No.781415

ある狂人の日常"6"

一ヶ月に一本は書きたいな、と思ってはいるんですが、どうもなかなか気分が乗らなかったりで。
下ネタとパロディの割合が多すぎるので反省したいですね。

2015-06-03 15:13:42 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:271   閲覧ユーザー数:270

 たまにはこう、まともな人間みたいな事をしたくなるわけだ。私だってさ。たとえば男と一緒にホテルにいって、とかね。何やるのかって? そりゃもちろん、ねえ? まあそんなことやらないけどさ。何でかって? だってそりゃ、ねえ? 大人の事情って、便利な言葉よね。

 そういうわけで、まともな人間らしく、夜中の2時過ぎに起きた私は、ほとんど生まれたままの姿の上に服を着ていく事にした。

 生まれたままの姿ってよく言うけどさ。すごいよね、それを実践できる人って。だって、胎児のところまで戻せるんだから。生まれたままの姿ってそういう事でしょ? ホントすごい。尊敬に値するね。私なんかより、よっぽどすごいと思うよ。問題は、胎児に戻った後、また大人に戻れるのか、って事だけどさ。だって、胎児に戻っちゃったら脳も胎児の頃まで戻っちゃうだろうし。是非その辺り、生まれたままの姿に戻れる人に聞きたいね。冗談はさておいて。

 こんな時間に起きてお洋服を着る理由は何か。そりゃあもちろん、お洋服を着たかったから。極めて普通。だってさ、寒いじゃん。馬鹿みたいに暑かったけどさ、五月は。でもだんだん梅雨のシーズンになってきて寒くなってきたからさ。下着姿で外出たら絶対寒いに決まってるじゃない。あとお巡りさんにちょっと君ってされるし。だからお洋服を着るわけだ。つまり理由として要約すると、外に出るからお洋服を着た。

 では何故、私は外に出るのだろうか。そもそも、外に出る事とは何か。じっくり考察してみようじゃない。連想されてくる言葉。脱出/解放/逃走/自由/危険。つまり私は、自分の家=自分の殻から脱出し、自分の中の常識から解放される。逃走……逃走は……あ、今の醜くだらけきった自分という現実から逃げ出す。自分の殻から脱出した私は、自由を得ることが出来ると同時に、自らを守ってくれる殻を失う事で、危険に晒される事になる。外に出る、というただそれだけの事で、ここまで壮大な物語が作れちゃう。寓話みたい。ちなみに外に出る理由は簡単だよ。お腹減った。

 さて、ただでさえお腹減ってるのに余計な事を考えたせいで、ますます気分が悪くなってきた。いつも通りジーンズを履いて、適当にそこいらへんから服を見繕って、髪を適当になんとかして、外に出られる体裁を整える。しかし服着るのって面倒くさいんだよね。昔のお話に、南国の人に服を着るように強制したら文句が出た。その理由は服を着たことにより、エロく見えるから。なんて話があったように思う。つまり、すっぽんぽんが当たり前の世の中になれば、何にも問題が無いわけだ。まして、性犯罪者が出るのはみんなが服を着ているから。だからみんな裸になってしまえ。犯罪対策の為の費用を節約出来るし、服を作るために資源を使う必要がなくなるから、地球のためにもなる。犯罪の研究家達とエコロジスト達はまず服を脱ぎ捨てよう! 何馬鹿な事言ってるんだろ。これも腹が減るのが悪い。

 適当にサンダルを突っかけて、外へと出る。もちろん夜中だから静かに。泥棒みたいに、音を立てないように慎重に鍵を開けて。そしてドアを開けて。そーっと外に出て。静かに鍵を差し込んで/回して。何で私の家なのに泥棒みたいにならなきゃいけないんだろうね。正確には貸家だから私の家とは言えないけどさ。ナンセンスなジョーク。このジョークだけでご飯食べていけるようにならないかな。ならないよね。世の中って辛いね、ホント。

 さすがにまだ六月だし、夜中の空気はひんやりとしている。ついでにじっとりともしてるけど。具体的にいうと、満員電車に乗っている肥満の中年のワイシャツくらいに。うえー。想像しただけで気持ち悪くなってきた。それとも、今日丸一日胃に何も入れていないせいかな。なんかふらふらするしさ。低気圧が悪い。新井は特に悪くないと思う。ところで、新井って誰だろ? ここウン十年テレビとか見ないからよくわかんないんだよね、世の中のはやり廃りって。お好み焼きどう?

 しかし、夜中の、さらに言えばここは住宅街だっていうのもあって、ホント静か。昼間は掃除機の音とか、どこかで赤ちゃんが大泣きする声とか、ガキ共が騒ぎ回ってたりとかで賑やかだけど。今あるのは街灯の光だけ。真っ暗闇の中、どこまでも街灯が並んでいる。この道をずっと行けば、月へと辿り着くかもしれない。そんな気持ちになる。でもふと冷静に考えると、生身でどうやって大気圏突破するんだろ。たぶん突破しようとしたら、どっかで身体が弾けて真っ赤な水風船爆発、って感じになるような気がするんだよね。あんまりそういう細かい事詳しくないけどさ。ああ、月夜へと続く光の道、なんて幻想を、無邪気に信じられる乙女の頃に戻りたい。そんな頃なかったわ。よく考えたら。

 三十路のおばちゃんがそんな事を想像してても正直気持ち悪いだけなので、いい加減自分の欲望に素直になるとしよう。いい男はどこかな。間違えた。おいしい物は何かないかな。確かにお腹は減ってるけどさ。そっちのお腹が減る、じゃないんだよね。どうでもいいけど、そっちのお腹が減るって表現、私は割と好き。なんて言うかさ、捕食しているみたいな感じで。実際やってることはそうだし。ところで、ほとんどタンパク質みたいなものだけどさ、それで食欲を満たせるって結構すごいよね。ゲームみたいに大した量じゃないし、しかも経口摂取じゃないのにさ。これ以上はやめとこう。大人の事情って便利な言葉で。大体、私そういう肉体の欲はあんまりないし。

 ところで。ここ、どこ? 月夜へ続く光の道を歩いていたらさ、なんかどこだかわからないとこに来ちゃったんだけど。ここが月夜の世界か。真っ暗で、何もないところ。私みたいな人間にはお似合いの場所。もう既に空っぽだからね。まあ、一つ言えることはある。出不精すぎるのもよくない。世の中の変化についていけなくなる。今みたいに。再開発頑張ってるんだね、うちの行政は。さて、コンビニはどこだったかな。


 
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