第3章.過去と未来編 4話 2ヶ月間の動向と新しい仲間?
会議から2ヶ月後、
一刀と馬超は部下を引き連れ、洛陽に帰還しようとしていた。
この2ヶ月間、一刀と馬超は并州関連の事案で東奔西走していた。
先ず、公孫賛の帰還に合わせて并州を通って幽州へと行き、劉虞に并州州牧就任の勅令を伝え、公孫賛、徐庶を交えて并州の幽州側の袁紹監視網構築の打ち合わせを行った。
その後、劉虞達とともに并州へ行き、それに合わせてやってきた張遼を劉虞に引き合わせ司州側の打ち合わせを行った。
やっとそれも終わり洛陽に着こうとしていたが、さすがに幽州-司州間の往復はきつかった。
唯、一刀より馬超の方が疲れていたようであるが。
なぜならば移動以外は会議、会議、会議だったからである、つまり余り使っていない頭を使いまくった為の気疲れであった。
「はーー、やっと着いたか。」
「大丈夫か、翠?無理して付いて来なくてよかったのに。」
心配そうに一刀は馬超に声をかけるのだが・・
「なに言ってんだよ!弱っちい奴を1人で幽州までやれる訳ないだろう!」
「よ、弱っちいって……俺…そんなに弱い?」
がっくりと項垂れる一刀に追い討ちをかけるかのごとく
「あたしはおろか部下からも1本もとれないようじゃ自分の身も守れないぞ!」
「まあまあ、馬超様。そのぐらいにしてくださいよ。それに隊長は軍師なんですから武はそこそこでいいんですよ。」
部下のリーダー格の男が馬超を宥め、一刀を励ましていると馬岱がやってきた。
「んっ?馬超様、隊長。馬岱様が来ましたよ。」
「お姉さま~、お兄様~お帰り~」
馬岱がどうやら出迎えに来てくれたようであるが、それに気づいた部下の1人が青ざめる。
「お姉さまお帰り!んふふ、進展はあったの?」
「んっ?監視網の構築は始めたばかりだぞ?」
「違うよ。この旅でお兄様との仲は進展あったのかってこと。接吻くらいした?」
「なっななな何言ってるんだよ!」
「んふふふ、聞いたよ。汜水関でお兄様に告白したんだって。」
「こっこここ」
絶句する馬超はギギギと音がしそうな感じで首を回して後ろを向く。
すると後ろに居た部下達は一斉に首を左右に振るのだがその内の1人が青ざめているのに気づく。
「お・ま・えかーー」
すみませんと謝りながら必死で逃げる部下、真っ赤な顔で追いかける馬超、そして項垂れる一刀。
まあ、いつもの光景ではあるが、特に気にせず馬岱が一刀の傍に寄る。
「お兄様、お姉さまはうぶなんだからお兄様から積極的にいかないと進展しないよ?」
「……忠告ありがとう……」
そういうのが精一杯な一刀だった。
洛陽には公孫賛を除く他の陣営の者達が集まっており、帰還した一刀達を交えて各陣営の現状と諸候の動き等に関する報告会が開かれた。
まだ2ヶ月の為、各陣営ともに大きな変化はなかったが、ほぼ順調に各州の掌握及び運営は進んでいるようである。
次に諸候の動きについて報告があった。
先ずは袁紹についてであるが、今回の戦いで逆賊となってしまったことにより親類から糾弾され当主を降ろされかねない状況にあるとの報告があった。
顔良がいろいろと手を打っているようだが、軍師だった田豊等のようにはうまくいかず内紛1歩手前の状態にあるらしい。
唯、袁紹の勢力は袁家でも1,2を争うくらいである為そう簡単に降ろされることはないだろうとの分析だったが少なくとも内をまとめるのに手一杯で外に手を出す余裕はないとのことだった。
尚、軍師の田豊は今回の戦いの前くらいから口うるさいのを袁紹に煙たがれ遠ざけられているようで今は傍観しているらしい。
次に曹操であるが陳留に帰り着くと間を置かずに謝罪と恭順の意を示す使者をその証として大量の食糧、財宝とともに送ってきていた。
