No.751005

九番目の熾天使・外伝~マーセナリーズ・クリード~番外編 サイドアームズ

okakaさん

後編その1です。今回で終わらせる予定がまた長すぎて挫折しました。

2015-01-12 21:35:34 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:676   閲覧ユーザー数:535

番外編【サイドアームズ】1 ~獅子と聖剣~ 後編1

 

 

 

 

 

 

「グラディエーター――――――その正式名称を弐四式戦闘用高機動型強化装甲という重装甲パワードスーツだ。銃剣・グレネード付きの 二六式24mm対物重機関銃を主兵装として装備し、戦車隊に対しても優位に立ち回る程の性能を発揮する。

特徴として機械的技術の限界を【人間の神経組織】で補うという設計思想がある。その為、操縦には搭乗者の神経電気信号を認識する方式が用いられているんだが・・・これにより、同サイズの他兵器の追随を許さない程の高性能を発揮する。

そして、その素材として【特殊な遺伝子を持った子供の脳髄】を使い、その刻み込まれた【恐怖】が装着者を蝕む危険な兵器でもあり、常人なら良くて発狂、最悪、死に至ることもあるんだ。

その為にグラディエーターの装着者は、人間らしい感情を持たない者のみが選ばれるんだが・・・おそらく、人造人間の一種であるバイオロイドはグラディエーターの制御には最高の素材だったんだろう。カレラ・セトメが目を付けるのもおかしくはない。」

 

 

「子供が・・・材料・・・・・・?」

 

 

okakaの語った真実にディアは愕然とした。フォールド通信機の声の正体、そして自分を襲ったあの兵器の真実を聞かされ、思い出してしまったのだ。自らの体に行われた数々の実験、そして自身がかつて守れなかった愛する少女の事を。

 

 

「・・・・・・・けるな・・・・・・ふざけるな!!罪のない者を犠牲にして!こんなものまで作って!それが正義だ?その為の尊い犠牲だ?そんなはずあるか!命を・・・命をなんだと思ってるんだ!」

 

『落ち着けディア!』

 

「落ち着けるわけ無いじゃないですか!だって・・・こんな・・・こんなのって・・・」

 

 

トラウマを抉られ、激昂したディアの血を吐くような叫びにどこからか声が響き渡ってきた。

 

 

『フェフェフェ、命などただの材料じゃよ。ワシが使って初めて意味があるのじゃて。このワシの尊い実験の意味も解からんのか?小童』

 

 

しゃがれた老人の声、ディアはその声が聞こえてきた方向に向け、激情のままにスーパーヴァリスを最大出力の【ハドロンブラスター】モードに変形させ発砲した。その熱線の光に一瞬、何かが浮かび上がった。

同時に機体に走る衝撃、とっさにディアはヴァリスを投棄、被弾したヴァリスが爆発するのと同時に周囲に明かりが灯った。大型機動兵器が暴れられるほどに広い室内の中央、そこに照らされていたのは背中に巨大なアンテナを背負った先程よりも大きい、KMFよりも二回りは大きなグラディエーターとその随伴機と思われる7機のグラディエーターがいた。

その中の一機の持つ機銃から硝煙が上っているのを見るに、先程のヴァリスへの砲撃を加えたのは随伴機だろう。

 

 

『フェフェフェ、なかなか面白い武器を持っておるようじゃのぅ小童、じゃがこの程度で我を忘れるとは、まだまだ甘いわ。どうじゃ?ワシの手で調整してやろうかのぅ?苦しむことも無くなるぞい?フェフェフェ!』

 

 

レオのファクトスフィアが声を発した機体を特定、どうやらあの大型グラディエーターに今回の標的カレラ・セトメが乗っているのだろう。ディアは腰にマウントされたヴァリスを抜き放つとカレラに向け、構えた。

 

 

『コイツは・・・マズいぞディア!一旦後退し・・・』

 

 

okakaからの後退指示を無視し、ディアは通信を切断した。後退などする気はなかった。コイツは絶対に許さない、絶対に殺す。怒りがディアの脳内を支配していた。

 

 

「ふざけるな!苦しむのは僕が生きてるからだ!楽しい事も辛い事も全部僕を形作るものだ!貴様なんかに僕を渡してたまるか!」

 

 

叫びとともに再びハドロンブラスターを発砲、狙いは機体中央のモノアイ型センサー、その裏側のコクピットをファクトスフィアは感知していた。この一撃で決める、これで終わらせる。そのつもりで発砲した。そしてその熱線は寸分違わずモノアイ目掛けて飛んで行くと――――――――――

