No.936315

九番目の熾天使・外伝~マーセナリーズクリード~番外編 エクササイズプログラム

okakaさん

リハビリ第二弾です

2018-01-06 02:35:16 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:719   閲覧ユーザー数:605

番外編【エクササイズプログラム】意地のブルー・レオン

 

 

―――――――旅団本部【楽園】情報部特別棟内okakaオフィス―――――――

 

 

「ああ、セプターを6機・・・でいいんだよな支配人?」

 

「ああ、それとできれば武器を純正で一式ずつ頼みたい」

 

「全部カデューカのフルオプションだ。・・・カラー?こっちで塗るからそのオプションは要らない。あ、あとサベージ・・・じゃない【リーヴェニ】も4機頼む。96型だ、在庫はあるか?」

 

そう言ったokakaは手元のメモ帳に何かを書き込みながら電話相手の対応を待つ。傍らでASカタログを眺める支配人もその対応が気になって仕方ないようだ。

それもそのはず、okakaの電話相手は【OKBリャカ社】旧ソ連のリャカ設計局が民営化したことで誕生した軍需産業であり、支配人が使用したAS、セプターの開発元である。リャカにコネのあるokakaは支配人の要望でこのメーカーから支配人達が使うASを購入するために直接メーカーに連絡を取っているのだ。

 

 

「・・・お、それは良い。そっちで頼む。セプターの代金は・・・在庫品だし一機2000でどうだ?・・・3000、3500、3700だ。その代わり予備パーツと純正の衝撃吸収剤は定期購入サービスを使わせてもらう。リーヴェニは定価だ・・・よし、商談成立だな。受け取りは・・・早いな。じゃあそれで。今後共お互いに良いビジネスを・・・って事で一機3700万ドルで手を売った」

 

「・・・お前に頼んだのは正解だったよ」

 

 

電話を切り、満面の笑みで支配人に向き直るokakaに支配人は安堵の表情を浮かべた。第3世代ASは非常に高価だ。初期第3世代であるZy-99Mがだいたい5000万ドルで取引されている状況の中、okakaはそれ以降に生産されたセプターをフルオプションでかなり値切って購入したのだ。

 

 

「元々セプターは開発費のせいで結構割高なんだがな、開発したは良いけどソ連は崩壊、ロシア本国はシャドウを優先、アメリカはM9、頼みの綱の第三世界は工業力や経済的に第3世代ASの運用が難しくて買ってくれないときたもんだ。在庫が余ってるのは知ってたし、処分や今後の新型開発のための費用捻出も考えると背に腹は変えられんのがリャカの実情ってだけだ」

 

「・・・要は弱みに付け込んだってことか」

 

「人聞きが悪いなぁ、在庫処分を手伝っただけだよ」

 

 

口角を釣り上げて悪い顔で笑うokakaを尻目に支配人は立ち上がった。

 

 

「とは言え助かった。これで歩兵部隊に良い支援役ができそうだ」

 

「気にすんな、俺も趣味でサベージ買うつもりだったし、そのついでだ。到着したら連絡するな」

 

「解かった」

 

 

そう言って支配人がオフィスを出て行く。見送ったokakaが書類仕事を片付けるためにデスクに向かったその時だ、オフィスのドアが開き、ディアが何かに引っ張られるようにして入ってきた。

 

 

「ちょちょちょっと待って!ああすみませんokakaさん、失礼します」

 

「・・・どうした?」

 

「いやそれが「納得いかないんだけど!」ってちょっと!?」

 

 

突然の第三者の声、okakaがデスクの影の方を見るとそこにはいかにもご立腹なこなたがいた。

 

 

「ああ、いたのか。「どういう意味!?」小さくて視界に入ってこなかった」

 

「なんだとこの野郎!鷹の目で見えてるくせに!」

 

「ああもう落ち着いてこなた!okakaさんも煽らないでくださいよ!」

 

 

二人の間に割って入ったディアは場をなだめようと必死だ。それを汲んでokakaもディアに問いかけた。

 

 

「で、要件は?」

 

 

問われたディアは少しバツが悪そうに視線を背けながら事情を説明し始めた。

 

 

「・・・実は僕もAS欲しいな~と思いまして・・・いや支給が無いのはわかってるんですよ!?でも自費購入なら別に問題ないですよね!?」

 

 

ディアの言葉にokakaは考え込む。たしかに自費購入なら支給品ではなく私物装備だ。それは問題ない。問題はそのASで自身の部隊の作戦行動に参加してくる事だ。性能面の差、連携の乱れなどokakaにとって良いことは全く無い。

 

 

「良いんだよウル!ハッキリ言ってやれば!私らにもASよこせって!そんでKMFのパーツ生産も続けろって!」

 

