No.888509

外史に舞い降りるは紅き悪魔 7

morikyouさん

今年最初の投稿は恋姫×DMCからです
どんどん訳わからなくなってますが、寛大な心で見流してくれるとうれしいですw

2017-01-12 15:25:44 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:3026   閲覧ユーザー数:2724

 

その日は、大陸全土が曇天だった。

中でも洛陽は一際暗く、商店も早々に店じまいをしてしまうほどだったそうだ。

 

「……なるほど、この時のために月ちゃん達を呼んだのね」

「恐らくは。もしかしたら」

「今は言わないほうがいいよ。私たちも危なくなる」

 

霊帝、劉宏の崩御。

ダンテが来た時から、霊帝の支配力はすでにないと地方では噂されていた。

黄巾党の討伐に中央以外の諸侯が動いていた事、さらに言えば反乱が全土で巻き起こっていたことを考えれば、当然の結論であるといえる。

しかし、それでも霊帝は当代の天子であった。

彼女は最期まで自身亡き後の子供の事を案じていたという。

しかし、彼女は後継者となる次の天子を定めてはいなかった。

そのことが今、洛陽の禁中での問題となっている。

 

 

 

「……だそうだが?」

「ふふふっ!そんなのは最早朕、いや、私には関係のないことよ!」

 

さて、禁中の中心から少し離れた楼杏の執務室。

そこの隣に設けられたダンテの私室にて。

ベッドに腰かけぼやくダンテの隣には、亡くなったはずの霊帝その人がいた。

 

「おいおい、仮にもあんたの子供だろう?」

「知らないわ。そもそも、私が死んだ後にあんな子供に政治をさせようって魂胆が気に食わないもの。だったら、力量と知識をきちんと持った奴が政治をしてるほうがよっぽどましでしょ。そのために月達を呼んだんだし」

 

世では暗愚とも言われた霊帝ではあるが、実際彼女は子供のような考え方をする女性だった。

自分の興味を引いたことには全力だが、そうでなければ端から触ろうともしない。

そして、この漢の政治というのは残念ながら彼女の興味を引くことはなかった。

それゆえに、彼女は宦官や自分の妻(同性だが、この世界ではよくあること)でもある何皇后、十常侍に丸投げし、自分はひたすらに子供の安全と自身の好奇心を満たすことに全力を費やしてきた。

その結果、

 

「私たちには政治は向いてないから、ほかの人たちに任せたい、ねえ……」

「うん。なんていうかさ、こうなってみて気づいたのもあるけど私たちって形だけなんだよ。誰がやっても変わらない。というか、私が頼ってた十常侍とかが好き勝手やれるようにうまくやったってだけでしょ」

「それは……」

 

霊帝の明け透けな言葉に、楼杏や風鈴、月達が返せる言葉はない。

その通りだったとしても、それを認めてしまうわけにはいかなかったからだ。

 

「ま、貴女達がそうだったとは言わないけどさ。少なくとも、ここで『政治』をしてた人たちにとっては誰であっても変わらないんだよ。だから、死んじゃったことにすれば楽になれるでしょ」

「あとは、お得意の丸投げか」

「そ。でも、そのあとに何が起きたとしても、あの子には死んでほしくないからね。そのための最期の命令ってわけさ」

「趙忠様の命だったのはそういうことだったのですか」

「うん。十常侍の中でも、黄(ファン)だけは私の味方だったからね。最期の偽装もうまくやってくれたみたいだし」

 

現在は、母の死を嘆く後の献帝、劉協のそばに付いてあげているそうだ。

ちなみに、この世界では本来二人いるはずの霊帝の子供が一人しかいない。

故に、後継者としては真っ先に劉協が上がるはずなのだが、なぜか十常侍が反対しており、どこから連れてきたのか同じく劉性の子供、劉弁を次の皇帝にしようと画策していた。

霊帝曰く、「外戚のどこかの子ではないか?顔がどことなく協に似ている」とのことだが。

 

 

 

 

「まあ、あの子が皇帝をやりたがるとも思えないしね。だから、余計に混乱してるんだと思うよ」

「指名をあえてしなかったのも」

「うん。きっとこうなるって思ったからかな。私の子として生まれた以上、面倒なのは避けられないでしょ。だから、せめて私のところで終わらせないとね」

「そもそも、貴女がきちんと政治をやれば良かったのでは?」

「まあ、それを言われると弱いけどさ。誰も政治の事なんか教えてもらってない子供の私に突然政治を!って言ってやれると思う?」

「まあ無理だろうな」

「でしょ?そもそも母様、もしかしたらその前から、この制度は終わってたんだって。それを指摘しようとした人も実際できた人も、力がなかったから止められなかったんだし」

 

