華琳「(もう一度・・・・・・、一刀に会いたかったな)」
華琳「(・・・・・・一刀・・・・・・)」
何の痛みも感じないことに違和感を覚え、
少し戸惑いながら目を開けてみると華琳の体は黒い空間の中にあった。
それは、自身の目が見えているのか見えていないのかすらもわからないほどの闇。
そこに浮いている?状態だった。
華琳「それにしても、死ぬって結構呆気ないもの)」
華琳「苦しまずに死ねたのは良かったと思うべきなのかしら?」
自身の死をどこか人事のように考えていると、
- お主が乱世の奸雄 曹孟徳か -
どこからともなく声がした。
女とも男とも、そして相手のいる場所が遠いのか近いのかすらもわからない声だった。
華琳「…奸雄であれたかどうかは知らないけれど、曹孟徳とは私のことね」
声の問いに対し、堂々と答える。
- かっかっかっ! この状況でも動じずか! -
- さすがは覇王と呼ばれた英傑よ -
華琳「ふんっ! で、あなたはどこのだれなのかしら?」
- ふむ、答えたいのは山々なのだがな -
- 私の名を教えてしまうと少々厄介なことになるのでな -
声の主は華琳の問いに少し含みのある声で答えた。
華琳「…まぁいいわ。で、この私になにか用があるのではなくて」
- 理解が早くて助かる -
- 曹孟徳よ、お主の願いを聞こう -
華琳「はぁ?」
声の主の突然の言葉に華琳は困惑する。
- お主の願いをひとつ聞いてやろうと言っているのだ -
華琳「なにが狙いか知らないけれど、そんな言葉に惑わされると思っているの?」
- まぁ、お主ならそう言うだろうな -
- 代わりに私の願いを叶えてもらう、それが条件じゃ -
華琳「死んだ私になにができるというのかしら」
- お主は死んではおらん -
- 今のお主は外史の狭間にいるのじゃ -
華琳「外史?」
- そう、外史。お主達が生きている世界のことじゃ -
- その外史と外史の狭間。何もない世界 -
- このまま何もしなければたしかにお主は死んでしまうじゃろう -
- なら私の願いを聞く代わりにお主の願いを叶える。悪い提案ではないと思うがの -
華琳「あなたが私の願いを叶えられるとは信じられないわね」
華琳「例え私の願いが叶ったとしても、私があなたの願いを叶えられるとも限らないけど」
- 私の願いはそうだな、お主の願いを叶えれば、おのずと叶うのじゃよ -
- 今一度問う。曹孟徳よ、お主の願いを聞こう -
華琳「……」
- お主は何を望む? -
華琳「私は……」
- あの虐殺の場から生き残ることか? -
華琳「いいえ、あの場で死ぬのならそれはそれで私の天命でしょう」
- ならあの五胡を殺すことか -
華琳「別に。興味はないわ、1対1で負けたのは悔しいけれど」
- なら覇道を完遂することか -
華琳「……」
華琳「私の覇道は北郷一刀もいて初めて完遂されるのよ」
華琳「一刀のいない覇道なら無理に生き返ってまで進もうとは思わないわ」
- なら、なにを望む -
華琳「……」
華琳の心が覇王と年相応の少女の間で揺れる。
「もしかしたら」と思う少女の心を押し隠し、覇王として答える。
華琳「私の望みは…、魏だけでなく蜀も呉も皆が幸せに暮らせる世界」
- 本当にそれでよいのか? -
華琳「……」
華琳「わ、私は……」
声の主の再度の問いに華琳の心が揺れる。
華琳「私はっ!一刀に…、一刀に会いたい!!」
- かっかっかっ! 素直でよろしい! -
華琳「さぁ! 言ったわよ。叶えてくれるのかしら?」
華琳が真っ赤になりながら声の主に食って掛かる。
- ふむ。叶えよう -
声の主があっさりと承諾する。
