昨日と同じ場所にはすでにあの男が立っていた。
???「よく来たな。怖じけずいてこないと思っていたんだが・・・チッ気にくわん」
男は一刀の顔を見てそう呟いた。
一刀「そうだな、でも昨日の俺はもういないさ・・・だから、あっちの世界につれていってくれ」
その顔に一切の迷いはなかった。
???「・・・あちらに行く前にお前に一つ忠告がある」
一刀「なんだよ?」
???「一度舞台から退場した登場人物をおまえはどう思う?」
一刀「?」
男は一刀の反応を見ながらも話を続けた。
???「物語から退場した人物がもう一度登場できるほど舞台はうまくできてはいない、それは外史においても同じ事・・・」
一刀「何の話だよ?」
???「つまり、お前は“北郷一刀”としてあの外史には登場できないということだ」
一刀「ど、どういうことだよ!?」
一刀は男に強く問い掛けた。
???「いいか?物語から退場した人物をもう一度登場させられるほど外史は都合のいいつくりをしていない。だからこそ、物語が終焉したとき、あの外史の主人公ではなかったお前はあの外史から弾かれたんだ」
一刀「・・・じゃあなぜ俺をまたあっちに戻す」
一刀は矛盾に気付いた
あちらの世界に影響を与えるために一刀を送り込むのにその世界には“北郷一刀”のいる余地はないといわれたことに
一刀「なら俺でなくてもよかったんじゃないかよ」
???「はぁ、頭の悪いやつだ」
一刀「なっ!?」
???「いいか、最初にも言ったがおまえ以外の人間ではあの外史には影響をあたえられなかったのだ。ならば他のやつを送るよりはおまえを送るほうがマシということだ」
一刀「・・・だからって物語に加われないんじゃ意味がないだろう」
???「そのためにこれがあるんだ」
そういって男は一刀に何かを放り投げた。
一刀「おっと・・・これは?」
それは何の変哲もない銀色のブレスレットだった。
???「それを腕なり足なり外れないように着けておけ」
一刀「いやだからこれは何のために・・・」
???「それを着けている間、お前はまわりの人間にお前として認識されない」
一刀「???」
男は呆れた顔をしながら説明を続けた。
???「要するにお前が魏の王に接触しても“北郷一刀”とは認識されず赤の他人として扱われるということだ」
一刀「ということは・・・俺はあちらの世界で別人として過ごせってことか?」
???「そういうことだ」
一刀は複雑だった。
彼女たちに会えても自分として振る舞えず、彼女たちには他人として扱われてしまうことが・・・。
???「それと、お前があちらの人間に“北郷”として認識されれば...」
一刀「はじき出される・・・」
???「・・・そういうことだ」
一刀はその話を聞き、険しい表情になっていた。
???「また逃げ出すか?」
男は笑いながら問い掛けた。
しかし、一刀は決心していた。
あちらの世界に戻ることを。
それに、自分だけが苦しむことであっちの世界の未来を変えられるなら・・・彼女たちに会うことができるならすべてをうけいれてやる、と。
一刀「・・・鏡を頼む」
???「・・・」
男が鏡を取り出すと一刀はその鏡に手を置いた。
すると、鏡は突然光を放ちはじめた。
一刀「くっ・・ま、まぶしい」
鏡から発せられた光が一刀を包み込んでいく。
意識が遠のいていく中、彼女たちのことを思い浮かべていた。
???「もう、3年ね・・・時がたつのは早いとはいえさすがに掛かりすぎよ(一刀・・・)」
彼が去ってから3年・・・この時代には平穏な日々が流れていた。
明日は毎年行われている終戦記念の宴会である。
一昨年、終戦一年を記念して三国みんなで宴をしようと劉備からの提案があった。
その席で孫策と劉備の二人と話をして三国の親睦を深めて交流を持つこと、この平和を守っていくこと、そして大きな戦があり多くの人が死んだことを忘れぬようにと毎年違う国で宴会を行うことにしたのだ。
半分は宴をする口実のようなものだが・・・。
そして、今年の主催国は魏であった。
???「華琳様!ここにいらっしゃいましたか」
華琳「んっ?どうしたの凛?」
稟「はい。蜀と呉の方々がまもなく到着されるということを報告に参りました」
華琳「そう」
(早く帰ってきなさいよ一刀)そう心の中で呟き...。
華琳「ならば城門のほうに向かいましょう」
稟「はっ」
と二人は城門のほうへ向かっていった。
その途中で。
稟「そういえば、華琳様」
華琳「何かしら?」
稟「さきほど民から聞いた話なのですが・・・」
華琳「言ってみなさい」
稟「はっ、皆がまだ寝静まっていた朝のことなのですが。その時間に仕事をしていた民が、いきなり空が明るくなって、まばゆい光を放ちながら流れ星が落ちていたのを見たという話をしておりました。」
