No.86232

【咲レミ】永遠の主【短編】

柊 ハクさん

私はメイド、貴女は主。
好きになってはいけないんだ。
好きになっては…。


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2009-07-24 23:40:19 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2477   閲覧ユーザー数:2343

「新しい紅茶です。」

 

赤色の茶が純白のティーカップに注がれる。

…いい香りが辺り一面に広がる。

 

「いい香りね。」

 

「はい。今日、里で買ってきました。」

 

カップをゆっくり持ち上げる。

その震動で水面が揺らぐ。

 

「綺麗な赤色…。」

 

紅茶を口に含み、飲み込む。

 

「とっても美味しい。」

 

「そうですか。よかったです。」

 

「これは、この元々の紅茶の味もあるかも知れないけど…」

 

紅の瞳が私を見つめる。

綺麗だ…、吸い込まれそう。

 

「なにより咲夜。貴女が淹れてくれたからこんなにも美味しいのよ。」

 

ニコっと微笑み私に言う。

その笑顔がとても愛おしい…。

 

「あ、ありがとうございます…。」

 

顔が真っ赤になっていくのが自分で分かる。

 

「あ、あの、掃除に行ってきます…。」

 

一瞬、お嬢様がとても可愛く見えてしまった。

 

「(私の馬鹿、馬鹿、馬鹿!!)」

 

 

 

 

「咲夜さん?」

 

「はぁ…」

 

私はもう駄目だ。

お嬢様が可愛く見えるなんて…。

 

「(最初は違ったのに…。)」

 

最初はただの主とメイドの関係だった。

でもいつからだろう…。

あんなにお嬢様に好意を寄せるようになったのは。

 

「おーい、咲夜さーん?」

 

お嬢様の無垢な笑み…。

あの笑顔が見れるのならば、私は仕事を頑張れた。

でも最近、徐々にその気持ちが強くなっていってる気がする。

抑えられないこの気持ち…。

 

「咲夜さんってば!!」

 

「…美鈴?」

 

「どうしたんですか?さっきから溜め息ばかりついて…。」

 

「なんでもないわ。」

 

「絶対なんかありますよ!!隠さないで下さい!!」

 

「だって、絶対笑うもん…。」

 

「笑いませんよ!!」

 

「…ほんと?」

 

「本当です!!」

 

美鈴の透き通った目が私を見つめる。

美鈴なら…

 

「実はね…」

 

 

・少女(?)説明中・

 

 

「成る程…。それって恋なんじゃないですか?」

 

「こ、い?」

 

「そう恋ですよ。」

 

恋って好きになる事…、って。

 

「ち、違うわよ!!」

 

「違いませんよ。じゃあ、お嬢様を見てどう感じます?」

 

「『可愛いなぁ』とか『愛らしいなぁ』とか…」

 

「そう感じる時点で好きになったのと一緒なんですよ。」

 

「そう、なの…?」

 

これが恋。これが誰かを好きになるという事…。

急に胸が…。

 

「み、美鈴…」

 

「はい?」

 

「胸が…、苦しい。」

 

息苦しい。

段々と呼吸が荒くなっていく…。

 

「ものすごく、お嬢様の事が…」

 

愛おしい。

今すぐにでも抱きしめたい。

笑顔が…、見たい。

 

「大丈夫ですか?」

 

「(だ…、め…。)」

 

私は走り出した。

お嬢様目指して。

 

「咲夜さん!?」

 

 

 

 

お嬢様、お嬢様!!

何処に居るんですか?

お願いです。今すぐに…

 

「ど、どうしたの咲夜?」

 

「はぁ、はぁ、はぁ…。」

 

不思議そうに私を見つめるお嬢様。

やっと見つけた。

 

「咲…」

 

「お嬢様!!」

 

強く抱きしめた。

お嬢様の温もりを感じる。

 

「一体どうしたの咲夜。」

 

「私、もう駄目です。」

 

我慢できない。

自分と言う名の理性を押さえつけれない。

 

「?」

 

「私、お嬢様の事が…」

 

ひやりとした冷たさが頬を伝い下にいたお嬢様の顔に落ちる。

 

「お嬢様の事が、好きなんです…。」

 

「咲、夜?」

 

泣いた。

私は大きな声で泣いた。

 

「お嬢、様…。」

 

「……。」

 

お嬢様の白い手が私の頬を撫でる。

 

「分かってるわよ。貴女が私を大切に想ってくれているくらい…。」

 

なんだ、見透かされてたんだ…。

 

「お嬢様…。」

 

「だから…、これからもずっと一緒に居ましょう。」

 

「…はい。」

 

貴女を想い、貴女に尽くす。

これは私の願い。私の想い…。

これからもずっと貴女の元に居たいという、欲望…。

 

「それじゃあ咲夜、目を瞑って。」

 

「?」

 

ゆっくりとまぶたを閉じる。

辺りが暗闇に包まれる。

不意に唇に温かく、柔らかい感触を感じた。

私は急いで目を開く。

 

「!!」

 

お嬢様の唇が私の唇と…。

 

「もう、『目を瞑って』って言ったじゃない。」

 

「申し訳御座いません…。」

 

「改めてもう一度するわよ。」

 

「はい。」

 

貴女と一緒にいつまでも…

 

 

☆End☆


 
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