詠の指摘に苦笑いしつつも、結局霊帝の態度は変わらなかった。

 

「それで?この後はどうするのですか?」

「ん?とりあえず、流琉の働いてるっていうお店に住み込みでお世話になるわ。すでに話はつけてあるもの」

「ん?働くのは嫌じゃなかったのか?」

「政治は嫌なの。でも、働くっていうのはやってみたいわ」

「そうかい……」

 

重責(?)から解放された劉宏は、ずいぶんと気楽な表情だった。

 

「あー、ちぃっとええか?」

「ん?どしたの?」

 

と、護衛がてら同じ部屋にいた霞が声をあげた。

 

「まあ、難しいことはよー分からんからおいとくで。とりあえず、なんでダンテにそんななついとんねん」

「ほんとですよ。流琉ちゃんがずっとむすっとしてるのもそのせいですよね?」

「そ、そんなことないですよぅ……」

 

霞の質問に楼杏が続くと、楼杏の後ろに立っていた流琉が慌てて否定したが、誰がどう見ても少し寂しそうにしていた。

 

「ん?まあちょっといろいろとあってね。面倒だから省くけど、ダンテにちょっと怒られちゃってさ」

「はぁ!?」

 

劉宏の言葉に驚く一同。

 

「まー、言ってもこの国の頂点だったからね。諫言みたいなのはいても、面と向かって言ってくる人なんかいなかったもの」

「あんた、何したのよ?」

 

詠がすっごく訝しげにダンテに問うた。

 

「たまたま飯食いに厨房いったらこいつがお付っぽいのと居たんだけどよ。せっかく出してもらった飯をほとんど手なんか付けてねえのに残そうとして、料理人に文句言ってるもんだから、全部食ってから文句言えって言っただけだ」

「……それはむしろその料理人の方がびっくりしたんじゃないでしょうか?」

「んで、事情を聴いたらお忍びでとかぬかすから、だったら目立つようなことしてるのはまずいだろって話しただけだ」

「ちなみに、この御方が誰かっていうのは……?」

「知らねえよ。そもそもここじゃ知人なんてこの部屋にいるやつがほとんどだ」

「ですよねぇ……」

 

ダンテもうんざりとした表情だ。

 

「んで、この間突然呼び出されたと思ったら、こいつの片棒を担がされたってわけだ」

「あー、それで趙忠様を担いできたのね」

「ああ。黄――ああ真名は聞いてるからな――黄が外にいるタイミングでこいつが倒れて、俺がそこで黄を連れてくる。それで、あいつが死亡確認をして帝が倒れるって筋書だったんだと」

「まあ、貴方の身体能力なら人を担ぐのは簡単ですものねえ」

「ふふっ。急いできてとは言ったけど、天井突き破ってくるとはね」

「ちなみに流琉」

「は、はいっ?」

「こんなんだが、こいつ俺と年そんなに変わらんからな」

「……えっ!?」

「……なんで、全員驚くんだ?」

 

ダンテの言葉に全員が驚いた。

 

「い、いえ。どちらかというと、ダンテさんの年齢にも驚いたというか」

「んあ?ってーと、あんたらは俺を何歳だと思ってたんだ?」

「いやー、見た目がここの人と全然違うから今一掴み辛いというか」

「……まあ、深くは聞かんが。とりあえず、こいつは大分ガキっぽいが随分な大人だ。別に気にすることないからな」

「は、はい。じゃ、じゃあ」

 

そういうと、流琉はそろそろとダンテのそばに近づいてそのまま隣に腰かけた。

顔が大分赤いが、それでも離れないのだから大分気合が入っているのだろう。

 

 

 

 

「……まあ、劉宏様の事はいったん置いておくとして。これからの事を考えないと」

 

楼杏の言葉に、少し緩んでいた部屋の空気が引き締まった。

 

「まず、一番立場が危うくなったのが私と月ちゃんなのよね?」

「はい。十常侍の中で唯一劉宏様に付いていたという趙忠様からの呼び出しで参上したので、すでに何皇后の手の者から尾行がつけられていると恋ちゃんから聞いてます」

「私は元々上のやり方とは違うことばっかりしてたからね。特にダンテの直接の上司と見られてるから尚更ってところかしら」

「私はまだそんなに変わったって感じはしないねー。まあ、例の3人を侍女として雇ったってだけで特に変わったことしてないし。まあどっちかっていうと何進ちゃんに目をつけられてるかなあ」

