「……あれは悪い子じゃないよな」
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マイ「艦これ」「みほちん」
:第13話(改2.7)<食堂で挨拶>
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「島風か」
私は繰り返し確認する。
海軍の艦娘関係者で、その名を知らない者は居ない。とにかく脚が速いことが、いつも強調される。
だが「気が強い」とか「自信過剰」など芳しくない噂も少なくない。
そんな彼女は同じ艦娘の中でも敢えて他と交わろうとしない。いわゆる独立独歩だ。
だから他の艦娘からの評判もふるわない。実際、艦娘に理解を示す海軍士官の中でも彼女だけは苦手だと敬遠する者も多い。
祥高さんは言った。
「驚かれましたか?」
「そうだね。本物は初めてだよ」
正直、私自身『有名』な艦娘の出現に戸惑っていた。
だが直感的に、彼女とは上手くやっていけるのではないか? という感触もあった。
私は秘書艦に言った。
「島風の激しさは、それだけ素直な性格、つまり裏表がないのだろう?」
「……」
祥高さんは無言だった。
私は続けた。
「もし本当に彼女に嫌われたのなら電報だけ置いて行っただろう」
島風の台詞が頭の中に響いた。
『あなたが新しい提督ね、よろしくぅ』
そして呟くように反芻した。
「……悪い子じゃないよな」
そのとき祥高さんも微笑んだ。
「はい」
秘書艦も私の気持ちは察してくれたようだ。
そこで私は改めて聞く。
「電報の内容は?」
「はい」
届いた文面は2通あった。
一つは海軍省から。彼女は読み上げる。
「こたび貴殿が受けた敵の攻撃内容について詳しく聞きたい。従い今週半ば海軍省軍令部の情報将校を赴かせる。なお呉と神戸鎮守府の作戦参謀も同行予定」
「さすが本省、情報が早いな」
「はい」
彼女も頷く。
「私が第一報を入れました」
「なるほど」
仕事が早い。
「着任早々、本省に他の鎮守府の参謀まで来るとは面倒だな」
「……」
彼女の反応は無かった。
「もう一通は?」
「これは神戸から司令への親展です」
「あぁ」
少し驚いた私は彼女から電報を受け取ると直ぐに開いた。
それは神戸鎮守府にいる海軍兵学校時代の同期からだった。彼は私より先に提督になり既に戦果をガンガン上げている。
電報の内容は簡単だった。
『今度うちの鎮守府から部下が行くから宜しく頼む』
……そうか。今週、視察に来る神戸の人間は彼の部下なのか。
「相変わらずアッサリ・スッキリな奴だな」
私は呟いた。まあ、そこが良いんだが。
「あれ?」
電報を閉じようとして追伸に気付いた。
『君も着任早々大変だろう。困ったことがあれば、いつでも言ってくれ』
同期の桜とは、よく言ったものだ。有り難い。
(早速、返事を書こう)
私は秘書艦に初仕事を頼む。
「祥高さん、神戸に電報を」
彼女は「はい」と応えながらメモの準備をした。
「どうぞ」
「……」
私は少し考えてから口頭で伝える。
「着任早々、敵に遭遇し制服が痛んだ。予備有らば頼む」
……と。
復唱した彼女に私は頷いた。
「後で出しておいてくれ」
「了解しました」
支給された制服を初日でボロボロにした。こちらに落ち度は無かったとしても体裁が悪い。まして、この戦時下では制服も貴重品。ダメもとだ。
(これで制服が調達できれば嬉しいが)
それでも私は少しホッとした。
ラッパの音とともに鎮守府内が、ざわつき始めた。
「もう昼か」
「はい」
窓から見ると、どこからともなく女学生の如き艦娘たちがゾロゾロ出てきた。
そしてドアをノックして鳳翔さんが昼食の準備ができた旨、知らせてくれた。
私は立ち上がった。その姿を見た祥高さんが言う。
「参りましょうか」
「ああ」
私たちは執務室を出た。
少し前を行く鳳翔さんを先頭に廊下を進む。
廊下や階段には、いままで何処に潜んでいたんだと思わせるくらい、たくさんの艦娘が居た。さほど長くない廊下や階段なのに軒並み艦娘たちと擦れ違う。その都度、会釈や敬礼を受け私は手を上げ返していく。
無数の視線を感じる。ムリも無い。新しい『司令官』が作業服を着たまま食堂に向かっているのだから。
ひょっとして司令官というより『何者か?』と疑われているかも。
(もし祥高さんたちが居なかったら艦娘たちから袋叩きだな)
私は苦笑した。
歩きながら秘書艦が聞いてきた。
「司令、挨拶はされますか?」
「あぁ食堂でね……堅苦しいのは好きじゃないが。簡単に一言くらい喋るか」
「了解です」
食堂に入ると、やはり最初ちょっと緊張が走った。艦娘たちは次々に起立する。
そのとき……
「あれ?」
思わず声が出た。
私たちが食堂に入ると同時に逃げるように出ていった黒髪の艦娘が居たのだ。
気になったが今は、それどころじゃない。艦娘たちと初顔合わせ。指揮官の「初陣」だ。
食堂を進んでいくと何人かの艦娘が食事を中断して敬礼をした。私は手を上げ軽く制する。
祥高さんが食堂の中央付近で立ち止まり、周りを見回してから言った。
「各自そのままで結構です。新しく着任された司令官より皆さんに一言、ご挨拶です」
鳳翔さんに促され私は食堂の窓際にある演台っぽい雛壇に上がる。島風が私を指差して言った。
「あ、新しい提督だ」
私は軽く、その場にいる艦娘たちを見渡してから挨拶を始める。
「えーっと。ここ美保鎮守府に新しく指揮官として着任しました。みほ……名前は、この鎮守府と同じ『美保』です」
各所から「ホウ」という反応。少し緊張する。私は続けた。
「海から攻めてくる敵からこの国土、故郷を守るため皆さんと一緒に粉骨砕身、最善を尽くす所存です」
「硬ぁ」
……という声。島風だ。それと共にクスクス笑いがチラホラ。
私は無視して続けた。
「堅苦しいことは苦手だ。各自、自分の持ち場で最善を尽くして欲しい……以上」
パチパチと若干、気の抜けた拍手が、わき上がった。
今まで経験したから分かる。艦娘たちの反応は、この程度だ。
(相変わらずだな)
それに艦娘だけの鎮守府となると更に普通の鎮守府とは雰囲気が違う。
(まぁ『郷に入っては郷に従え』だ)
私は腹を決めた。
それにしても飛び出していった黒髪の艦娘が気になる。
(誰だっけ?)
以下魔除け
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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PS:「みほちん」とは
「美保鎮守府:第一部」の略称です。
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私は昼食のために秘書艦と食堂へ入り艦娘たちに向け挨拶をした。