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マイ「艦これ」「みほちん」:第12話(改2.7)<傷んだ制服とつむじ風>

しろっこさん

作業着に着替えた私は傷んだ制服を通していろいろ考えた。だが突然つむじ風のような少女がやってきた。

2016-06-18 20:05:02 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:507   閲覧ユーザー数:507

 

「おーい、電報だよ!」

 

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マイ「艦これ」(みほちん)

:第12話(改2.7)<傷んだ制服とつむじ風>

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「じゃ、ちょっと着替えるから失礼するよ」

「はい」

二人に伝えた私は作業服と自分の鞄を抱え、控え室へと続く扉を開けた。

 

 室内には鍵の掛かる棚に作業机、衣紋(えもん)掛けもあった。

(まるで学校の準備室を思わせる風情だな)

 

何となく江田島にある兵学校を連想しながら私は窓を開けた。美保湾の潮風が入ってきた。

 

「ほう、ここからも大山(だいせん)が良く見えるな」

思わず窓枠に手を当てて見つめる。

 

そういえば舞鶴や呉は山と海が入り組んでいる。鎮守府の立地として守備は容易(たやす)いが眺望は微妙なのだ。

 

 だが美保は陸軍や空軍の滑走路があるくらいに日本海側には珍しく平坦地が広がり見晴らしも良い。

 

もちろん防衛と言う観点からは一考の余地は有るが。

(個人的な是非は問うまい。それに強いて言えば美保は島根半島がある)

 

 私は北側の山並みを振り返る。あの半島のおかげで、この地は太古より外敵から守られたのだ。

 

たとえば、この鎮守府へ一斉に攻撃を仕掛ける為には美保湾へ回り込む必要がある。だが半島の頂、高尾山には空軍の電探基地もあって日本海へ睨みを利かせているのだ。

 

 私は改めて半島の反対側へ向き直る。美保湾は高い山の影を逆さまに映し込んでいた。

「あの大山(だいせん)を日本海から見れば艦娘たちにも良い目印だな」

 

この眺望の良さは鎮守府に有利かも。そんな想いも湧く。

 

「さて」

窓から離れた私は汚れた制服を脱いで衣紋掛けに吊した。

 

驚いたことに午前の戦闘で私の制服は思った以上にボロボロ。山城さんのように、あちこち穴が開いていた。

「良くかすり傷で済んだな……せっかく軍から下賜されたばかりなのに申し訳ない」

 

 私は鳳翔さんが持ってきてくれた作業着に着替えた。やはり新しい服は気持ち良い。窓から入る海風の爽やかさが引き立つ。

 

こんな作業着を着るのも久しぶりだ。

(何十年振りかな?)

 

 学生の頃は機関室の整備実習で作業することもあった。でも実際に配属されて艦船に乗る頃には艦橋周辺に居ることが多かった。

(作戦指揮をするより現場に居た方が気楽かもな)

 

 着替えて執務室へ戻ると、まだ待機していた鳳翔さんが私を見て言った。

「司令、脱いだ制服は、まとめて出して頂ければ後で洗濯しておきます」

 

「気持ちは有り難いけどなぁ」

そう言いながら私は制服の状態を思い出した。

 

「実は、もうボロボロでね……あれは処分して新しい制服を頼んだほうが良いんじゃないかな?」

 

「……」

私の言葉に鳳翔さんは、ちょっと苦笑して祥高さんを見た。

 

秘書艦は静かに口を開いた。

「そうですね。でも僅かとはいえ司令と戦場を共にした制服です。処分されるとしても敬意を持って、お洗濯は、されたほうが宜しいかと存じます」

 

「あ、そうか」

思わず苦笑した。なぜか彼女の言葉は重い。

 

「では、宜しいですか?」

その言葉に私は頷いた。

 

 祥高さんは鳳翔さんに目配せをする。彼女も「失礼します」と会釈をして控え室に入ると衣紋掛けから制服を外して丁寧に抱えて出てきた。

 