「貴女は自業自得じゃない」

 

月、楼杏、風鈴はそれぞれ自分の状況を話す。

 

「うちらは別に何も変わっとらんよ。まあ、劉協様の護衛しとる時に妙に視線感じたりしたくらいやなあ」

「……気持ち悪い位見られてる」

「ああ、だが今のところ彼女に直接どうこうというのはないようだな」

 

武人側である霞、恋、華雄もそれぞれ話した。

 

「ダンテと流琉ちゃんはどうかしら?」

「私は特に何も。お店からここに来るときも、警備兵さんたちに挨拶される位ですし」

 

流琉は笑顔で答えたが、ダンテは黙ったままだ。

 

「どうしました?」

「……全員、耳塞いでろ」

「はい?」

 

楼杏の促しにダンテは突然そう告げた。

全員訝しげにしながらもそれに従う。

次の瞬間、

 

バァン!!

 

と、塞いだ耳越しにも激しい音がしてドアが外に吹き飛んだ。

全員が驚いてそちらを見ると、

 

「ク、クキキッ……ギィ……」

 

侍女の恰好をしてはいたものの、中が明らかに人のそれではない何かが吹き飛ばされたドア越しに蠢いていた。

ダンテは、フンッと息をつくとベッドから立ち上がり、手を放していいとジェスチャーすると、銃口からまだ微かに煙が出ているコヨーテ・Aを持ったまま外へと出て行った。

 

「……ここ最近、この城の侍女が行方不明になってる件は知ってるか?」

「え、ええ。つい昨日も2人程消えたと。でも、数日後に戻ってくるんでしたよね?」

「せや。でも、何を聞いても覚えとらんの一点張りで、何より顔色が全員悪くなっとるって聞いたで」

「このあいだ、人和がそれに巻き込まれる瞬間に出くわしてな。それを止めた時に気づいたんだが……」

 

そういうとダンテはドアをどかして侍女もどきの服を剥いだ。

 

「御覧の通りってわけだ」

「な、何よ……これ……」

 

その服の下にはまるで虫のような何かが大量に蠢いていた。

ダンテがリベリオンで切り付けると、煙のように消え去っていった。

 

「あれは魔界、――悪魔の住む世界の事だが――、その中でも下っ端中の下っ端だ」

「あれで下っ端なのか……」

 

ダンテの言葉に華雄は言葉も無いようだった。

 

 

 

「俺の話をする前に、悪魔の格の事を話しておくか」

 

ダンテはそういうと自分の持っている魔具を部屋の中央の机に並べた。

 

「まず、悪魔ってのは基本的に魔界を出ることはない。というより、出ることができねえ」

「どうしてですか?」

「魔界とこっちの世界――人間界って言い方をするが――の間を渡るのに物凄い力がいるんだそうだ。俺が元いたところでも魔界への門を開こうとした奴が結構いたが、どいつもこいつも大抵は失敗してた。仮にできたとしても、物凄い量の魔力を補うだけの生贄やら供物やらが必要だったりするからな」

「生贄ですか……」

 

ダンテの説明は続く。

 

「さて、それを踏まえて格付けをするとだ。まずはさっきの奴らだな」

「下っ端とのことだったが」

「ああ。魔界ってのは基本的に弱肉強食だ。あいつらは魔界でも誰かに使われてる可能性が極めて高い。そんな奴らが、無理やり人間界に召喚されたことで、自分の肉体を維持できなくなって、同じような奴らで固まることで何とかここにいるだけの存在だ」

「ん?ということは、さっきのは自らこっちに来たわけではないということですか?」

「ああ。あいつらは基本的に自分の益にならんことはやらねえ。こっちに来る理由でもない限り、あんな奴らがこっちに来ることはねえよ」

「ではいったい誰が……」

 

ダンテの言葉に考え込む楼杏。

 

「続けるぞ。次に、物に取り付くことでこっちにいる奴らだ」

「……物?」

 

恋が首を傾げた。

 

「ああ。特に人の感情や想いが集まった物は、取り付いた悪魔を呼び寄せるだけじゃなく強化しちまう。仮面とか、いわくつきのお宝とかな」

 

ダンテは苦笑した。

 

