≪FEVER CRITICAL FINISH!≫
「ヴェアァァァァッ!!」
竜神丸が発生させた星空間内部。ザイエン・タイラントゲーマーレベルXはガシャコンランチャーにガシャットを装填し、ガシャコンランチャーからメダル状のエネルギー弾をマシンガンのように連射。しかし4号機は飛んで来る弾丸をヒラリヒラリとかわし、一瞬でザイエンの目の前まで接近しザイエンの胸部を殴りつける。
「アァァァァァァァァァァァァァッ!!!」
「ヌ、グォウッ!?」
殴り飛ばされたザイエンは何度も地面を転がされて地面に倒れた後、胸部のライフメーターが完全に尽きてゼロに達してしまう。しかしライフメーターが少し点滅した後、すぐにライフメーターは満タンの状態に戻り、ザイエン自身も怪しげな黒いオーラと共にユラリユラリとゾンビのように立ち上がる。
「ヌゥゥゥゥゥ……やはり、一筋縄ではいきませんか…!!」
「グルァァァァァァァァァァァァァッ!!!」
そんなザイエンの横をZEROが走り抜け、4号機目掛けて右手の長く伸びた鉤爪を振り下ろす。しかし4号機は左足で繰り出した回し蹴りのパワーで鉤爪を簡単にへし折り、その勢いを利用した右足のローリングソバットでZEROの腹部を蹴りつけ大きく吹き飛ばす。
「ガハハハハハハハ!! 良いぞぉ、もっとだぁ!! もっとお前の力を見せてくれぇ!!!」
「うるさい、黙れ……黙れ黙れ黙れぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」
三つ編み状に結んだ金髪を靡かせ、4号機は全身から魔力を放出。虹色に輝く膨大な魔力は、ZEROが吹き飛ばされながらも飛ばして来る黒い瘴気の弾丸を全て相殺し、4号機は一瞬でZEROの目の前まで接近して強烈な地獄突きをZEROの喉元へと炸裂させた。
「オ、ゴォ…!!」
しかしやられてばかりのZERO達ではない。自身の喉元に手刀を突き立てている4号機の右腕を掴み、4号機の足元の地面からは紫色のチューブ状の触手が伸びて4号機の胴体に巻きついた。その触手はザイエンの左腕から伸びている物だ。
「いい加減、大人しくして貰いましょうか…!!」
「ッ……離せ、離せぇっ!!!」
「はん、やなこったぁ…!!」
ZEROは左手で4号機の右腕を掴んだまま、右手の籠手で4号機の首元を掴み上げ、彼女が逃げられないような体勢を取る。そのままZEROの右腕の籠手が黒い瘴気に包まれ始め、その瘴気が4号機にも伝染するように少しずつ乗り移っていく。
「が、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」
「喜べ、小娘……テメェは俺の糧にしてやるよ…!!」
「む、このままでは先を越されそうですね…!!」
その様子を見たザイエンは左腕から伸ばしていた触手を一旦引き戻し、すぐに4号機とZEROの下まで接近しようと動き出す。しかしその時、信じられない事が起きた。
「は、な……せ…」
「ん? まだ抵抗して……ッ!?」
4号機は自由の利いている左手で、自身の首元を掴んでいるZEROの右腕の籠手を掴む。するとZEROの右腕が少しずつ4号機の左手で首元から引き剥がされ始めたのだ。まさか力ずくで離されるとは思っていなかったのか、流石のZEROも驚愕の目を向ける。
(コイツ、何処からこんな力を…!?)