華琳「やけにあっさりしてるのが気になるけど。どうやって会わせてくれるのかしら?」
- それは"行けばわかる"じゃろう -
- ほれっ! -
華琳「え? きゃあ!?」
声の主の掛け声とともに華琳の体が落下を始める。
華琳「私、あなたの望みを聞いていないんだけどっ!」
- かっかっかっ! それも"行けばわかる" -
だんだん声が遠くなる。
華琳「ちょっと!」
- 頼んだぞ、曹孟徳…、いや -
華琳にはもうほとんど声は聞き取れない。
- 頼みましたよ、華琳 -
しかし最後の声はとても暖かかった。
華琳「(どこかで聞いたことがある・・・)」
華琳「(遠い昔に・・・・・・)」
なにか懐かしいものを感じながら、華琳は意識を手放した。
華琳が消えるとそれを追うかのように1人の男が現れる。
??「貴様っ! どういうつもりだ! 外史の者に手を貸すなど!」
声の主の口調が今までの調子に戻る。
- 必要なことだと思うのじゃが -
??「また外史の調整が崩れ、今度こそ正史に影響がでるぞ」
- だから、今度こそ"彼"の力が必要じゃろう? -
??「"あの男"にどうにかできるとは思えぬ!」
- これまであらゆる手を試した -
- 最後に頼るのは"彼"なのじゃよ -
- そして"彼"を導くのに曹孟徳は適任じゃ -
??「しかしっ!」
- もう外史の扉は開いたのじゃ。あとは"彼"にまかせようぞ -
そう言い残し声の主の気配は跡形も無く消える。
1人残された男は、憎悪の炎を瞳に宿らせ呟く。
??「外史を狂わせる者、北郷一刀…」
??「必ず殺してやるっ!」
そう言うと男の気配も闇に消えていった。
??「・・・・・・様っ!、か・・・・・・様っ!」
華琳「(誰?今良い気持ちなのに・・・)」
??「起きてくださいっ!華琳様っ!」
この声は…、と寝ぼけた頭で考え、
華琳「どうしたの?春蘭」
春蘭「華琳様が突然意識をなくされたのではありませんか!」
そう言い、春蘭が華琳に抱きつく。
華琳「?」
秋蘭「姉者、華琳様が困っているぞ」
春蘭「むっ!そ、そうか。申し訳ありません、華琳様」
秋蘭に諭され春蘭が華琳から離れる。
離れた春欄の顔を見て華琳が驚く。
華琳「春蘭っ!あなたその目は一体どうしたの!?」
春蘭「目ですか・・・?何もしていませんが・・・?」
華琳「(なぜ春蘭の左目があるの・・・?あのとき流れ矢に射抜かれたハズなのに・・・)」
華琳「(それにここは・・・? 私はたしか魏の国境で五胡と戦っていたハズ)」
春蘭&秋蘭「?」
華琳「秋蘭、今の状況を報告してもらえるかしら」
秋蘭「はっ、現在隣州に盗賊被害が出ておりその討伐のため出陣し、現在盗賊の捜索中です」
秋蘭の報告を聞き、華琳が考え込む。
華琳「(この状況・・・、まさかとは思いたいけど)」
華琳「(一刀が現れたあのときの討伐任務としか思えない)」
華琳「(はぁ・・・、こんな馬鹿げたことアイツだけで十分だと思ってたけど)」
華琳「(まさか自分の身に起こるなんてね)」
華琳「これが"たいむすいっぷ"というものか・・・」
ふと出た呟きに姉妹が首を傾げる。
春蘭「今なんと?」
華琳「なんでもないわ」
華琳「("たいむすいっぷ"してきたということは、そろそろ・・・)」
華琳は空を見上げ、"あるもの"を探す。
秋蘭「どうしたのですか? 華琳様」
華琳「(一刀のこともある。いたずらに歴史は変えないほがいいわね)」
華琳「(ごめんなさいね、二人とも)」
華琳「(まだ話すわけにはいかないの)」
華琳「なんでもないわ」
過去に来てしまったという動揺を隠し、平静を装いながら答える。