「まあ、そういうやつらは大抵取り付いてるものが壊されるとこっちで姿を維持できなくなるんだが。まあ、あいつらも馬鹿じゃねえから、大抵は自分の依代は保護してるがね。だが、ここまでは腕に覚えのある奴なら何とかなるんだ」

「というと?」

「こういうやつらは、自分の維持とか防御に手一杯なことが多い。だから動きも緩慢で大抵はごり押ししかできねえ。と言っても、人間なんかよりははるかに強靭だがな」

 

ダンテは次に、と言いながらおもむろにパンドラを持ち上げた。

 

「こっちで魔具になってるやつらだ」

「そーいや、あんたの武器は大体が魔具言うとったな」

「ああ。これが結構面倒なんだがな」

 

ダンテはそういうと、ルシフェルを装着した。

 

「こんな感じに、元となった悪魔が何らかの理由でこっちに残ることにした際に、取る形がこれだ」

「ってことは」

「ああ。基本的にはこいつらは生きてる。が、ほとんどは寝てるような連中だ」

 

ダンテは流琉に頷いて見せた。

 

「が、こいつらも悪魔。許可なく触られたり、持ち出されたりするとそいつを殺そうとするがな」

「ひっ」

 

ダンテの言葉に青ざめる流琉。

 

「もちろん、この形を取れるってことは、魔界でも相当な奴らばっかりだ。何せ、自分の力を削られずにこっちに来れてるってことだからな」

「なるほどな」

 

そして、とダンテは続けた。

 

「これが一番やばい奴だな。こっちでそのまま活動できちまってる奴らだ」

「まあ、そうよね」

 

劉宏が頷いた。

 

「ああ。こういうやつは大概話は通じるんだが、まあ結局は力が全てって奴らだ。ちなみにいうと、恋の中にいるやつもギリギリここに入ってるな」

「……フルちゃんも?」

「ああ。お前の中限定だが、自我がしっかり残ってる。それに、力も貸せるって段階で相当だな」

 

恋が頷いて、自分のお腹を撫でた。

 

「こいつらの厄介なところは、その力にある。本体がとんでもねえのは言うまでもないと思うが、こいつらはその気になれば魔界への門を強制的に開けられるんだ」

「それって、向こうの連中がこっちに来れると」

「そういうことだ。しかも、本体のままな」

 

ダンテが深刻そうな顔で言った。

 

 

 

 

「さて、なんでこんな話をしたかというとだ。人和が連れてかれそうになって咄嗟に切った相手だがな。どーもただの人間じゃなかった」

「……どういうことでしょうか」

「普通、腕を切り飛ばされた人間ってのは痛がるなり、叫ぶなりするはずだが……。なんでかそいつは切られた腕なんざ、まるっと無視して逆の腕で人和を掴もうとしやがった」

「なんですって!!」

 

同室していた地和が人和を見た。

 

「なんで言わなかったのよ!」

「……ダンテさんに口止めされたの。確かなことがわかるまで迂闊に口にしないで欲しいって」

「なんでよ!妹がそんな危ない目にあってるのに……!」

「だからだよ」

 

地和を遮るようにダンテが言った。

 

「いいか?心配をする気持ちはわかるがな。だからって少なくとも、お前にできることは何も無かった。逆に、渡る必要のない橋を渡る羽目になったかもしれなかったんだ。現に、こうして目に見える形で悪魔が襲ってきてて、それでも手を出そうってなるか?」

「それは……」

 

地和は黙ってしまった。

 

「確かに、心配したくなる気持ちも分かる。だが、少なくとも人和の時にはまだはっきりしてなかった。だから余計な混乱を招きたくなかったんだ。あいつらにとって、人間の混乱ってのは一番のチャンスだからな」

「……確かに、兵法でも敵方の仲間割れなんかは有効な手段ですから」

 

ダンテの厳しい言葉に楼杏も同意した。

 

「まあ、そんなこともあったから城内の戻ってきたって噂の奴らを片っ端から調べたんだが」

「……結果は?」

「全員黒。悪魔だったよ」

 

ダンテの言葉は重いものだった。

 

「その方達は?」

「全員斬った。一応情報を集めようとも思ったが、全員下っ端でな。言葉も通じねえからどうしようもなかった」

 

月に答えたダンテ。

 

「……まあ、半分は俺のせいなんだろうな」

「どういうことや?」

 

ダンテの言葉に首を傾げる霞。

 

「俺が元いた世界でやってたことは前に言っただろ?それに、俺も半人半魔だ。俺に引っ張られてるのかもしれねえからな」

「……だとしても、ダンテさんの責任ではないでしょう」

 

