No.88485

~薫る空~18話(洛陽編)

さて、今回よりカヲルソラ第2章!

そして、早速ですがオリキャラ二人目登場です!

最後のあとがきのページにキャラ絵載せときます。

2009-08-06 23:59:09 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:8148   閲覧ユーザー数:6352

 

 

 

 

 

 

 

――洛陽・某所

 

 

【??】「詠ちゃん………」

 

【??】「月…。月は僕が守るから、大丈夫」

 

 暗い空間。光は夜空の月が放つだけ。二人の少女は小さな声で呟いていた。おぼろげに見える寝台、机、窓のシルエット。それらから、ここは部屋の中であると分かる。こんな場所で彼女達は何を話すというのだろう。二人の表情は曇る一方。まるでそれはこの世の終わりを見てきたようなものだった。

 

 

 

 

 

 

カヲルソラ第2章『洛陽編』

 

 

 

 

 

 

 洛陽。この漢という大国において最も栄華を極めた都。漢には王朝が存在し、天子を掲げる事でこの世界を支配していた。しかし、先の黄巾の乱にて、その弱体化を露呈してしまったために、かつてこの国を支配した国は崩壊の道をたどるだけだった。

 

 風が吹く。昼間だというのに、まるで夜になったように街は静かなものだ。吹き抜ける風に、砂が舞い上がり、人を寄せ付けない壁のように、砂塵をつくる。街のいたるところから乾いた音が響き、その奥からうめき声にも似た呟きが小さく飛び交っていた。

 

【兵】「呂奉先将軍、ご帰還!!」

 

 乾いた街に、兵の声が飛ぶ。その声に合わせたように、城門からは多数の兵がやってくる。その先頭には、真紅の毛を持つ馬にまたがり、それに合わせたように、髪も瞳も紅色に染まった少女が歩いている。後ろにつづく兵の中に、呂の文字を刺繍された真紅の旗が揺らめく。

 

 やがてその一軍は城下の街を通り抜け、城へと向かう。ゆっくりだが、それはまるで民を威圧するような光景だった。紅色の髪の少女が入城し、馬から身を下ろすと、背の小さな影が彼女に近づいていた。

 

【???】「恋どの!反乱の鎮圧ご苦労なのです!」

 

【恋と呼ばれた少女】「………ん。」

 

 小さな少女の声にも彼女は、けだるそうに短くこたえ、気にする様子も無く城の中へと入っていく。そんな様子にもめげずに小さな少女はふたたび彼女の後をついていく。

 

 赤い絨毯を敷かれた廊下を二人は歩いていく。しばらく歩いていると、恋と呼ばれた少女は一つの扉の前でとまった。それを気にするわけでもなく、小さな彼女もまた、その恋と共に、扉の前で止まる。

 

【恋】「月……今、もどった。」

 

 恋は静かにそれだけを扉に向かって言った。そして、少しの間が空いて中から声が聞こえた。

 

【??】『……あ、恋さんですか。どうぞ、入ってください。』

 

 扉越しなので声が少しこもっていたが、その声はとても落ち着いていて、その声の主の性格を現すように、静かに響いた。恋はその声を聞くと、すぐに扉の取っ手に手をかけ、扉を開いて中へ入る。

 

【??】「お帰りなさい、恋さん。報告をお願いできますか?」

 

【恋】「………ん。」

 

 中にいたのは、先ほどから恋に付きまとっている子のように小さい少女だった。しかし、来ている服装などは、そこらの貴族などよりもよほど高貴なもので、それだけで彼女の身分の高さが伺えた。恋はそんな少女に先ほどまで行っていた反乱の賊の討伐の報告をした。

 

 書簡という形での報告を当然のように受け取り、少女は中身を眺めていく。眺め続けて、しばらく時間が経過する。

 

【恋】「………。」

 

【???】「…………ぅ~…」

 

 何かを待つように、二人はその場に立ち尽くしていた。そして、半刻に満たない時間が過ぎたとき。

 