華琳「へぇ、流れ星ね」
稟「ほかにも同じような話をしている者がいたもので、その話は嘘ではないと思い、それが何かの前触れでなければよいと思いまして」
稟は少し不安そうな顔をしていた。
華琳「そうね、流星なんて不吉なだけだからね。でも、吉と取るか凶と取るかは己次第でしょう」
といって華琳は笑っていた。
その様子と態度に凛は関心とともに安心した。
稟「そうですね、良くない方向に物事を考えることはよくありませんね」
華琳「まぁ、何事にも疑って掛かることも将としての役目でもあるから気にする必要はないわ」
と会話をしているときにあることにふとひっかかった。
華琳「(流れ星ね・・・何かしら、以前にも何かこんなことがあったような・・・)」
稟「華琳様?どうかなさいましたか」
と華琳が考え込んでいる姿を見て凛が声をかけていた。
華琳「・・・んっ?そうね・・・なんでも・・ない・・わ・・・」
会話のしている中である光景が頭の中によみがえってきた。
陳留の刺史として国を治めていたときのこと。
そしてその後に起こった出来事も・・・。
華琳「一刀・・・」
稟「?・・華琳様、何かおっしゃいましたか?」
そう問いかけてすぐに、華琳の顔が一変した。
華琳「稟!」
稟「は、はっ!」
華琳「すぐに秋蘭とその流れ星を見たというものをここに連れてきなさい」
稟「は、はい?秋蘭様とその民をですか?」
華琳「そうよ」
稟「は、はっ!」
華琳の険しい顔をみて凛はすぐに行動に移した。
華琳「一刀・・まさかあなたなの?」
少しの期待を抱きつつ秋蘭とその民が到着するのを待った。
< 四 半 刻 後 >
華琳「ありがとう。時間をとらせたわね」
民「いえ、曹操さまとお話ができて光栄でした」
と民から話を聞き終わったところで秋蘭が到着した。
秋蘭「華琳様、遅くなりました」
華琳「すまなかったわね急に呼び出して」
と秋蘭に声をかけつつ民を見送った。
秋蘭「あの者は?」
華琳「少し聞きたいことがあったのよ」
秋蘭「は、はぁ」
華琳「それよりも秋蘭、私にお伴して頂戴」
秋蘭「それはかまいませんが、蜀と呉の方々がそろそろお見えになるという話をお聞きしましたが・・・」
華琳「頼むわ、秋蘭・・・」
何かわけがあることを察した秋蘭は。
秋蘭「かしこまりました、それでは参りましょう。理由はその道中でお聞かせください。」
華琳「ありがとう、助かるわ」
そういって華琳は目的の場所に行くために馬に乗り、街の外に出ようとしたときだった。
???「華琳様~!」
華琳「桂花?どうしたの?」
桂花「どうしたのではありません。もうすぐで呉と蜀の人が来るというのにどこに行かれるのですか?」
華琳「それは、また帰ってきてから話すわ、だからみんなの出迎えを頼んだわよ桂花」
と一分一秒を大事にするように手短に話を終わらせて馬を走らせた。
桂花「えっ!?そんな、か、華琳様~」
馬走らせて数分・・・。
華琳は何も語らずにいた。
秋蘭「華琳様、そろそろ理由を教えていただけないでしょうか」
秋蘭が痺れを切らして華琳に思い切って訊ねてみた。
華琳「・・・秋蘭・・・あなたは流れ星と聞いて何を思い浮かべるかしら?」
秋蘭「流れ星ですか?そうですね、あまり吉兆とは思えませんが・・・それが何か」
華琳はその言葉に少し笑みを浮かべた。
華琳「秋蘭、あなたは前にもおんなじことを言ったのよ」
秋蘭「以前にもですか?・・・そういえばそのようなことをいった覚えがありますね。華琳様が流れ星を見たとおっしゃったので出立を伸ばすかどうかをお尋ねしたような気がします」
華琳「あら、よく覚えていたはね」
秋蘭「将として物事を覚えておくのは当たり前のことです。そういえば、そのあとに異常がないか確認をするために流れ星が落ちた場所へむかって・・・そこで・・・」
そこで、秋蘭もあることを思い出した。
華琳「・・・」
秋蘭「まさか華琳様!?北郷が!?」
華琳「なんともいえないわ、まず、本当にただの流れ星かもしれないということね。それに、誰かが落ちてきたとしても本来ならば兵を率いて準備を整えてからいくべきでしょう。けれど、一刀から聞いた話では落ちたときの記憶も無ければ、どのくらい気を失っていたかもわからないといっていたわ」
秋蘭「もしそうであれば、捜索の時間が遅れれば北郷の身に危険が降りかかるかもしれないということですか」
華琳「あら、まだ一刀と決まったわけではないのよ」
秋蘭「そうですね。しかし、いても立ってもいられなかったので、あのときのことを知っている私をお連れしたのですね」
華琳「他の子たちだと護衛にならなかったり、話しただけで取り乱したりするからね」
と華琳がいうと秋蘭は少し笑っていた。