改めて見る制服は酷く汚れていた。彼女に抱えさせるのは申し訳ない気持ちになった。

「済まないね、汚くて」

 

だが鳳翔さんは微笑んだ。

「いえ、この制服も戦士です。艦娘たちと同じですから誇らしいですわ」

 

「……」

その言葉に顔が火照る思いだった。艦娘たちは意外に、しっかりしている。規模が小さいからと甘く見てはいけない。

 

「では失礼します」

鳳翔さんは軽く礼をして退出した。

 

 少し気恥ずかしくなった私は取り繕うように祥高さんに言った。

「新しい制服って軍からホイホイ支給されたかな?」

 

「ホイホイ?」

彼女は怪訝そうな顔をした。

 

「あ」

私は察した。

 

「すんなりと……って言う意味だよ」

「それなら、分かります」

変な言葉を使うものではない。

 

 私はデスクの引き出しを確認しながら言った。

「あの制服だって今回辞令を受けて貰っただけだから、2着目があるのかどうかよく分からないけど」

 

「……」

聞いているのだろうけど彼女は自分のデスクで黙って書類の整理をしている。

 

 私は頬杖をつきながら言った。

「軍の支給品って基本的には期間空けないと、くれないよな」

 

そのとき祥高さんは「そうですね」と言った。

「この戦時下ですから軍備品とはいえ配給になると思われます」

 

(ああ一応、私の話は聞いているんだな)

ホッとした。彼女には中央の役人の雰囲気がある。

 

「やれやれ、軍服ならともかく司令官の正装を着任早々、敵にグチャグチャにされたのも私くらいだろうなあ」

頭をかいた。

 

「でも」

彼女は、こちらを見て口を開く。

 

「やはり、それは誇らしいことです」

私はまた慌てた。この祥高は本当に単なる艦娘なのだろうか?

 

(発想が普通の艦娘とは違うんだよな)

やはり指揮官代理を務めると意識が違ってくるのだろうか?

 

 そこで私は彼女に合わせるように言い直した。

「戦闘に巻き込まれたから仕方ないとはいえ詰め襟も面倒だ。しばらく作業服で執務するかな?」

 

すると彼女は微笑んで言った。

「まるで、どこかの独裁国家の指導者みたいですよ」

 

「それもそうだ」

私も笑った。少し場が和んだ。冗談も解するんだな、この艦娘は。

 

 私は秘書艦『祥高』は普通の艦娘ではないと確信した。

 

だからこそ疑問が残る。

(こんな辺境になぜ、彼女のような優秀な艦娘が配置されているのか?)

 

違和感を覚える。やはり左遷? 艦娘なのに、まさか中央の権力闘争にでも巻き込まれたか?

 

そんな思いから、つい口から出た言葉。

「お偉いさんの考えることは分からん」

「はい?」

「いや、独り言だ」

私は苦笑する。どうも独り言が多い。

 

不思議そうな表情の彼女に私は言った。

「偉いと言えば、こんな辺境には中央からの役人連中は滅多に来ないだろう?」

 

「そうですね」

普通に答える祥高さん。

 

ここは艦娘だけの実験部隊のような規模だが鎮守府を名乗っている。

「こんな小さな鎮守府は初めてだよ」

 

すると、その言葉に呼応して彼女も口を開いた。

「それについては以前から海軍内部でも異論があると聞いています」

 

「あぁ、君も知っていたか」

提督代理を勤めれば、そういう噂も耳に入るのだろう。

 

 軍部でも未だに艦娘を理解しない連中を中心に『美保無用論』を唱える者が多い。だから、こんなところに着任命令が出たら普通の人間なら左遷か懲罰人事だと勘違いするだろう。

 

(私には舞鶴の一件もある)

だから、やはり艦娘に特化した意図を含んだ命令だと思う。

 

