「な、なんでアーデルハイドがそこにいるの!?」
「これから、別れを言いに来たんだ」
「え……?」
当然とでもいうような表情のアーデルハイド。
ミロは困惑した様子で何も言えなかった。
「私はサポートしかできないからね。
君達を導くという使命の1つを果たした今、私は別の場所へ赴かなければならないんだ」
「そんなっ!」
どうやらアーデルハイドのようなエスパーは、使命を果たすと精霊界に帰るか、
また別の場所に旅立ってしまうようだ。
つまり、一つの場所に長居はできないらしい。
「……君の仲間達を助けた、という活躍しかできなくてすまなかったね。
あまり、目立っていなかったようだね……」
「ううん」
アーデルハイドの言葉にミロは首を横に振った。
「なんでだい?」
「あたし達の大切な仲間を助けただけでも、あなたは立派に活躍していたと思っているわ」
「ええ。主様の言う通りですよ。私達魔族にとって、同族は大切なものですから」
「ミロさんは、家族を助けたいという純粋な思いで、この教会をボク達と一緒に走ったんです」
「……俺も、最初は弱体化したこいつらをただの足手まといだと思っていた。
だが、彼女達の行動力の高さ、結束力の強さ、そして戦ってきた人間を見て、
俺も彼女達を信頼しなければ、と思うようになった」
ミロ、クラウディア、ユミル、男が口々にそうアーデルハイドに話す。
その言葉を聞いたアーデルハイドの表情が揺らぐ。
「へえ……。君達は魔族なのに凄い結束力だね。気に入った。これから時空警察にならないかい?」
「ああ、あれ? 時空犯罪者を逮捕する奴?」
「そうだよ。君達ならなれるけど……どうする?」
アーデルハイドは、ミロ達に時空犯罪者を逮捕する時空警察になれ、と言った。
確かに時空警察になれば報酬は高くなるだろう。
だが、そのためには様々な世界に行かなければならない。
そのため、非常に忙しくなるだろう。
つまり、時空警察になるという事は、元の生活を捨てなければならないのだ。
「俺は断る」
「私もです」
男とクラウディアは断った。
残るは、ミロとユミルのみである。
「どうしますか? ミロさん……」
「…………」
「なるもならないも、君次第さ。……さあ、どうするんだい? 真祖の娘よ。
使命を背負った勇者になるのかい? それとも普通の人として過ごしたいかい?」
「…………」
ミロは迷っていた。
もしも自分が時空警察になれば、英雄として称えられるかもしれない。
だが、時空警察になってしまえば、二度と家族には会えなくなるかもしれない。
彼女はその狭間にて、迷っていた。
だが、ユミルの次の言葉により、彼女は目覚めた。
「……ボクを、時空警察にしてください」
「ユミル!? どうして……!?」
「……ミロさんを、守りたいからです。ボクの命の恩人で最愛の人。
それが、ミロさん。守られてばかりのボクは、もう嫌なんです。
……お願いします! アーデルハイド! ボクを、時空警察にしてください!!」
覚悟を決めたように、ユミルはそう言った。
その言葉を聞いたアーデルハイドは頷く。
「いい目だ、覚悟はできているようだね。よし、新たな時空警察として任命しよう」
「……やった!」
新たな時空警察になれた事に、ユミルは喜んだ。
「……さあ、ミロ。君はどうするんだい?」
「……今ので吹っ切れたわ。あたしも、時空警察になる! ユミルばかりに任せてはいられないから!!」
ミロも真剣な表情でアーデルハイドにそう言った。
アーデルハイドも彼女の表情を見て頷く。
「決まったね。……新たな時空警察は、2人か。ふふ……期待の新人、ってところだね……」
「それじゃあ、さようなら、クラウディア!」
「さようなら……また会う日まで……」
「ああ。また会える日を、楽しみにしているぞ」
「主様、お怪我なさらないようにお願いしますね」
「分かっているわよ!」
こうして、この世界に新たな時空警察が生まれた。
最強の吸血鬼と、彼女に仕える従者。
エスパーであるアーデルハイドは、きっとこの2人に信頼感を抱くであろう。
何故ならば、残酷とも取れる行動の裏には、仲間を救いたいという思いが隠れているからだ。
彼女達もまた、仲間思いである。
そう、後に異世界の旅人となる者のように……。
「あ、あの人の名前、まだ聞いていなかったな。今度出会ったら、名前を聞こうかな……」
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これにてFree Triggerはおしまいです。
彼女はこの話をきっかけに本格的に動くようになりました。