そしてその時がやってくる。
華琳「あっ!」
春蘭「華琳様! 出立の準備が整いました!」
秋蘭「華琳様? どうかなさいましたか?」
華琳「今、流れ星が見えたのよ」
春蘭「流れ星、ですか? こんな昼間に」
秋蘭「あまり吉兆とは思えませんね。出立を伸ばしましょうか?」
華琳「吉と取るか凶と取るかは己次第でしょう。予定通り出立するわ」
華琳「(それに前と同じなら"アイツ"がいるハズだしね)」
春蘭「承知いたしました」
秋蘭「総員、騎乗! 騎乗っ!」
華琳「無知な悪党どもに奪われた貴重な遺産、何としても取り戻すわよ! 出撃!」
華琳「(一刀…、やっと、やっと会える…)」
華琳は逸る気持ちを抑えながら、全軍に号令を出し、目的の場所へと向かった。
春蘭「華琳様! こやつは……」
華琳「ど、どうやら違うようね」
ひさしぶりに見た一刀に少し動揺するも、なんとか平静を保つ。
一刀「!・・・・・・」
華琳「なによ?///」
華琳「(以前の一刀より少し男らしくなってるじゃないの///)」
そんな一刀に見つめられ、否応なしに華琳の頬も赤くなる。
一刀「いや、なんでもない///」
華琳のしぐさがツボだったのか一刀も赤くなってしまい、
なにやらいい空気になってしまう。
そうなると黙っていられないのは、春蘭である。
春蘭「華琳様っ!離れてください!」
春蘭「賊かもしれないのですよ!」
秋蘭「どうしましょう。連中の一味の可能性もありますし、引っ立てましょうか?」
春蘭「連中の一味に決まっています!」
すでに春蘭の中では一刀は敵として登録されたようだった(笑)
華琳「(ちょっといい感じだったのにっ!! 春蘭あとでオシオキね ニヤリ)」
と、考えていたりするが表情には出さない。
華琳「はぁ…、春蘭ちょっと黙ってなさい」
春蘭「華琳さまぁ~…」
一刀「あ、あの……」
華琳「……何?」
華琳「(やだっ! ひさしぶりに会ったのにちょっと無愛想だったかしら…///)」
一刀が自分の目の前にいる。
今すぐ彼の胸に飛び込んでしまいたい気持ちを押え付け覇王として振舞う。
そんな華琳の気持ちを一刀の言葉が砕く。
一刀「君は……誰?」
あとがき的な
またもやたくさんのコメントありがとうございます!!
「おもしろい」と言われると励みになるんですねぇ(´・∀・`)
やっっと実感ヽ(°▽°)ノ
ここまで読んで頂いてありがとうございます、Re:TAKE 3話でした~♪
今回は華琳様の五胡との戦いの後のお話です。
華琳様には過去、真・恋姫無双の魏ルートの始めに
"たいむすいっぷ"(笑)していただきました。
(打ち間違いに気付いたときツボだったので採用)
一刀がボコボコにされると期待されてた方申し訳ありません!
ああっ! 物を投げないで!!((;゚Д゚)ガクガクブルブル
そして無謀にもオリキャラなんてでてくる始末。。。
やりたい放題やろうとしてるけど収拾つけられるんだろうか?自分。
いきなり一刀が出現してますが、今回は華琳様視点で進めたので、
一刀が恋姫の世界に来た道程は別の話でやります。
次は華琳様とは違うもうひとつのフラグを立てます。
ほぼできてるんで、明日にはUPしたいなぁ(*´∀`*)
また読んでいただければ幸いです。( ´ ▽ ` )ノ
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Re:TAKE 第3話です。
これで見習い卒業だ!www
でも誤字脱字あるかもwwwですが、
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