【??】「へぅ………」

 

 書簡を受け取った少女の頭から湯気がでた。

 

 しかし、そのとき。それに合わせたように後ろ――二人が入ってきた扉が開く。

 

【??】「月~、もし恋が報告にきたら………って、月!?」

 

 開いた扉から入ってきたのは眼鏡をかけた緑色の髪をした少女だった。背中にかかるかという長さの髪を左右の両側で三つ編みにしているその子は、さきほどから脳がパンクした少女―月―に駆け寄る。抱きかかえるようにして、月を支える。

 

【月】「へぅ……あ、詠ちゃん…。」

 

【??】「もう~、月はこういうの苦手なんだから、僕に任せておけばいいの!」

 

 詠と呼ばれた眼鏡の少女は、少し怒るように月に声をかける。そんな詠に対して、月は申し訳なさそうに、謝るだけだった。

 

【???】「報告はもういいのです!恋殿はいそがしいのです!」

 

【詠】「…あんた、一応月の家臣って自覚ある?」

 

【???】「音々音は恋殿の部下なのです」

 

【月】「ふふ。ねねさん、報告はもうだいじょうぶですから。」

 

 音々音はその言葉を聞くと、待っていたといわんばかりに恋に近づき、手を引く。そのまま入ってきた扉の前まで恋を引っ張ると、扉に手をかけ、外へと恋を連れ出していた。

 

 

【詠】「ふぅ……あれで大丈夫かしら」

 

【月】「ふふ」

 

 鬱陶しそうにしながらも音々音に気を回す詠をみて、月は笑いを抑えられなかった。そんな月に詠は顔を赤くしながらも反論にならない反論をする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――夢の中。

 

 青白い霧に包まれて、夜の森が幻想的に思えるほど現実離れしているようにみえた。空には大きな蒼月が輝いていて、川はその光を吸収しているかのように輝いていた。清流の音だけがその場を支配して、そんな空気の中に二人の男女が並んで立っていた。

 

 二人とも見覚えのある顔。一人はついこの間見た顔。もう一人はもうしばらくの間会っていなかった顔。男のほうは服装から変わっていたために間違えようが無かった。

 

 二人は何か話している。しかし、川の音がうるさくて聞こえない。

 

 会話が進むごとに女の顔がどんどん曇っていく。それに対して、男のほうはだんだんと何か吹っ切れたように、すっきりとしたものだった。明らかに二人の距離は離れていく。それは感情とか、そういうものではなく、確実に。男の体が少しずつ薄れていく。その存在を否定するかのように、世界から消えていくように。

 

 光はより一層強くなる。でも、それは月や川からのものではなく、今消え続ける男が放っているものだった。二人の目線は交わることなく、女は男に背を向けていた。消えていく男の事実を直視できないと言わんばかりにその場から目をそらし続ける。それでも、男は何か言葉を続けていた。女はそれを否定するように首を振っている。そして、だんだんと首をふる間隔が短くなっていく。

 

 そして、少女が首を振るのをやめたとき、その場には彼女しか残っていなかった。ようやく振り向いても、そこには誰もいない。さっきまでの出来事が夢だといわんばかりに、何事も無く、彼は一片のかけらも残さず消えていた。

 

 うるさかった川の音が消える。ただ涙を流し続ける少女の嘆きで、その場が満たされる。輝きは薄れ、やがてその場を暗闇と静寂が支配する。残った彼女の心を現すように。

 

 

 

 

 

 

【薫】「ん………」

 

 朝。目が覚めて、真っ先に見えたのは寝台から見上げる自室の天井だった。呉から戻って数日。薫は今までの借りを返済しろといわんばかりにに、仕事を叩きつけられた。それもあってか最近は速めに寝る事が多く、深い眠りの末、最悪の目覚めとなっていた。

 

【薫】「ふあぁぁぁ~~~……」

 