「お前の本音はそれか」

 

 

こなたの言葉にokakaは机の上に置かれた書類を突きつけた。

 

 

「どっかの誰かさん達が試作機を持ち出したKMFのパーツはな、それぞれが専門分野に特化した仕様で部品規格がバラバラなんだよ。だから作り続けても採算が合わんし、そもそもシグマ・エリートが配備可能になった時点でKMFの調達は中止だ。元々ASの代わりに仕方なく検討してたくらいだったからな、今後の消耗品と予備パーツは受注生産になるから」

 

「絶対割高じゃん!オーダーメイドで別料金取るじゃん!」

 

「当たり前だろ何言ってるんだ?」

 

 

心底不思議がってる表情を向けられたこなたはご立腹だ。書類を床に叩きつけて恨みがましい視線を向けるも、そもそも自分達のKMFはokakaの所からパクってきた代物だ、理解してる人間が見ればむしろこれまでよく作ってくれてたと言いたい程に開発予算を圧迫していたのだ。

 

 

「うう~・・・」

 

「さて、そこの小動物は置いといて「誰が可愛い子リスだ!」言ってねぇよ黙ってろタスマニアデビル。・・・で、ASが欲しいんだったな?」

 

「・・・ダメ、ですか?」

 

 

唸るタスマニアデビルとは反対にディアはおっかなびっくりといった様子でokakaの顔色を伺う。okakaも流石に難色を示さざるをえないが、購入自体は個人の自由だ。そこに異論はない。

 

 

「・・・うちの部隊の作戦行動には同行させられん、それでいいなら渡りをつけてやる。・・・予算は?」

 

 

その声にディアの顔が明るくなった。

 

 

「ありがとうございます!予算なんですけど・・・この前のMSの稼ぎから6000万くらいで用意してます。できれば高機動なやつが良いんですけど・・・」

 

「6000・・・渋いなぁ・・・」

 

 

そう言いながらokakaはさっきまで支配人が見ていたASカタログを手に取りめくり始める。

 

 

「M9はダメだな、電子機器も扱いきれんだろうし何より高い。セプターは好みに合わんだろうし・・・サイファーはどうだ?これなら7000だ。足りない分は立て替えてやる」

 

 

そう言ったokakaの示すイギリス製の機体は頭のない骨組みみたいなASだ。これならたしかに運動性は良さそうだが、流石にイロモノ過ぎるようだ。

 

 

「・・・できれば普通の見た目のが」

 

「ああ?じゃあ・・・「あ、これなんか良いんじゃない?このヴォルフっての。かっこいいし」お、良いのに目ぇ付けたな」

 

 

いつの間にかディアにぶら下がってカタログを覗き込んでいたこなたの指し示したのはドイツのクラウス・マッファイ社が製造しているAS【ヴォルフ】だ。通常任務用なら現行でも最高クラスの性能と高い格闘性能、複合装甲技術による防御力と高機動、トップクラスの行進間射撃能力を持った【ソードマン(剣士)】の異名を取るASだ。

 

 

「でも無理だな、独自機構のせいで整備は複雑、値段も予算の4倍近くする。俺でもコイツは買ってないぞ」

 

「4倍・・・諦めましょう。僕には過ぎた機体です」

 

「え~、良いと思ったんだけどなぁ~」

 

 

流石に値段を聞いて引き下がるディア、当然だろう。整備ノウハウも無い高級機を買って壊しでもしたら目も当てられない。しかし、これ以上カタログに載ってる機体は無さそうだ。他に何か良いものはないか、そう思ったディアが次のページをめくった瞬間、ある機体が目に飛び込んできた。

 

 

「あ、これって・・・」

 

「ああ、お前がこの前壊したやつ。Zy-99M【シャドウ】の輸出モデルだ・・・これなら予算内で買えるなぁ。パーツもウチで作ってるし」

 

 

たしかに、この輸出用シャドウは第3世代ASの基本である【照準させない、撃たせない】のコンセプトを忠実に守ったASだ。モンキーモデルのため、電子兵装や関節機構などが一部簡略化されているがむしろ整備性は高く、電子戦知識の無いディアにはうってつけだろう。旧東側のメーカーを中心として様々な独自カスタム用パーツも開発されており、チューンもしやすい。まさに第3世代の入門にはぴったりだろう。

 

 

「見た目も悪くないし・・・これが一番良いんじゃないか?」

 

 

okakaがそう切り出すと、ディアはしばらくカタログを見つめ、悩んだ。そして何かを決意したような表情で顔をあげると―――――――

 

 

「これにします」

 

 

決定したようだ。

 

 