「ッ!? 駄目ですZEROさん、離脱して下さい!!」
「あん? テメェ、誰に命令して……ッ!?」
その時。4号機は両手でZEROの両腕を掴んだ瞬間、4号機の両腕に黒い魔力が纏われ始めた。それは先程まで見せていた虹色の魔力とは何かが違う。ZEROもザイエンも、この黒い魔力から感じるエネルギーに心当たりがあった。
「何、コイツは……!?」
「消えろ、消えろ、消えろ、消えろ…!!」
「ッ……チィ!!」
ザイエンはZEROの肩を掴み、4号機の腹部を蹴りつける事でZEROを引き離す。その瞬間…
「――消えろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!」
「「ッ!!?」」
4号機が放った一撃は、星空間を漆黒の闇に包み込んだ。
「―――!」
管理局地上本部。電気の点いていない真っ暗な部屋の中で、ミスラは目を大きく見開いて顔を上げる。
「どうした、ミスラ」
「……へぇ、面白い力だね、これは」
「?」
マウザーが疑問に思う中、ミスラは感じ取った何かに対して小さく笑みを浮かべる。
「まさかクローンの分際で
場所は戻り、崩壊した研究所跡地…
――ピシピシピシ……パリィィィィィィィィィィィン
球体の星空間は罅割れ、ガラスのように砕け散っていく。その中からは全身に黒い魔力を纏わせた4号機と、両腕が無くなり全身ズタボロ状態のZERO、そしてライフメーターが再びゼロになったザイエンが飛び出し、積み重なる瓦礫の上へとそれぞれ着地する。
「はぁ、はぁ、はぁ……!!」
「グ、ゥゥゥゥゥゥゥゥ……」
着地した4号機が荒い呼吸を整えようとしている中、再びライフが満タンの状態に戻ったザイエンはユラリと立ち上がって4号機を見据える。その仮面の下で、竜神丸は冷や汗を掻いていた。
(先程の
「はぁ、はぁ……ウ、ゥッ……」
突如、4号機は両手で自身の頭を押さえて苦しみ始めた。鼻からは赤い鼻血が流れ、4号機はしばらく苦しんだ後にその場に倒れ伏してしまった。それを見たザイエンは腰のバグルドライバーからガシャコンバグライザーを取り外し、装填していたマッドネスタイラントガシャットを抜き取って変身を解除、竜神丸の姿に戻った。
「……考えも無しに
「……ハハハ」
「!」
倒れ伏した4号機の下に、ズタボロな状態だったZEROが近付き始める。歩み寄りながらもズタボロになった全身の傷を再生させ、失った右腕も元通りに生え直り、破損した義手の左腕も元通りに修復される。
「ZEROさん、一体何を…」
「コイツは気に入った。しばらく俺が預かる」
「……は?」
――ブシュウッ!!
ZEROが突然発した言葉。それを聞いた竜神丸が唖然とする中、ZEROは左手の爪で自身の額に切れ目を入れ、そこから噴き出す赤い血を右手の掌に溜める。すると赤い血は液体ではなく、半液体の状態で掌に収まった。
「おい竜神丸。さっきの
「……能力の性質上、本来なら威力を高める事は不可能でしょう。しかし彼女の魔力の事も考えると、ある程度は補強も出来るかも知れません」
「…決まりだな」
ZEROは倒れ伏している4号機の体を仰向けの状態にした後、彼女の口を開けさせてから、そこに右手に溜めていた半液状の赤い血を流し込む。
「……ッ!? ぃ、ぎ……がぁぁぁぁぁアァァァァァァァァァァっ!!?」
すると4号機の口に流し込まれた赤い血が、突然生き物のように喉奥へと流れ込み、その瞬間4号機はいきなり意識が戻ると共に、その頬や首元などに血管を浮かび上がらせながら大きな悲鳴を上げ始めた。
「!? 何を…!!」
「なくすには惜しい力だ。俺の手で鍛えてやるよ……その為には、コイツに死んで貰っちゃあ困る」
「ッ……先程あなた流し込んだ血、まさか賢者の石!?」
「あがぁぁぁぁぁぁぁァァァァァァッ!!? がは、ゴホ……アァァァァァぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!?」
のたうち回る4号機の頭を右手で押さえつけ、ZEROは自身の魔力彼女の体内に流し込む。4号機の体内で肉体を支配しようと暴れ回る賢者の石のエネルギーに負けないよう、4号機の肉体の耐久力を魔力で補強する為に。
「彼女を
「死ぬよりはマシだろう。テメェだって、
「ヒギィィィィぃぃぃぃあぁぁぁぁぁァァァァァァぁぁぁぁぁぁぁぁァァァァァァ…………アッ」