 あくびをしつつ、手を上へ伸ばし背筋を伸ばす。未だに眠い目をこすりながら、薫は服を着替え、調理場へと向かおうと、扉を開けて廊下に出る。

 

 

【秋蘭】「おっと……なんだ、薫か。ようやくお目覚めか?」

 

【薫】「んあ……あぁ、秋蘭」

 

 開いた扉にぶつかりそうになったのか、秋蘭は声をあげて、身を引いていた。相変わらずこの人の朝は早すぎるようで、その手には仕事で使うであろう資料が重なっていた。

 

【秋蘭】「顔でも洗ってきたらどうだ?」

 

【薫】「そうする~~~…」

 

 けだるそうに答えて、薫は秋蘭の脇をすり抜け、中にはから調理場へと向かった。そんな薫に仕方ないなという風にため息をついて、秋蘭は再び廊下を歩き出した。

 

 

 

 

 

 薫が調理場に着き、顔を洗うのに井戸をかりようと、その場の誰かに伝えようとしたとき、そこには以外な人物がいた。

 

 

【薫】「ん~~……かずと?」

 

【一刀】「お、やっと起きたかー」

 

 なにやら前掛けをつけて鍋を振っているようだ。見覚えのなさ過ぎるその状況に、思考が対応できず、無視することで何とか意識を保った。

 

【薫】「水借りるから~」

 

【一刀】「あいよ~」

 

 薫の言葉に元気よく返事する一刀はやはり鍋を振っていた。

 

 近くの井戸で水を汲み、顔を洗う。そこでようやく視界がはっきりとしてきた。晴れた空。日の位置からすると、どうやら少し寝坊してしまったようだ。どうりでさっきから起きた事を指摘されるはずだ。

 

 一応、目を覚ましたところで、礼を言うためにもう一度調理場へ向かう。

 

【薫】「水ありがとねー」

 

【一刀】「おう。あ、薫。ついでだからお前も食べていけよ」

 

 そういう一刀はなにやら前掛けをかけて鍋を振っているようだ。

 

【薫】「………………ナニシテルノ?」

 

【一刀】「料理だ。ちょっとまっててくれよ」

 

 なんだか妙に機嫌がいい。自分の脳内で必死に一刀と料理の接点を検索する。………。

 

 該当件数:0件。………当たり前だ。

 

【薫】「あ、あんた、料理なんてできんの!?」

 

【一刀】「わっ――。馬鹿、急に大きい声だすなよ。手元狂うだろうが。…まぁ、一応自炊できる程度はな」

 

【華琳】「興味あるでしょう?」

 

【薫】「うわっ」

 

【華琳】「あなたね…」

 

 急に沸いて出た華琳に思わず声を上げてしまった。いつからいたのかは知らないが、華琳は当然のようにそこにおいてあった椅子に腰掛けてしまった。その光景に未だついていけない薫はその場に突っ立ってしまった。

 

【華琳】「ん?突っ立っていないで座ったらどう?」

 

【薫】「あ、うん」

 

 華琳に促されるままに薫も椅子に座る。木製の椅子で座るときにギシと音が鳴ったのが少し気になった。そのまま、調理に勤しむ一刀の背中を見ていると、自然と時間が過ぎていった。

 

 

 

 

 

 

【一刀】「よし、出来たぞ!」

 

 一刀はその声と共に、いくつかの料理を机の上へ並べていく。

 

【春蘭】「おお!北郷、貴様にもこんな取り柄があったのだな!」

 

【季衣】「おいしそ~~~」

 

【華琳】「ふむ、見栄えはまぁまぁいいわね」

 

 いつから沸いたのか、後ろから春蘭と季衣の声も飛び込んできた。二人に続いて、華琳もその料理を見ている。みんなの反応にかなり満足いっているのか、一刀は弾むような声で皆を食べるように促していく。

 

【季衣】「おいしい~~~」

 

【秋蘭】「ほう」

 

【華琳】「あら、案外いけるわね」

 