 

 

『だから甘いと言っとろうに』

 

 

着弾直前に霧散、消失してしまった。

 

 

「!?ハドロン砲が効かない!?」

 

『フェフェフェ、なんの対策もなしに姿を現す訳無かろうて。どうじゃ?諦めてワシの物になるかのぅ?』

 

「なるもんか!」

 

 

ディアは驚きながらも今度は実弾に切り替え、衝撃レベルを最大で発砲、山肌をぶち抜く程の威力を持った一撃はまた着弾寸前で消失してしまった。

 

 

『フェフェフェ、軽い軽い。そんな豆鉄砲ワシには届かんて』

 

「クッ・・・なら!」

 

 

苦し紛れにディアはMVSを抜くとエナジーウィングを展開、格闘戦に持ち込むために高速で詰め寄った。

 

 

「これで!『何度も言うがのぅ』!?」

 

 

当然横からの砲撃、寸前で回避したディアは己のミスを悟った。カレラへの怒りで周囲の随伴機を忘れていたのだ。

 

 

『貴様の攻撃はワシには届かんて』

 

「くっ・・・」

 

『ワシを殺したければまずは随伴機を殺すんじゃな。そうすればワシを守るフィールドジェネレーターも機能を停止するぞい。もっとも、貴様にその子供達を殺すことができればの話じゃがの。フェフェフェ!』

 

「くっ・・・貴様ァァァァァァァァァァッ!」

 

『さぁ!見るが良い!わしの可愛い最高傑作達の力を!』

 

 

カレラの叫びとともに大型グラディエーターのアンテナが不気味な発光を開始、それと同時に随伴機のモノアイセンサーの両脇にある投光器兼サブセンサーが発光を始めた。

 

 

「これは・・・何をしたんだ!」

 

 

ディアの叫びも無視し、陶酔したような声でカレラは叫んだ。

 

 

『さぁ!目に焼き付けるが良い!リミッターを解除したグラディエーターの真の力を!』

 

 

カレラの叫びとともに随伴機がレオに向け、一斉に発砲を開始。高度を上げて回避を試みるも更に起動した施設内の防衛火器による火線が頭上を通り過ぎるのを見たディアは頭を抑えられてしまった事に気づいた。

 

 

「っ!防衛火器が邪魔だ!」

 

 

エナジーの消費を避けるため、レオのウィングを畳みランドスピナーを展開させた直後、随伴機の一斉射がレオを襲った。とっさに両腕のブレイズ・ルミナスでガード、射線から逃れるために移動しようとした瞬間、横合いから痛烈な打撃がディアを襲った。

 

 

「ぐぅっ!今の打撃・・・もう懐に!?」

 

 

打撃を受けた方向にMVSを振るも既に敵はいない、改めて移動しようとした瞬間、今度は別方向から殴りつけられた。

 

 

「がぁっ!」

 

 

そして二度、三度と続けて攻撃を受け、レオはそのまま火線が集中する中に誘導されていく。このままでは危険だ。そう感じディアはヴァリスを弾幕を形成するグラディエーターの一機に向け、撃った。

 

 

「ごめんね!」

 

 

エナジー節約と巻き込み被害を避けるために出力を下げ、武器を狙い、謝罪と共に発砲された砲弾は寸分違わず命中する―――――――――

 

 

「なっ・・・・・!」

 

 

―――――――――はずだった。

 

ディアは一瞬何が起きたのか解らなかった。だが自身の射撃が回避されたことは理解できた。それも尋常ではない速度と反応で【発砲された後、充分に引きつけた上で】かわされたのだ。本来人間が超音速の射撃を回避できるのは発砲直前、射線を予測し行うものだ。常人以上の能力を持つ旅団員でも普通はそうだし、オートガードなどで対処することもある。だがあのグラディエーターは違った。発砲に反応し、それの脅威レベルを認識した上で回避されたのだ。そしてそれに気を取られた一瞬がディアにとって致命的なミスを産んだ。間髪を入れず放たれた射撃がヴァリスに着弾、破壊されてしまったのだ。

 

 

「しまった!」

 

 

すかさずヴァリスを破棄、エナジーの消耗から有効な遠距離武装の消失を確認したディアは自分が追い詰められつつあるのを理解した。

 

 

 

 

―――――――――潰れロ―――――――――

 

 

 

―――――――――みんなキエちゃえ―――――――――

 

 

 

 