華琳「何を笑っているの、秋蘭?」
秋蘭「いえ、一番取り乱されている方が横にいらっしゃるので」
華琳「秋蘭、あなたね・・・」
秋蘭「いえ、申しわけありません」
と秋蘭は笑いながら謝った。
華琳「まぁ、いいわ」
そうこう話をしているうちに目的の場所についた。
秋蘭「この森にですか?」
華琳「えぇ、聞いた話によるとね」
と少し足を進めていくと不自然なことになっている場所にたどり着いた。
秋蘭「これは・・・」
目の前の雑草が中心から外側に向けて綺麗に円状に倒れていたのだ。
その真ん中には人が寝ていたようなあとを残して・・・。
華琳「・・・」
秋蘭「華琳様・・・」
華琳「一刀ならば何が何でも自力で魏まで来るでしょう。なら、それを待つのが得策ね」
秋蘭「・・・」
華琳「じゃあ、洛陽へ戻りましょう、秋蘭。ここへは少し探し物があったとでも言うことにしておきましょう」
平静を装って、そうは言っているが、華琳の苦悩が秋蘭には身にしみるように伝わっていた。
今しなければならないことをしようとする華琳。しかし、捜索を続けたいという自分の衝動を抑えていることが秋蘭には痛いほどわかってしまった。
華琳に愛し、長く仕えてきた者として、同じ男を愛している者として・・・。
秋蘭「わかりました華琳様、それでは帰りましょう」
そういって二人は魏へと戻っていった。
一刀の姿はそこにはなかったのだが華琳の勘はあたっていた。
華琳の訪れた二刻ほど前...。
一刀はまばゆい光とともにこちらの世界に落ちてきていた。
以前と同じくその場に気を失ったまま。
???「やはり、到着地点にずれがあったか」
一刀をこちらの世界に送り込んだ男がその場にはいた
???「陳留だけではなくほかの場所にも人を送っていて正解だったな」
???「しかし、なぜこいつなのだ」
男は不満を漏らしていた。
???「われらの外史に影響を与えたやつを、老人たちは執拗に使おうとする。わざわざ殺そうとしたやつを今度はこちらに戻した挙句、利用しようとして・・・」
???「この外史自体ほかとは違う話になったことに欲が出て、それ以上を見たくなったか・・・」
と男は周りの全身白装束に身を包んだ集団に何か指示をして一刀を運ばしている。
???「まぁせいぜいこの世界で苦しむがいい」
男は一刀に向かって言葉をはいた。
まるで、いままでの怒りをぶつけるかのように・・・。
・ ・ ・ 雑 談 ・ ・ ・
ようやくこっちの世界に一刀を送ることができました。
本当は、???と会う前に元の世界での一刀の話を一回分ぐらい書こうかとおもっていたんですが、
なんだか、早く外史に行かせたかったのと元キャラが一刀だけの話も何か虚しい気がしましてこんな感じの展開にしました。
普通にハッピー的なノリで進めることも考えたのですが、私的にこんな展開にしたいという衝動に駆られまして(^^;
しかし、一刀に渡したブレスレット・・・。
自分で書いたのになんなんですが・・・なんだか設定がドラ○もんがだす未来の道具のようになってしまってる気が・・・。
最後に???は一刀に向かって怒りをぶつけています
もともと彼は、あんな性格なので上の意見とかを普通に聞くようなやつではないのです。
一刀を外史に戻すこと自体かなり反対だったようですし・・・。
でも、もう決定してしまったので、諦めて???が一刀を迎えにいくことをかってでたというわけです
いきなりですが、たくさんのコメントありがとうございました。(_ _)
お褒めの言葉やアドバイスをしていただいてかなりの感謝です。
中にはたくさんアドバイスを書いていただいた方もいてくださって・・・(泣。
名前を間違えるのはよろしくないですね。
なんだか、話よりもそっちが気になってしまいますし(^^;。
それと一刀が高校2年生っていう設定をまったく知りませんでした
(そういえば、前作では3年だったような・・・1年なわけがないということか・・・)
すいません!そこは、調べとけよといわれるかもしれませんが(泣
実際、行き当たりばったりな作り方をしている話なんで、年数を修正するだけならあんまり、影響はないんですが...
やっぱり、しっかりとしたほうがいいですかね??(_ _;
それと、できる限りここでコメントにいろいろと反応をしていけたらとおもっておりますので・・・。
それではまた次のお話でお会いしましょう (・ω・)ノシ
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こんにちわharutoです。
続きのお話で、ようやくあっちの世界にかかわってきます。
あと、設定は把握しておくべきですね(T▽T
追記:2年→3年にしました