 皆が一刀に言われるまま、料理を口に運び、その感想を述べていく。薫もそれに釣られるように並べられた料理を口にする。

 

【薫】「……おいしい」

 

【一刀】「口に合ったみたいで良かったよ」

 

 一刀は笑顔になりながらも、みんなの反応に満足いっているようだ。

 

【薫】「あれ、そういえば桂花は?」

 

【秋蘭】「北郷のような変態の料理なんて食べたら子供が出来るそうだ。」

 

【薫】「なにそれ…」

 

 前から桂花は男を毛嫌いしている節はあったが、一刀に対してはそれに輪をかけてすごい。それにしても、いくら拒絶しているからって、真昼間から孕むだの精液だの叫ぶのはどうなんろうとは、前から思っていたことだ。

 

 

 

 

 それから、一刀も交えて皆でその料理を食べた。結構多めにみえた量もさすがに六人もいればたいした量ではないらしい。盛られていた皿は綺麗になり、料理で隠れていた模様がみえた。料理も食べ終わり、皿を片付ける者とそのまま仕事へ戻るものに別れ、その場は解散となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

【一刀】「ん~~。久しぶりに料理すると、ちょっと肩こるな」

 

 こっちへくるまでは結構自炊とはするほうだったが、さすがにここで自炊する余裕はなかった。肩をまわし、少しでも警邏に差し支えないように体をほぐす。一通り皿を片付け終えた後、そのまま兵舎へと向かい、警邏の準備に入る。そこで、初めての俺の部下と出くわした。

 

 

【凪】「あ、隊長。おはようございます」

 

【一刀】「おす。凪は今日は午前中だけか。お疲れ様」

 

【凪】「はい、ありがとうございます。」

 

 凪たちが来てから、俺達の警邏は午前、午後、夜間と交代制にした。さすがに夜間の担当になったときはかなりつらいが、ずっと見回りを続けていた以前に比べればだいぶましだろう。

 

【一刀】「んじゃ、俺はこれからだから」

 

【凪】「お気をつけて。」

 

 一礼して、凪は兵舎の奥へと警邏の報告をしにいった。そんな凪を見送った後、俺も警邏のために街へとでた。

 

 

 

 

 

 外に出ると、きつい日差しと共にさわやかな風が流れた。季節的には結構日に当たるのはつらいが、この地方の気候なら風さえ吹いていればむしろ涼しいくらいだ。俺はその風を受けながら、人がごった返す街の中をあるいていた。

 

【一刀】「しかし、人ふえたな…」

 

 よく見ればたちならぶ店の種類もどんどん増えている。それに伴ってここへやってくる人の数も増えているのだろう。活気付くのはいいことだが、さすがにあまり多すぎると都会の交差点を歩いているようでどうにも落ち着かなかった。

 

 それに人が増えるという事はそれだけ治安の維持も難しくなるという事で、それを理解してからは、より一層この警邏の際の緊張感が増していた。

 

 

 数名の兵をつれて、俺は人の多い、その通りを歩く。決められた区画をいくつか跨ぎ、注意深く回りを観察する。それでも、民に不安を与えるわけにも行かないので、不審に思われない程度に、だが。

 

 ある程度回ったところで、一度休憩をはさもうと、俺達は近くの茶屋に向かった。男ばかりというのもあまり望ましいものではないが、この際気にしていられない。そして、茶屋へと続く角をまがったところで――。

 

 

【一刀】「おっと…」

 

【???】「あだ…」

 

 変な悲鳴?をあげている何かとぶつかった。かなり小さいようでよくみれば子供……

 

【???】「………ん…」

 

 よく見れば子供。袴をはいて、着物を何重にかに重ね着した上にさらに振袖を半分だけ羽織るなんて奇抜なファッションセンスをもった子供だ。しかし、俺がもっとも目を引いたのはその子供の腰にぶら下がっていた剣。一見刀のようにも見えるそれは、時代劇などで二本差しにしているところをよくみた。だが、その子のそれはそれの度を越えていて、実に左右あわせて六本差し込まれていた。