しかし、楼杏は首を横に振った。

 

「貴方の生い立ちはともかくとして。さっきの話通りなら、彼らを呼び出した犯人こそが責められるべきでしょう」

「そうだねー。ダンテちゃんは何も悪くないよ」

 

楼杏に続いて風鈴もそういいながら頷いた。

 

「……そうだな。らしくなかった」

 

ダンテもそういうと立ち上がった。

 

「さて、犯人の目星なんだが。実はすでに怪しいと思ってる奴がいてな」

「そうなのですか?」

 

ダンテの言葉に月が首を傾げた。

 

「誰っつってたか……。なんか、やたら偉そうにしてた奴なのは覚えてんだが」

「偉そう……?」

 

ダンテの言葉に全員で首を傾げていると、

 

「……張譲?フルちゃんが張譲って言ってる」

「ああ。確かそんな名前だったな」

 

恋がポツリとそう言った。

 

「張譲ですって?」

 

詠が飛び上がらんばかりに驚いた。

 

「誰だ?」

「例の十常侍の中で、最も権力があるやつよ!劉宏様もご存じでしょう?」

「おお、あやつか!昔はそれこそ第二の親のように慕ってはいたが、大人になってからは色々と鬱陶しくてねえ」

 

劉宏はめんどくさそうな表情で答えた。

 

「……あいつから、フルちゃんの世界の空気を感じるって」

「魔界だったか。さすがに証拠にはならんが……」

 

恋の言葉に華雄が頷いた。

 

「ダンテ?」

「生憎、俺も証拠は掴んでねえよ。あいつから嫌な空気を感じたのは同じだが。しばらく様子を見ていたが、感づかれたのか、最近はその空気が薄まってやがる」

 

楼杏の促しにダンテはそう答えた。

 

「それと、十常侍とやらのうち、何人かがすでに悪魔になってやがる。簡単に言うと、人間のままではあるが、俺みたいに悪魔の力を身に着けたみたいだな」

「そんな……」

 

ダンテの言葉に全員が言葉を失った。

 

「……一体、何を企んでいるのでしょう?」

「さあな。あいつらの力に手を出す奴は、大体が世界の支配とかそういうことを考えるもんだが」

 

楼杏に対するダンテの答えを聞いた詠が、

 

「でも、少なくとも張譲はすでに頂点に近いじゃない。これ以上、何を望むっていうの?」

 

と疑問を述べた。

 

「……ふむ、だとしたらまさに、その頂点になろうとしているんじゃないの?」

 

と劉宏が言った。

 

「どういうことですか?」

「詠が言ったじゃない。『頂点に近い』って。でも、近いだけで頂点じゃないのよ?だったら、そこを目指そうっていうんじゃないの?」

「……理には適ってますね。ですが、そんなことをするような男でしょうか?」

 

と、楼杏が疑問を呈した。

 

「うーん、でも、宦官になってまで権力を目指してる人だもん。そのくらいの野心はあっても不思議じゃないって私は思うけどなあ」

 

風鈴が言った。

 

「まあ、こっちでの権力争いなんざ俺は興味ないがな。むしろ、気になってるのは別の事だ」

「なんですか?」

 

ダンテの言葉に流琉が首を傾げた。

 

「この世界じゃ、悪魔なんて知ってる奴がいないだろ。じゃあ、張譲はどうやって悪魔のことを知ったんだ?」

「……あっ!」

 

ダンテの言葉に皆がはっとした。

 

「確かに。ダンテから聞くまでそのような存在すら知りませんでした」

「うーん、過去の文献にも載ってなかったと思うなあ」

 

楼杏と風鈴がそう言った。

 

「つまりここの誰もがしらない何者かが、張譲に悪魔のことを教えた。それも、恐らくこの世界の奴じゃねえ」

 

ダンテの言葉に全員が黙り込んだ。

 

 

 

 

「まあ、その何者かは置いておいて。差し当たりは張譲ね」

 

詠が仕切りなおすように言った。

 

「張譲にとって、一番邪魔な奴って誰なのかしら」

「まあ、何進だろうね」

 

詠の疑問に劉宏がバッサリと答えた。

 

「何故です?」

「何進殿は劉協様が皇帝になるべきだとして十常侍に反対しておられるのよ。結果として妹とも対立状態になってしまったらしいけれど」

「さっきも言いかけたけど、月ちゃん達が呼ばれたのはこの時のためだろうって。月ちゃんが帝に忠誠を尽くしてたのは禁中じゃあ有名だったからね」

 