一刀や賈駆、諸葛亮は可能性の1つとして頭にあった為謝罪自体はそれほど驚かなかったが、大量の食糧や財宝を惜しげもなく送ってきたことには驚きそして脅威に感じた。
曹操は今はまだ陳留とその周辺を勢力下に置く諸候のはずなのにこれだけのものを贈るだけの財力を有しておりそれを惜しげもなく出してきた、これが予想外であり脅威だった。
その他に劉表はやはり病が重いようで後継問題が勃発しており動くに動けない状態だったとの釈明が使者より告げられたが、劉璋の方はなにもなく涼州経由で入手した情報によると権力争いによる内乱が勃発寸前でそれどころではないことが判明した。
後、袁術であるが寿春に帰り着いてしばらくした頃に勅命を受けた孫策により瞬く間に滅ぼされていた。
今回の戦いで戦力を半減させていたが、それでもまだ孫策に対して2倍強の戦力を持っていた。
しかし汜水関で唯一のまともな将軍と言ってもいい紀霊を失っており統率の面でどうしようもなく士気は駄々下がり状態だった。
その為、孫策の烈火のごとくの攻めに抗しきれず、あっという間に軍は壊滅し城は落城した。
尚、袁術と張勳は落城のドサクサにまぎれて逃げたらしく生死不明らしい。
唯、袁術が生きていてももう勢力を取り戻すことは不可能と判断されほっておくことになった。
以上の報告より孫策及び劉表の後継の取り込みが優先事項と決まり、また一刀が使者として孫策及び劉表の元に赴くことになった。
ちなみに馬超は護衛が必要と主張し、また付いて来るようだ。
会議が終わり、一刀は馬騰、馬超と連れ立って廊下を歩いていた。
「ん~、しかし菖蒲さん。この忙しい時にまた俺達2人が抜けて大丈夫ですか?」
「ああ、その件は大丈夫よ。いい人材も入ってきたから。」
心配そうに語る一刀に馬騰はいつもの調子で答えるが一刀はその内容に怪訝な顔になる。
「菖蒲さんのことだから大丈夫と思うけどくれぐれも注意してくださいね。」
「あはは、一刀君は心配性ね。大丈夫よ、みんないい子達だから。後で紹介するわ。」
雑談をしている内に洛陽滞在時に執務室として使っている部屋に着いた。
扉を開けて中に入った一刀の目に3人の女性の姿が見えた。
「あれ?えっえ~と。」
見覚えのない人物に戸惑う一刀の後ろから馬騰が部屋に入ってきた。
「皆、待たせたわね。一刀君、翠、紹介するわ。こちらは長沙の太守で今回劉表の使者として来てくれた黄忠さん。」
「馬騰の娘、馬超です。字は孟起と言います。宜しくお願いします。」
「北郷一刀です。字はありません。宜しくお願いします。(黄忠か~、ここで出てくるとはな。確か黄忠で何か諺みたいのがあったような?……ぞくっ)」
挨拶しながら考えていた一刀はなにやら強烈な悪寒を感じた。
「黄忠です。(にこっ)字は漢升、宜しくね。菖蒲さん、この方が天の御使いの方ですか?」
「?、ええ、そうよ。一刀君、彼女には劉琦の後見役になってもらうことになってるの。劉表にも一目置かれているほどの人だし、人望もあるから劉琮派の連中への押さえにもなるはずよ。」
「(な、なんだったんだ?)菖蒲さん、黄忠さんとはお知り合いだったんですか?」
「ふふ、夫を菖蒲さんに助けてもらったことがあってそれ以来お付き合いさせてもらっていますの。」
「まあ、そういうことよ。」
「(はあ~、菖蒲さんの人脈って……ひょっとして各州の有名人みんな知り合いじゃないのか?)」
「それと、こっちの2人は今度新しく入った子達で郭嘉ちゃんと程昱ちゃん。仲良くしてね!」
黄忠の傍に居た眼鏡をかけた少女と金髪で頭にオブジェのようなものを乗せた少女を馬騰が紹介するのだが一刀はその名を聞いた途端あっけに取られた顔になる。