 

【???】「………お前、じろじろみるな。照れる」

 

【一刀】「………」

 

 なんなんだ、この子は。ただでさえ着物に剣なんて一般民衆離れしすぎているのに、顔を見た瞬間さらに疑問が浮かぶ。髪が異常に多い。ほとんど顔が隠れてしまうくらい前髪も長くて、後ろ髪なんてほとんど膝下まで伸びている。

 

【???】「………………次にコハクが照れたときがお前が死ぬときだ。」

 

 わけが分からないが、何かかっこいいような事を言っている。しかし、季衣の時のような例もあるので、俺はその子の言葉の通り、見るのをやめた。

 

【一刀】「悪い悪い。立てるか?」

 

 とりあえず、お詫びもかねて手を差し出す。

 

【???】「っ!?……………立てる」

 

 しかし、その子は俺の手に異様な反応を見せた後、一人で立ち上がった。そのまま袴についた土を払い落とすようにパンパンとはたいている。

 

【一刀】「君、名前は?…そんなもんぶら下げて、何処行くつもりなんだ?」

 

 俺はその腰にぶら下げられた六本の刀を指差して言った。

 

【???】「……コハクはコハクだ。ちゃんと覚えろよ。コハクは曹操のところに行くんだ」

 

【一刀】「…はい?」

 

 コハクを連呼するその子は、突然予想の斜め上の発言をしだした。

 

【一刀】「曹操のところへ?何しに?」

 

【コハク?】「………………仕えてやるためだ」

 

 ………。

 

【一刀】「………………。さて、皆帰ろうか」

 

 後ろにいた兵達も一様にうなずく。そのまま振り返って、俺は何も見なかったことにした。

 

【コハク?】「………………コハクを恐れて逃げ出すか。情けない警備隊長だ。」

 

 ………俺は何も見ていない。そう言い聞かせ、俺は足を運ぶ。

 

【コハク?】「………ヘタレ」

 

【一刀】「だれが、ヘタレだこらあああああああ!!!!」

 

 俺は通常の三倍の速度でコハクに歩み寄る。

 

【一刀】「子供と遊んでる暇はないんだ!つか、なんだその剣。お前ほんとに何しにきたんだよ」

 

 前半はほとんど嘘。後半は本音。そんな言葉を投げかける。子供…というよりこいつ限定で遊んでいる暇はないのだ。

 

【コハク?】「コハクを子供っていうな。コハクはこれでも18歳以上だ。絶賛炉利懇推奨のな。」

 

【一刀】「…………」

 

 とりあえず、こいつにロリコンなんて言葉を教えた奴を出せ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【一刀】「で、ほんとに曹操に仕官する気か?」

 

【コハク?】「……する。じゃないとおうちに帰れない」

 

 俺達はとにかくこのままでは埒が明かないので、休憩に使う予定だった茶屋で、そいつの話を聞くことにした。しかし、さきほどからこの調子でいまいち本気かどうか信用できない。遊びだと断定でいないのは、やはりその腰から下げられた剣があるからだ。

 

 自称十八歳以上のこいつの話を信じれば、やはり連れて行くべきなんだろうが…。

 

【一刀】「しかしな……」

 

【コハク?】「…曹操に会えば分かる。案内しろ」

 

 この調子だ。見た目は完全に小●生のくせに口調だけは妙にえらそうなんだ。まったくもって可愛げがない。ここまで可愛げがない奴も珍しい。

 

【一刀】「…………。」

 

【コハク?】「………便秘か?」

 

【一刀】「ねーよ!」

 

 いちいち対応…というかツッコミに疲れる奴だ。

 

【一刀】「はぁ…わかったよ。とりあえずつれてってやる。」

 

【コハク?】「ん、感謝………モグモグ」

 

【一刀】「いやいや、いいんだ。いいんだが………それは俺の団子だ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とにかく、それからもおかわりを要求しだしたコハクをつれて、俺は城へ戻った。みんなの反応はなんというか、朝までとは打って変わって180度反転したように冷たかった。