楼杏と風鈴が続けて答えた。

 

「あの、少しいいですか……?」

 

と、人和が恐る恐るといった感じに手を挙げた。

 

「ん?どうしたの?」

「実は、その何進様に命じられて、この後部下の方々が地方に飛ぶらしいと噂が」

「……それは、具体的にどこに行くの?」

 

楼杏が真剣な表情で聞いた。

 

「詳しくは。ですが、袁紹様の名前が結構聞かれたので、恐らくは」

「袁紹ですか。あの何進が名門家に頼み事を……?」

 

そのまましばらく黙り込んでしまった。

 

「その、エンショウってのは誰なんだ?」

「大陸の北の方に居を構える名家です。私たちのいた涼州に近いというわけではなかったのですが、お互い良好な関係だったと思います。ただ……」

 

ダンテに答えていた月が珍しく言葉を濁した。

 

「ただ?」

「その、本人が非常に浪費癖が強く、また派手なことを好むのでそのために重税を課される領内の住民からはあまり好かれていないと聞き及んでます。また、袁紹殿と同じかそれ以上に周りの老中の方々の権力が強いらしく、間を取り持つのが大変だと部下の顔良さんが零していました」

「めんどくせえなあ」

 

ダンテはぼやいた。

 

「せやけど、何進は名門っちゅうのが嫌いって聞いたで?」

「ええ。元が肉屋の娘だというのを揶揄されてますからね。後ろ盾を持つものが嫌いだというのは分かります。それを曲げてまでですから、よほどのことなのでしょう」

 

霞の言葉に楼杏は頷いた。

 

「いずれにせよ、何か大きなことが動いている気がします。ダンテ、貴方はしばらく私の護衛から外れてもいいので、禁中の様子に気を配っていてください」

「いいのか?確かにその方がやりやすいが」

「ええ。私の名前を出せば、大抵の所は通れます。帯剣の許可も下りているのでしょう?」

「ああ。緊急時以外の使用は禁じられたがね」

「そういえば、私の最後の公用文書ってそれだったかしら」

 

ダンテがコートの内側から出した紙を見て劉宏が笑った。

 

「ほかの方々も出来るだけ、一人にならないように。相手は人外である可能性を常に頭に入れておいてください」

 

全員が頷いた。

 

 

 

 

「……では、やはり」

「ああ。劉宏は死んでおらぬ。来るはずの魂が来ておらんと、向こうも怒り心頭だ」

 

洛陽の外れに位置する古びた小屋。

そこに蠢く人の影。

 

「いかに私とて、帝の死体の確認までは出来んよ。それに、あの男が私たちをずっと監視しておるせいで思うように動けぬ」

「世界が変わっても、やはりか」

 

影の会話は続く。

 

「して、そちらは?」

「……紛れ込ませた者たちの気配が一斉に消えた。勘付かれた可能性もある」

「なんだと?それでは計画が」

「仔細ない。むしろ、奴が貴様に気を取られている間にこちらが手を進めやすくなるというもの」

 

片方――小太りな影の憤りに対して、もう片方――細身な影は冷静そのもの。

 

「……分かっていると思うが」

「安心しろ。この国に興味などない。我は我の望みを叶えたいだけだ」

「……ふん」

 

片方の言葉に言われた側が鼻を鳴らした。

 

「まあよい。それでは次に会うのは計画が成就した後だな」

 

そういうと、影は去っていった。

 

「……所詮は俗物。身の程を弁えぬ愚か者は、精々惨めな夢でも見ているがいい」

 

小屋に残る影はそう呟くと、風に吹かれたかのようにフッと消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あとがき

 

どうも、作者です。

あけましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします。

 

さて、本編に触れてみますと。

だんだん設定がめちゃくちゃになってきてますが、気にしないでくださいw

外史ってことで割り切って読んでくれたら嬉しいです。

ちなみに、悪魔の設定に関してはオリジナルなので、深く考えずにそーなんだー程度で認識してくれればいいと思います。

 

少しだけネタ晴らしすると、

現在魔改造(予定)なのは、恋ちゃん、炎蓮、風、雛里+未登場の方です。

ぶっちゃけると武力偏重なつもりなのですが、風と雛里は少し違う方向になるはずです(当たり前ですね^^;)

 

さて、最後に怪しげな方々が出てきてどうなるのかといったところですが、お楽しみに!

 


 
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