「(郭嘉に程昱だって?曹操の軍師じゃなかったか?なぜここに…)」
あっけに取られぼ~っとしている一刀に気づいた馬超が肘で突く。
「おい、一刀。なにぼ~っとしてるん…おい!一刀、あたしというものがありながらこの2人に見とれてたんじゃないだろうな?」
「えっ!あはは、なに言ってんだよ。…あ~と北郷一刀と言います。字と真名は…郭嘉さん?」
やばい状態に気づいた一刀は咄嗟に誤魔化し郭嘉に挨拶しようとするが、郭嘉はなにやら意識があさっての方に行ってるようで顔を真っ赤にしなにやらブツブツとしゃべっていたが、突然
「………ぶはっ!!」
盛大に一刀に血の洗礼を浴びせていた。
「えっ?って…血?ち?チ?……ぎゃあああああ。」
「お、おい!郭嘉。大丈夫か!衛生兵!!衛生兵ーーー」
一刀の悲鳴と馬超の叫び声が響く中、程昱はやれやれとばかりに郭嘉に近寄ると郭嘉の頭を持ち上げ
「はいはい、稟ちゃん、とんとんしますよ。とんと~ん」
と首の後ろ辺りを手刀でとんとんと叩いていた。
……………
その後、改めて自己紹介をした後、今後の行動について打ち合わせを行った。
その打ち合わせも終わり、一刀は孫策の元へ赴く準備をする為馬超と2人廊下を歩いていた。
「しかし郭嘉の奴も困ったもんだな。」
「……………」
一刀は郭嘉達について考えていた。
郭嘉と程昱、一刀が知っている歴史では曹操に仕え数々の献策をした有能な軍師である。
だがその2人が曹操ではなく馬騰の元に来た。
連合軍に勝ち、歴史が変わったことや馬騰が同盟の中心的存在、リーダー格であることを考えれば2人のような有能な人材がやってきてもおかしくはない。
しかし話しが良すぎやしないだろうか?
馬騰陣営はその殆どが武官であり文官と言えるのは一刀くらいでその一刀も現代知識や歴史知識を持っていたから今回軍師のようなことができたのであり能力的に言えば郭嘉達よりかなり下なのである。
つまり馬騰陣営は文官が不足している、そこに有能な文官がやってきた。
余りにも話しが良すぎると一刀は疑ったのだ。
「おい、一刀。なに考え込んでんだ?」
隣でなにやら難しそうな顔をして考え込んでいる一刀に気づいた馬超が声をかけてきた。
「んっ、実はな……」
考えていた内容について馬超に説明すると、やれやれとばかりに
「考えすぎじゃないのか?それに母様が言ってただろ、仲間を信じろって。だからあたしは母様と星が信じる2人を信じる。」
「………そうか……そうだな、俺も信じるとするか。」
馬超を安心させるようにそう言うのだが一抹の不安をどうしても拭い去れない一刀は後で馬岱にそれとなく2人を監視するよう指示を出した。
はたして郭嘉と程昱、この2人は一刀達の味方なのか敵なのか?
<あとがき>
どうも、hiroyukiです。
今回、黄忠、郭嘉、程昱の3人が出てきました。
今回の話しはこの3人を登場させる為の話しと言っても過言ではありません。
黄忠は対孫策に、郭嘉と程昱は対曹操においてある役割を持っていて一刀を助けてくれます。
でも現時点では郭嘉と程昱を一刀は疑っています。
史実の知識を持っていればこの時点でやってくる本来他の陣営に居る筈の人物は疑いたくなると思います。
特に一刀は軍師ですから。
さて、次話で一刀達の真の敵がその姿を少し現します。
では、あとがきはこのくらいにしてまた来週お会いしましょう。
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第3章4話です。
前回の会議から2ヶ月後の話しで孫策のところへ行く前までの話しです。