「新しい紅茶です。」
赤色の茶が純白のティーカップに注がれる。
…いい香りが辺り一面に広がる。
「いい香りね。」
「はい。今日、里で買ってきました。」
カップをゆっくり持ち上げる。
その震動で水面が揺らぐ。
「綺麗な赤色…。」
紅茶を口に含み、飲み込む。
「とっても美味しい。」
「そうですか。よかったです。」
「これは、この元々の紅茶の味もあるかも知れないけど…」
紅の瞳が私を見つめる。
綺麗だ…、吸い込まれそう。
「なにより咲夜。貴女が淹れてくれたからこんなにも美味しいのよ。」
ニコっと微笑み私に言う。
その笑顔がとても愛おしい…。
「あ、ありがとうございます…。」
顔が真っ赤になっていくのが自分で分かる。
「あ、あの、掃除に行ってきます…。」
一瞬、お嬢様がとても可愛く見えてしまった。
「(私の馬鹿、馬鹿、馬鹿!!)」
♪
「咲夜さん?」
「はぁ…」
私はもう駄目だ。
お嬢様が可愛く見えるなんて…。
「(最初は違ったのに…。)」
最初はただの主とメイドの関係だった。
でもいつからだろう…。
あんなにお嬢様に好意を寄せるようになったのは。
「おーい、咲夜さーん?」
お嬢様の無垢な笑み…。
あの笑顔が見れるのならば、私は仕事を頑張れた。
でも最近、徐々にその気持ちが強くなっていってる気がする。
抑えられないこの気持ち…。
「咲夜さんってば!!」
「…美鈴?」
「どうしたんですか?さっきから溜め息ばかりついて…。」
「なんでもないわ。」
「絶対なんかありますよ!!隠さないで下さい!!」
「だって、絶対笑うもん…。」
「笑いませんよ!!」
「…ほんと?」
「本当です!!」
美鈴の透き通った目が私を見つめる。
美鈴なら…
「実はね…」
・少女(?)説明中・
「成る程…。それって恋なんじゃないですか?」
「こ、い?」
「そう恋ですよ。」
恋って好きになる事…、って。
「ち、違うわよ!!」
「違いませんよ。じゃあ、お嬢様を見てどう感じます?」
「『可愛いなぁ』とか『愛らしいなぁ』とか…」
「そう感じる時点で好きになったのと一緒なんですよ。」
「そう、なの…?」
これが恋。これが誰かを好きになるという事…。
急に胸が…。
「み、美鈴…」
「はい?」
「胸が…、苦しい。」
息苦しい。
段々と呼吸が荒くなっていく…。
「ものすごく、お嬢様の事が…」
愛おしい。
今すぐにでも抱きしめたい。
笑顔が…、見たい。
「大丈夫ですか?」
「(だ…、め…。)」
私は走り出した。
お嬢様目指して。
「咲夜さん!?」
♪
お嬢様、お嬢様!!
何処に居るんですか?
お願いです。今すぐに…
「ど、どうしたの咲夜?」
「はぁ、はぁ、はぁ…。」
不思議そうに私を見つめるお嬢様。
やっと見つけた。
「咲…」
「お嬢様!!」
強く抱きしめた。
お嬢様の温もりを感じる。
「一体どうしたの咲夜。」
「私、もう駄目です。」
我慢できない。
自分と言う名の理性を押さえつけれない。
「?」
「私、お嬢様の事が…」
ひやりとした冷たさが頬を伝い下にいたお嬢様の顔に落ちる。
「お嬢様の事が、好きなんです…。」
「咲、夜?」
泣いた。
私は大きな声で泣いた。
「お嬢、様…。」
「……。」
お嬢様の白い手が私の頬を撫でる。
「分かってるわよ。貴女が私を大切に想ってくれているくらい…。」
なんだ、見透かされてたんだ…。
「お嬢様…。」
「だから…、これからもずっと一緒に居ましょう。」
「…はい。」
貴女を想い、貴女に尽くす。
これは私の願い。私の想い…。
これからもずっと貴女の元に居たいという、欲望…。
「それじゃあ咲夜、目を瞑って。」
「?」
ゆっくりとまぶたを閉じる。
辺りが暗闇に包まれる。
不意に唇に温かく、柔らかい感触を感じた。
私は急いで目を開く。
「!!」
お嬢様の唇が私の唇と…。
「もう、『目を瞑って』って言ったじゃない。」
「申し訳御座いません…。」
「改めてもう一度するわよ。」
「はい。」
貴女と一緒にいつまでも…
☆End☆
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私はメイド、貴女は主。
好きになってはいけないんだ。
好きになっては…。
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