 そんなやり取りの合間に時おり祥高さんは内線電話を受ける。その際、頻繁に『大淀』とか『夕張』という艦娘の名前が出た。

 

会話の断片から察すると、着任した私の為に美保鎮守府に関する資料を集めてくれているようだ。

 

電話が落ち着くと彼女は言った。

「司令、申し訳ありません。美保について資料を集めているのですが担当艦が非番で少々手間取っています」

 

私は穏やかに返した。

「いや、別に良いよ。そんなに慌てなくても最初は口頭でも」

 

「はい」

改めて祥高さん、仕事が速く生真面目だ。艦娘も、いろいろだが彼女は司令部に最適だろう。

 

 ただ今は正直、報告書よりもフロに入りたい。戦闘で全身ホコリまみれだ。

 

とはいえ、まだ真っ昼間だ。艦娘たちの手前、入浴は気が引ける。それにこの鎮守府、艦娘だらけで男性用の浴室があるのか? 

(もし無いのなら早々に市内の何処か銭湯にでも行きたいな)

 

いろいろ考え、とりあえず顔だけでも洗うことにする。

(控え室には小さな洗面台があったはず)

 

「ちょっと失礼」

相変わらずデスクにかじり付くようにして内線をかけている祥高さんに軽く声をかけた私は席を立った。

 

 執務室隣の控え室は、最近あまり使われてないようだ。何となく掃除したくなる。

 

 それでも洗面台のタオルを見た私はホッとした。小さな石鹸と、かみそりまで準備してあった。

(これは助かる。やっぱり、あの鳳翔さんが準備したのだろうか)

 

私は早速、手や腕を洗って洗顔をした。タオルで顔を拭くと真っ黒になった。

 

「ほぁ」

そう言いながら鏡を見る。サッパリした自分の顔があった。

 

 執務室に戻ると書類に目を通していた祥高さんが顔を上げた。

 

開いた窓からは、海風が通り抜けた。

「食堂へ行かれますか?」

「そうだね」

 

書類を机に置いた彼女が立ち上がろうとしたとき、いきなり執務室の扉が大きく開いた。

「おーい、電報だよー!」

 

ウサギのような髪飾りをつけた艦娘が勢いよく飛び込んできた。私は唖然とした。

(これも艦娘なのか?)

 

やたら露出している服だ。これまで、いろんな艦娘を見てきたが、こんな子は初めてだ。目のやり場に困った。

 

 祥高さんが何か言いかけるとウサギ少女は私に気づいて「あっ」と言った。

「あなたが新しい提督ね、よろしくぅ」

 

ウサギ少女は少しオーバーではあるが平然とした表情のまま、こちらに向かって敬礼をした。

 

 改めて気付いたが彼女の足元には子犬のようなような連装砲がチョロチョロと3基ほど走り回っていた。

「そうそう、これこれ」

 

そして私や祥高さんに向かって「ホイ」と言って電報を投げ渡した。

「じゃあね。もう、おっ昼だよぉ」

 

彼女は90度ターンをすると執務室の扉から、つむじ風のように廊下へと走り去って行った。

 

「……」

私たちは呆気(あっけ)に取られていた。美保湾の海風どころの比ではない。まるで竜巻だ。

 

祥高さんは電報を確認しながら詫びた。

「失礼しました司令官。悪気は無いんですが、あの子が海軍で一番足の速い駆逐艦『島風』です」

 

それは聞いたことがある。

「まるで競争の選手だな」

 

私は笑った。こんな小さな鎮守府でも、いろんな艦娘が居るようだ。

 

「美保鎮守府か」

不安もあったけど艦娘たちを見ているうちに少し楽しみに思う気持ちも出てきた。

 

「住めば都かな」

 

 

以下魔除け

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※これは「艦これ」の二次創作です。

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PS:「みほちん」とは

「秘書艦(仮):第一部」の略称です。

 

 


 
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