No.823683

Free Trigger 第8話「新たな時空警察の誕生」

Nobuさん

これにてFree Triggerはおしまいです。
彼女はこの話をきっかけに本格的に動くようになりました。

2016-01-07 21:19:11 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:331   閲覧ユーザー数:331

「な、なんでアーデルハイドがそこにいるの!?」

「これから、別れを言いに来たんだ」

「え……?」

 当然とでもいうような表情のアーデルハイド。

 ミロは困惑した様子で何も言えなかった。

「私はサポートしかできないからね。

 君達を導くという使命の1つを果たした今、私は別の場所へ赴かなければならないんだ」

「そんなっ!」

 どうやらアーデルハイドのようなエスパーは、使命を果たすと精霊界に帰るか、

 また別の場所に旅立ってしまうようだ。

 つまり、一つの場所に長居はできないらしい。

「……君の仲間達を助けた、という活躍しかできなくてすまなかったね。

 あまり、目立っていなかったようだね……」

「ううん」

 アーデルハイドの言葉にミロは首を横に振った。

「なんでだい?」

「あたし達の大切な仲間を助けただけでも、あなたは立派に活躍していたと思っているわ」

「ええ。主様の言う通りですよ。私達魔族にとって、同族は大切なものですから」

「ミロさんは、家族を助けたいという純粋な思いで、この教会をボク達と一緒に走ったんです」

「……俺も、最初は弱体化したこいつらをただの足手まといだと思っていた。

 だが、彼女達の行動力の高さ、結束力の強さ、そして戦ってきた人間を見て、

 俺も彼女達を信頼しなければ、と思うようになった」

 ミロ、クラウディア、ユミル、男が口々にそうアーデルハイドに話す。

 その言葉を聞いたアーデルハイドの表情が揺らぐ。

「へえ……。君達は魔族なのに凄い結束力だね。気に入った。これから時空警察にならないかい?」

「ああ、あれ? 時空犯罪者を逮捕する奴?」

「そうだよ。君達ならなれるけど……どうする?」

 アーデルハイドは、ミロ達に時空犯罪者を逮捕する時空警察になれ、と言った。

 確かに時空警察になれば報酬は高くなるだろう。

 だが、そのためには様々な世界に行かなければならない。

 そのため、非常に忙しくなるだろう。

 つまり、時空警察になるという事は、元の生活を捨てなければならないのだ。

「俺は断る」

「私もです」

 男とクラウディアは断った。

 残るは、ミロとユミルのみである。

「どうしますか? ミロさん……」

「…………」

「なるもならないも、君次第さ。……さあ、どうするんだい? 真祖の娘よ。

 使命を背負った勇者になるのかい? それとも普通の人として過ごしたいかい?」

「…………」

 ミロは迷っていた。

 もしも自分が時空警察になれば、英雄として称えられるかもしれない。

 だが、時空警察になってしまえば、二度と家族には会えなくなるかもしれない。

 彼女はその狭間にて、迷っていた。

 

 だが、ユミルの次の言葉により、彼女は目覚めた。

「……ボクを、時空警察にしてください」

「ユミル!? どうして……!?」

「……ミロさんを、守りたいからです。ボクの命の恩人で最愛の人。

 それが、ミロさん。守られてばかりのボクは、もう嫌なんです。

 ……お願いします! アーデルハイド! ボクを、時空警察にしてください!!」

 覚悟を決めたように、ユミルはそう言った。

 その言葉を聞いたアーデルハイドは頷く。

「いい目だ、覚悟はできているようだね。よし、新たな時空警察として任命しよう」

「……やった!」

 新たな時空警察になれた事に、ユミルは喜んだ。

 

「……さあ、ミロ。君はどうするんだい?」

「……今ので吹っ切れたわ。あたしも、時空警察になる! ユミルばかりに任せてはいられないから!!」

 ミロも真剣な表情でアーデルハイドにそう言った。

 アーデルハイドも彼女の表情を見て頷く。

「決まったね。……新たな時空警察は、2人か。ふふ……期待の新人、ってところだね……」

 

「それじゃあ、さようなら、クラウディア!」

「さようなら……また会う日まで……」

「ああ。また会える日を、楽しみにしているぞ」

「主様、お怪我なさらないようにお願いしますね」

「分かっているわよ!」

 

 こうして、この世界に新たな時空警察が生まれた。

 最強の吸血鬼と、彼女に仕える従者。

 エスパーであるアーデルハイドは、きっとこの2人に信頼感を抱くであろう。

 何故ならば、残酷とも取れる行動の裏には、仲間を救いたいという思いが隠れているからだ。

 彼女達もまた、仲間思いである。

 そう、後に異世界の旅人となる者のように……。

 

「あ、あの人の名前、まだ聞いていなかったな。今度出会ったら、名前を聞こうかな……」


 
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