「じゃあ注文しておいてやる。「私のは!?私のASは!?」ねぇよ欲しけりゃ金持って来い」

 

 

こなたをぞんざいにあしらいながら、okakaは机の中から大きな本を一冊取り出すとディアに投げ渡した。

 

 

「俺が使ってたシャドウの基本マニュアルだ。届くまでにそれ読んで丸暗記しとけ。基本的な操縦訓練くらいはサービスしてやるから」

 

「ありがとうございます!「ああ、だけどそれ」それじゃあ早速読み込んできます!「あ!おい!」」

 

 

話を最後まで聞かず、こなたを肩からぶら下げたままハイテンションで出ていくディア。その後ろ姿を見送ったokakaはやれやれといった表情を浮かべると卓上電話の受話器を取った。

 

 

「・・・やあベアール、一城だ。ゼーヤ設計局のシャドウを一機購入したい。代金は・・・」

 

 

旧知の武器商人に発注の電話をするokaka、此処から先の値段交渉は彼の役目だ―――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――その頃

 

 

「さて、それじゃあ早速読んでみようか」

 

「私もちょっと興味ある。こういうのって眺めてるだけで楽しかったりするんだよねぇ~」

 

 

okakaから貰ったマニュアルを手にワクワクを抑えきれないディアとおまけ、ふたりが意気揚々と本を開く。

 

―――――――そしてそこにびっしりと並ぶキリル文字を見て、二人はそっとマニュアルを閉じた。

 

 

 

「「アンジェさーん!ロシア語翻訳して-!」」

 

 

ふたりがマニュアルを読めるようになるのは、まだ少し先の話。

 

 

 

 

 

 

 

おまけ

機体紹介

 

Zy-99M シャドウ(ディア仕様&okaka仕様)

 

全高:8.7m

 

基本重量:9.8t

 

最大跳躍高:35m(45m)

 

最高自走速度:190km/h(260km/h)

 

最大作戦行動時間:140時間

 

動力源:パラジウム・リアクター パラエネルゴOL-4C 1900KW(OL-3 2200KW)

 

固定武装:無し

※()内はokaka仕様のスペック

 

概要

ロシアのゼーヤ設計局が開発したZy-98の量産仕様Zy-99の輸出モデル。

シャドウは本来NATOコードであり、本当の名前はЛавина(オアビーナ、ロシア語で雪崩)だが、最近ではロシア本国の正規軍でもシャドウの名前が定着してるためめったに呼ばれない。

 

初期の第3世代機であり、基本コンセプトを忠実に守った機体で独自開発ができない国家や民間企業向けに輸出されてるダウングレード仕様。

 

外見上の最大の違いは頭部のデザインであり、ヒロイックな顔立ちをしてるのが特徴。

 

内部の駆動系や制御系、電子装備などが安価なパーツに置き換えられており、簡略化されているが、その分整備がしやすく十分なノウハウのない部隊等でも運用可能なのが強み。

 

ディア機は黒をベースに青の装甲色にカラーリングされており、いかにも専用機といった外見をしている。

 

反対にokaka機は普通のカラーリング。これはあくまでokakaが趣味で購入しただけであるため、実戦で使用することを前提としていないことによるもの。

 

モンキーモデルとは言え、実戦には十分な性能を持っており、信頼性も高く、様々な組織で運用されている(okakaの見立てでは第3世代ASのシェア率でナンバーワン)

 

okakaの機体はゼーヤ設計局からこっそりコネで流してもらった本国仕様のパラジウムリアクターとそこらじゅうからかき集めてきたカスタムパーツによる不可視型ECS搭載等のチューンで本国の特殊部隊【スペツナズ】仕様のものと遜色のない仕上がりになっている。(採算が合わないので大量配備できなかった)

 

ディア機の基本装備は、ディアが誘導の無い直接照準の射撃武器をほとんど使わないため、射撃能力に劣る事を考慮したokakaが余ってる武器から持ってきたイタリアの【オットー・メララ】製の【ボクサー57mm散弾砲】(下手でも散弾のケンカ・ショットなら当たるだろうという発想)とokakaの機体用の武装である日本刀型の【東芝一〇式単分子カッター】をokakaから買い取って装備している。(通称:八つ墓村スタイル)

 

ディア機のAIコールサインは【リエーフ(ロシア語でライオンの意)】通常のAIであるため、ニューロバディ・システムには非対応。

 

※余談:八つ墓村スタイルが決定した時、okakaの提案によってAIのコールサインが【スケキヨ】にされるのをディアが必死で阻止したらしい。

 

 

 

 

 

あとがき

リハビリ第二弾として、今度は戦闘一切無しで書いてみました。

何とか形にはなってきたかなと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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