フォールド通信機からグラディエーターにされた子どもたちの怨嗟が聞こえた。先程よりも攻撃的な意思と破壊衝動、まるで心を塗りつぶされたかようのに全てのグラディエーターが同じ言葉を発していた。ディアはここに来てカレラ・セトメの言った【リミッター解除】の意味が理解できた。とどのつまり、カレラは子どもたちの脳に破壊衝動を送り込み、一種の暴走状態を作り出しているのだ。

 

 

『フェフェフェ、いいぞいいぞ!そのまま搭乗者をじっくり傷めつけて生け捕りにするのじゃ!安心せいお前もワシの手で最高の逸品に仕上げてやるぞい!』

 

「くっ・・・・・・そんなの絶対に御免だ!なにか・・・なにか手があるはずだ・・・アイツを倒して子供達を助ける方法が・・・」

 

『と、その前に上の奴らが邪魔じゃのう・・・つぶせ』

 

 

カレラの魔の手は地上にも及ぼうとしていた―――――――――

 

 

 

 

―――――――――その頃地上では―――――――――

 

 

 

「ディア!おいディア!・・・くそ!あの馬鹿通信切りやがった!」

 

『おいおい、どうすんだ!?ネクストじゃあんなとこ入れねぇぞ!』

 

『入っても蜂の巣にされるのが関の山だ・・・okaka、クォーターになにか小型機はあるか?あらかた制圧を終えたしそろそろ到着する頃だろう』

 

 

突然通信を切ったディアの身を案じるも打つ手が無い地上組は対応策を話し合っていた。

 

 

「E系列のM9とATが何機かあるが・・・グラディエーター相手にASやATじゃ分が悪い」

 

『それでも行くしか無いだろう。ほっといたらあの馬鹿死ぬぞ』

 

『背に腹は変えられないか・・・』

 

 

マクロスクォーターの到着を待っての突入で意見がまとまりかけたその時、桃花が話し合いを中断させた。

 

 

『そうも言ってられないようです。地下から小型機動兵器と思われる反応、50・・・60・・・まだ増えます』

 

「っ!総員散開!」

 

 

okakaの言葉に全機が一斉にその場から離れた次の瞬間、破壊された施設や塞いだはずの地下通路から爆発と共に一斉に頭部にアンテナの刺さったようなグラディエーターが飛び出してきた。その数、およそ80。それぞれの機体が一斉に4人に攻撃を仕掛けてきた。

 

 

『おいおい、なんて数だよ!これ全部に子供の脳みそが使われてんのか!?』

 

 

襲い掛かってくるグレネードの雨を巧みに回避しながらロキがボヤく。

 

 

「いや、おそらく無人機、ドローンのようなものだろう」

 

 

okakaが【鷹の目】と生体センサーを用いてスキャンした情報をロキと支配人に共有する。

 

 

「OK、じゃあ気兼ね無くぶっ壊せるな!」

 

『あ、ちょっとま『吹き飛べやァァァァァァァ!』・・・』

 

 

それを聞いたロキはokakaの言葉を遮り、一気に日蓮のミサイルを発射、広範囲を薙ぎ払うために信管を近接発火に設定し、全弾をグラディエーターに叩き込んだ。それに呼応するように支配人のSC2が両足の4連式ミサイル【ファンナウトミサイル】を発射、更にダメ押しと言わんばかりにM13ショットガンを乱射した。

一斉に爆発したミサイルが周囲を吹き飛ばし、辺りに黒煙が立ち込める。爆発の余波からセンサーを保護するために音紋、熱源センサーが遮断され、日蓮のHUDとSC2のモニターには吹き飛んだ施設群が映し出された。

 

 

『・・・・・・ちょいとオーバーキルだったか?』

 

『・・・かもしれんな』

 

 

撃ち尽くしたポッドをパージしながら、残骸すら見当たらない現場に二人がやり過ぎを反省したその瞬間、上空からビームガンポッドの斉射が周囲に浴びせられた。

 

 

『7時方向!目標は健在だ!』

 

 

okakaの通信に二機が振り返るとそこには装甲が少し焼け焦げただけのグラディエーターが上空からのビームに回避行動と反撃を行っていた。

 

 

『はぁ!?あれだけ撃ったのに大して効いてねぇぞ!?』

 

『どうなってるんだokaka!』

 

 

慌てて発砲した二機の銃弾をグラディエーターは逆手に構えた銃剣で叩き落し、残像が残るほどの速度で回避していく。眼前の光景に支配人がokakaを問いただした。

 

 

『お前ら近接信管使っただろ?』

 

『ああ?今どき普通のミサイルは近接信管だろ?それに小型機なら別に直撃の必要は無いだろうが』

 

 

okakaからの問いにロキが射撃しながら答えた。

 

