ロイドが張飛に戦いを挑んだ頃。
クラトスは騎馬軍団に囲まれていた。
後のあらすじ、以下略。
「それより、私はまずあなたの名前を聞いていないのだけれど?」
と、金髪の少女が聞いた。
「む・・・これは失礼いたした。私の名は、クラトス・アウリオンという。」
「・・・変わった名前ね。生国はどこなのかしら?」
「・・・・・・・・・」
と、クラトスはやはりここでも押し黙った・・・が、
「貴様・・・華琳様が生国を名乗れと言っているであろうがぁ!」
黒髪の少女が威嚇するように声を荒げるが、クラトスは尚、沈黙したままであった。
と言うか、沈黙するしかなかった。
「貴様・・・」
「よせ姉者。そう威嚇しては答えられるものも答えられぬであろう?」
と、今度は水色の髪をした少女が激昂する黒髪の少女を落ち着かせた。
「し、しかし!こやつが賊の一味という可能性があるであろう!そうですよね、華琳様?」
「ふうん・・・」
しかし当の華琳と呼ばれた少女は物一つ言わずにじっとクラトスを見つめていた。
まるで目の前にいるこの男。クラトスを見定めているかのように。
「・・・どうかしたか、曹孟徳殿?」
流石にその視線に気付いたのかクラトスが尋ねた。
「・・・いえ。なんでもないわ。それより、あなたの生国は?」
「・・・・・・・・・」
これにはどうしても答えられないのか、クラトスは曹操が聞いても押し黙ったままだった。
「・・・そう、答えられないなら良いわ。くらとす・・・だったかしら?」
「その通りだ。」
「ここは陳留・・・そして私は、陳留で刺史をしている者。」
「刺史・・・?」
「・・・何?まさか刺史も知らないの?」
「いや、確か、民から税を取り、法を定め、街の治安を乱す者を取り締まる事を仕事とする者・・・だったか?」
クラトスは今まで読んできた三国志の知識をフル稼働して答えた。
「あら、良く分かってるじゃない。・・・なら、今自分がどんな立場にいるのかも分かるはずでしょう?」
と、曹操が言うと。
シャキン・・・
と、周りを囲んでいる兵士が一斉に剣を抜き、その剣先をクラトスにむけた。
「・・・不審人物、という訳か。」
「ええ・・・悪いけど、この辺りに賊がいるという情報が入った以上、この辺りにいたあなたが最も疑わしいという事なのよ。」
少女は不敵な笑みを絶やさず、クラトスへと向けていた。
「まだ連中の手がかりが残っているかもしれないわ。半数は辺りを捜索。残りの者は一時帰還しなさい。・・・それと春蘭、秋蘭。あなた達は私と共にこの男を尋問するわよ。」
「「「「「はっ!」」」」」
姉妹らしき少女達とその部下らしき者達がそう答え、一斉に動き出した。
「・・・さて。これからどうなる事やら・・・」
クラトスはまるで自分の事ではないかのようにそう呟いた。
あの後、クラトスは町に連れて行かれた。
そこで曹操と名乗る少女は「尋問」をするらしいのだが・・・
「・・・一つ聞きたい。」
「何かしら?」
「ここは・・・察するに店なのではないかと。」
「そうよ。それ以外に何が見えるの?」
少女はあくまで堂々としていた。
しかし、どう考えても尋問するにはおおよそ似つかわしくない場所ではあった。
これも誘導尋問などの部類だろうか、とクラトスは考えた。
「では・・・クラトス・アウリオン。貴様の生国は?」
と、早速水色の髪をした少女が尋ねたが・・・
「・・・・・・・・・」
やはり答えることができないので沈黙した。
「ふむ。ではこの国に来た目的は?」
「・・・私は英傑を探している。」
ここに来た、訳。そう。
クラトスは会いに来たのだ。
自分へのかつての後悔と、償いから決別して、ここに来たのだ。
全ては、捜し求めている、自らの道をその生涯を終えるために捧げた、曹孟徳に会うため。
・・・まあ性別はこの際目を瞑ろうと考えた。
「・・・すまない。これでは理由にならなかっただろうか?」
そんな答えを言ってしまった事に今更自分でも驚いているのだろうか、クラトスは自重したような笑みを零した。
「何だそんなことか!英雄ならここにいるであろう!このお方こそが・・・」
「姉者・・・今は少し黙っていてもらおうか?」
「・・・分かった。」
姉者、と呼ばれた少女がなにやら自慢げに己の主を褒め称えようとしたのか、ここぞとばかりにといった感じで喋ろうとするが、妹のような少女に止められた。
・・・正直、どちらが妹か分からないが。
