこかっ!」
シャドウはソニックの背後を取り、拳銃で撃つ。
効果的な一撃を与える事に成功したシャドウだが、彼の反撃も後半から緩まる。
対照的にソニックの猛攻はさらなる激しさを見せ、シャドウを追い詰めていく。
防御するシャドウだが、シールドに罅入り、ついには砕け散り動けなくなる。
「油断したか……ちっ」
そしてシャドウはソニックの猛攻を食らい、ついにダウンした。
「……」
「ソニック……」
次で決着がつく、第三戦。
シャドウとソニックは互いに睨み合った後、大地を蹴り、拳による一撃を放つ。
与えたダメージは、シャドウの方が僅かに大きかった。
「カオスブースト!」
シャドウはカオスエメラルドの力を使い、さらなるスピードでソニックを連続攻撃する。
「……コロス」
ソニックは赤い瞳を光らせ、狙いを定める。
「させるものか!」
攻撃を止めようとするシャドウだが、タッチの差でシャドウに命中した。
その後も、第三戦はソニック優位で進んでいく。
シャドウは再びカオスエメラルドの力を使い、他方からの同時攻撃を放つ。
「グゥゥゥゥゥゥ……!」
ソニックは全ての攻撃を食らってふらつく。
今がチャンスと、シャドウはソニックに近付く。
「ソニック! これ以上戦っても無駄だ。その手を下げて、戦いをやめろ」
シャドウはソニックを説得し、戦いを終わらせたいという気持ちでいっぱいだった。
彼自身、このような一騎打ちは望んでいなかった。
今は闇の呪縛を受けているが、何度も説得すればいずれ戦いは終わる……シャドウはそう信じていた。
「ウオオオオオオオォォォォォォ!!」
だが、ソニックは攻撃を緩めない。
ソニックは容赦なく、シャドウに襲い掛かる。
「……そうか……分かった」
ソニックが自身の説得に応じないと知ったシャドウは、覚悟を決めてリミッターを外した。
「今、楽にしてやる」
「……!!」
「逃がしはせん。カオスコントロール!」
ソニックは攻撃が届く範囲から逃れようとするが、シャドウがカオスコントロールで動きを封じる。
その超反応は、まさしく"本気"のシャドウだった。
シャドウはソニックを取り逃がさないように、彼を強い力で握り締めた。
「ハナセッ! ハナセェッ!!」
「……心配するな、ソニック。自由じゃないのは、辛いだろう……。独りぼっちは、寂しいからな……。共に行こう……ソニック……」
シャドウは、ソニックがいつも見せる意地悪っぽい笑みを皆に見せた。
まるで、不老不死の自身に訪れる、最期のように。
「カオス…………ブラスト!!」
そして、全てを吹き飛ばす真紅の衝撃波が、ソニックとシャドウを包み込んだ。
「あ……ああ……ソニックさん……シャドウさん……どうして……どうして……!」
衝撃波が治まると、その場には青と黒のハリネズミが倒れ、銃器と、2つのリミッターが落ちていた。
それを見ていたしずえは、ショックのあまり膝から崩れた。
ダーズに操られたソニックを解放するためにシャドウがリミッターを外し、ソニックと相打ちになったのだ。
二人が生きているのか死んでいるのか分からないほどの重傷を負っているのは目に見えていた。
「ソニック! シャドウ! しっかりしろ!」
マリオが倒れているソニックとシャドウに呼びかけるが、二人は死体のように何も言わなかった。
「まさか、死んでいるのですか……?」
「で、でも、これをかければ……ヒーリング!」
「ライフアップ!」
ネスとリュカがソニックとシャドウに回復のPSIをかけるが、二人の傷は癒えない。
「あれ? どうして起きてくれないの?」
「……二人から感じる生命の気配が弱いです。あなた達のPSIでは回復しないでしょう。つまり、この二人は……」
「そんな……」
ゼルダが悲しそうな顔で言う。
せっかく、ソニックを見つけたというのに。
せっかく、シャドウが彼を助けたのに。
こんな、最悪の結果で終わってしまうのだろうか。
その時だった。
『ビィ!』
「お、お前は……セレビィ!?」
悲しみにくれるマリオ達の前に、セレビィのスピリッツが現れる。
セレビィは「どうにかできるよ」とでも言うように宙に浮いた後、ソニックとシャドウに近付き、二人の周りをくるくると回転する。
すると、倒れているソニックとシャドウの身体が宙に浮き、淡い緑の光に包まれてソニックとシャドウの傷が見る見るうちに癒える。
マリオ達の思いが、今、奇跡を起こしたのだ。
そして、役目を終えたセレビィはそのままどこかに飛んでいった。
恐らく、ベルのスピリッツボールの中に入っていったのだろう。
「……ここは……」
シャドウはゆっくりと起き上がって、落ちていた2つのリミッターを装着する。
彼の隣で、ソニックも目を開けて立ち上がる。
最初にソニックが見たのは、シャドウの真紅の瞳だった。
「……シャドウ……? シャドウじゃないか! まさか、こんなところで再会するなんて……!」
満身創痍だったのが嘘のような二人の顔色。
二人が再会できたのも、まさしく奇跡と言える。
ソニックは嬉しさのあまり、シャドウの手をぎゅっと握り締める。
「何をする」
「俺、闇の触手が絡みついてから意識がなくなって、自由がなくて苦しかったんだ。でも、お前のおかげで自由になれたんだ」
ダーズから解放してくれたシャドウに、ソニックはただただ感謝する。
シャドウはふと、ソニックと戦う前に言っていた事を思い出す。
「そうか……僕はお前の自由を取り戻すために戦っていたんだな……。すっかり忘れていた」
シャドウは純粋なので、ただ一つのみを遂行し、それ以外は全く頭の中になかった。
それをソニックに指摘されたシャドウは、ふん、と後ろを向いてこう言った。
「まったく、ソニックの奴は相変わらず……」
「相変わらず、なんだ?」
「……お前に言う気はない」
ソニックとシャドウ以外の一行は、そんな二人を見守っていた。
こうして、青と黒のハリネズミは感動の再会を果たすのであった。
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この展開にしたくて、シャドウ達を聖地に飛ばしました。
ちょっとシャドウの性格が変わってるかもしれませんが、ご了承ください。