 

『やっぱりか・・・グラディエーターの装甲は衝撃や面制圧に対して異常に強いんだよ。至近距離から榴弾砲を喰らってもピンピンしてるくらいにな。近接信管じゃ、あいつらには大して効果は望めない。それにあの動き・・・リミッターが外れてやがる・・・』

 

『『そういうことは先に言えよ!』』

 

『無視して撃ったのはお前らだ!』

 

 

okakaのツッコミにあーそういやなんか言いかけてたような・・・と自分の行いを少し反省したロキと支配人はグラディエーターへの攻撃を続けた。その内のライフル弾の一発がグラディエーターに直撃、同時に被弾したグラディエーターが粉砕された。

 

 

「お、効いた!」

 

『さっきの続きだが・・・奴らの装甲には貫通力の高い兵器かビームなどの光学兵器が有効だ。フレシェット弾やダートなら歩兵でも充分撃破できる』

 

『なるほど、一長一短なわけだ』

 

『OK、じゃあ一体ずつ狙撃してやりゃいいんだなっ!』

 

 

装甲特性を理解したロキが意気込んで放ったライフルはグラディエーターの銃剣で裁かれてしまった。

 

 

『『・・・・・・・・・・』』

 

『ロキ様、敵機の反応速度とスピードをお忘れになっていませんか?』

 

『・・・・・・そっ、そんなわけねぇだろ!今のは反応速度を測ったんだよ!///』

 

 

冷静に指摘された凡ミスを顔を真っ赤にして補足するロキを尻目にokakaと支配人は採取した戦闘データを元に作戦を立て直し始めた。

 

 

『スピードの源はローラーダッシュだ、コイツを何とかするには・・・』

 

『okaka、そっちのミサイルは着発にできるか?』

 

『可能だ、というかバルキリーのマイクロミサイルは着発が主流だな。MDE弾頭を持ってきてるから当たれば一発でいける』

 

『そうか、じゃあこれで・・・』

 

『こうだな』

 

 

戦術画面を見ながら悪い笑顔を浮かべた二人、作戦は決まったようだ。

 

 

『ロキ、支配人と一緒に匍匐飛行で敵を引き付けながらこのポイントに移動しろ』

 

『?おう、了解だ』

 

 

okakaの空中からの援護射撃を受けながら日蓮とSC2は指定されたポイント、突入時にロキが破壊した滑走路跡へと移動していく。グラディエーターの追撃射撃は日蓮のプライマルアーマーが受け止め、okakaと桃花が牽制射を繰り返す。

 

 

『到着、後は・・・』

 

 

滑走路跡へ先に侵入した支配人が足元をショットガンで撃ち、更に穴を開けていく。そこに日蓮が滑り込んだ。

 

 

『掛かった!』

 

 

グラディエーターが二機を追って滑走路跡に突入した瞬間、一気に進軍スピードが落ちた。穴だらけの地面に足を取られ、思うように進めない。大型機や飛行可能なネクストならともかく、4m程しかないグラディエーターでは簡単に大穴に嵌ってしまう。仕方なしに歩行や跳躍を駆使して追い詰めようにも、二機の射撃に気を取られ、なかなか進めない。そんなグラディエーター達を見て、支配人の口元にまた悪い笑みが浮かぶ。

 

『よし、ここまでは予定通りだ』

 

『よっしゃ!これであいつらの機動力は死んだも同然だな!』

 

『いやぁまだまだ、次はっと』

 

 

SC2が空中に飛び上がると同時に、再び地面に向けショットガンを連射していく。今度はまるで【整地】するかのようにロキの周辺とグラディエーター軍団を一本の道で繋いでしまった。

 

 

『ゑ?』

 

 

ロキが支配人の行動に気付いた瞬間、ロキはグラディエーターに取り囲まれてしまった。凄まじい射撃に日蓮のプライマルアーマーが明滅し、どんどん削られていく。

 

 

『おいおいおいおいおいおいおい!何してんだ支配人!』

 

 

ロキが慌てて空中に非難しようとした瞬間、日蓮が上空から周囲に照準用のレーダーが照射されたのを感知した。

 

 

『これで仕上げだ!』

 

『全ミサイルターゲットロック』

 

『動くなよ、ロキ?』

 

 

嫌な予感がしたロキが上空を見上げると、そこには三機の機体が武装をこちらに向けていた。

okakaのデュランダルの両足、両肩、両翼のスーパーパックの上下が展開、同時に桃花のルシファーも両足と両翼、スーパーパックのミサイル発射管を展開、支配人のSC2の両肩のビームキャノンとガトリングガンが発射体制に入った。okakaはアイリンク・システムによる視線誘導で、桃花は機体と直結させた電脳でミサイルの照準をセット、支配人はマニュアルでキャノンとガトリングガンを調整した。