「ここまでどうやって来た?」
「・・・・・・・・・・・・・・筋肉達磨に空から落とされた。」
これは本当の事なので言っておいた。我ながら馬鹿らしい回答だったが。
「・・・斬る!」
「お、落ち着け姉者!クラトス殿も真面目に------」
と姉は完全に激昂した様子でクラトスに飛び掛ろうとしているのを妹が防いでいる。
「(・・・やはり言わぬ方が良かったか?)」
それ以前にそんな事を言うべきではない。
妹が姉を完全に止めきった数分後。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・か、華琳さま。如何でしょうか・・・?」
「え、ええ・・・まあ嘘をついているような感じはは無いようだし・・・」
「しかし華琳さま!」
「春蘭。」
「うぅ・・・はい・・・」
「(あれだけ暴れたはずなのだが・・・?)」
どういうわけか妹がいまだに息を切らしているのに姉の方はもう何とも無い様子でいた。
彼女は苦労性なのだろうか?と、クラトスは何気なく同情の念を抱いていた。
「後はこやつの持ち物ですが・・・」
「この赤くてぶにぶにした物は何かしら?」
と、曹操が自分が持っていたアップルグミ等のグミ類を見て聞いた。
「グミという物だ。」
「ぐみ・・・?」
「食べてみると良い。」
クラトスにそう促され、曹操はまず怪訝な顔をして鼻に向けて手を仰ぐ様にして匂いを嗅いだ。
「この匂いは・・・?」
「林檎という果物の匂いだ。」
「・・・」
と、ひとしきり質問をしてぱくりと食べてみると。
「あら・・・悪くないわね。」
と、グミと言う未知の存在に対して形もさながら、味も悪くないと驚いている様子だった。
「・・・二人も食べてみると良い。」
「おぉ、いいのか・・・?」
黒髪の少女が確認を取りつつ既にグミの一つに手を伸ばしている状態でそう聞いた。
「かまわぬ。好きなだけ食べるが良い。」
「では・・・・・・な、何だこの味は!?今まで食べたことが無く・・・美味い!」
「本当にな・・・一体何をすれば・・・?」
水色の髪の少女も初めてのグミに対して中々の好感触の様子だった。
「残念ながら詳しい製造方法は分からない。」
「むぅ・・・そうなのか・・・」
と、よほどアップルグミが美味かったのか、残念そうな顔をする姉であった。
「曹操殿。一つたずねても良いか?」
「・・・えぇ。何かしら?」
「あなたの名は知っているが、そちらの二人の名をまだ伺ってない。教えてはもらえないだろうか?」
「そういえばそうね・・・二人とも。紹介しなさい。」
「はい・・・。私が夏候惇だ。」
「私は夏候淵。もう分かっているとは思うが夏候惇・・・姉者とは姉妹の関係だ。」
(・・・やはり。趙雲も曹操も女人なら夏候兄弟も姉妹という訳か。これならあの化け物(貂蝉)が言っていた『外史』という世界も説明がつく。)
クラトスは一つの仮定を導き出した。
この世界はあの化け物・・・の言っていた外史という世界である。
外史とは、正史・・・つまり多くの者達の手によって解明された歴史の世界の事を正史。
その正史の存在が実証にいたるまでに考えられてきた仮定の世界を外史と言うのではないか。
平たく言えば、様々な考えの中から『こんな世界もあるのではないか・・・?』と考えられた世界だ・・・と言う事ではないか。
該当する例語句としてはパラレルワールド、平行世界と言う言葉がしっくりとくるだろう。
この外史の構造が少しずつ頭に理解を広げていった。
(まだまだ秘密がありそうではあるが・・・)
現状はまだ分からない。
未知の世界に迷い込んで一番のタブーが自分の仮定を信じ込んでしまう事だ、とクラトスは、初めて別世界に迷い込んだはずなのだが何故かそうしたほうが良い、と分かっていた様であった。
とりあえず、この世界の構造を解き明かしてゆくと同時に、この世界ですべき事を成し遂げようと考えた。
「ともあれ、世に名高き曹孟徳殿に会えるとは光栄です。」
クラトスは改めて目の前にいる少女、曹孟徳に敬意を払うような感じでそう言った。
「おぉ、そうだろう!貴様よく分かっているじゃないか!」
と、やはり夏候惇は自分の事のように鼻高々であった。
「うむ・・・やはりこの世界の主力は、魏の曹操、呉の孫策、蜀の劉備であると聞いている。噂通りの人物のようで良かった。」
「・・・!」
と、クラトスは自分の感想を素直に述べた・・・のだが。