突如、4号機の悲鳴が途切れた。散々のたうち回っていた4号機は再び動かなくなり、彼女の体が虹色の光に包まれてから幼い少女の姿に戻る。
「……成功したな」
先程まで苦しんでいたのが嘘のようにスヤスヤ眠る4号機を見て、ZEROは新しい玩具を手に入れた子供のように楽しそうな笑みを浮かべ、4号機の体を片手で持ち上げる。それを見た竜神丸は手元に転移させた新品の上着を上半身に羽織る。
「はぁ、全く……他の皆さんから一体何て言われるのやら」
「何だ、嬉しくねぇのかテメェは?」
「……まさか、その逆ですよ」
竜神丸もまた、ZEROと同じようにニヤリと口角を上げる。二人の危険人物により、1人のクローンの少女が
「――つー訳だー、コイツは俺達の手で鍛える事にした。文句は聞かねぇぞ」
「「「「「…………………………は?」」」」」
「いや待て待て待て待て!? いきなり過ぎるぞオイ!?」
「ちょ、あのZEROが子供を連れ帰って来ただけでなく、自分で鍛えるとか言い出しただとぉ!?」
「警報を鳴らせぇ!! 今から
「ねぇ、誰か自分に薬を頂戴!! 自分どうやら幻聴が酷くなってきたみたいだから!!」
(あのZEROが子供を助けた……まぁ、そういう事なんだろうなぁ)
あの戦闘狂かつ大食いなZEROが子供を連れ帰ったかと思えば、何故か自分で鍛えるとか言い出した。一部のメンバーはZEROの行動に混乱し、一部のメンバーはZEROが子供を拾って来た理由を何となくだが察していた。そんな中、既に着替え終えている竜神丸に二百式が問いかける。
「どういう事だ竜神丸、あの娘は一体何者なんだ?」
「彼女ですか? 一言で言うなら、聖王オリヴィエのクローンです」
「聖王の…!?」
それを聞いた二百式は驚愕するも、同時にZEROが4号機を連れ帰って来た理由に気付く。
「……つまり、“餌”という事か」
「管理局と聖王協会を釣るには充分な餌でしょう。しかし、今はまだ彼女を作戦に利用するつもりはありません」
「何故だ。あの聖王のクローンなら、連中だって黙っちゃいない筈だろう?」
「それをする前に、まず解析しなければならない能力を彼女は備えていましたので」
「能力だと?」
「えぇ。あのZEROさんですら全く対応できなかった能力です」
「「「「「!?」」」」」
その言葉に二百式だけでなく、近くで聞いていた他のメンバー達も驚愕する。
「しかし幼さ故か、彼女はまだその力を使いこなせていません。その為、彼女がその力を完璧に使いこなせるようになるまで、ZEROさんが賢者の石のエネルギーで彼女を生かす事にしました」
「賢者の石だと!? まさか、あの娘…」
「えぇ。彼女は
「!? 何故そこまでして彼女を…」
「何故と言われましても。そうしなければ彼女は能力の使用によって降りかかる負担で死んでいました。彼女を生かす場合、どの道こうする以外に道は無かったでしょう。それに彼女の力は絶大です。私から見ても死なせるには惜しい人材かと」
「ッ……!!」
「とにかく、彼女の件については私とZEROさんで管理します。どうせZEROさんも、しばらく彼女を手放すつもりは微塵も無いでしょうし」
竜神丸が4号機を連れて行ったZEROの後を追うように去っていく中、朱雀はそんな竜神丸の後ろ姿を見ながら、複雑そうな表情で拳を握り締める。
(あのZEROさんすらも圧倒してしまえるほどの力を、彼女は持っているというのか……何故だ……何故それほどの力が、あの娘にはあって僕には無いんだ……!!)
「――ほう? 彼女がそのクローンだな?」
その後。団長室にて、竜神丸とZEROが連れ帰った4号機を見て、クライシスは感慨深そうな表情を浮かべる。4号機は椅子に座ったままスヤスヤ眠っている。
「コイツはしばらく俺が鍛える事にした。クライシス、テメェだろうと邪魔はさせねぇぞ」
「珍しいものだ。喰らう事にしか興味の無いお前が、そんな事を言い出すとはな」
「ちなみに団長殿。今回の任務中、彼女が発動した力についてですが…」
竜神丸がクライシスに耳打ちすると、クライシスの表情が一変する。
「……それは本当か?」
「間違いありません。彼女こそが、
クライシスはもう一度4号機の姿を見て、小さい声でその名を零すのだった。
「
To be continued…
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偽りの聖王 その4