 

 

『これで終わりだ!』

 

『ミサイル、全弾発射』

 

『ロックンロォォォォォォォォル!』

 

 

少しハイになったokakaの叫びと同時に300発を超えるミサイルとガンポッドのビーム、そしてビームキャノンとガトリングが生み出す砲弾の嵐がロキ、正確にはロキの周辺のグラディエーターに一斉に襲いかかった。

 

 

『バカヤロォォォォォォォォォォォォォォッ!!!!!!!』

 

 

ロキの悲痛な叫びは爆音にかき消され、三人の耳には届かなかった。

 

 

『・・・全弾命中を確認。目標、撃破しました』

 

『やり過ぎたな・・・』

 

『ああ・・・ロキのやつ・・・生きてるよな』

 

『多分大丈夫だろう・・・ほら、出てきた』

 

『お前ら・・・・・・俺を殺す気かぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!』

 

 

グラディエーターを一掃するためとはいえ、今度こそやり過ぎを反省したokakaと支配人は、爆炎の中から無傷で現れた日蓮を見て、軽く安堵した。

 

 

『ったく!・・・ラムダ・ドライバが起動しなけりゃ今頃死んでたぞ!』

 

 

ロキの言葉を裏付けるように、日蓮の装甲の一部が展開、強制放熱を始めた。通常のネクストには無い、日蓮に隠されたシステムであるRAAMの一つ、【ラムダ・ドライバ】虚弦斥力場生成システムと言う偽名で隠された【オムニ・スフィア高速連鎖干渉炉】が作動した証拠だ。

このシステムは一種の精神世界であるオムニ・スフィアとリンクさせることで作動する。オムニ・スフィアは物理世界と相互に干渉しあっており、人間は生身の状態でもオムニ・スフィアを通して分子が揺らぐ程度の干渉を物質に与えている。この干渉反応は脳と全身の神経系によって生じており、これを連鎖的に増幅させることによってより強力な干渉反応を生じさせる一種の【超能力増幅装置】だ。これを実現するためには使用者の精神パターンをトレースした疑似頭脳および神経系を必要とし、そこに大電力を投入することによってのみ、通常の自然界ではあり得ない干渉反応を引き起こすことが可能となる。従って、使用者の神経系を模すことができない構造のモノにラムダ・ドライバを搭載したとしても、干渉反応を引き起こすことは不可能である。裏を返せば、人型であり極限の集中力が発揮される戦場で生き残ることのできる機械、つまりASやネクストなどでしか効果を発揮しない。

今回はロキの防衛本能にTAROS(Transfer And Response ”Omni-Sphere")が反応したことにより周囲に不可視の防壁を作り出すように作動したようだ。

 

 

『安心しろ、計算通りだ』

 

『じゃなきゃこんな作戦とらねぇよ』

 

『そういうことじゃねぇっての・・・まぁいい、それより下の馬鹿野郎だ』

 

 

支配人とokakaの作戦に踊らされた文句の一つも言いたいところだが、そんな暇もない。地下のディアの救援に行かなければならない。頭を切り替え、ラムダ・ドライバ作動前後を含めた機体情報を専用ファイルに保存させながらロキは二人に問いかけた。

 

 

『で、どうすんだ?あいつ』

 

『そうだな、どうしたものか・・・』

 

『・・・・・・はぁ、仕方ねぇ俺が行ってくる』

 

『『は?』』

 

 

突然のokakaの発言に驚いた二人。当然だろう、今の機体では救援は難しいからこそ悩んでいるのにいきなり自分が行くなどと言い出したのだ。

呆気に取られた二人を尻目にokakaはデュランダルをファイターモードへ変形、ディアが突入した地下道へと突っ込んでいく。

 

 

『ディアが送ってきたデータから最短ルートを計算、翼端部のスーパーパックをパージ、主翼位置を固定、突入する!』

 

 

デュランダルの両翼からパックが外れ、投棄された。そして本来なら基部から展開されるはずの主翼を折りたたんだままokakaは地下道内部へと突っ込んでいった。

 

 

『『・・・無茶苦茶するなぁあいつ・・・』』

 

 

 

 

 

あとがき

 

また長すぎたので一旦切ります。一体いつになったらペース配分が身につくのやら・・・次回今度こそ最後まで行く予定です。

 

 

 

 

 

 


 
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