 

 扉を開けて広間へ入る。ガチャリと低い音を鳴らしながら、足を踏み入れると。

 

【華琳】「………あなた、ついに幼女にまで手を出したの?」

 

【一刀】「だから、俺はロリコンじゃねーし、まだ誰にも手なんてだしてない!!」

 

 毎回の事だが、俺が女の子と行動を共にしている場合は基本俺が手を出した事になるらしい。はた迷惑な話だ。何度も言うが俺は手をだしていないんだ。

 

【華琳】「まだって………はぁ。まぁいいわ。それより…」

 

 華琳はあきれたようにため息を吐いた後、俺の隣に目線を向けた。そこには昼間から何かと振り回されたそいつがいた。

 

【コハク?】「………おひさぁ~」

 

 ………軽いな、おい。

 

【華琳】「本当に久しぶりね。最後に会ったのはいつかしら。」

 

【コハク?】「……赤ちゃんのとき以来」

 

【一刀】「それはないだろ」

 

 だったら何で覚えているんだよ。なんて続きそうになり、頭の中で止めておいた。先ほどからすっかりこの子のペースだ。それよりだ。

 

【一刀】「華琳、こいつの事知ってるのか?」

 

 普通に受け答えしている華琳に違和感を覚えて、俺は聞き返していた。どうやら無意識にもまだコハクを信用してはいなかったようだ。

 

【華琳】「………えぇ。紹介しておくわ。姓を曹、名を仁、字を子考というのよ。名前より先に真名を教えてしまう癖は……直っていないのでしょうね…」

 

【一刀】「………えーと、この子が曹仁さんですと?」

 

【コハク?】「………コハクはコハクだ。」

 

【華琳】「だから、真名は大切にしなさいと前にも言ったでしょう、琥珀」

 

 俺は改めて琥珀を見た。この世界でもう結構生活している。だから、たとえ歴史上の人物が女の子になっていようと別に今更気にしたりはしない。しかし、俺だってそれなりに三国志を知っている者としては武将のイメージくらいもったっていいだろう。曹仁といえば、俺の中では堅実で義理堅くて、しっかりした人のイメージなんだ。だから、たとえもし、万が一。女の子になっていようとそういう子が来ると思うんだ。だけど…

 

 

【琥珀】「………だから照れる。見つめるな」

 

【一刀】「 いや、真顔で照れるとか言われてもな…」

 

 俺の曹仁さん、さようなら。あなたの犠牲は無駄にはしない。少なくとも俺は。

 

【華琳】「はぁ……とにかく、琥珀ならば仕官については問題ないわ。」

 

【一刀】「そうなのか?」

 

【華琳】「………そうね。信じられないなら、明日にでも春蘭とでも手合わせさせましょうか」

 

【一刀】「だ、大丈夫なのか…?」

 

 あの春蘭と手合わせなんて、普通に自殺行為だろう。手加減とか寸止めとかとは一番縁遠い性格だとおもうんだ。だが、俺の心配も無用という風に華琳は笑っていた。

 

【華琳】「部屋を用意させるから、ついていきなさい琥珀。後でみんなにも紹介しておくから、荷物を置いたらまたここへ戻ってくるようにね」

 

 

【琥珀】「ん…わかった」

 

 琥珀はそのまま振り返って、侍女の後をついていってしまった。

 

 

【一刀】「………………大丈夫かな」

 

【華琳】「ふふふ………ふふ…」

 

 なんだか、華琳の笑いが怖い気がした。

 

 

 

 

 

 ………明日がものすごく不安だ。

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

カヲルソラ第2章スタートしました!!

 

そして今回から登場するオリキャラ・曹仁こと琥珀です!!↓

 

 

 

薫とあわせて、またこの子もよろしくお願いしますm(__)m

 

 

であであ、また次回で(`・ω・´)ノ

 

 

 


 
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