「うむ・・・?我らが華琳様の凄さを分かっている様なのは分かったが・・・先ほどのりゅうびとは誰だ?孫策は多少なりとも知ってはいるが・・・」
「・・・うむ。それに魏、呉、蜀とは一体?」
夏候姉妹が問いかけた。
(そうか・・・まだこの時期には劉備の存在を知らなかったのか・・・)
と、クラトスは理解した。
「いや、すまない。今のは聞かなかったことに・・・「どうして・・・?」
突然、曹操がクラトスの謝罪を遮った。
しかもその様子はかなりの驚きが見えてくる。
「どうしてあなたが、魏と言う名前を知っているの?」
クラトスはその時はっと気付いた。
一言で言い表せば、「迂闊」、だった。
今この時代・・・つまり曹操が「陳留で刺史をしている者」と言う事。
今の段階では曹操は魏を建国していないわけである。
クラトスも「しまった・・・」と言う顔を隠せなかった。
「華琳様・・・失礼ですが魏、というのは・・・?」
と、夏候淵がたずねた。
「・・・これは貴女達にも話していなかった事よ。」
そして曹操は、自分が天下を握れる直前までに登りつめたら魏という国を建国するつもりだった事を明らかにした。
これには当然二人は驚いていた。
対象は、曹操本人に限りなく近かった自分達でさえ知らなかった事を知っていたクラトスに対して。
「・・・何故。」
曹操が重苦しい中、その口を開いた。
「何故、知っているの?」
「・・・最早隠し事はできない・・・か。」
クラトスは観念したかの様に体の力を抜き、そして自分自身に起こっている事を語り始めた。
そして数十分後。
「・・・と、ここまでが私の経緯だ。・・・信じられんだろうが。」
「当たり前だ!そんな話がある訳・・・」
「春蘭」
「しかし華琳様・・・」
「いいのよ。・・・さて、クラトス・アウリオン。貴方の事は大体よく分かったわ。」
「・・・では私をどうする。殺すか?」
「いいえ。貴方は殺さないわ。ただし・・・」
と、一旦言葉を止め、一呼吸おいてから再び話し始めた。
「貴方には、私の覇道の道を築いてもらうわ。」
「「「!!!」」」
これには曹操を除く三人は驚いた。
曹操にして見ると、自分の秘密を知る何処の輩かもしれないようなクラトスは消す筈だ。
なのに曹操は消さないどころか自分を手伝え、と言ってきた。
「曹操殿・・・私が言うのも何なのだが本当にそれでよいのか?」
「そうです!いくらなんでもそれでは私や秋蘭が納得できません!」
「なら、秋蘭。貴女に聞くわ。」
「私は、華琳様に従うだけです。」
と、同意した。
「しゅ、秋蘭!?」
「考えてもみよ姉者。あの華琳様が考えも無しにこの男を自分の下へ置くと思うか?」
「それは・・・ないと思うが・・・しかし私は・・・」
「あら春蘭。私の決定に不満でも?」
「そ、そんな事ないです!!私も賛成です!ハイ!」
「・・・扱いが上手いな。」
と、クラトスが呟くが、とっさに夏候惇が「何か言ったか?」的目線でこちらを睨むが無視した。
「安心しなさい。何か不穏な事をしたら殺すだけだから。」
これは最早お約束である。
「・・・ありがとう。私の名に懸けて、決して裏切らぬと誓おう。」
曹操の棘のある言葉を受け止めながらも、かつて自分が仕えていた者とほぼ同じような言葉を口にした。
違うのは、その言葉が本心であるか、だが。
後書き
ども、Kです。説明文の方でも謝りましたが…気がすまないのでここでも謝罪文でも少し入れておきます。まずは読者の方々、すいませんでした。長々と放置してしまった事もありますが、何より続き頑張って下さいねと言ってくれた方々に申し訳ないです。これからは遅いですが更新していきます。良ければ見てやってください。
最後に、クォーツさん。こんな駄文を見にサイトまで来ていただきありがとうございました。私が再びこのサイトに投稿できたのも貴方がいてこそです。本当に、ありがとうございました。
Tweet |
|
|
11
|
0
|
追加するフォルダを選択
覚えておりますでしょうか…Kという者です。
この度は更新全然音沙汰なしで戻ってくる資格あんのか、といわれても仕方ありませんが…戻ってこさせていただきました。皆さんホントすみません(こんな駄文見てないかもしれませんが)。ですがやっとブログのほうでやっと再開し始めました。一応現在も製作中です。
心の広い、または寛大な方はどうか見てやってください。